第3回研究会

講演1<講演資料>
  講演タイトル:BWRプラントにおける被ばく線量低減への取り組み
        東京電力(株) 宮澤晃 氏

講演概要:わが国のBWRにおいては80年代から様々な線量低減対策を実施し,世界的にも低い被ばく線量を達成したが,90年代以降は横ばい傾向となり,海外で被ばく線量の低減傾向が進んだこともあり,近年は国際的に比較すると被ばく線量は高めに推移している。東京電力では,このような状況に鑑み,プラントの設計や運転状況に応じた適切な線量低減対策を実施していくこととしている。福島第一原子力発電所では,給水鉄濃度低減を最重要課題として取り組んでいる。当面の目標を給水鉄濃度1〜2ppbに設定し復水脱塩器の逆洗・薬品再生を増加している。中長期的には復水脱塩器のカチオンオーバレイの適用や,費用対効果も考慮して復水HFFの増容量やプリーツフィルタの設置を検討していく。極低鉄運転と鉄濃度管理(Ni/Fe比制御)を比較評価して給水鉄濃度の最終的目標値を設定する予定である。福島第二原子力発電所では,再循環配管の化学除染後の再汚染を低減する取り組みを進めている。再汚染は,水素注入等による腐食電位低下の影響や除染DF(Decontamination Factor:除染前後の表面線量率の比率)の影響で増加すると考えており,除染後に配管内面に保護皮膜を生成させることや,化学除染方法の改善,再運転後の水質管理の改善などにより再汚染を抑制させるべく検討している。柏崎刈羽原子力発電所ではABWRの被ばく線量のさらなる低減に取り組んでいる。給水鉄濃度管理の最適化を計るため,給水極低鉄運転とNi/Feコントロール運転を比較評価している。給水鉄持込を増加させると原子炉水中の溶解性放射能濃度は低下するがクラッド放射能増加による被ばく線量増大の懸念がある。CUW配管線量率低減とクラッド放射能起因の被ばく低減を両立できる水質管理の実施が必要と考えている。そのため,CUW配管線量率上昇原因の詳細検討と,それに基づく給水鉄濃度最適化の検討を進めている。
会場から,被ばく線量は作業環境のみならず作業量に大きく依存するため,定検の進め方の改善と合いまって被ばく低減対策を進める必要があること,環境線量の指標として水化学が目標とする数値を明確化する必要があるのではないか等のコメントがあった。また,給水鉄の持込が被ばく線量増大以外に応力腐食割れに悪影響を与えないかとの質問があり,ハフニウム制御棒の狭隘部に堆積した水垢が応力腐食割れの進展に間接的に影響したとの報告があると指摘があった。