SNW対話イン福井美浜2009最終報告書

平成21年3月16日

SNW代表幹事 金氏 顕

福井大学教育地域科学部とSNWの対話を企画、同大学エネルギー教育研究会より、地元福井県美浜町で既に平成19年度から小中学校でエネルギー環境教育を推進している教員も交えての対話としたいと提案あった。そこで、美浜町教育委員会と相談したところ、このような対話の実施により、参加する学生、教員の外、教員が指導する小中学生に対しても、エネルギー問題と原子力の役割について自分たちの問題として身近に感じることができるとして賛同していただいき、更に地元原子力関係各組織の全面的な協力を得た。

そこで、「エネルギー環境教育に係る教員、学生、シニアの対話in福井・美浜」として、下記の要領で開催したので報告します。

 

対話会の全体計画

1.日時:2月21日(土)10:00〜17:00(17:30から懇親会)

2.会場:株式会社原子力安全システム研究所(福井県美浜町)

3.主催:日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)

4.共催:福井大学エネルギー教育研究会

5.協賛:文科省敦賀原子力事務所、美浜町教育委員会、関西電力、原子力安全システム研究所、日本原子力研究開発機構、若狭湾エネルギー研究センター

6.参加者:70名:参加者リストは添付参照。

1)美浜町立小中学校教諭: 15名

2)福井大学、福井工大教員、学生 22名

3)  SNWシニア:10名(荒井利治、小川博巳、金氏顕、岸本洋一郎、古田富彦、前川則夫、前田肇、益田恭尚、松永一郎、山崎吉秀)

4)  来賓、オブザーバー:23名

協賛各組織の方々、松田美夜子原子力委員、美浜町長、電気事業連絡会、原子力学会学生連絡会、広島商船高専教員、広島県元中学校校長

 

7.当日のスケジュール

10:00-10:10 開会挨拶:(福井大学)伊佐公男先生、(SNW副会長)荒井利治

10:10-10:20  来賓挨拶:(美浜町長)山口治太郎様、(文科省敦賀原子力事務所長)犬塚隆志様、

10:20-10:30  参加シニア&オブザーバー紹介:(SNW)岸本洋一郎

10:30-11:40 基調講演「岐路に立つエネルギー資源問題」:(SNW代表幹事)金氏顕

11:40-12:00 質疑応答、

12:00-13:00 グループ対話の進め方、昼食(5グループに別れ、自己紹介などしながら)

13:00-15:00 教員、学生、SNWシニアの対話(5グループ)

15:00-15:20 休憩(発表まとめ)

15:20-16:20 グループ別成果発表・質疑

16:20-16:50 指導・講評:(原子力委員)松田美夜子様、(美浜町教育長)大同保様

(広島商船高専)馬場副校長、(SNW)前田肇

16:50-17:00 閉会挨拶:(WERC専務理事)来馬克美様、(SNW)山崎吉秀

17:00-17:15  アンケート回答記入

17:30-19:30 懇親会(会費 3,000円、ただし学生は1,000円

 

8.対話テーマは事前の関係者打合せで、地元の方々の意見により次のように決めた。

共通基調テーマ「立地地域に於けるエネルギー環境教育の中の原子力教育のあり方」

A:原子力についての必要な知識とは? 教員、生徒(小学生、中学生)向けに。

B:原子力関係者が保護者にいるクラスでどう教えるか?

C:原子力関連外部機関(推進、慎重)がどう係わるか?中立的に教えるとは?

D:原子力の安全やリスクをどう教えるか?

E:立地地域としての誇りを持たせるには?

 

今回の対話会の特徴

1.これまでの対話の相手は“学生”が主体であったが、今回は小中校の先生が主体で、それに先生の卵の学生が参加、また大学の教育系や原子力系の教員がファシリテーター、またオブザーバーには原子力関連機関ということで、“教育”をキーワードとして、原子力界と一般社会の世代(3世代)、地域(立地、消費地)、立場(教育、原子力事業者またはOB、学生)を超えての対話となった。

 

