「学生とシニア」の対話実施報告書

― 対話 in  長崎 ―

 

2010.1.24 金氏 顕、入江寛昭

 

taiwainnagasaki091219

 

1.   実施趣旨

2005年度から続けている「学生とシニアの対話」活動の一環として、長崎大学にて教育学部系を中心とした学生との対話会を実施した。学生とシニアとの対話は今年度8回目、通算40回目である。また長崎大学では平成2010月以来、2回目の対話会である。世界で2番目の原爆被災地である長崎で将来、小学校、中学校の教員を目指す学生に対してシニアとの対話を通じて原子力に対する正しい認識を深めてもらい将来のエネルギー環境教育実践の一助とすることも一つの目的となっている。

 

2.   対話の目的

平成2010月に引き続き、長崎でシニアとの対話を通して、学生とシニアとの相互理解を図り、特にエネルギー問題、核拡散問題、資源問題、地球環境問題等について議論を深めるとともに、原子力の利用について正しく理解してもらうために原子力の実務を経験してきたシニアの知恵と知識を社会に出る前の学生が吸収し、将来への自信に繋げてもらうことを目的としている。

 

3.       対話の実施

1日時  平成211219日(土)9301700 

(懇親会 1218日(金)18002000

2)場所  長崎大学教育学部11番教室

3参加者

@学生  長崎大学29名(教育学部24名、内留学生3名、工学部5名)

      久留米大学1(院生)

A教員  長崎大学 7名(ファシリテーター他) 

Bシニア 

小川博巳、緒方正嗣、金氏 顕、齋藤伸三、嶋田昭一郎、太組健児、田中隆一、古田富

彦、三谷信次、入江寛昭、

Cオブザーバー

エネルギー環境教育情報センター研究員 石田貴久  

4)対話

 各グループに分かれてそれぞれのテーマでグループ討議を行い、その結果をパワーポイントにて発表し、最後に全体質疑応答を行うという段取りで対話会を進めた。

 

4.講演

(1) 基調講演その1

大津留晶准教授(長崎大学病院) 「チェルノブイリから学ぶこと」

チェルノブイリ原子力発電所の事故による被爆の状況とその後の甲状腺がんの発生状況等について講演が行われた。

(2)基調講演その2

小川博巳氏(SNW)「皆さんと一緒に考えるエネルギーと地球温暖化、原子力への期待」

世界と日本のエネルギー事情、原子力発電所の安全確保のしくみ、地球温暖化問題に関連して原子力の役割について講演が行われた。

(3)振り返り講演

全炳徳教授(長崎大学教育学部)「被爆地をCGからふりかえる」

被爆前の長崎の町をコンピューターグラフィックで再現した映像を説明解説して頂いた。

 

5.グループ対話

 6グループに分かれてファシリテーション方式で実施。FTは長崎大学の教員6名。

A:原子力発電の原理と安全性

B:原子力発電所の必要性

C: 環境問題とエネルギー

D: 放射性廃棄物

E: 放射線の性質と利用

F: 原子爆弾と安全保障

 

対話は6グループに分かれ各グループにはシニア2名に対して学生が約5名ずつ付き、グループ毎に1名の先生がファシリテータとして対話を主導された。対話の題材は事前アンケートの結果に従って各グループそれぞれ決められていた。

対話終了後に各グループから対話内容のまとめが発表され、最後にシニアを代表して齋藤伸三氏より「藤本先生の精力的なご準備に感謝している。」「各グループの発表を聞いて原子力に対してポジティブに捉えてくれたかなと思う。」「シニアと学生との間でしっかり議論ができたと思う。」「学生さんからも非常に活発なやり取りがあったのは非常に良かった。」「高レベル廃棄物の処分場を広島や長崎に置いてもいいのではないかという話が出てきたことは非常に驚きでもあった。」「原爆と原子力の平和利用というものをきちんと区別して考えてほしい。」「今後、学生さんも原子力、放射線に対する知識を深め世に出て欲しい。」等々の講評があった。

 

また学生を代表して佐藤拓哉君(教育学部3年生)から自分達が残りの学生生活でしっかり勉強して教育学部で学んでいる学生の使命として将来、教員になってきちんと生徒にも伝えていきたいと非常に力強いお礼の挨拶があった。

 

各グループ対話時の状況及び発表時のQ&Aの詳細はまとめて添付1に示す。

 

6.アンケート結果

学生への事後アンケート結果・・・回収率63.3(留学生を除くと70.4%

事後アンケートの詳細結果は添付3に示すが、要約すると下記の通りである。

(1)講演について

@「チェルノブイリから学ぶ事」

よく理解できた47%、理解できた53%、あまり理解できなかった0%、理解できなかった0%

→理解できた・・・100%(回答者数19人、無回答0人)

A「原子力の現状と未来」

よく理解できた50%、理解できた50%、あまり理解できなかった0%、理解できなかった0%

→理解できた・・・100%(回答者数18人、無回答0人)

B「被爆地をCGからふりかえる」

よく理解できた38%、理解できた56%、あまり理解できなかった6%、理解できなかった0%

→理解できた・・・94%(回答者数16、無回答3人)

(2) エネルギー教育の実施について

@今回のワークショップで学校における「エネルギー教育」の必要性について

大いに感じた56%感じた44%あまり感じない0%感じない0% 

→感じた・・・100%(回答者数16、無回答3人)

(3)ワークショップについて

@ワークショップの前のエネルギー問題に対する危機意識

非常に持っていた12%持っていた65%、あまり持っていなかった23%持っていなかった0% 

→持っていた・・・77%(回答者数17、無回答2人)

Aワークショップの後のエネルギー問題に対する危機意識に変化はありましたか?

大いに変わった23%変った47%、あまり変らなかった12%変らない18%

→変わった・・・70%(回答者数17、無回答2人)

Bワークショップの内容は満足のいくものでしたか?

とても満足した29%満足した65%やや不満だ0%不満だ6%

→満足した・・・94%(回答者数17、無回答2人)

C今回のようなワークショップの必要性についてどのように感じますか?

非常にある65%ある35%あまりない0%ない0%

→必要性あり・・・100%(回答者数17、無回答2人)

(4)エネルギー教育に関する考え

@今後「エネルギー教育」を推進したいと考えますか?

大いに推進したい29%、推進したい65%、あまり推進したくない6%、推進しない0%

→推進したい・・・94%(回答者数17、無回答2人)

A今後「エネルギー教育の研究」を進めたいと考えますか?

大いに進めたい27%、進めたい53%、あまり進めない20%、まったく進めない0%

→研究を進めたい・・・80%(回答者数15、無回答4人)

B「エネルギー」や「エネルギー教育」について他の研修を受ける希望はありますか?

大いにある14%、ある57%、あまり無い29%、ない0%

→研修を希望する・・・71%(回答者数14、無回答5人)

C他の学生や教員に「エネルギー教育」を普及させたいと考えますか?

