第2回研究会

講演3<講演資料>
  講演タイトル:高温高圧過酸化水素ループに関する実験技術
−照射下を模擬した腐食環境における材料腐食挙動のin−situ計測
        日本原子力研究開発機構 腐食損傷機構研究グループ 佐藤 智徳 氏

講演概要:背景と目的として、まず、応力腐食割れの主要因、水素注入に及ぼす酸素、過酸化水素(H)の影響を解説し、研究目的として高温水中でのステンレス鋼の腐食、SCCへのHの影響とOの差異の確認が必要であり、そのための実験技術の開発について紹介があった。高温高圧水ループ装置に求められる項目として共存酸素濃度の低減のため、オートクレーブ内およびサンプル配管中のH分解の抑制とサブppbまで計測可能なH分析装置の導入が写真で紹介された。試験装置ループの概要の紹介の中で、H2O2分解抑制対策として、滞在時間減少のための高温水容積の低減/流量の増加と接液部のPTFE化を写真等で紹介し、試験領域で90%以上の高H残存率達成結果を紹介。測定法のサーベイとして比色分析と発光分析を比較し、発光分析により単一ステップで0.2ppbの極低濃度の測定が可能であることの実証実績を紹介。また、in−situ測定系の構築として、ECP、FDCIのin−situ測定系を解説し、H、O共存条件で、ECP、FDCI共にHが支配的である測定結果等を紹介。また、皮膜電気抵抗と分極特性の測定結果から、H雰囲気ではHの酸化反応がECP測定値に寄与していることを確認したこと、また、表面酸化皮膜の多元分析によりH雰囲気ではヘマタイトリッチで厚い皮膜が形成されることを確認したことを紹介。

まとめとして、ECP−FDCIの複合センサーによるHの高温水中での直接測定法を提案し、今後の課題として、放射線分解水質の腐食、SCC進展挙動への影響評価のための基礎データの蓄積、水の放射線分解による直接生成のモデル化、表面皮膜の形成過程における放射線分解の影響評価、き裂開口部を模擬した隙間部腐食におけるγ線照射の影響の検討の必要性を述べた。

 

会場からは雰囲気下での各種電気化学計測は有用であり引き続き継続して欲しいとのコメントがあり、またSCCに関する今後の予定に対しては、今後き裂進展試験を計画しているとの回答であった。また、試験部品に使用されているテフロンの悪影響に関して質問があり、影響は小さいと思われるが、試験水中のフッ素イオン分析は今後実施する予定であるとの回答であった。