「学生とシニア」の対話実施報告書

対話 in 静岡2010

原子力で未来はすくえるか!〜原子力って本当に必要なの?〜

2010.2.27 石井正則

 

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1.   実施趣旨

シニアネットワークでは、将来の日本を担う若者達には環境やエネルギー問題、とりわけ原子力エネルギーについて正しく理解できる人材育成が重要と考え、育成教員養成系学部との対話活動に拡大に注力してきた。

静岡大学では、これまでにも環境やエネルギー教育に注力しており、エネルギー環境教育研究会が設置されている(事務局:教育学部内)。

今回の対話は、静岡大学エネルギー環境教育研究会に原子力学会シニアネットワークが協力し、「原子力は未来を救えるか!〜原子力って本当に必要なの?〜」と題して、学生とシニアの対話を実施した。

なお、教員養成系の学生との対話としては、これまでに愛知教育大学、長崎大学教育学につづき3校目である。

 

2.   対話の目的

今、世界中でエネルギー需要を満たし、二酸化炭素の排出量を抑える電源として原子力が脚光を浴びている。また、放射線利用も私たちの生活に欠かせないものになっている。その一方、核兵器の開発、核拡散は続いている。

このような中で、「日本」は原子力に関連する平和利用技術を絶え間なく開発してきた。

私たちは未来の世界の平和を守るためにも、これらを知り、議論し、適切に利用することが求められている。

この対話は、参加者がそれぞれの思いを語り合い、教員となった時の対応を考えるきっかけとなることをねらいとした。

 

3.       対話の実施

(1)       日時 :平成22124日(日)9:0017:00(交流会 17:3019:00

(2)       テーマ:原子力は未来を救えるか!〜原子力って本当に必要か?〜

(3)       主催:静岡大学エネルギー環境教育研究会

共催:原子力学会シニアネットワーク連絡会

講演:中部原子力懇談会

(4)       会場:静岡大学教育学部(C309教室)

(5)       プログラム

9:009:30 受付

9:3010:00 オリエンテーション・アンケート・アイスブレーキング

10:0012:15 話題提供

12:1513:15 昼食

13:1514:40 得られた知見から未来のエネルギーについて視点で原子力の視点で

考える

14:4516:00 自分達で意見を発表しよう!(資料作成)

16:0016:30 内容をふりかえろう!

16:4017:00 総評・アンケート

17:3019:00 自由参加の交流会

(6)       参加者

学生 静岡大学教育学部学生 20

教員 静岡大学

熊野善介教授、内ノ倉真吾助教、萱野貴広教務

興学長(学生発表と交流会)

シニア

竹内哲夫、石井正則、石井陽一郎、金氏顕、西郷正雄、齋藤伸三、西村章、林勉、松永一郎、湯佐泰久

オブザーバー 渡邊泰臣(中部原子力懇談会)

 

4.   話題提供

(1)   その1 原子力の現状と未来 シニアネットワーク 林 勉

冒頭に林氏より「まず皆さんのご意見を伺います」とし、簡単なアンケートを実施、更に同じアンケートを対話終了時にも実施した。

その結果は以下のとおりである。

@.環境・エネルギー対策として原子力発電の推進は必要ですか?

        必要 : 開始まえ 19人   不要 : 開始前 1

        (終了後は確認せず)

A.原子力の安全性はどう考えますか?

        安心     :開始前 0人、終了後 7名

なんとなく安心:開始前 5名、終了後 5

なんとなく不安:開始前10名、終了後 1

不安     :開始前 5名、終了後 0

(終了後の確認は残っていたメンバーのみなので、開始前と総人数が異なる)

これらの結果から、ほとんどの参加学生は原子力は必要性とは考えているが、不安と思っていること、この不安は、この対話を通し、相当に解消したことがわかった。

(2)   その2 イギリスの放射線廃棄物学習プログラム 教育学部教授 熊野善介

熊野教授から各国の放射線教育への取り組みの事例の説明を受けた。たとえばスイスでは原子力発電や処分の問題を仮想で進めるロールプレイングゲームを開発していること、英国では「Welcome to RAD Waste Project」と称する核のゴミ(処分)教育プログラムが開発されている。これらを通し、子供たちが意思決定する実践教育が進められている。

静岡大学でも、附属中学校でそうした実践教育を試行していることが紹介された。

 

5.   グループ対話と発表

下記5グループに分かれてファシリテーション(FT)方式で実施。FTはシニアが務めた。

A:原子力発電の原理と安全性

B:原子力発電所の必要性

C:原子力エネルギーと他のエネルギー

D:未来の原子力発電

E:放射性廃棄物

対話のグループ分けは、話題提供の講演後参加学生の希望を配慮し決めた。

対話終了後各グループが今日学んだことを発表、質疑応答を行った。

この発表には興学長も参加され、「なぜ!ということを含め、子供達に相手の目線でどう伝えるか!」という観点からコメントをいただいた。

最後にSNW竹内会長より「世の中には賛成も反対もある。一歩突っ込まれても言葉不足にならないためには知識が必要」との講評があった。

(グループ学習の詳細に関しては添付資料 参照)

 

6.  アンケート結果

学生への事後アンケート結果・・・回収数 16名(全参加者20名、回答率803

事後アンケートの詳細結果は添付3に示すが、要約すると下記の通りである。

1.基礎情報

回答者 16名 (全員理科教育専攻2年生

2.話題提供の講演について

(1)     講演の理解度

@    原子力の現状と未来

(よく理解できた19%、理解できた75%、あまり理解できず6%、理解できず0%)

理由

a.よく理解できた

      この講義でイメージが180°変わった。

      明確になったことが多かった。

b.理解できた

      ところどころ分からないとあったけれど丁寧な説明だったから。

      原子力は危険というイメージしかなかったが、きちんと日本では対処されているとわかったから。

c.あまり理解できず

      時間がなかったということもあって、自分の中であまり理解が深まりませんでした。

 

A    ギリスの放射性廃棄物学習プログラム

(よく理解できた6%、理解できた12%、あまり理解できず63%、無回答19%)

理由

a.よく理解できた

      廃棄物のあり方がわかった

b.理解できた

      最近のエネルギーの話では日本の話だけが扱われることが多かったため

c.あまり理解できず

      時間が少し短かったため

      省略した部分が多かったのが残念。せめてレジュメがほしかった。

d.無回答

・どこからその話だったのかよく分からなかったので答えられない

 

(2)                                                                                 講演の題材で「このようなことを聞きたい」というもの

      原子力発電以外で生活にどのように放射線がつかわれているか知りたかった

      放射線が環境に及ぼす危険性

      次世代エネルギーの今後

      今後原子力発電だけで世界は成り立っていけるか

 

3.エネルギー教育の実施について

(1)                                                                                 今回のワークショップで学校における「エネルギー教育の必要性を感じたか