大いに普及させたい37%、普及させたい63%、あまり普及させたくない0%、普及させたくない0%

→普及させたい・・・100%(回答者数16、無回答3人)

 

7.総括

グループ発表時の質疑応答において学生も積極的に発言し、密度の濃い非常にうまく行った対話会であったと思う。

 

 

8.添付資料

対話写真集

添付1 各グループ時の対話状況、発表時のQ&A

添付2 シニアの感想

添付3 事後アンケート詳細結果

添付4 対話会の様子を伝える長崎新聞の記事

 

<対話写真集>

               

Aグループ対話状況            Bグループ対話状況

Aグループ

 

Bグループ

 
 

 

 

 

 

 

 

 


                               

 

Cグループ対話状況           Dグループ対話状況

 

Cグループ

 

Dグループ

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 


Eグループ対話状況            Fグループの対話状況

 

Eグループ

 

Fグループ

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


基調講演その1(大津留晶准教授)          基調講演その2(小川博巳氏)

ohtsuru

 

小川基調講演

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 


       振り返り講演(全炳徳教授)        講評(齋藤伸三氏)

全教授講演

 

講評

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 


             対話会の様子を伝える長崎新聞の記事

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


添付1:各グループの対話状況、発表時のQ&A

Aグル-プ:

(1)テーマ 原子力発電の原理と安全性

(2)参加者

学生  桑原卓也、宮崎壮理、廣田千尋、中島知奈美(教育学部)

     松瀬裕大、山口翔史(工学部)

シニア 齋藤伸三、入江寛昭

  ファシリテータ 小原先生(長崎大学教育学部)

(3)対話の状況

「原子力発電の原理と安全性」と題して原子力発電の仕組み、原子力発電所の安全性、核燃料施設の安全性等について学生側から数多くの質問があり、それぞれの質問に対しシニア側から回答するという形で対話を行った。話はJCOの事故、チェルノブイリの事故やウランの輸送等々まで広がり、中身の濃い対話となった。

 

@    原子力発電の仕組みについて

学生側からは原子力発電の仕組みについて質問があり、火力発電との違いを示しながら説明した。

・火力発電は化石燃料の化学反応で発生する火の形で蒸気を発生させる。

・原子力発電では核燃料と中性子との核分裂反応により熱を発生させ、その熱により蒸気を作りタービンを回し発電する仕組みになっている。

・また臨界とは核分裂反応が連鎖反応的に持続している状態をいう。

・原子力発電では核燃料内の燃料ペレット1個で一般家庭の約8カ月分のエネルギーを発生させる。

・原子炉の中で核分裂を起こした時に発生するセシウムのような核分裂生成物が大量の放射能を持っている。

・また臨界事故の話に及び事例としてJCO事故の発生原因と実際取った対応について説明し、また臨界管理の方法についても説明した。

・臨界とは核分裂が連鎖反応的に起こっている状態で原子力発電所は臨界を起こして核分

裂状態を作り発電を起こす施設であるのに対して原子力発電所以外の原子力施設である

再処理工場や核燃料加工工場は発電をするのが目的ではないので臨界が起こらないよう

一定量以上のウランが一ヶ所に集まらないように、またウラン溶液が一定の濃度以上に

ならないように溶液を薄めてやるというような方法で臨界が起こらないよう工夫されて

いる旨、説明した。

A    事故が起きたガイドラインにはどんなものがあるのか?

・先ず異常が発生しないようなガイドラインがある。そして異常が発生しても事故につながらないようなガイドラインがあり、最悪、事故が発生してもその影響が拡大しないようなガイドラインというように多重防護の考えで安全対策が施されている旨、説明した。

・事故が起きた時は国として対策本部が設置され、オフサイトセンターで連絡し合いながら住民の退避とか相互の連絡体制等確実に行われるようになっている。また緊急時の医療体制も決まっている。

B    起こるとしたらどんな事故が起きるか?

・事故という時にどのようなレベルを想定しているかだ。病院に運ばれるような事故は考えにくい。

・事故といえば被曝事故ではないが関西電力美浜原子力発電所の二次系配管の破断事故があった。温度が高い蒸気が配管破断で噴出して何人か亡くなったがこれは放射線による事故ではない。

・日本の原子力施設は一般公衆が被曝しないようにきちっと対応している。

C    ウランはどうやって持ってくるのか?

・船で運んでくる。今、オーストラリア、カナダから輸入している。

D    濃縮って何?

・天然ウランにはウラン2350.7%しかないのでその割合を増やしてやるのが濃縮という。濃縮するには遠心分離機という機械を何台もつなげて行う。

E    危険手当は出るのか?

・放射線管理区域で働く人には放射線業務手当というものを出している。

F    原子力発電所の汚染管理はどうなっているのか?

・原子力発電所の出入り口にはハンドフットモニターという機械があって汚染の有無を確認している。汚染されていたら、精密な検査を行いシャワー等で除染する処置を行っている。ただ呼吸器から吸い込んだ内部被曝の時は何が入ったか、どこに入ったか等突き止めて適切な対応をとっている。

G    原子力発電所は危険なものを扱うので誰でも雇えるのか?

・原子力発電所で働く人は電力会社の社員は勿論のこと、関連会社もきちんと教育した人を仕事に従事させている。

(4)発表時のQ&A

質問1(シニア)

核分裂した時に何故、エネルギーが出るのか?

回答1(シニア)

核分裂すると中性子や核分裂生成物が出てそれらが衝突を繰り返す中で摩擦エネルギーが熱エネルギーに変わる。

質問2

中性子が水にあたって減速するということだが、何故減速するのに水を使うのか?

回答2(シニア)

出てくる中性子はエネルギーが2MeV位あるが同じ軽い物質である水と衝突を繰り返して低いエネルギーまで減速してくる。

 

Bグル-プ     

(1)テーマ 原子力発電所の必要性

(2)参加者

学生  有川貴裕、佐藤拓哉、大原千治、八坂健太、津山正行、森勇一朗(教育学部)

シニア 小川博巳、緒方正嗣

 ファシリテータ 川崎さおり(長崎大学事務部)

(3)対話の状況、 発表時のQ&A

質問1

「使うリスク、使わないリスク」の意味が不明

回答1

「原子力を使うリスク、使わないリスク」の意味です。原子力を使わない場合の代替案に

も、リスクがあるからです。

質問2

廃棄物に関する議論はしましたか?
回答2

今日のこのグループでは、その議論はしていません。
質問3

子供たちに「真実を見抜く力」を育てるためには、どうしたら良いと思いますか?
回答3

教師自身が、真実を学習し、それを子供たちに伝えること、また、教師自身が常に真実を学ぶ姿を子供たちに見せることではないかと思う。
質問4

原子力に関する報道は、なぜ、事故やトラブル情報等のセンセーショナルな話題に偏する傾向にあるが、その理由は?
回答4(長崎新聞の取材記者)

個人的見解であるが、確かに、その傾向があることは否めない。長崎新聞の場合は、原子爆弾の被爆地の長崎の地方紙という特殊事情もあるだろう。今後とも、報道の中立性に配慮したい。

(シニアコメント)

こういうセミナーにマスコミからの参加があることに感謝する。良い記事にしてほしい。

 

