第1回研究会
講演1 講演タイトル:我が国の高経年化対策と産学官の連携について講演概要:日本の原子力発電プラントの高経年化対策について,規制側の視点での施策について紹介。
平成17年8月に原子力安全・保安院が発表した「実用発電用原子炉施設における高経年対策の充実について」は,「透明性・実効性の確保」「技術情報基盤の整備」「企業文化・組織風土の劣化防止及び技術力の維持・向上」「高経年化対策に関する説明責任の着実な実効」を施策の柱としている。規制側としては,高経年化対策ガイドライン等を制定し,事業者が実施する高経年化対策の技術審査を合理的・効率的に実施することや,JNES内に産学官の総合調整機能を有する委員会である「技術情報調整委員会」とその下部組織「安全研究WG・国際協力WG・情報基盤WG」を設置し,産学官が連携した安全研究の推進、技術情報基盤の整備,及び国際協力に係る活動を展開している。
技術情報調整委員会安全研究WGでは,安全基盤研究に関する活動を展開するために,導入シナリオ・技術マップ・ロードマップからなる技術戦略マップを策定し,これを毎年ローリングすることで広く産学官の役割を認識したコンセンサスを形成する。従来は技術戦略において産学官の協調が必ずしも十分でなかったことから,技術戦略の理念を示し,産学官の役割分担や共同研究課題の明確化を図っている。また新検査制度を意識して,「運転プラントの保守管理を達成」することをロードマップ最終目標の中で明確にし,目標を達成するための具体的施策として「技術情報基盤の整備・安全基盤研究の推進・規格基準類の整備・保全高度化の推進」について課題の抽出を行っている。技術戦略マップの導入シナリオとしては,供用年数が40年・50年を超えるプラントが増加することを想定した合理的・効率的技術評価を行うために規格・基準類の整備が必要であること,また2030年以降も原子力が発電電力量の30〜40%を維持するためには大規模な代替建設需要が発生する見込みであることを織り込んで,2030年をターゲットとした見直しを行うとしている。
H18年度に策定された水化学ロードマップに高経年対策と深い関わりのある項目が記載されているが,これらを基にガイドラインの策定に係る支援や経年劣化事象の管理・評価マニュアルの策定に係る支援を期待する。
会場からは,検査制度の見直しと高経年対策との関連や民間基準の規制側へのエンドースの状況について質問があり,高経年化対策は保全プログラムの中で包括的に展開されていくこと,また,民間基準のエンドースについてはJNESとしてもスピード感をもって取り組みたいとの回答があった。また高経年対策における人的交流について質問があり,水化学部会にJNESとしても,参画にするように関係者に進言する旨の回答があった。