(大いに感じた56%、感じた38%、無回答6%)

理由

a.大いに感じた

      日本人が原子力発電に対して偏見をもっているため

      自分が今まであまり知識がなかったことがよく分かり、今後の日本をになう学生は知る必要があると思ったから

      小、中学校での先入観は強い

b.感じた

      現存のエネルギー教育はある側面しか見せていない感じがしたので、知識として様々な角度の意見、見方を伝えたいと思った。

      今まで自分は知らなくて間違ったイメージを持っていたりしたので、そういうことを無くすべきだと思うから

      知識があるのとないのでは全く違うので、正しい知識を持った上で、どのように判断するのかということが大切だと思うから。

 

(2)                                                                                 エネルギー教育プログラムを作るとしたら、どのような情報、資料、教材を希望するか

      各エネルギーに関するメリット、デメリットを公平にまとめたもの

      国別の発電量のグラフ

      原子力発電の安全性に触れている情報、資料、教材

      実際に行く

      環境問題と関連するものが良いと思う

 

4.ワークショップについて

(1)                                                                                 ワークショップ前にエネルギー問題に関する危機意識をもっていたか

(大いに保有7%、保有31%、あまり保有せず50%、保有せず6%、無回答6%)

理由

a.大いに保有

      現在の地球は化石燃料に依存しすぎていると思っていたから

b.保有

      テレビや新聞、今までの授業でそれなりに習ってきたから

      世論でさわがれるし、現代社会などの授業でも聞いていたから

      一番使われている石油が私たちが生きている間になくなる可能性があったため

      電気が使えなくなってしまう

c.あまり保有せず

      聞くことはあったが、どの発電がよくてどの発電がわるいなどよくわからなかったから

      それほど身近ではないと思っていた

      化石燃料の枯渇の問題については知っていたが、あまり危機感を持っていなかった

      なんとかなると思っていた

d.保有せず

      特に考えたことが無かった

 

(2)                                                                                 ワークショップ後にエネルギー問題に対する危機意識に変化はあったか

(大いに変化19%、変化62%、あまり変化せず13%、無回答6%)

理由

a.大いに変化した

      高速増殖炉による資源延長

      パワーポイントで発表できるまでになったから

b.変化した

      原子力を使えば2500年も資源がもつことが分かったから

      将来的には確実に直面するから

      環境問題とあわせて、国民が考えていかねばならないことだと思った

      考えられていて、対策も開発されていると感じられた

c.あまり変化しない

      原子力発電の可能性を大いに感じたが、未だ高速増殖炉うまくいくとは分からないし、原子力というだけで拒否する人も多いため

      原子力発電については分かったが、エネルギー問題については少ししか分からなかった

 

(3)                                                                                 ワークショップは満足いくものだったか

(大いに満足50%、満足38%、やや不満6%、無回答6%)

理由

a.大いに満足した

      シニアの人たちと個別に話をすることができて楽しかったから

      原子力への理解を深め、その可能性を感じたため

      シニアの方たちと話ができてよかった。話しやすく楽しく知識を得ることができた

      エネルギーを考えるきっかけになった

      知識、興味、関心、意欲が高まりました

b.満足した

      原子力だけでなく、ものの考え方として新しい発見があった

      分かりやすかったし、新発見があった

      シニアの方に丁寧に教えていただき、とても質問しやすい環境であり、自分の知識を深めることができた

c.やや不満

      もっと理解したかった

 

(4)                                                                                 今回のようなワークショップについてどう感じたか

WSの必要性 非常にあり44%、あり50%、無回答6%)

理由

a.非常にあり

      現在の状態では知らないで済ませてはいけないことだと思うから

      正しい生の知識を得ることは大切だと思えたから

      一般人におけるエネルギー問題の理解と現状のギャップが大きいから

b.あり

      原子力発電はわりと身近なものであるのに、知らないことが多すぎると思ったから

      はじめはあまり興味がなかったが楽しかったし、交流や知識を得る場としてよいと思った。

      Face to Faceの方がより話を真剣に聞くことができる

      普段の講義では得られない貴重な体験ができた

 

5.エネルギー教育に関する考え

(1)                                                                                 今後エネルギー教育を推進したいと考えるか

(よく理解できた19%、理解できた75%、あまり理解できず6%、理解できず0%)

理由

a.大いに推進したい

      生活に直結するため

      一般人におけるエネルギー問題の理解と現状のギャップが大きいから

b.推進したい

      生活する上で、知っておく必要があると思ったから

      正しい知識を持つことが、正しい判断につながると思ったから

      日本や世界全体で考えていくべきだと思う

      自分が教育されてよかったから

 

 

(2)                                                                                 今後「エネルギー教育の研究」を進めたいと考えるか

(大いにしたい6%、したい81%、無回答13%)

 

(3)                                                                                 「エネルギー」や「エネルギー教育」について、他の研修を受ける希望はあるか

(大いにある6%、ある62%、あまりない6%、ない13%、無回答130%)

 

(4)                                                                                 他の学生や教員に「エネルギー教育」を普及させたいか

(大いにある25%、ある69%、無回答6%)

理由

a.大いにある

      将来を見据えるために

      イメージと実情が異なるため

b.ある

      安全性を知った上で、ちゃんと論議すべき問題であると思ったから

      自分が実際に体験して有意義だと思ったから

      みんなで行うべき問題だから

      現状を知るべき

      実際に話し合うことができるから

 

6.「教育学部の学生とシニアの対話:ワークショップ」の在り方、改善点など自由記載

     人数もちょうど良かったし、たくさん話せたがまとめる時間が少なかったと思う

     もっとこの対話を増やすべき

     もっと様々な人と話したかった

      パワーポイント制作⇒発表間の時間がもう少しあると意見をしっかりとまとめることができたと思う。学生ももう少し事前知識をしっかり入れるべきであったと反省している

 

7.   総括

全員が理科教育専攻2年生ながら、大半の学生が原子力を必要と認識していたのは驚きであった。その一方、安全性には不安と感じている学生が大半。キチンとした教育がされていないので当然であろう。

然しながら、教員のエネルギー環境教育に対する関心の高さ、放射線測定器も保有していることなど、原子力や放射線を学ぶための環境は優れているように見受けられた。

わずかな時間の講義や対話内容を整理し、堂々と自信をもって発表した学生の態度をみて、この対話は成果があったものと考える。発電所などを実地に見学することなどを含め、シニアの協力できることは多い。教育の現場に生かすために、そういったことも含め、継続的に協力できれば、更に大きな成果が期待出るように思う。

 

8.   添付資料(添付1〜4はクリックすると参照できます)

対話会の様子を伝える静岡新聞の記事

対話写真集

添付1 開催案内

添付 各グループ時の対話状況、発表時のQ&A

添付 シニアの感想

添付 事後アンケート詳細結果


<対話会の様子を伝える静岡新聞の記事>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







 

<対話写真集> (掲載略)

開会挨拶 竹内SNW会長

話題提供1(林勉氏)

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話題提供2(熊野先生)

話題提供聴講風景

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グループA

グループB

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グループC

グループD

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グループE

発表会にて(興学長)

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添付資料1  開催案内

原子力は未来を救えるか!