Cグル-プ

(1)テーマ 環境問題とエネルギー

(2)参加者

学生  留学生   Mr. Martin Carlos Aguirre Macavilca ペルー
留学生   Ms. Moe Moe Aye フィリッピン
留学生   Ms. Llave Ruby Tuvill ミャンマー

    教育学部  鵜澤 海、山口諒介

シニア 太組健児、石田貴久

通訳  藤本先生の奥様

(3)対話の状況

正にCOP15が最終段階を迎えるときに、時宜を得たテーマであった。最初 環境に関する問題点とそれに対する解決策との付箋による仕分けから始めたが 原子力発電についての位置付けに解決策とするには躊躇が見られた。広島と共に長崎は原爆被災地であり、潜在意識として恐怖感があるように見て取れた。対話の進行につれて 原子力発電が解決策の1つであることが納得された。太陽光、風力発電は 将来の需要の中枢を支えるには無理があることが理解され、最終的には原子力、火力、水力、新エネルギーのバランスによるベストミックスのみが解決策になりうることが理解された。

 留学生の出身国は ペルーは現時点では十分な水力発電があり、環境的にも問題はない。

フィリッピンは多数の島から構成され、小さい島では今後新エネルギーの開発が期待される。他方、大きい島では恒常的にエネルギー不足で、原子力発電の導入も計画されたが、政変により頓挫した。ミャンマーは恒常的に電力不足であるが、資源も技術もなく、先進国の援助が必要である。日本からの援助としては多面的な(資金援助のみではなく、技術援助も)が必要である。

(4) 発表時のQ&A

特になし

 

Dグル-プ:  

(1)テーマ  放射性廃棄物

(2)参加者

学生 田中克征(教育学部)前田晴郎、阿野善一郎(工学部)堀 圭一(久留米大院生)

シニア 金氏 顕、 三谷信次 

  ファシリテーター  古賀雅夫教授(教育学部)

 

   最初は各人、廃棄物に限らず原子力全般の話から始まったが、廃棄物にテーマを絞ろう

ということで、各人が議論できる共通の知識レベルに統一するため、エネ庁の広報誌「TALK」から抜粋した資料で15分シニアが説明。内閣府の最近の国民の意識調査の抜粋を渡し「NIMBY」の弊害等を理解してもらった後、各人から意見を聞いた。

・田中:処分地が安全であることの知識を人々にもっと普及することが大事

・前田:知らない事はコワイ。長崎原爆の特殊性あり。原発施設見学許可せよ。処分場建    設賛成だが、まず子供達から教育が必要。

・阿野:マスコミを味方に付ける必要あり。小中学校で学ぶ必要ある。

・堀 :原子力に対する国民の意識の低さは、日本の未来に影響する。各種発電方法につ    いて(原子力か新エネか)選択肢が少なすぎ、これが意見の大きな食い違い起こす。廃棄物についてメディアの発信、国民の受信に問題あり。

 

これに対するシニアの回答は、以下の通り。

 エネルギーには、量、経済性、質が重要。安くより良く安全性高いこと。電気(発電方法)は、車の選択などと違い国民が選択できない。世界では核廃絶の問題起きている。原子力発電で次の新しいエネルギー源の発見まで食いつなぐしかない。原発の寿命は消耗品の交換で60年は持つ。経済性との兼ね合いで決まる。技術は立ち止まれない。好き嫌いを問わず原子力はすでに存在している。HLW賛成80%、自分の町への建設反対80%

原子力か自然エネルギーかではなくバランスが大切。使用済燃料の直接処分は安くて楽ではあるが、資源の無駄である。2050年原子力は5〜6割にせざるをえなくなる。等々

 

発表は学生全員が壇に出て3人が説明した。低レベル、高レベルの処分法の違い。ガラス固化後に地層処分すること。原発を造る当初から廃棄物に対する問題意識は持っていたが、処分場決定が今に至るまで未解決であること。地層処分が安全であることを国民もマスコミも正しく理解していない。いっそ都心に造ってみては。平和利用の象徴として、被爆地広島・長崎が処分場の候補に声をあげるという選択肢もある。

(4) 発表時のQ&A

会場より被爆地長崎からこのような提案がでるとは、実に心強いとのコメントがあった。

 

Eグル-プ:

(1)テーマ:「放射線の性質と利用」

(2)参加者

学生:片岡修一(教育学部) 古賀弘之、吉原正悟(工学部)

シニア:田中隆一 古田富彦

 ファシリテータ:上野公嗣先生(西海市立崎戸中学校教諭)

 (3)対話の状況

 上野先生がファシリテータとして司会され、各々自己紹介の後、放射線の性質と利用について学生側から数多くの質問があり、それぞれの質問に対するシニア側から回答するという形で対話を行った。

Q1 放射線とは?(種類、性質、などの基礎知識)

A1 自然放射線と人工放射線があり、約10−7m以下の短波長の電磁波(γ線、X線)及び粒子線(α線、β線、中性子線、陽子線、など)がある。放射線の性質として透過性(透過作用というのは間違い)があり、物質に対して電離作用(蛍光・写真・化学作用)があるが、その程度は放射線の種類とエネルギーで異なる

Q2 X線とγ線の違いは何ですか?

A2 Xもγ線もその本質は同じで、紫外線より波長の短い光(電磁波)であるが、発生する場所が違う。原子核外から発生するのがX、原子核内から発生するのがγ線である。波長(周波数)の大小は関係ない。

Q3 放射能と放射線の違いは何ですか?

A3 放射能とは放射性物質が放射線を出す能力のことで単位をベクレル(Bq)で表す。放射線とはA1のとおりで、放射線のエネルギーがどれだけ物質に吸収されたかを表す単位をグレイ(Gy)、放射線によってどれだけ身体に影響があるかを表す単位をシーベルト(Sv)という。

Q4 放射線の人体への影響は?

A4 身体的影響と遺伝的影響があり、現在、@遺伝的影響は認められていない、A少しの放射線量(一度に100mSv程度)では障害は殆んど確認されていない。従って、病院で妊婦が通常のX線診断により被ばくしても殆んど影響はない。ただし、一度に大量の放射線を全身や局部に受けると、図のように人体は障害を受ける。例えば、全身に一度に 7,00010,000 mSv 受けると 100%の人が死亡し、5,000 mSv 受けると白内障や皮膚紅斑になる。また、ガンや白血病は積算被ばく線量に比例して晩発障害となる確率が増えるといわれている。

Q5 放射線はどのように利用されているか?

