第2回研究会

講演4<講演資料>
  講演タイトル:加速器を用いた水化学研究施設の提案
        東京大学 工学系研究科 勝村 庸介 氏

講演概要:水化学ロードマップにおいて、放射線の直接あるいは間接照射が腐食環境に与える影響を定量化し、実験室での再現実験を可能とする技術の確立が急務であるという位置づけの紹介があった。それらの技術開発の事例として、放射線場腐食実験の一例として、平成14年から18年までの5年間に行われた、放射線環境下の超臨界圧水化学に関する技術開発の事例の紹介があった。γ線照射場における超臨界水中では溶存水素や酸素が腐食においてあまり影響しないこと、ハステロイの重量減量は表面でMoが揮発性の酸化物を形成することによる蒸発であるとの評価結果を紹介。また、放射線場が強くなると重量減量が大きくなり強く影響を受けること、ラマンスペクトル分析結果から照射場ではα-Fe2O3やCr2O3が形成されること、ハステロイの照射、非照射の比較では非照射で表面のCrや酸素の比率が高くなり、照射場ではCrが低下し選択的に抜けている結果を紹介。更に超臨界圧水腐食への放射線誘起界面反応の影響について紹介。

その後、放射線利用による事例として、米国の炭素菌の照射による殺菌設備など色々な場で利用が進められている事例が紹介された。

また、加速器を用いた照射実験施設として、従来の原子炉施設と電子線加速器の特徴を比較し、ガンマ線照射は電子線照射と等価であり、既に、厳菌用の放射線ライナック(10MeV)や商業用照射システム(10MeV,150KW)の事例を紹介。電子線加速器の線量率は原子炉炉心での線量率レベルを達成可能であり、それに基づく電子線照射システムの概要を紹介された。その特徴は複数ループの設置が可能であり、実験実施項目としては、放射線分解と環境変化、放射線下での材料腐食試験等が考えられること、内圧に耐え電子エネルギーの損失を最小限にするための照射容器の強度設計構造事例、金属壁を透過した電子の飛跡の計算結果を紹介。まとめとして、放射線場での系統的実験が重要であること、そのために電子線加速器を用いた照射システムの構造を提案し、確証実験の実施のための照射チャンバーの設計が紹介された。

 

会場からは超臨界水条件での試験に関し皮膜形態が変化するメカニズムに関して質問があり、寄与度は不明であるがOHラジカルなど水が関与していると考えられるとの回答であった。会場からは加速器で10MeVは出せそうであるが、加速器本体の価格や全体の予算規模、今後の計画などについて質問があり、遮蔽も含めた建物全体を入れると10億円規模となること、財源が取れれば数年で対応が可能などとの回答があった。また、加速器を用いた試験で炉水中での皮膜半導体特性に対し、電子線とガンマ線の相似性はあるかとの質問に対し、いずれも同じと考えられるとの回答であった。