〜 原子力って本当に必要なの? 〜

 

日時:平成22年1月24日(日)9:00〜17:00

会場:静岡大学教育学部 C棟309教室

 

対象者:大学生・教育関係者

参加費:無料

プログラム

ファシリテーター:熊野善介・他サポーター:日本原子力学会シニアネットワーク

9:009:30 受付(9:25まで)お弁当の確認・事前アンケート

9:3010:00 オリエンテーション・アンケート・アイスブレーキング

10:0012:15

話題提供 WS1「原子力の現状と未来」(シニアネットワーク)

話題提供 WS1-2 「イギリスの放射性廃棄物学習プログラム」(熊野善介)

12:1513:15  昼食

13:1514:40  WS2「得られた知見から未来のエネルギーについて原子力の視点で考える」

14:4516:00  WS3「自分たちの意見を発表しよう!(資料作成)」

16:0016:30  WS4「今日の内容をふりかえろう!」

16:4017:00 総評・アンケート

17:3019:00 自由参加の交流会

今、世界中で、エネルギー需要を満たし、二酸化炭素の排出量をおさえる電源として原子力発電が脚光を浴びています。また、放射線利用も私たちの生活に欠かせないものになってきています。一方で、核兵器の開発、核拡散は続いています。

このような中で、原子力に関連する平和利用技術を絶え間なく開発してきた唯一の国、「日本」。私たちは、未来の世界平和を守るためにも、これらを知り、議論し、適切に利用することが求められています。参加者の思いを語り合いましょう!

是非ご参加ください。

 

【申し込み・問い合わせ先】

静岡大学エネルギー環境教育研究会;事務局(教育学部内)熊野善介・内ノ倉真吾

Tel / FAX 054-238-4637 / 4636  E-mail: esuchin@ipc.sizuoka.ac.jp

 

【参加シニア】

石井正則(いしいまさのり)元IHIエネルギー事業本部技監

石井陽一郎(いしいよういちろう)  元東電原子力開発研究所副所長
金氏 顕(かねうじ あきら) 三菱重工業特別顧問、元同社常務機械事業本部長
西郷正雄(さいごう まさお) 原子力安全委員会技術参与、元原産協会
竹内哲夫(たけうち てつお) 元原子力委員、元日本原燃社長、元東電副社長
西村 章(にしむら あきら) グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン理事
林 勉(はやし つとむ) 元日立製作所理事原子力事業部長
湯佐泰久(ゆさ やすひさ) 富士常葉大学環境防災学部教授
渡邊泰臣(オブザーバー、中部原懇)

松永一郎(まつなが いちろう) 元住友金属鉱山エネルギー環境事業部技師長

 

【役割分担】

世話役:金氏 顯

同補佐:石井正則(概要報告書作成、最終報告書作成)

会計:西村 章

写真:西郷正雄

基調講演:林勉

講評:竹内哲夫

 

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添付2

各グループの対話状況、発表時のQ&A

 

Aグループ テーマ 原子力発電の原理と安全性

 

メンバー(敬称略)

学生 : 齋藤 光、佐々木 悠、苦瓜 真宏、山本 美那子

シニア: 齋藤 伸三、西村 章(FT)

学生からの事前の質問疑問

予め提出されていた以下の項目を中心に質疑応答を行うべく資料を用意して行ったが、グループのメンバーは、ほとんど自分が提出したものではないとのことに若干驚きを感じた。

原子力発電の原理

1.あまり知らないので、知識として知りたい。

2.一つの原子力発電所でどのくらいの量を発電しているのか?

3.ウランの核融合反応について知りたい。

原子力発電の安全性

1.耐震について、本当に大丈夫か?

2.チェルノブイリ事故はなぜ起きたのか?またその原因は何か?

3.原子力発電所は安全と言われているが、具体的にあまり聞いたことがないので聞いてみたいです。

4.事故等もあったが、それを受けて何か新しく安全対策をしたりしたのか?

5.安全性はどうなのか、どういう根拠、基準で決めているのか?

6.放射能が漏れて、その結果どうなるのか、知りたい。

7.環境にどのような影響があるのか?本当に安全なのか?

対話概要

1.          学生からの事前質問書に基づき、(1)原子力発電の原理や仕組み、(2)安全確保の仕組みと事故例、(3)放射線の影響の3点に分けてシニア側から回答説明した。発表から見る限り、短時間の説明にも関わらず一定の理解はなされたと見られる。

2.          説明には、予め用意した基礎的な資料や燃料棒の模型などを使用。

3.          安全性に関しては特にチェルノブイリの事故についての質疑が多かった。止める、冷やす、閉じ込めるという機能がどのように西側の炉と違うか比較して説明したものは理解され易く、発表でも使われていた。

4.          TMI事故については、学生さんは知らなかったが、質問にあった、事故を反映した安全対策ということで説明。

5.          身近に原子炉のある地域(福井)に住んでいた学生さんもおられ、やはり事故に対する不安から関心の高いテーマであった。

6.          放射線については、日常生活でも浴びていることやベクレルとシーベルトの関係を理解する質問が多く出された。また、日常生活や原子力発電所から放出される放射性物質による被曝は恐れるような量ではないが、専門家として放射性物質を扱う際は、正しく怖がり遮蔽や遠隔操作が重要であることを説明した。

7.          その他、原子力発電所と原爆の違い。使用済燃料等の輸送中の安全性等についても質問があり、説明。

発表に対する質問は無かった。

以上

 

Bグループ テーマ 原子力発電の必要性

 

メンバー(敬称略)

学生 : 松永、前野、千葉

シニア: 竹内哲夫、西郷正雄(FT)

先生 : 内ノ倉真吾

進め方:

FT(西郷)より、学生に記録係と対話終了後の発表者を決めてもらうことを依頼した上で、Bグループのテーマ「原子力発電の必要性」について、午前の林様の講演に加えて補足した方が良いと思われることを少し説明した。その後は、対話をしながら学生の疑問点にシニアが説明する形式で進めた。

 

補足説明:

世界のエネルギー消費状況として、現在、人口が1/4の先進国がエネルギーの3/4を消費し、人口3/4の後進国・途上国がエネルギーの1/4を消費している。将来、後進国・途上国が先進国並みのエネルギーを消費するとするならば、現在の3倍のエネルギーが必要になることを説明。すなわち、将来エネルギーは、相当必要になることを説明。続いて、化石燃料は環境問題に加え枯渇の問題があること。再生可能エネルギーは、地域性、出力密度が小さいこと、不安定な電力であることなど説明した。