A5 放射線は透過力のほかに電離作用によって物質にさまざまな変化を起こさせる性質がある。この性質を利用して工業的利用、医療的利用、農業的利用、学術的利用が行われている。工業的利用として半導体の微細加工、ラジアルタイヤの品質向上、ナノテクへの利用、非破壊検査など、医療的利用としてレントゲン、CTスキャン、ガン治療や発見、医療器具の滅菌など、農業的利用としてジャガイモの芽止め(保存)、植物の品種改良、害虫ウリミバエの撲滅など、学術的利用として考古学への利用(年代判定)、X線を使用した分析などに応用されている。これらの放射線利用は、原子力発電と同等の経済効果をもたらしている。

Q6 脳腫瘍に対して実際に放射線治療の一つであるサイバーナイフを受けたので詳しく知りたい。

A6 サイバーナイフとはコンピューター制御可動式小型 照射装置1994年、米国のJ.アドラー教授らが開発した。ガンマ・ユニットより簡便全身病気対応できる。患者周囲を照射装置が回り、最大104カ所の停止位置から、患者の病気部分を狙って線を照射する。線CTやMR画像に対応、誤差1mm以内といわれている。98年に脳腫瘍などが保険適用になった。

(4)発表時のQ&A

・放射線の基礎知識を知ることによって放射線の悪いイメージが少し良い印象に変った。

・放射線に対して間違った認識をすることがあるので正しい知識をもつことが重要である。

質問1

 携帯電話のどこに放射線が使われているか?

回答1

 半導体製品です。詳しい説明は省かせていただく。

質問2

 日本ではX線検査やCTスキャンなどが頻繫になされているが、高被ばく線量となり問題ではないか?誰がそのような検査を決めるのか?

回答2(シニア)

以前に比べてそのような検査は減っているが、場合によっては積算被ばく線量が記録されると思う。検査については医者が決めている。

質問3

 食品照射利用ではジャガイモの芽止めのみか?

回答3

 わが国ではそうです。

 

Fグループ:

(1)テーマ:「原子爆弾と安全保障」

(2)参加者

学生:津村英秀(院生)、横尾仁基、岩本僚太、山口翔史(教育学部)

シニア:嶋田昭一郎、大津留晶医学博士(長崎大学病院)

(3)対話の状況

Fグループの主題は「原子爆弾と安全保障」であった。出席者はシニア側が私、嶋田昭一郎だけで、基調講演者の一人である長崎大学病院の大津留晶医学博士が参加してくださった。予定されていたシニアの清水さんおよびファシリテータとして期待していた馬場弘明さんが欠席で、多少予定が狂い十分な対話が出来たか不安が残る。

午前中に藤本先生の指示で、紙に各人の思いを書いて机に張って一つずつ議論をしたので、内容は主題と離れたものが多かった。午後は2つの基調講演を挟んで、主題の議論をしたが、私は自己紹介、「核不拡散」に関する簡単な説明、清水さんがまとめた「原子爆弾とその被害」を話題がそこに及んだときに配布したが、あまり詳しい紹介は避けた。

津村英秀君(院生)がさすがに他の学生より知識が多くファシリテータのごとく他の学生に発言を促したり、まとめ担当、発表担当を決めたりしてリーダーぶりを発揮していたので、学生の発言は多かった。

まとめは

1.表題と出席者

2.原子爆弾をもつことでの安全保障

<メリット>

  他国への抑止力 例)パキスタンとインド、北朝鮮

  国力の向上 例)核兵器を他国に売る。国内の技術向上。

<デメリット>

  核セキュリテイの問題 例)管理の不備、テロ攻撃、経費

  使用の危険性 例)攻撃の責任

  恐怖

3.爆弾を持たないときの安全保障

  きまり

  武装放棄

  国際交流(草埜レベル)

というもので、まとめの段階でコメントを求められなかったので、生徒が相談してまとめたものである。私は発表の時にこれでは内容の言いたいことがOHPを見ただけではわからないまとめになっていたので、もう少しコメントすべきであったと反省した。議論の段階で、一般論で議論するので、日本の立場でどうするかを議論しないとまとまらないよとコメントしたが、学生は多分イラン問題が頭にあってすべての国を含めた一般論にこだわっているようであった。しかし、シニアがしゃべりすぎないよう心がけ、学生の発言が多かったのは一応の成功であった。 以上

 

(4)発表時のQ&A

質問1

日本が持つ場合のデメリットは話し合わなかったのか?
回答1

一般論で議論した。
質問2

持ち込まずに対して密約がはっきりした場合はどうするのか?
回答:2

議論しなかったが、個人的には持ち込むのはまずいと思う。

 

 

 

 

 

添付2: シニアの感想(五十音順)

 

入江寛昭

長崎大学教育学部、工学部の学生を中心とした対話in長崎は藤本先生の見事な運営で活発な議論が展開され非常に充実した対話であったと思います。

私が参加したAグループは「原子力発電の原理と安全性」と題し、原子力発電の仕組み、安全対策について突っ込んだ議論が展開されました。なかでも事前に長崎大学病院の大津留先生ならびにシニアの小川様の講演の中でチェルノブイリ原子力発電所の事故の問題が取り上げられたこともあり、原子力施設での臨界安全についてシニアの齋藤様から実際、JCOでの臨界事故時に対応された経験を踏まえての話は学生の皆さんに臨場感あふれる話ではなかったかと思います。

また講演で原子力の陰の部分をイメージさせる大津留先生が語るチェルノブイリ発電所の事故による被曝の実態、それに対しシニアの小川様による原子力発電所の安全性、将来性に言及した明るい力の出る話を同時に聞く機会を得たことは学生の皆さんにとっても非常に参考になり更に原子力に対する認識を深めたことであろうと思います。

尚、学生とシニアとの対話は両者のコミュニケーションがあってこその対話であり、いつも学生の皆さんの積極的な発言を大いに期待しているのですが、今回、グループ討議の中で女子学生の発言をあまり聞けなかったことは残念でした。学生の皆さんも遠慮することなくシニアにどしどし疑問点をぶつけて欲しいと思います。

今回、対話に参加した学生さんたちがこれからも一層、原子力に対する認識をきちっと持って、将来活躍されることを願っています。

 

緒方正嗣

1.長崎大学で2回目、準備的な初回まで通算すると3回目の対話であったが、毎回、脱帽、感激するのは、藤本先生の老若の参加者全員の心をつかむ進行ぶりの見事さです。

今回も、脱帽の一語でした。

また、チェルノブイル事故に関する報告は、研究Grの一員からのものでどこででも聞けない内容であり、小川さんのお話はよくまとめられていて年季を感じました。

最後の、長崎の原爆被爆前後の町並みの比較やCG上での再現画像は、リアリティをもって原爆の理不尽な破壊を実感させてくれました。

2.将来、教師を志す若い学生諸君が、原子力や環境のことに関して、科学的で冷静な理解を深めてくれることは、将来、彼らが、子供たちに教えてくれることを思うと、非常に心強いし、また、急がば回れでかえって効率的にも思えました。

3.今回、長崎では初の留学生の参加が実現し、途上国出身の学生から、「豊かな暮らし」を希求する生の声が聞けたのは、画期的でした。

4.ちなみに、参加学生のほとんど全員が、原子力の必要性や有効性などを、短時間で、あまりにも素直に受け入れてくれることに、返って、不安を覚えもします。

それは、いつも、通常のメディアの論調に流されていることと、実は、裏表の関係だからです。私たち日本人は、戦前と戦後で価値観が逆転した経験を有しています。情報を入手できる体制(民主主義)を維持しつつ、冷静なバランス感覚で総合的な判断ができるような若者を育てたいものです。

 

小川博巳

原爆被災地の長崎大学での対話会では、「チェルノブイリから学ぶ」とのテーマで、朝日  新聞切抜集を大量に提示して大津留准教授が冒頭講演された。「暗澹たる思いと恐怖に  陥った学生たちを、如何にしたら正しい理解に導けるか」が、率直なところ私の講演直前の大きな悩みと課題であった。

講演に先立ち学生諸君には、「グローバルな課題・地球温暖化とエネルギー需要急増への 対応」、「教師としての使命」、「原子力の平和利用」につき正しく理解し、真摯に取組んで欲しいとの願いから、次の4点を要請した;

@     地球の明日と人類の未来を考えよう!

