第3回研究会
講演2<講演資料> 講演タイトル:PWRプラントにおける被ばく線量低減への取り組み講演概要:関西電力ではさまざまな被ばく線量低減対策を実施してきており,被ばく線量は低く推移しているが,近年では諸外国と比較して高めである。被ばく線量は作業量に依存する部分が大きいが,水化学の観点から線源強度低減を継続的に実施していくことが重要と考えている。これまで,材料改善・一次系冷却材pH管理の改良・停止時のクラッド除去などの被ばく線源低減対策を実施してきた。蒸気発生器伝熱管をMA600からTT690に変更したことにより,伝熱管からの腐食生成物の発生は約1/4に低下させることができた。初期PWRでは一次冷却材のpHはマグネタイトの溶解度に基づきpH6.8を下限としてLi濃度幅0.3ppmで管理されたが,80年代以降はニッケルフェライトの溶解度に基づきpH7±0.2を目標とした管理に変更,さらに90年代にはコバルトフェライトの溶解度も考慮してpH7.3を目標とした管理に改善されてきた。プラント停止時には酸化運転により配管からの放射性コバルトの溶出を促進し,浄化系流量を増加させ系外へ積極的に除去する対策を行ってきた。亜鉛注入は1994年に米国のFarley2号機においてPWRとして始めて実施され,2006年においては国内外合わせて39プラントで適用されている。国内プラントへの適用にあたっては,電力共同研究やNUPECプロジェクトの試験から被ばく低減効果を確認・実証している。関西電力では,高浜4号機において亜鉛注入を適用している。亜鉛濃度目標値は5ppbに設定している。亜鉛の注入形態は減損酢酸亜鉛(DZA: Depleted Zinc Acetate)であり,一次冷却水のサンプリングラインの体積制御タンクへの戻りラインへ注入装置により亜鉛を注入している。現時点で,亜鉛注入開始から6ヶ月が経過しているが,冷却材の水質や機器・設備への有意な影響は確認されていない。亜鉛注入により放射性コバルトイオン濃度が上昇した。上昇の程度は先行プラントの実績の想定範囲内である。今後,第18回定検(2008年8月)に,主要機器・配管等の線量当量率測定を行い効果を確認する予定である。2008年度には,高浜3号機,大飯3,4号機に適用し,2010年度には関西電力の全号機へ亜鉛注入を適用する計画である。
会場から,亜鉛濃度を5ppbからさらに上げた高濃度注入が材料の健全性改善に対する効果があるとされているが,高濃度注入の計画があるかとの質問があり,注入実績を評価して高濃度注入も検討していくとの回答があった。また,亜鉛は連続的に注入していること,亜鉛を注入すると放射性コバルト濃度が上昇するが配管表面に蓄積していたコバルトが亜鉛と置換して冷却水中に溶出したものと考えているとの説明があった。