 

対話:

学生から、最初にチェルノブイル事故の話しがでて、原子力は大丈夫なのかとの質問から始まった。その後、原子力では、燃料を増殖できることから、ウランが枯渇しても25003000年は、大丈夫と言われている説明、そのための核燃料サイクルが重要であることをシニアから説明した。対話は、学生との間で、だいぶん和やかな雰囲気で行なうことができたが、どうしても答える説明が長くなり、会話全体の2/3以上をシニアが話してしまう状況になった。どうしても質問に答える形式の対話であるために、シニアの説明時間が長くなるのは、致し方が無いのかと思う。対等な議論をするためには、テーマに対して、同じ土俵あるいは、それに近いレベルになるための知識を学生が予め持ってもらわなければ、不可能ではないかと思う。

 

学生の発表:

プレゼン資料のまとめ方は、原子力発電の必要性として、その利点を示し、その他の発電の問題点をまとめ、必要とされる原子力発電を推進する上での日本での課題と最後のまとめには、今回の対話の中で、学んだ内容の整理をされている。細かな内容は、どうしても僅かな時間の中でのものなので、正確さなどに少し欠けるところもあるが、良くまとめている。

発表の中で、鳩山首相を批判する言動があったが、対話の中では、CO2削減目標の非現実性を話したことに起因するものと思われる。この鳩山首相を批判する言動について、「今後教師になった時には、政治に絡む問題は決して生徒の前などで行なってはいけない」と、発表後のコメントとして、熊野先生より忠告が為された。

 

感想:

学生の数が3名とすこし少なかったこともあり、対話はマンツウマンに近くなった。学生に取っては、緊張もあったかもしれないが、まさに顔を向き合わせての対話のため、対話が弾み、楽しかったように思われる。

学生の頭の中は、原子力について真っ白な状態にあると思われるので、午前中の講演と僅かな時間の中での対話ではあるが、吸収が早いものと思う。ある意味では、いろいろな事に感化されやすい時期のために、今正しく原子力を伝えることをしておかないと、歪んだ原子力知識をメディアなどから入り込む可能性があるために、気を付けなければならないと思う。

西郷 正雄 ()

 

Cグループ テーマ 原子力エネルギーと他のエネルギー

 

メンバー(敬称略)

学生 : 神尾、三田、笹瀬、足立

シニア: 石井陽一郎、林 勉(FT)

進め方:

FTの林より、ファシリテーション方式の目的として、学生たちの率直な疑問、意見

を遠慮なくどんどん出してもらうことを説明。

まずテーマに関連して何でもよいから思っていること、聞いて見たいこと、云いたいことをポストイットに書いてもらい貼り出した。結果として原子力に関すること、そのほかのエネルギーに関すること、将来はどうなるかの3点に大きく分類され、これらについて議論をすすめた。

 

対話:

 学生側から積極的に疑問や意見が多く出された。それにシニア二人がやや異なる観点から答えるという形で進んだ。適当なところでFTが話題の転換と発言の少ない学生の発言を促すことを行い、時間一杯建設的な対話が行われたと考えている。

 

学生の発表:

 PP12枚で発表。対話した内容から学生たちの印象に残った点をよくまとめていた。

「原子力発電をやめたらどうなる」という発問を出し、わが国の経済への深刻な影響について述べていた。次に「原発の安全性」をとりあげ、設計に織り込まれた安全性、核爆弾との差、放射線対策、耐震性、事故から学ぶ対策等を挙げて安心できるとしている。これらのことから原発の推進必要性をのべ、これの理解活動のための教育の重要性について述べていた。

「次世代エネルギーの可能性」という発問をだし、太陽光、風力、

バイオマス、地熱 、波力、地震、雷 等を上げ、その各々について、問題点を述べていた。

「まとめ」として、

・ 一般に、知られている原子力発電所というのは、原子爆弾の技術によって発電をしていると思われがちだが、実際はそのメカニズムが似ているだけで、発電方法はまったく異なる。

・ みんな、原子力発電に対してデメリットしか知らないが、自然発電に対してはメリットしか知らない。

→原子力発電に対する知識が明らかに少ない。以上の2点よりこのように考察しました。

やはり、新しいエネルギー革命がおこるまでは、 原子力エネルギーに頼らざるをえない。

 

感想:

短時間でこれだけ素直に問題点を理解し、正しい結論を導き出しているのはある意味で驚きである。このようなエネルギー・環境問題について白紙に近い学生たちに、正しい知識を与えれば吸い取り紙に吸い取られるように変化していくということは教育の重要性と逆の場合の恐ろしさも感じる。教育系学生への対話活動の重要性を改めて実感した機会でり、この場を与えていただいた、興学長、熊野先生をはじめ関係の皆様に感謝する次第である。

 

 

Dグループ テーマ 未来の原子力発電

 

メンバー(敬称略)

学生 : 佐々木裕樹、関勇作、鈴木貴大

シニア・オブザーバー: 松永一郎、渡邊泰臣、石井正則(FT)

教員 : 萱野貴広

対話の進め方

参加学生は事前アンケートの回答者ではなかったので、改めて疑問、質問事項を出してもらい、ポストイットに書き出し、これを整理し対話のテーマとした。

整理されたテーマ

原子力発電の可能性

原子力発電の未来、これからどうなるか、将来の発電方法、効率化できるのか?

もんじゅに関して

 そもそももんじゅとは(何がどう違うのか)? これからどうなるのか?

次世代原子力発電とは

 今のものと何が違うか?

放射能はもれないか?

 ベクレルとは?

核融合の可能性

制御棒の仕組み

原子力発電所の寿命は?

子供達に何を伝えるか?

 

対話の内容

前述の質問事項のうち、まず将来の原子力に関するテーマを、シニア側から更に疑問点を聞きながら答える(質疑応答)方式とし、原子力の将来性に関しては、原子力立国計画の骨子など用意した資料を配布しなが説明した。

これらの質疑応答が一段落した後、「子供達に何を伝えるか?」について、シニアから意見は控え、「一緒に考えよう!」ということにし、学生が意見を出しシニアが補足し、学生が見解をまとめた。

教員として参加いただいた萱野先生が学校にある放射線測定器(「はかるくん」に類似、α、β、γが測定可能)をもってきていただいたので、子供に伝える道具として活用できることを紹介した。また放射線がどこにでもあることの説明に使った。

 

学生発表

対話の内容から「ベクレルとは」「放射線は漏れないか」「原子炉の寿命」「次世代炉について」「もんじゅについて」「子供に何を伝える?」の6点の整理し発表した。

特に「子供に何を伝える?」では、好き嫌いで判断すると指向が止まってしまうので、必要かそうでないかの視点で見る必要があること、それを判断するネタの提供、感情でなく論理で判断する力を養わせる必要があること、などの意見をまとめ発表した。