2.美浜町は原子力立地地域の特性(発電所、研究所などの原子力施設など)を生かした学習を、文科省の先進的原子力教育の推進地域として推進している。町長、教育委員会が先頭に立って、町全体でエネルギー環境教育を原子力にかなり力点を置いて、平成18年度からは小学校(7校)低学年から中学校(1校)まで一貫したカリキュラムで教育を進めている。このカリキュラム作成や教員研修には福井大、関西電力、JAEA,INSSなどが支援している。今回もそのための研修という位置づけであった。

http://www.town.mihama.fukui.jp/kyouiku-g/19-3-28.html

 

3.福井県はご存知の通り「福井エネルギー拠点化計画」を推進中で、エネルギー環境教育もこの一部です。この概要は若狭湾エネルギー研究センターのHPの下記URLにあります。なお、月刊エネルギー2008年10月号に特集記事があります。

http://www.werc.or.jp/kyotenka/suishinsoshiki/taiseinaiyo/index.htm

議事録

1.開会挨拶

福井大学:伊佐公男先生

人と人の繋がりで今回の対話会を開催することが出来た。小中の教員とシニアとの対話は今回が初めてであり、今後広げたい。また、参加する学生には良い刺激を与えると確信している。

 

SNW副会長:荒井利治氏

今日は所用で参加できないSNW会長の竹内哲夫氏も私も祖先は福井県出身、今日は暴風雪での歓待を受けております。SNWは全国各地で大学学生との対話を既に30回も開催、今回は初めて小中の先生も加え、3世代に跨る対話であり、シニアにとっては大事なチャレンジであり、フレッシュな気持ちで取り組みます。また、今日は来月8日に対話会を実施する予定の広島の高専から5人の先生方も参加、よろしくお願いします。

 

2.来賓挨拶

美浜町長:山口治太郎様

今日本には子供や孫に生活習慣や知恵を授ける場所がない、3世代住宅を沢山作ればそれが出来る。今回は3世代の対話というタイムリーな機会を作っていただき、大変感謝したい。美浜町の行政史を辿ると、50年前から原子力を誘致し、立地してからも40年経ち、誇りを持って取り組んできたが、その間事故が起きたりして、残念なこともあった。その時にエネルギー教育をしていれば町も原子力関係者も肩身の狭い思いをしなくてよかった。4年前の美浜3号事故の後に文科省に学校教育に原子力を含むエネルギー環境教育推進を持ちかけた。3世代にわたり英知を引き継いでいくようにしたい。

 

文科省敦賀原子力事務所長:犬塚隆志様

まず、2月9日付の日本教育新聞に美浜町の教育取り組みが掲載されていることを紹介したい。私はこの地に赴任して、いろいろな方と出会い、地域の状況を肌で感じることができた。東京で仕事をしていた頃は、全国一律に同じ施策、同じ教育と考えがちであったが、それは間違いだったと反省。地域の事情、地域の方々の想いに応じた国の対応が必要と考えている。地元の教員の方の中には、原子力を教育することは原子力を推進しなければならないということなのか、という率直な意見も聞いたことがある。「推進しなければならない」ではなく、正しく理解することが自分自身で判断できることに繋がる。その意味で、本日のような機会をとらえて、普段聞けないようなことも是非聞いていただいてはいかがか。今日参加しているシニアは言わば名球会入りしている方々だ、双方がガチンコで本音で対話することを期待したい。

 

3.基調講演

SNW代表幹事)金氏 顕

講演テーマは「岐路に立つエネルギー資源問題」、内容は下記、PPTにして81ページ。

@地球温暖化問題とエネルギー資源問題は表裏一体、

A化石燃料に替わるエネルギーとしての再生可能エネルギーと原子力エネルギーの資源・対環境性、経済性など比較、

B世界の主要な国々のエネルギー政策、今後の動向、

C世界の原子力開発の歴史と動向、

D我が国の原子力開発の動向と歴史。

 

(質疑応答)

Q.ピークオイルはいつごろなのか?

A.正確には分からないが、既にピークだと言う人もいる。いずれにせよ前後10年くらい。

 

Q.FBRは海外では開発されているのか?