A     子供たちに真実を伝えよう! その為には、まず正しい理解を!

B     「教育の在り方」が問われている現在、自ら考え、提言を!

C     身を挺して原子力平和利用を訴えた、「永井隆博士の心」の伝道師たれ! 

(拙ブログ抜粋「原子力平和利用」を参考資料として配布) 

 

対話会の学生発表の中で、「真実を伝え、真実を見抜く力の育成」は、「教育学部に所属する我々の使命」との結論に到達したとの力強い発言を聞き、訴えを真摯に受止めてくれたことにわが意を得た思いであった。

また、高レベル廃棄物処分場の推進のために、「平和利用の象徴として長崎、広島が声を  上げるという選択もある」との、対話の結論を導いたグループ発表には、驚きとともに  身の震える感激を覚えた。

偏向報道の実態と、真実を伝え真実を見抜く力を磨けと訴え、チェルノブイルと軽水炉の根本的な違い、ガラス固化と地層処分の安全性などをごく限られた時間の中で訴え、対話の中で諄々と説いて下さったシニア各位のご尽力の成果だと理解したい。

今後もこの様な対話会を継続して、有為の次世代を育てていくことが、我々の最も大切な使命だと改めてかみ締めた次第。

 

金氏 顯

1.原子力の功罪を考えるという被爆地長崎ならではのWS企画は、これまでになく斬新でした。WS1の最初に話題提供していただいた大津留先生の講演資料は、初めて聞く学生達にどのような影響を与えるか心配しました。しかし、冷静なお話しでした。そして2つ目の話題提供で小川様から軽水炉との違い、社会体制の違いをこれまた冷静に話ししたので、学生たちは”功罪”を適切に判断できたと思います。

2.グループ対話はDで、工学部、教育学部、久留米大の文系と異なり、意見交換は活発であったと思います。シニアが2名足りなかったので他のグループを応援したが、どこも昨年に比べて学生達が積極的でした。

3.今回最も素晴らしかったのは、Dの発表で、「長崎や広島に高レベル廃棄物地層処分場を誘致すべき」との意見でした。元長崎市長の本島等氏が故郷の五島列島に誘致したいと言っておられることも同様な考えと思いました。

4.欲を言えば2週間前に参加者、事前アンケート結果、グループのテーマ、などを決めていれば、より良い成果が得られたと思います。

5.前夜交流懇親会の手際良い準備、そして当日のWSの運営は素晴らしかった、の一言に尽きます。有難うございました。

 

齋藤伸三

長崎大学での学生との対話は、昨年に引き続き2回目であるが、藤本先生の精力的、かつ周到な準備と進行によって学生にとって密度の濃い有意義なものとなり、シニアはそのお手伝いが出来たと総評できると思う。オリエンテーションで、学生が考え、学び、意識を高めることの重要性を説かれ、その後、医学部の先生のチェルノブィリ事故の話が原子力発電の負の側面を強調されるようなイメージを与えたのではないかと危惧された。しかし、小川様の話、グループ毎の対話により原子力発電の安全性、必要性、さらには放射性廃棄物処分の重要性等に関し確実に理解し、マスメディアの一方的な報道に惑わされず、真実を見抜く力を養い、伝えていくことが教育者となる者の使命であると認識し、また、放射性廃棄物処分場を長崎に設置しても良いと発表したことには驚きさえ感じた。小生の所属したグループでは、ファシリテータとなった学生は積極的に発言し取りまとめてくれたが、女子学生は極めて大人しかったのは残念であった。また、発表用に図面を提供したが、それのみに頼ったものになってしまったのは失敗であった。   

 

嶋田昭一郎

一度は原爆被災地である、広島または長崎の学生との対話に出席したいと思っていたところ、今回幸いにも学生との対話in長崎に参加することが出来た。子供の頃、国語の先生から永井博士の「この子を残して」の多分最初の部分を20分ほど朗読して聞かせてもらい感動したことを覚えているが、対話の前日に平和記念館を訪問して新たな感動を覚えた。

懇親会、対話では学生たちが原爆に対して絶対禁止位の強い気持ちを持っているとばかり思っていたが、意外に冷静であることに、時代の流れを感じた。

懇親会で工学部の学生に女子生徒の割合を尋ねたところ、80人中2人という答えであり、私の理学部も100人中3人であったので、今も昔も変わらないと思ったが、教育学部の出席者に同じ質問をすると女生徒が60パーセントという答えであった。それにしては女子生徒の出席が少ないことは残念であった。

対話会が午前中から1日かけて行う方式は初めての経験であった。学生が発言する機会はこれまでと比べて遙かに多く、時間をかけただけのことはあったと思うが、私自身の反省としては時間の配分を誤り、十部な説明が出来なかったことである。 

 

太組健児

今回の対話集会は 大学側の準備が良く 何時にもまして良い成果が得られたと思います。

長崎が 原爆の被災地ということもあって 原子力発電に対する問題意識も比較的高く、有意義な対話が持てたと思います。教育学部の学生が大半で、彼らが次の世代の若者への良い橋渡し役に成ってくれることを期待したい。私が担当したグループには留学生が3名(ミャンマー、ペルー、フィリッピン)加わっており、国情もそれぞれに異なっており直ちに原子力発電の導入には結びつかず、時間が掛かると思うが、環境問題との相克で、原子力発電も徐々に見直されてくると思われ、そうした時に彼らが その立場、立場で何らかの寄与ができることを期待したい。

いずれにしても大変に有効な対話集会がもてたと喜んでいます。

 

田中隆一

 何よりも前回同様、藤本先生による行き届いた企画から実行までのご指導に感謝します。

 Eグループのテーマは他のグループとはちょっと異質な「放射線の性質と利用」でした。学習指導要領改訂における象徴的なキーワードがそのままテーマ名となりました。参加した学生3人がカードに書いたキーワードの共通事項が放射線の基礎に関わることであったので、そこから対話がスタートしました。しかし、放射線にかかわる学習指導の「失われた30年」のせいで学生たちが中高で学んでおくべき基礎知識を知らないのは無理もありません。中高で必ず学ぶ身近な「光」と「放射線」の類似点と相違点からまず考えてみるという、理科のお勉強みたいなイントロとなりましたが、私にとっても興味深い体験でした。