 

感想

学生から提出された質問のうち、「子供に何を伝えるか」は一緒に考えるテーマとなり、ややもすれば質疑応答で一方通行になりがちな対話を双方向になり良かった。学生が自分達で考えた発表内容も、要領よくまとめられていた。

対話の途中、萱野先生が学校所有の放射線測定器を持ってきて、学生に会場の放射能を測定して示されたことも、放射能の一端にふれるこができたこともよかったと思う。理科の一部として放射線を教えられる教員養成に活用することを期待する。

(文責 石井正則)

 

Eグループ テーマ 射性廃棄物、特に地層処分原子力発電の原理と安全性

 

メンバー(敬称略)

学生 : 西尾幸次郎、馬淵加奈子、望月彩加(教育学部教員養成課程2年)、

イルマン・アンワリ(インドネシアから留学大学院生)

シニア: 湯佐泰久、金氏 顯(FT)

教員 : 熊野善介教授

1.  対話内容

主に、学生から提起された疑問・質問について湯佐様より自分の資料を基に説明。金氏はFTとして進行役と補足説明を担当。地層処分の概要、安全性についてはある程度、理解されたと考える。

主な項目とその説明概要はつぎのとおりである。

Q.なぜ、地層処分か、その他の方法は?

A.宇宙処分、海洋底処分、氷床処分などが検討されたが、実現可能性、安全性、倫理的な課題から、地層処分が選ばれたこと。特に、地層処分の方法は廃棄物体の再取出しなどが可能である事も説明。  

Q.将来、安全とどうして分かるのか?

A.より危険側に考えても安全であることを証明すること、そして、安全評価の手法について、自然界での類似例(ナチュラルアナログ)で確証できることを説明。

Q.何万年も先の放射能の強さが何故正確に予測できるのか?

A.放射性物質には半減期があること、懐中電灯の乾電池も光を出すと能力が低下することをたとえ話に説明。

Q.処分場が各所で見つかるとは思えないが?

A.想定される処分場の大きさと、1〜2箇所で十分であることを説明。

なお、熊野先生からは次の期待と質問があったが、学生との対話に時間が費やされ、先生の期待にはこたえられなかった。別途機会を設けて対話をしたい。

(期待)多くの国民・市民のが科学的に正しい情報に簡単にアクセスし、情報が公開され、一人一人が判断できる文脈つくりを期待してます。持続可能な社会になって欲しい。

(質問)高レベル放射性廃棄物についての国民の理解の為にどのようなシステムの構築が必要か、また合意形成の為の日本モデルとしてどのようなことに注意すべきか、考えを伺いたい。

4.学生の発表

西尾君が代表して発表。主にこの短時間の対話で知ったことを自分の言葉で説明しようと汗をかきながら発表していたのが印象的であった。

興学長から、「立地住民への説明では、同じ目線での対話が重要である」との貴重なコメントがあった。

以上(文責:金氏 顯)

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添付3

シニアの感想

(五十音順)

石井陽一郎

学生は大体小学校から高校までの先生志向であるが私としては、先生の卵との対話は初めてで反応に偏りが無いか関心もあった。

学生から活発な質疑、意見が出された。 主なまとめの神尾君は物理専攻であるが将来の先生達がこの調子で理解、勉強すれば安心がもてる。臨界問題、被爆、耐震など安全、CO2と経済性にも関心が大きく的確な質疑応答であった。日頃の研鑽もうかがわれ、最後のとりまとめはCグループに関しては予想以上によいまとめかたをしたと思う。

 

金氏 顯

2.  静岡大では初めての対話で、世話役を仰せつかった。準備にギリギリまでかかったが、無事開催できた。大学側の準備、当日の対応等に感謝します。

3.  日曜日にもかかわらず教育学部2年生20名が集まってくれ、しかも基調講演中はメモを取ったり、対話中も積極的に疑問、意見等を出し、原子力という難しいかつ初めて習うテーマにも拘わらず、熱心に参加してくれた。エネルギー教育の重要性、原子力や放射線を知る切っ掛けを掴んでくれたことと思い、我々も遣り甲斐があった。在学中に更に勉強し、教壇に立ってからの正しいエネルギー教育に生かして欲しいと期待する。

4.  グループ対話はE、テーマは「放射性廃棄物、特にその地層処分」で、このテーマが専門の湯佐様(富士常葉大教授)に学生の疑問への対応をお任せし、私はもっぱらFTに努めた。2時間でこのテーマのことを理解してもらうのは至難の業だが、湯佐様の分かり易い説明、学生の理解力により、処分の概要、必要性、規模、基本的安全性は分かってくれたと思う。もう少し時間があれば、国民への理解や立地促進の手法、更に自分の住む町に誘致するとなったら賛成するか、なども対話したかった。

5.  熊野先生は英国の高レベル廃棄物学習プログラムを研究、我が国版を構築されようとしている。Eグループ対話でもその観点から我が国の理解や立地調査地元同意のシステムは如何にあるべきか?との質問を出されたが、時間切れで対話出来なかった。別の機会を設けたい。

6.  来年度も是非開催したいと先生方ともお話しした。次回は理学部学生も、さらに近隣の教職員の方々にも参加して欲しいと思う。

以上

 

西郷 正雄

 Bグループに参加したが、学生の数が3名とすこし少なかったこともあり、対話はマンツウマンに近くなった。学生に取っては、緊張もあったかもしれないが、まさに顔を向き合わせての対話のため、対話が弾み、楽しかったように思われる。

教育学部 理科学科の2年生の学生ではあるが、原子力について、どの程度前準備をしたのか分からないが、こちらの話しについて行くことができたようで、最近の学生は、一番遊びたい盛りであるのに、日曜日に拘わらず参加し、まじめな学生生活を過ごしているように感じた。

プレゼン資料のまとめ方については、まだ2年生であるにもかかわらず、簡潔にまとめているのには驚いた。熊野先生や内ノ倉先生の日頃の教育のたまものでは無いかと思う。

学生の頭の中は、原子力について真っ白な状態にあると思われるので、午前中の講演と僅かな時間の中での対話ではあるが、吸収が早いものと思う。ある意味では、いろいろな事に感化されやすい時期のために、今正しく原子力を伝えることをしておかないと、歪んだ原子力知識をメディアなどから入り込む可能性があるために、気を付けなければならないと思う。

興学長からの学生へのコメントとして、「今回学んだ内容について、簡単に受け止めるだけでなく、その中より疑問に感じることを引き出し、より深く学ぶ姿勢を忘れないで欲しい」との貴重なアドバイスは、学生だけでなく我々シニアも初心に戻って考えさせられるところであった。

 