A.カザフスタン(旧ソ連)では600MWの商業炉が運転中で、更に800MWを建設中。フランスは2020年ごろから実証炉建設し、2040年ごろからは商業炉を建設する計画。中国やインドも建設中。(他にも2,3の質疑があったが、省略)

 

4.グループ対話の発表会

<Aグループ>原子力についての必要な知識とは? 教員、生徒(小学生、中学生)向けに。

 

(発表:美浜中 川崎裕晃教諭)エネルギーがどんなものか何故必要かについて、あれば便利、なければ困るという実体験させ、エネルギー資源、エネルギーコスト(EPR)、地球温暖化防止(CO削減)の観点から原子力は欠かせないものであることを理解させる。原子力を教えるためには放射線について正しく理解させることがまず大切で公平な観点から、原子力のメリットとデメリットを伝える必要がある。必要な正しい知識を定着させるには家庭を含め町ぐるみで取り組む必要があると結論された。

Q1:正しい知識を定着させるには町ぐるみで取り組むとされていますが、具体的にどのように教育に取り組むのでしょうか。

 

A:土曜日などに生徒とともに父母兄が参加する授業セミナーを行うことが考えられます。

Q:児童には誰が教えるのですか。理科の先生ですか?

A:小学生の教育は担任がしなければならない。

Q:美浜の場合は環境からも、また特別な教育も受けるという特別なケースで、一般には、生徒にエネルギーに関心を持ってももらうこと、自然界には光と一緒に目に見えない放射線が行きかっていることを「はかるくん」等で体験させることだけで良いのではないか。電気のない生活を体験させることから入ってもらったらどうだろうか

A:キャンプ等で体験させてみたが生徒は初めての経験で面白がってしまう

Q:興味を持ってもらえばそれで良いのではないか。その内に、その体験を基に電気のない生活の大変さが分かってくると思う。

A:どのようなタイミングで何を教えたらよいかがわからない

Q:エネルギー教育を全国的に広めていくためには、今度作られた副読本は難しすぎる。もっと易しくすると共に、放射線を加えて欲しい。

A:今度の教育アイテムには放射線は入っていない。

Q:放射線もエネルギーを持っており是非入れて欲しい。

A:コストについて何時からどう教えたらよいかは難しいが、エネルギーのコストについて大まかで良いから是非考えさせて貰いたい。先の石油の急激な価格上昇からも体験したように、エネルギーコストは生活に直接影響する大きな問題である。

SNW・古田氏)追加したいコメントですが、授業に適切な VTR を併用すると生徒に理解されやすいのでVTR の併用をお勧めします。

 

<Bグループ>原子力関係者が保護者にいるクラスでどう教えるか?

 

(発表:美浜中・中元健晴教諭)此のテーマに対しては、過去には原子力関係者の子供に対する「いじめ」の問題があったが、現在では問題は発生していない。しかし子供達に原子力に対する正しい理解を求める必要がある。

美浜町では平成19年からエネルギー環境教育を自前の副読本を活用するなど積極的に展開している。子供達に正しい判断をさせる為の知識を与えるにはどうすればよいか?

1)体験する。2)家庭と一緒に取り組む。3)感動を与える。4)本物を見せる。などが考えられるが、美浜町には原子力発電所をはじめとするエネルギー施設があり子供たちが夢を持って学習に取り組める可能性がある。

議論を通じて先生方には今までやって来たことを見直す良い機会となった。またシニアメンバーの豊富な経験と知識に基づく洞察の深さに感動し、「将来の日本を支える子供

たちに確かな判断力を養う」という教育の根幹に思いをいたし、教師一人ひとりが疑問や考えをもっと発信することの大切さを知った。

Q1:以前は原子力関係者の子供がいじめの対象になったような事があったようだが、今ではそのようなことが無くなったとのこと。その原因は何だと思われますか。

A:原子力に対する知識が増え、理解されるようになったことが大きいと思います。

Q2:保護者に原子力関係者がいることのメリットもあると思うが、教育の面でどのように協力してもらう事が考えられるか。また実際に実施されているか。

A:発電所の見学のアレンジや原子力に関する出前授業などが考えられるが、未だ実施していない。

 

<Cグループ>原子力関連外部機関(推進、慎重)がどう係わるか?中立的に教えるとは?

 

テーマ:原子力関連外部機関(推進、慎重)がどう係わるか?中立的に教えるとは?