 そのため、放射線の利用については、対話の内容は医療、工業、農業、学術分野の概要に止まり、食品照射の現状と問題の話題まで発展するには至りませんでした。たまたま、サイバーナイフによる頭部の治療を実体験した学生さんが居合わせたので、これを話題の種にして、放射線のどんな性質をどのように利用するのか、放射線医療を中心に実のある対話ができたと思います。放射線利用の話題は原子力エネルギーのように求心的でなく、遠心的に発散するという対話における扱いにくさがありますが、ケイタイ・パソコンを含めて身近な生活に放射線利用が浸透している事実を知る機会にもなったと思います。

 グループ対話とは別に、このグループに参加した中学校理科の先生から、長崎県の学校教育においては、原子力エネルギー利用の学習の中で放射線を扱うのは地域の事情として困難を伴うというご指摘がありました。わたしは事情の詳細を知りませんが、原子力の学習については「急がば回れ」で、]線検査を端緒に放射線の性質と利用から学ばせてはどうかと提案し、学習指導の関係資料を差し上げました。原子力を教えるまえに、放射線の利用による科学技術の発展と人間や社会とのかかわりを学ばせるという授業展開ですが、まさに放射線にかかわる学習指導が初めて導入された学習指導要領の原点(昭和26年)を見直すということです。このやり方は、長崎県に限らず新学習指導要領に基づいて中学校で始まる放射線学習における一つの有力な選択肢になるのではないかと考えています。

 

古田富彦

1.原子力の功罪を考えるという被爆地長崎でのWS1テーマは、これまでになく強烈な印象でした。WS1の大津留先生による「チェルノブイリから学ぶこと」は、リスク認知の観点から学生達にどのような影響を与えるか危惧しました。しかし、小川様による軽水炉との違い、安全性等の話、グループ毎の対話により学生たちは”功罪”を適切に判断できたと思います。

2.グループ対話はEで、放射線の性質と利用に関する基礎からの意見交換でしたが、3名の学生はとても活発に質問し、前向き熱心で好感をもちました。将来の先生に放射線に対する正しい認識をもってもらう良い機会であったと思います。

3.今回最も注目したのは、Dの発表で、「長崎や広島に高レベル廃棄物地層処分場を誘致すべき」との意見で驚きました。高レベル廃棄物地層処分の必要性についてIMBYの理解が得られたことを嬉しく思います。

4.女子学生の参加が少なかったのが残念です。

5.手作り前夜交流懇親会は学生をはじめ長崎大学の先生方と大いに打ち解け合った前対話となり、大変有意義であったと思います。事前アンケート結果、グループのテーマ、などが遅れたにも拘わらず、今回の対話がスムーズに運営されたのは藤本先生の機微にわたるご配慮と経験豊かな司会進行のお陰と感謝します。

 

三谷信次

教育系大学での対話経験は初めてであったので当方が教えられることの方が多かった。 

1.大津留先生の講演、最初レジメを頂いた時は「朝日」のチェルノ記事が多用されていて不快感を持ったが、講演の最初に「安全か否か二者択一で、未知なものに恐怖を抱き直感的に判断する一般人と、リスクを定量的に理解し知識経験に基づき論理的に判断する専門家」との原子力に対する見方の相違を説明された。常に一般人の最悪の事態に対峙されている若い医系の方の立場が良く分かった。JNESの自治体防災研修で若い産業医と議論をするが若い医系の人は似たような考えの人が多い。

2.金氏さんと廃棄物処分のD班に入ったが、長崎大学生は教育学部(技術)1名、工学部2名で理系ばかりであったが、久留米大の院生で比較文化研究科の堀君が一人文系で彼の論点がユニークで教えられる点が多かった。彼は各種エネルギーの適否、長短等を文系の目で比較研究するため常に「朝日」「読売」を通読している由。彼には私達が持っている理系の相場観というものが通じなかった。(新エネのEPRを説明しても、努力すればまだまだ(他と対抗できる程度まで)伸ばせるはずだとか...)このような考えをする人達が「朝日」の購読者数程度はいるようだと再認識した。

3.最初堀君は原子力には批判的立場のように見えたが、地層処分の平易な説明を15分   程度やった後、金氏さんが最近の内閣府の意識調査結果(高レベル廃棄物処分地は必  要:支持80%、しかし自分の近くは反対80%)を説明したところ、「条件が揃えば都市近郊でも建設可能ではないか、被爆地だって可能なはずだ」ということになっていった。結局D班の発表の締めくくりは「平和利用の象徴として長崎、広島が声を上げるという選択もあるのでは」というものであった。対話に直接参加したものとして、これはシニアに対する学生のリップサービスでは決してなかったと断言できる。私にはこのような提案をすることで「国民に高レベル廃棄物処分地のことをもっと知ってもらうためのアッピールが必要だ」というように受け取れた。

 

添付3  事後アンケート詳細結果

(1)講演について

@「チェルノブイリから学ぶ事」

<a>よく理解できた47%<b>理解できた53%<c>あまり理解できなかった0%<d>理解できなかった0%

→理解できた<a>+<b>・・・100%(回答者数19人、無回答0人)

「理由」

・チェルノブイリと日本の原子力発電所は安全性で全く違うということが知れてよかった

・当時の記事、事故からのデータが得られ、今まで知らなかった部分を知ることができたのは非常に為になった。

・新聞記事などが載せられていてわかりやすかった

・発電所の事故の真実を知ることができた。マスコミからの情報だけしか知らない自分にとってはとても勉強になった。

・ただ「原発事故」という認識しかなかったが、別の角度でとらえることができた。

・今もなお、放射能被害に悩んでいる、苦しんでいる人がいる。医療援助が行われている。

・先生方の詳しい説明があったから(よく理解できた。)

・最初だったけれど、わかりやすくみやすかったから(理解できた。)

・今までは、ただ怖いだけだったが、日本とのシステム、建物の作りの違いなどがあり、理解できた。

・チェルノブイリと日本の原子力システムの違いを理解できたから(よく理解できた。)

・知っていることが多かった。

・チェルノブイリの事故はなぜ起きたのか(理解できた。)

・マスコミの力は怖いと思った。

・チェルノブイリの事故はなぜ起きたのか事故があった理由がわかったため(理解できた。)

・チェルノブイリ事故は起こるべくして起こったことと、被害の大きさその影響について学ぶことができた。

・とてもたくさんの人が被害を受けたから(よく理解できた。)

・どのように被害が出たのか図で見ることができたので(理解できた。)

A「原子力の現状と未来」

<a>よく理解できた50%<b.理解できた50%<c>あまり理解できなかった0%<d>理解できなかった0%

→理解できた<a>+<b>・・・100%(回答者数18人、無回答0人)

 

「理由」

・さまざまな発電方法と共に生活していくことが大切だということがわかった。

・発電方法、エネルギー問題、過去の事故の原因を振り返るなど、多くの話題が聞け、図も多く非常にわかりやすかった。

・グラフや図が多く入っていて、知識の少ない自分でもわかりやすかった。

・原子力についての知識や、一般人と専門家の意識の差などがとりあげられ、大変ためになった。

・報道の面やコスト、効率など様々な視点から見つめ直すことができた。

・原子力に対するイメージの変革、私たちの生活にどれほど関わっているか、また、これからの私たちに何ができるか(よく理解できた。)