齋藤 伸三

熊野先生のご尽力により、日曜日にも拘わらず教育学部の2年生20名が集まり、真剣に原子力問題について専門家に質問をし、議論できたと思う。

Aグループでは、「原子力発電の原理と安全性」という基本的課題に関して説明したが、当然、初めて聞くことで100%理解したとは思えないが、グループ別発表では原子力発電の原理、原子炉及び燃料集合体の構造、安全性確保の基本原則、チェルノブィリ事故の原因、放射線の存在、BqSvの相違等短時間の成果を的確にまとめてくれた。他のグループ発表に関し、興学長から的確な評価、激励があったが、これから教師を目指す学生にとってまたとない機会となり、これをきっかけに一層知識を広げ、自ら考え、そして生徒やその親等に自信を持って接してくれると思う。また、今回の対話の前後で、原子力発電を安全と思う学生が25%から約90%と激変したのは喜びであり、かつ、普段、いかに正確な情報が届いていないか、受け手側にも物事を正しく理解しようという積極性がないかを示したもので示唆するところが大きい。

 

竹内哲夫

 参加学生は学部2年生でいずれ2年後は教員を目指す学生でありこの時期に環境、エネルギー更に原子力と放射線などのテーマに接する機会を得たことは大きな意義があったと思う。ただ、これまでの教育の場で基礎的なリタラシーを殆ど受けていないために即製的な発表になったのは否めないが、極めて率直で素直に問題を正しく理解して身に付けようとした態度は良かったと思う。

丁度 発表の開始に頃良く興 学長が参加されたのは学生にとって緊張感を増したが、今回の対話会の開催の意義が大きく盛り上がったことは間違いない。

続く、懇親会の場で学生達3名に彼等の感想を聞いたが、一様に社会体験豊富なシニアとの対談からはすごく目から鱗的な啓発を受け、将来の教育現場に立つ前にはジックリと勉強しないといけないと思ったとのことである。

提案ですが、熊野先生にも同様な意図があるようですが、今回のようなテ−マで半年位続けるシラバス(林さんの講演のテーマを分割して詳細化する)を組んで、分担して支援したらどうかと思います。

 

西村 章

予め提出されていた質問からみてもかなり初歩的なところから始めなければと考えていたが、やはり、対話したグループAの全員が、原子力については、これまで教育を受けたことは皆無という状況であった。このため、(1)原子力発電の原理や仕組み(2)安全確保の仕組みと事故例、(3)放射線の影響の3点に分けてそれぞれ30分程度づつシニア側からの説明と追加質問とに割いたが、シニアからの発言の時間が多くなり勝ちであった。

それでも、かなり熱心にメモをとったり活発な追加質問があったりで、発表から見る限り、短時間の質疑にも関わらず学生さん達に一定の理解はなされたと見られる。

グループ内には、身近に原子炉のある地域(福井)に住んでいた学生さんもおられ、やはり事故に対する不安が最も関心の高いテーマであったようだ。

対話の前後で実施した原子力に対する不安のアンケートでは、事後の結果がかなり改善の方向に変わってくれたが、それでもまだ、一抹の不安を持たれているというのが、懇親会で個々の学生さんに聞いた感想であった。

放射線や原爆との違いについては、認識を新たにしてもらったという感が強く、発表の最後で「(放射線を)正しく怖がれ!!」と言ったフレーズで結ばれたが、この辺の理解が少しでも進んだとすると、今回の対話の意義は大きかったと感ずる。これをキッカケにして今後、学生さんたちが、自らも学び、学校で生徒さんに自信を持ってきちんとした原子力や放射線の知識を教えられるようになることを期待したい。

 

林 勉

教育系では愛知教育大、長崎大教育学部に次ぐ3番目であり、期待するところ大なるものがあった。

結果は日曜日にもかかわらず、20人の学生が参加し、皆熱心に聴講し議論に参加してくれた。

発表の内容は竹内会長の講評にもあった通り、表面的な理解の言葉使いの危うさはあったものの、全くこの種の話を聞いたことも考えたこともない学生たちとしては精一杯の理解を示してくれたものと思う。

まだ学生のアンケート結果はわからないが、学生たちは今回の経験で多くのことを学び、先生となる上での今後の勉強の方向付けに役立ったのではないかと思っている。私は基調講演を担当させていただいたが、多くの学生が熱心にメモを取っていたのが印象的であった。各グループの発表の中でも講演資料の引用が多くあり、基礎知識として役立ったものと思っている。私の講演の前と対話の最後に意識調査を行った。

その結果を下記する。

1.原子力発電の推進の必要性(講演の前のみ)

必要:19/20   不要:1/20

2.原子力発電の安全性についての安心感(講演の前と対話終了後)

講演前

安心:0/20  何となく安心:5/20  何となく不安:10/20  不安:5/20

対話終了後

安心:7/13  何となく安心:5/13  何となく不安:1/13   不安:0/13

必要性については一般国民は必要は約80%であり、それに比較して95%が必要と感じており素晴らしい。

安心感について、何となく安心を含めた安心は講演前は25%であったが、対話終了後は約92%に向上している。安心感というのを変更することは相当に困難であるにも拘わらず、この大きな成果が出たということは

この種の活動の重要性を定量的に示していると云える。

 

松永一郎

学生とシニアの対話は今回で40回目であり、その内、教育関係は愛知教育大が3回、長崎大が2回そして今回、初めて静岡大学での開催となった。愛知教育大は吉田淳先生、長崎大は藤本登先生そして静岡大は熊野善介先生といずれもエネルギー環境教育、原子力の重要性についての理解が深い方々ばかりであり、それが成功の一番の要因と考える。

学生は2年次生20名であったが、原子力についてはほとんど知識がなく、わずか1日の対話であったが林勉氏の事前事後の挙手によるアンケート結果にみられるように、漠然とした不安感が相当程度に払しょくされた様子がうかがわれる。この現象は今までの教育系学生に対する対話に共通して見られる現象であり、白地にインクが染みていくようなものであろう。マスコミ、反対派の論調は不安感を与えはするが論理性、整合性はなく、対話会では基調講演で予備知識を与え、さらにそのあとの対話でしっかりと疑問点の補強をするので良く理解が深まると考えられる。発表はさすがに「これから教育者として子供たちにどう教えたらよいのか」という観点からできているとの感じをうけた。日頃からなにかにつけて教育者としての訓練を、講義等を通じて学んでいるからであろう。対話結果を具体的に体感できる「浜岡原子力発電所の見学」にもできるだけ多くの学生が参加することを望むものである。こういった学生一人一人が将来、先生になって生徒を教えていくのであるから、その影響力は非常に大きい。

なお、興学長が顔を出され、寸評を加えられたこと、懇親会で多くの学生に囲まれていろいろと話しておられたことは、学生にとって対話会の重みを十分に感じさせる大きな役割を果たしたものと考える。

 

