核燃料サイクル関連施設視察報告

                         

1.はじめに

   日本原子力文化振興財団の主催による、第1回核燃料サイクル関連施設の視察の概要は概ね以下の通りである。

・開催日  平成22126日(月)〜127日(火)

・参加者  SNW 15名、

サンケイリビング新聞社 編集部、ライター、カメラマン、読者等  6

 2.主な見学先

 (1)日本原燃(株)核燃料サイクル関連施設

ウラン濃縮工場(建物外観のみ)、低レベル放射性廃棄物埋設センター、高レベル放射

性廃棄物貯蔵管理センター、環境管理センター、使用済み燃料受入貯蔵施設、再処理

工場中央制御室。

   (2)六ヶ所原燃PRセンター

 

   3.事前勉強会の実施

     施設の視察前に、事前勉強会として次のような講話をお聴きした。

     「核燃料サイクル・・・今後、良い選択を続けるために・・・」

               講師   北海道大学大学院工学研究科教授 佐藤正知氏

   (1)日本のエネルギー事情と原子力の役割

      エネルギーの大量消費と石油資源の枯渇危機。

大気中のCO2濃度変化と地球温暖化。

   (2)原子力発電と核燃料サイクル

100kWの原子力発電所を1年間運転すると、使用済み燃料30トン、ガラス固化体では30本発生。日本の原子力発電所全体では年間1200本のガラス固化体が発生。平成33年頃までのガラス固化体の累積発生数は 約4万本。

核燃料サイクル・・・MOX燃料工場・・・プルサーマル

(3)放射性廃棄物の発生と処分と安全確保

    高レベル放射性廃棄物(地層処分)、低レベル放射性廃棄物(六ヶ所村で処分実施中、

ただしTRU廃棄物は余裕深度処分、地層処分)

   ガラス固化体、オーバーパック、緩衝材で1000年間は耐え、後は自然封じ込め。 

 地層処分(地下300M以深)・・人の手を放れた長期の安全確保が可能な処分。

 ガラス固化体から地下水中への核種の浸出率は年10−5 以下と低い。

 緩衝材と地層の核種封じ込め効果・・・処分場から放出された場合でも、核種は岩

石/鉱物に吸着し、その移行速度は地下水に比べ著しく遅くなる。

適切に処分場を選定すれば、数千年から数万年にわたり地層処分の安全確保が有望である。

(4)これからの核燃料サイクルを考える上での留意点

貴金属FP増加とガラス固化対策・・溶融炉・流下ノズルの流下性が低下、貴金属

FP沈殿によるガラス融体の電気抵抗低下。(制御に影響)

不溶解残渣とガラス固化対策。

セメント固化体は熱に弱い。等

処分と整合性を有する核燃料サイクル政策の展開・・第二再処理工場の導入時期と役割。第一世代処分場と第二世代処分場の問題。等 

(5)まとめ

   資源小国・経済大国日本の有力で現実的な選択肢は原子力である。

   核燃料サイクルの各分野をまたいだ総合的な取り組みと先導的な意思決定が求めら

れる。その一方でサイクル各分野の研究開発と人材育成が欠かせない。

 

4.施設見学概要(写真は全て日本原燃株式会社のホームページから引用した)

  見学した施設の概要は概ね次の通りであった。     

 (1)ウラン濃縮工場(建物外観のみ)  

操業開始 平成43月。                  

 操業規模 1050トンSWU/年。運転中 150トン

SWU未満/年。

 新型遠心機の運転開始予定 平成239月予定。 

                  

 (2)低レベル放射性廃棄物埋設センター

 操業開始 平成412月。

    1号埋設(液体の廃棄物をセメント等で固めた、

均一固化体) ドラム缶  約14.4万本。     

年間1000本程度埋設。20万本までの許可。

    2号埋設(固体廃棄物をセメント系充填材で固めた、

充填固化体) ドラム缶  約8.2万本。

         年間5000本程度埋設。20万本までの許可。

    1号、2号の埋設センターで合計40万本。最終処分の規模 ドラム缶300万本

        300年間保管。自然のレベルにまで下げる。

 (3)高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター

 操業開始 平成74月。

    返還ガラス固化体(キャニスター)貯蔵容量1440本。    

既受け入れ本数1338本。

増設工事の竣工予定 平成232月。

増設後の貯蔵容量2880本。

30年〜50年保管。ガラス固化体の温度が冷えるのを待つ。

日本原燃の再処理工場から発生するガラス固化体の貯蔵用には40年間で4万本分

が必要。(当面8000本分建屋を建設予定)

                

 (4)環境管理センター

    再処理工場の周辺の土壌、農畜産物、海産物等への影響を確認するため、施設の

操業前から環境モニタリングを行っている。

 (5)使用済み燃料受入貯蔵施設 

事業開始 平成1112月。

    受入容量 3000トン(大きなプールが3つ)。      

3年程度保管。

現在の在庫量 約2800トン。全国の原子力発電所

から発生する使用済み燃料年間900トン〜1000トン。

                 

 (6)再処理工場 

竣工予定 平成2410月。

年間最大処理能力 800トン・U。            

        中央制御室 6つのブロックに分かれている。

    職員数 一直 70名程度。5班3交代。

 (7)六ヶ所原燃PRセンター

    PRセンターには、再処理工場の仕組みを説明するための模型が置いてある。

       使用済み燃料のせん断から始まり、最終製品となるウラン・プルトニウム混合酸

化物が出来るまでと、高レベル放射性廃液からガラス固化体にするまでの工程が

模型で見られた。その他エネルギー関係についてゲーム感覚での展示物が置いて

あった。

                     

5.施設見学後の追加説明

 (1)MOX燃料工場の概要について

操業開始時期・・・平成283月(平成2210月から掘削工事スタート)。

    製品・・・・・・・国内軽水炉用MOX燃料集合体。

    最大加工能力・・・130t-HM(トン・ヘビーメタル)。

    MOX燃料の価格・・ウラン燃料よりは高い。フランスから持ってくるよりは安い。

 (2)ガラス固化の扱いについて

       ガラス固化について、フランスは40年間研究している。英国も苦労したが結 

    局はフランスの技術を導入し、合わせてフランスのアレバ社に運転まで委託。

       日本原燃の炉は動燃の技術を持ってきているが、ガラスの中の溶解度が低く底部

 にたまり易い。低粘性流体の影響で詰まった。不溶解残渣成分も溶けないで残った。また、レンガが落下したが、これはレンガ回収装置で回収。

 

                             以  上