・原子力のことを知り、そのメリット、デメリットを考えることができたから(よく理解できた。)

・時間がなかったので、全ては理解できなかった。

・とてもわかりやすかったです。

・勉強しているため(よく理解できた。)

・資料がわかりやすかった。

・原子力の危険性について知ることができたため(理解できた。)

・放射線のしくみ、利用方法や原子力発電のしくみについて学ぶことができた。

・現状様々なことに使われており、さらに発展した内容に取り組むだろうから(よく理解できた。)

・どのように使われて、どのように処理されているか知ることができた。

B「被爆地をCGからふりかえる」

<a>よく理解できた38%<b>理解できた56%<c>あまり理解できなかった6%<d>理解できなかった0%

→理解できた<a>+<b>・・・94%(回答者数16、無回答3人)

 

「理由」

・被爆当時と現在との比較ができ、とてもわかりやすかった。

・こういう取り組みがあることを知らなかった(よく理解できた。)

・今まで平和学習などでの知識もあったし、CGで目でみてわかりやすかった。

・当時の状況を視覚的に理解できた。

・教育的な活用方法を考えさせられた。

・原爆の恐ろしさを改めて知るとともに、今私たちにできることを考えることができた。

・パソコンのCGを使って様々な角度から画像を見ることができ、とてもわかりやすかったから(理解できた。)

・今と昔を重ね合わせて説明してくださったから(理解できた。)

・とても興味があり、公開されたらぜひダウンロードしてみたい。

・昔の長崎の街をみることで、原爆がどのような場所に落とされたかわかった。

・改めて被爆者に黙とうをささげたい。

CGで見ることがわかりやすかった。

・凄くイメージしやすく、原爆わかりやすかった。

CGを使っての活用法がもっとはっきりしてほしかった。

(2)講演の題材で「このようなことを聞きたい」というものがあれば書いて下さい。

・推進派VS反対派(の論点)

・一般人への原子力の知識の普及活動やその課題を聞いてみたい。

・報道に関しては話を聞きはじめて気付いた点であったので更に詳しく聞きたい。

・ほかのエネルギーについてなども聞いてみたい。

・子供にはえどのようなことを伝えてほしいか。

・医学的放射線の利用

(3) エネルギー教育の実施について

@今回のワークショップで学校における「エネルギー教育」の必要性について

<a>大いに感じた56%<b>感じた44%<c>あまり感じない0%<d>感じない0% 

→感じた<a>+<b>・・・100%(回答者数16、無回答3人)

 

「理由」

・子どもたちは間違った知識を身につけているから(必要性を感じた。)

・知識の少なさを実感させられた。

・原発がなければ今の生活が成り立たない現実を知らねば(必要性を感じた。)

・自分も周りの人もあまりにも知らなすぎた(大いに必要性を感じた。)

・正しい認識、正しい知識が正しい使い方を生むと思った。

・自身の知識の欠如、考える機会が必要。

・エネルギー問題はまさにいま直面している問題で若い世代がしっかり考えていく必要があると思うから(大いに必要性を感じた。)

・間違った認識をしている人が多いため(必要性を感じた。)

・私たちは、次の世代を担う者としてもっとエネルギーについて考えるべきだと思いました。

・エネルギー教育の必要性はエネルギー問題に興味を持ち国民が真剣に考える上で大変重要であるともう。しかしながら、今回のワークショップの内容では「エネルギー教育」という点では?偏りを感じる。

・世界のエネルギー事情を子供には理解させるべきである。

・エネルギー資源について知らないことが多いので(必要性を感じた。)

・今最も必要とされるエネルギーは?

Aエネルギー教育プログラムを作るとしたら、そのような情報、資料、教材を要望しますか?

・エネルギーの種類、活用法、利点などの情報

・五感で捉える放射能の話から、原子力発電の安全管理について

・生の声、現場の声

・現状のデータ、施設等の写真など

・実際の写真などはもちろんのこと

・真実がのっている資料やデータが欲しいです。

・現状がわかる資料、中立な視野からの情報が必要であると思う。

・正しい情報とメディアの情報

・地域にある発電所の見学

・今のエネルギーのことがよくわかるもの

・実際にエネルギーに関する出来事(発電所など)

・実際に見ることのできるもの

(4)ワークショップについて

@ワークショップの前のエネルギー問題に対する危機意識

<a>非常に持っていた12%<b>持っていた65%<c>まり持っていなかった23%<d>持っていなかった0% 

→持っていた<a>+<b>・・・77%(回答者数17、無回答2人)

「理由」

・原子力発電はとても危険だと思っていた。

・よくメディアに取り上げられ、自分の興味のある分野に深く関わっていたので、自分である程度資料を読んで調べて(危機意識を持っていた。)

・自分にはあまり関係のない大規模な話だと思っていた。

・化石燃料はCO2が、新エネルギーはコストが問題だから(危機意識を持っていた。)

・日本が島国であるということで、常にエネルギーの確保がネックになっている点

・化石燃料の枯渇化(危機意識を持っていた。)

・よく知らなかったから(危機意識をあまり持っていなかった。)

・テレビなどで聞いたことがあったから(危機意識を持っていた。)

・エネルギーの枯渇問題をとくに気にし、新エネルギーの開発に力を入れたいと思いました。

・エネルギー危機があるため。(非常に危機意識を持っていた。)ただし、エネルギー問題というくくりは広すぎる

・化石燃料が残り少ないと感じているから。自分の50年後に電気がないと不便に感じるから(危機意識を持っていた。)

・化石エネルギーがなくなるのも時間の問題だから(危機意識を持っていた。)

・自分に関係ないものと思った(危機意識をあまり持っていなかった。)

・身近な出来事について知識が少なかった(危機意識をあまり持っていなかった。)

・自給率(危機意識を持っていた。)

Aワークショップの後のエネルギー問題に対する危機意識に変化

<a>大いに変わった23%<b>変った47%<c>まり変らなかった12%<d>変らない18%

→変わった<a>+<b>・・・70%(回答者数17、無回答2人)

 

 

「理由」

・原子力エネルギーは、使い方次第で良くも悪くもなるエネルギーであった(危機意識は変わった。)

・エネルギー問題に関しては以前から知っていたこと、意識確認という感じだった(危機意識はあまり変わらなかった。)

・教員になりたいと少しでも思っているなら、もっと知らないといけない。放射能も正しく使えば怖くないのかもと感じるようになった。

・昨年も参加していたので(危機意識はあまり変わらなかった。)

・有用さはもちろん「制御する技術」を世界に広めていくべきだということ(危機意識は大いに変わった。)

・原子力の有効性を知ることができた(危機意識は変わった。)

・日本だけではなく、世界の現状を知っていたから(危機意識は大いに変わった。)

・原子力の問題を改めさせられたから(危機意識は大いに変わった。)

・以前からとても興味をもっていたので、専門的意見がとても(危機意識は変わった。)

・以前から危機を感じているため(危機意識は変わらない。)

・留学生の話を聞けたから(危機意識は大いに変わった。)

・自分がすべきことがわからない(危機意識は変わらない。)

・現状や事実などを知り、大切にしていかなければいけないと強く感じた(危機意識は変わった。)

・どのようにエネルギーをつかっているかもっと知りたい(危機意識は変わった。)

Bワークショップの内容は満足のいくものでしたか?