湯佐泰久

Eグループのテーマは「放射性廃棄物」であり、特にその地層処分について、学生との対話を行なった。

学生は(三重県四日市出身の男子1名、浜松市出身と静岡市在住の女子、インドネシアからの大学院留学生男子)4名であった。また、一部、静岡大学の熊野先生が参加された。主に、学生から提起された疑問・質問について湯佐より説明した。金氏FTは進行役を、また、湯佐の説明に関して、適時、補足説明を担当された。その後、さらに地下環境の性質や海外の現状などについても説明・対話した。

主な項目とその説明概要はつぎのとおりである。

「なぜ、地層処分か、その他の方法は?」宇宙処分、海洋底処分、氷床処分などが検討されたが、実現可能性、安全性、倫理的な課題から、地層処分が選ばれたこと。特に、地層処分の方法は廃棄物体の再取出しなどが可能である事も説明した。  

「将来、安全とどうして分かるのか?」より危険側に考えても安全であることを証明すること、そして、安全評価の手法について、自然界での類似例(ナチュラルアナログ)で確証できること、を説明した。

「処分場が各所で見つかるとは思えないが?」想定される処分場の大きさと、1〜2箇所で十分であることを説明。

林代表の話題提供があり、エネルギー問題や原子力発電の必要性などの理解は得られていたので、共通の基盤の上にたって議論できた。そして、放射性廃棄物の地層処分の安全性についてはある程度、理解されたと考える。

なお、湯佐が過去に作成したつぎの資料を適時、使用した。

1.「自然から学ぶ、放射性廃棄物処分の智恵―地質環境とその安定性−」第4回地球市民講演会(鹿児島市民文化ホール、平成20年5月24日)講演要旨

2.「地層を科学する―自然から学ぶ廃棄物処分の知恵―」Big Century No58 中部原子力懇談会 199910

3.「東濃地科学センター―地層を科学する―」中国地域エネルギーフォーラム26号 200110

4.「見つかった『原子炉の化石』−高レベル放射性廃棄物は地層の中に安全に処分されていた−」、中国地域エネルギーフォーラム 31号 2002年秋

 

渡邉 泰臣

参加させて頂き、ありがとうございました。参加の学生さんが自分らエネルギー環境問題を考えるスタートとして、シニアの皆さんとの対話は、テレビ、新聞などの情報が主なわけですから大変刺激的な動機付けになったと思います。

エネルギー、食料、安全の課題は、どの世代の人に共通の課題であり、この機会に原子力の第一線で活躍されたシニアの皆さんのザックバランな対話は学生さんの心に響くものがあったと思います。

質問に答えるにあったて、学生さんに質問にいたる背景みたいなところをもう少し聞きだしてもよかったかなと今になって思います。質問に答えたつもりでも、本当はうまく質問が言えてなく、その質問を聞いた方も考え方のような大局的な答えから、技術的などちらかといえばマニアックな答えまで、それはそれで思考が拡がるので悪いとは思いませんが、

もっと充実したかもと思った次第です。

学生さんたちが、知れば知るほど面白いと、シニアの方々の貴重な(大事な)物の見方に触発されることを願います。

継続は力なりで、多くの大学でこのような対話ができるように、お手伝いしたと思っております。

 

石井正則

今回は教員専攻としては3校目で、発電所立地県でもあり、期待しながら参加した。参加学生が低学年(2年生)であり、それだけに、理科専攻という視点から放射線、原子力、エネルギー全般、環境問題の本質を理解し、どう教えるかを考えてもらうきっかけができたとすれば、我々の活動として、これほどふさわしいものはないと感じた。

実際の対話でも、少人数(学生3名、シニア・オブザーバー3名、教員1名)であったこともあり、ややもすればシニアが一方的になりがちなところ、双方的に対話となり、かつ学生自身が考える場ともなったように思う。

立地県でることを考えると、原子力発電所の見学も容易と思う。中部原子力懇談会が労をとっていただける由なので、是非実地に見ていただきたい。その際、学校にある放射線測定器を持参、学生自自身が環境の放射能が原子力発電所の敷地でどうなるかを、実地に測定することを提案する。これに更に理解が深まるとともに、自身が教える際の教材と使ってもらえよう。

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添付4

対話イン静岡2010 学生事後アンケート結果

 

回答者:16名 全員2年次生、理科教育専攻

1.基礎情報

希望進路

人数

  %

4

25

3

19

3

19

進学

4

25

その他

2

12

 

2.講演   

(1)講演の理解度

@  「原子力の現状と未来」

(理由)

a.よく理解できた

・この講義でイメージが180°変わった。

・原子力のあり方というものを根本から知れた。

・明確になったことが多かった。

b.理解できた

・ところどころ分からないとあったけれど丁寧な説明だったから。

・講演の構成が良く、知識・理解がスムーズに行うことができた。

・基礎の部分から教えてくれたため。

・原子力発電の安全性と必要性がわかった。

・今まで知らないことばかりだったが、問題についてなどが分かった。

・原子力は危険というイメージしかなかったが、きちんと日本では対処されているとわかったから。

・きちんと話をきいていたので。

・原子力発電についていろいろな方面からの話をきくことができたため

・図、表などできちんと情報が整えられていたから。

・ていねいなレジュメがうれしかった。

・実際にとられているデータを見ることで、大変分かりやすかったです。同時に自分の知識の無さを実感しました。

c.あまり理解できず

・時間がなかったということもあって、自分の中であまり理解が深まりませんでした。

 

A  「イギリスの放射性廃棄物学習プログラム」

(理由)

a.よく理解できた

・廃棄物のあり方がわかった

b.理解できた

・きちんと話を聞いていたので

・最近のエネルギーの話では日本の話だけが扱われることが多かったため

c.あまり理解できず

・イギリスでは学校教育で原子力発電について教育が始まっているということは分かったが、その他のことはあまりよくわからなかった。

・あまりにも速すぎて、やっていること程度しか分からなかった。

・時間が少し短かったため

・専門用語の過多

・放射性廃棄物については少し知識がついたが、イギリスはまだあまり理解できていないため

・省略した部分が多かったのが残念。せめてレジュメがほしかった。

d.無回答

・どこからその話だったのかよく分からなかったので答えられない

(2)講演の題材で「このようなことを聞きたい」というもの

・原子力発電以外で生活にどのように放射線がつかわれているか知りたかった

・放射線が環境に及ぼす危険性

・次世代エネルギーの今後

・今後原子力発電だけで世界は成り立っていけるか

 

