第2回研究会

講演1<講演資料>
  講演タイトル:FACメカニズム解明に係わる基礎研究
        三菱重工業株式会社 軽水炉プラント技術部 荘田 泰彦 氏

講演概要:導入としてFAC(流れ加速腐食)の損傷事例と対策、メカニズムに関するこれまでの知見を解説。その後、回転円盤を用いたワンススルーの試験装置によるPWRの二次系機器設備の環境条件を模擬したFACの試験結果を説明。結果は、試験時間に伴い直線的に重量が減量すること、FAC速度は回転円盤速度(流速)の増加に伴って増加すること、炭素鋼のFAC速度は150℃付近で最大となること、FACはpHの上昇に伴い減少すること、同一pH条件下でFAC速度はヒドラジン濃度1ppm以下では変化はないこと、炭素鋼中の材料のCr含有率の変化はFAC速度に大きな影響を及ぼす(Cr含有率増加によりFAC速度低下)こと、これらの結果は大型ループで行われた公開データとも良い一致を示すことを説明。従って、回転円盤試験はFACに及ぼす影響パラメータの評価を簡便に実施可能であることを紹介。また、これらの実験結果を基に2次系系統の鉄分布評価コードの概要を紹介し、実機実績と良い一致を示していること、給水処理条件および材料改善時の給水鉄濃度低減効果を十分予測可能であることを説明。

今後の検討課題として、FAC速度低減対策としてpH上昇以外に「材料変更」と「溶存酸素の増加」があるが、前者はFACが顕著な部位へ的確に対処する必要があること、後者はPWRにおいてはSG2次側では局部的な不純物濃縮部位があり、酸素と不純物の共存によって発生する局部腐食防止のため、SGへの酸素持込防止を厳密に管理する必要性を述べ、材料や構成を考慮した上で、水処理改善、材料変更等の効果を総合的に評価、適正化していく必要性を述べた。

 

会場からは、電位計測を実施しているかとの質問があり、電位は計測していないが、生成スケールはマグネタイトであり、酸素はゼロに近いところで、ヒドラジンがゼロでも酸素は殆どいない環境との回答があった。また、回転円盤での円周方向での減肉分布を確認したかとの質問があり、実施しており、pH9.2の場合表面粗さが増加する旨回答。溶存酸素の制御について質問があり、10ppbより低い場合でもFAC抑制効果があること、どのレベルまで有効かは見極めは難しく、ppbレベルでの実験が必要かもしれない旨回答。また、給水鉄濃度予測コードについて、腐食の速度をよく予測できているかとの質問があり、系統全体的には計算と実機の鉄濃度はおおむね一致しており腐食挙動も予測できていると考えられるが、局所的な流れの乱れの影響までは困難と回答。