<a>とても満足した29%<b>満足した65%<c>やや不満だ0%<d>不満だ6%

→満足した<a>+<b>・・・94%(回答者数17、無回答2人)

 

「理由」

・新しい知識がたくさん増えた。

・今回聞いたこと、見たことはめったにできない貴重な体験だと思っている。同じような機会をまた得たい。

・たくさん学ぶことができた。その反面、わからない部分も多かった。

・シニアの皆さんから話が聞けるから(満足した。)

・新たな見聞が広まり、教育者になりたい、伝えたいと感じた。

・現場シニアの方々と話をして、生の声を聞くことができた。

・多くのことを知ることができたから(満足した。)

・知っておかなければならなかったことを教えていただいたから(とても満足した。)

・今まで知らなかった部分をとてもわかりやすく理解することができた。

・エネルギー問題といっても様々であり、またエネルギー問題とは何かということから、はじめて行かなければという思いがあるため(不満だ。)

・シニアの方に普段聞くことのできない情報を聞けて良かった。

・知らなかったことを多く知ることができ(とても満足した。)

・シニアの方々の話をできたので(満足した。)

・知らないことを多く学ぶことができた。

・勉強になった。

D  今回のようなワークショップの必要性について

<a>非常にある65%<b>ある35%<c>あまりない0%<d>ない0%

→必要性あり<a>+<b>・・・100%(回答者数17、無回答2人)

 

「理由」

・個人それぞれの違った意見を聞くことができるから(必要性はある。)

・日本人にある核アレルギーのようなものを取り除くには必要だと思う。

・多くの知識をもった方々とこのように話す機会はめったにないと思うし、自分やみんなにも良い刺激になったと思うから(必要性は非常にある。)

・無知は罪だから(必要性は非常にある。)

・正しい評価ができる人間になり、それを伝えることができる人間にいなりたいと感じた。

・知識を得られるから(必要性はある。)

・私たちは、知っておくべきことを知らないことが多いから(必要性は非常にある。)

・正しい知識をつけるため(必要性は非常にある。)

・若い世代への原子力はつきものなので、正しい知識が必要だと思いました。

・考える機会という点ではとても大事であるため(必要性は非常にある。)

・その場があるからこそ、知識が増える。

・後輩にも同じようなものに参加してほしい。

・考えを深めるとてもいい機会になる。

・知識、学べる場

(5)エネルギー教育に関する考え

@今後「エネルギー教育」を推進したいと考えるか?

<a>大いに推進したい29%<b>推進したい65%<c>あまり推進したくない6%<d>推進しない0%

→推進したい<a>+<b>・・・94%(回答者数17、無回答2人)

 

「理由」

・私たちの生活に大きく関わってくる問題であるから(推進したい。)

・これからも、身の周りでエネルギーは当たり前のように存在するだろうから、それらについての教育はなくてはならないと思うから(推進したい。)

・まずは、本業の科目。エネルギー変換も中技に含まれますが、素人がやるよりシニアネットワークの皆さんに来ていただきたいです。

・必要だから(推進したい。)

・今回おもしろく、ためになったから(推進したい。)

・教育で知ることが原点だと思います(大いに推進したい。)

・現段階では、多くの国民が関心をもっているため。ただし、様々なエネルギーについて示す必要がある。(大いに推進したい。)

・良いところと悪いところも正しい情報をもって、人に教えるべきだと思う(推進したい。)

・教育現場で教えなければ教える場がなくなる(推進したい。)

・これからの未来にとても関わってくるから(推進したい。)

A今後「エネルギー教育の研究」を進めたいと考えるか?

<a>大いに進めたい27%<b>進めたい53%<c>あまり進めない20%<d>まったく進めない0%

→研究を進めたい<a>+<b>・・・80%(回答者数15、無回答4人)

 

 

B「エネルギー」や「エネルギー教育」について他の研修を受ける希望はあるか?

<a>大いにある14%<b>ある57%<c>あまり無い29%<d>ない0%

→研修を希望する<a>+<b>・・・71%(回答者数14、無回答5人)

 

「具体的な研修の種類・名称」

・ジャンルを問わず知識を得る機会があれば何でも

・エネルギー変換と環境

・電気

C他の学生や教員に「エネルギー教育」を普及させたいと考えるか?

<a>大いに普及させたい37%<b>普及させたい63%<c>あまり普及させたくない0%<d>普及させたくない0%

→普及させたい<a>+<b>・・・100%(回答者数16、無回答3人)

 

「理由」

・私みたいに間違った知識を持つ学生がたくさんいるから(普及させたい。)

・自分もあまりわからなかったけれど、知っておくべきことだと思う。これからを生きていく私たちにエネルギー教育は必要だと思う。

・長崎で原発の話は少し危険なんです。(普及させたい。)

・子ども達の意識を変える前に、大人の意識の変革が必要(特に教員の)

・多くの人に知ってほしいから(普及させたい。)

・正しい教養をつけるべきだと思うから(普及させたい。)

・いろんな人に広め、さらにいろんな人に広めてほしい(大いに普及させたい。)

・必要だと思うから。ただし、議論をする場、機会は学生にとってとても少ないと思う。

・知っていて悪くない(普及させたい。)

・教員の方々も今回のようなことを知らない人は多いと思うので(普及させたい。)

・重要なことであると考えるから(普及させたい。)

(6)「教育学部の学生とシニアの対話:ワークショップ」の在り方、改善点など自由に記載して下さい。

・学生は新しい知識をたくさん得ることができ、シニアの方は新しい意見を聞くことができるので、お互い良い刺激を受けることができる。

・事前、事後の連想シートでは、少しではあったが進歩がみられた。連想シートを使用するのはとても良いと思いました。

・原発の安全性だけでなく、「もしかするとこうなるかも」という危機シュミレーションのような事も知りたい。安全、安全というだけでなく、「ハード的には安全」と少し危ないことも認めて良いと思います。

・もっと続けて欲しい。

・昨年もこのワークショップに参加させていただいたが、昨年の内容を踏まえつつ、新たな視点から原発を見直すことができ、自分にとってあらたな知識や意識が生まれたことはもちろん、教員として生徒に伝えたいという気持ちがとても増しました。ありがとうございました。

・もう少し時間に余裕があった方がいい。

・今回は原子力の入門編ということでは初めての人には勉強になったと思う。ただしエネルギーの根本的なところの話がなかったので、その点については不満である。根となるところを勉強したから。具体的な各エネルギーのメリット、デメリットの話になった方がいいなぁと感じました。

・後ろの席からスクリーンが遠すぎであった。