3.エネルギー教育の実施について

(1)今回のワークショップで学校における「エネルギー教育」の必要性についての感じ

(理由)

a.大いに感じた

・あまりにも原子力発電について知らないことが多すぎると思ったから

・この年になって初めて知ることが多すぎたため

・身近な電力からのエネルギー問題

・日本人が原子力発電に対して偏見をもっているため

・自分が今まであまり知識がなかったことがよく分かり、今後の日本をになう学生は知る必要があると思ったから

・ぼくたちを含め、日本人の原子力に対するイメージはよくない

・皆うたがっている人が多いから

・小、中学校での先入観は強い

・一般人におけるエネルギー問題の理解と現状のギャップが大きいから

b.感じた

・自分がエネルギーについてかたよった知識を持っていることが分かったから

・現存のエネルギー教育はある側面しか見せていない感じがしたので、知識として様々な角度の意見、見方を伝えたいと思った。

・今まで自分は知らなくて間違ったイメージを持っていたりしたので、そういうことを無くすべきだと思うから

・知識があるのとないのでは全く違うので、正しい知識を持った上で、どのように判断するのかということが大切だと思うから。大人になってから考えを変えるのは大変である。そのため、良い点、悪い点を小さいうちに知っておくことが大切

・きちんとした理由、データからしっかりと知っておくことが必要と思ったから

・知識として必ず役立つ

 

(2)エネルギー教育プログラムを作るとしたら、どのような情報、資料、教材を要望するか

・原理や安全性について詳しく説明できるような、写真や絵など

・各エネルギーに関するメリット、デメリットを公平にまとめたもの

・資源情報のデータや世論_よくもわるくも

・国別の発電量のグラフ

・原子力発電の安全性に触れている情報、資料、教材

・きちんとした情報源からのデータ、現状の説明

・他国の現状

・今日もらったパンフレット

・本日と同様な感じで

・実際に行く

・環境問題と関連するものが良いと思う

 

4.ワークショップについて

(1)ワークショップ前にエネルギー問題に関する危機意識を持っていたか

(理由)

a.大いに保有

・現在の地球は化石燃料に依存しすぎていると思っていたから

b.保有

・テレビや新聞、今までの授業でそれなりに習ってきたから

・世論でさわがれるし、現代社会などの授業でも聞いていたから

・一番使われている石油が私たちが生きている間になくなる可能性があったため

・電気が使えなくなってしまう

・様々なところで聞くため

c.あまり保有せず

・情報持っていなかったから

・聞くことはあったが、どの発電がよくてどの発電がわるいなどよくわからなかったから

・それほど身近ではないと思っていた

・化石燃料の枯渇の問題については知っていたが、あまり危機感を持っていなかった

・なんとかなると思っていた

・直接的に接していないと思っていたから

・最初先生方が有言

・関心があまりなかった

d.保有せず

・特に考えたことが無かった

 

(2)ワークショップ後にエネルギー問題に対する危機意識に変化はあったか

(理由)

a.大いに変化した

・高速増殖炉による資源延長

・良い講話を聞いたため

・パワーポイントで発表できるまでになったから

b.変化した

・いろいろ知らない事実を知って、問題視する視点等が少し変化した気がするから

・原子力を使えば2500年も資源がもつことが分かったから

・将来的には確実に直面するから

・環境問題とあわせて、国民が考えていかねばならないことだと思った

・考えられていて、対策も開発されていると感じられた

・現状はなんとかならないらしい

・残量ではなく、これからの発展のために

・どれくらいでエネルギーがつきるか分かったから

・解決はしないが、技術革新への猶予はあると思った

c.あまり変化しない

・原子力発電の可能性を大いに感じたが、未だ高速増殖炉うまくいくとは分からないし、原子力というだけで拒否する人も多いため

・原子力発電については分かったが、エネルギー問題については少ししか分からなかった

 

(3)ワークショップは満足いくものだったか

(理由)

a.大いに満足した

・シニアの人たちと個別に話をすることができて楽しかったから

・原子力への理解を深め、その可能性を感じたため

・シニアの方たちと話ができてよかった。話しやすく楽しく知識を得ることができた

・エネルギーを考えるきっかけになった

・知識、興味、関心、意欲が高まりました

・楽しかった

・とても有意義でした

b.満足した

・いろいろな知識を習得できたから

・原子力だけでなく、ものの考え方として新しい発見があった

・分かりやすかったし、新発見があった

・シニアの方に丁寧に教えていただき、とても質問しやすい環境であり、自分の知識を深めることができた

・イメージを良い方向に持って行けた(前向きに)

c.やや不満

・もっと理解したかった

 

(4)今回のようなワークショップについてどのように感じるか

(理由)

a.非常にあり

・現在の状態では知らないで済ませてはいけないことだと思うから

・知識の獲得のため

・正しい生の知識を得ることは大切だと思えたから

・我々は無知です

・理解度が非常に高まった

・一般人におけるエネルギー問題の理解と現状のギャップが大きいから

b.あり

・原子力発電はわりと身近なものであるのに、知らないことが多すぎると思ったから

・実際にこういう経験をすることは大事だと思ったから

・意見交流や新しい発見があるから

・はじめはあまり興味がなかったが楽しかったし、交流や知識を得る場としてよいと思った。

Face to Faceの方がより話を真剣に聞くことができる

・普段の講義では得られない貴重な体験ができた

・実際これで得た知識は大きい

・原子力について先入観で決めすぎて無知すぎていたから


5.エネルギー教育に関する考え

(1)今後エネルギー教育を推進したいと考えるか

(理由)

a.大いに推進したい

・生活に直結するため

・イメージと実情のちがい

・必ず役立つ

・誤概念をなくすべき

・一般人におけるエネルギー問題の理解と現状のギャップが大きいから

b.推進したい

・生活する上で、知っておく必要があると思ったから

・正しい知識を持つことが、正しい判断につながると思ったから

・非常に重要と思うが、どうやって時間を作るかが問題と思うため

・無知は間違った考えを持たせる原因となるから

・将来が不安だから

・日本や世界全体で考えていくべきだと思う

・自分が教育されてよかったから

 

(2)今後「エネルギー教育の研究」を進めたいと考えるか

 

(3)「エネルギー」や「エネルギー教育」について、他の研修を受ける希望はあるか

 

(4)他の学生や教員に「エネルギー教育」を普及させたいと考えるか

(理由)

a.大いにある

・将来を見据えるために

・イメージと実情が異なるため

・一般人におけるエネルギー問題の理解と現状のギャップが大きいから

b.ある

・安全性を知った上で、ちゃんと論議すべき問題であると思ったから

・自分が実際に体験して有意義だと思ったから

・もっと多くの人が知るべき

・みんなで行うべき問題だから

・必ず役立つ

・現状を知るべき

・実際に話し合うことができるから

 

6.「教育学部の学生とシニアの対話:ワークショップ」の在り方、改善点など自由記載

・人数もちょうど良かったし、たくさん話せたがまとめる時間が少なかったと思う

・もっとこの対話を増やすべき

・このままでよい

・無し、大変満足

・もっと様々な人と話したかった

・パワーポイント制作⇒発表間の時間がもう少しあると意見をしっかりとまとめることができたと思う。学生ももう少し事前知識をしっかり入れるべきであったと反省している

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以上