(発表:美浜北小・高木賢治教諭)教員の知識は限られているので、専門家の出前授業は効果的だが、結果的に原子力推進教育になっていないだろうか。美浜では原子力発電所の見学が出来る恵まれた環境だが、どの様な観方をするか、見学から何を考えるかなど、一寸した指導により、子供達なりに判断出来る力を付けさせたい。美浜町からの全国展開を期待するとの励ましもあった。広島との対比も話題になった。広島でこそ原爆を起点として、バランスのとれた原子力教育への、国の支援が望まれる。

(SNW・山崎氏)高木先生の発表の補足をしたい。発電所の見学は、かつては市民の皆さんにどんどん解放していたが、9・11テロ以来、大変厳しくなって残念だ。特に子供達に対しては、もっとオープンにすべきだと考える。子供達はテロとは関係ないことが明白だ。関電に対しても再検討を相談したいので、本日の宿題としたい。

(松田美夜子氏)昨年の秋、スエーデンに視察に行った際、大変驚いた。見学に対する彼らの姿勢を、参考までに紹介したい。9・11以来、見学を制限するのではなく、テロがあったからこそ子供達には積極的に見学させていると云う。特に使用済み核燃料貯蔵所は必ず見せている、との説明であった。彼らの姿勢には「目から鱗」の感があった。

(SNW・金氏)見学に対して非常に厳しくなったのは、県警からの強い要請もあるようだ。見学に際して、「何かが発生したら責任を問われる」との県警判断が、オープンな見学に対する強い制約のようだ。しかし、愛教大学生の見学では制御室や燃料ピット、タービンなどガラス越しだが見学できた。

(関電・浜野氏)関電の見学ルールをご説明したい。身元が極めてハッキリしている先生や学童に対しては、見学ギャラリーを備えた美浜や大飯発電所では、中央制御室やタービンフロアのギャラリーから見学して貰っている。公募見学会などでは、身元を確かめられない事情もあるので、構内の見学には自ずと制約がある。

 

<Dグループ>原子力の安全やリスクをどう教えるか?

 

(発表:美浜中・高木誠教諭)話題は、放射線、安全対策、教育現場の教え方、リスクコミュニケーションなどに及んだ。特に放射線について活発な議論が教諭、シニア、学生の3者間でなされた。技術的には立地地域の放射線は自然放射線に比べ僅かな量しか増えないと言えるが、そこに住んでいる人には“だから問題ない”と言われるのは受け入れられない。安全対策やリスクについても同様で、専門家の技術的なアドバイスをそのまま教育に取り入れるのは難しいのではないか。

(福井大学・福井教授)人により安全やリスクの思いが異なっているので、ファシリテーターとして纏めるのが難しいテーマであった。

(SNW・金氏)社会学者の意識調査で、原子力の技術屋は80%安全だと言うのに対し、一般市民は80%安全でない、と言うとのこと。一般市民は誰が言っているのか、マスコミが言っているのかによって、不安にもなる。

(SNW・前川氏)放射線は高い線量を浴びると害になるが、低ければ益にもなるというデータがあるので、正しい知識を学ぶことが大事です。

(SNW・古田氏)許容可能なリスクには一般的なものさしはありません。社会環境により許容するかしないかが決まります。

 

Eグループ>立地地域としての誇りを持たせるには?

 

(発表:中村正一丹生小学校教頭)まず「なぜこのテーマで対話するのか」と言うことから始まった。誇りを持たない地域はないのに、このことがテーマとして取り上げられるのは特別な土地だからということ。原子力があることの誇りとして@科学技術での最先端を行っているA関西地区の電力量の50%を賄っているB多くの労働者を確保して安全に貢献している。一方で誇りをもてない理由として、怖い、事故、風評被害、教育で原爆=原子力という意識がある上に、そのようなものを地方に持ってくるのは「まずしいからではないか」というひけめがある。

このようなことを乗り越えていくには、まず原子力のイメージの正しい把握が必要であり、それには世代ごとにアンケートをとり、地域がどの様に考えているのか実態を把握する事が必要であるということになった。そして、立地地域として、原子力について、正しい理解をするための知識の普及や体験を通した啓発を行い、併せて原子力産業に従事している人たちとの交流を通じた相互理解という、人文的なアプローチが必要であると言う事を話した。また兵器利用をきっぱりと拒否する姿勢が大切である。教師は生半可な知識ではダメであり、地域に誇りを持たせる責任があると言う意見がシニア、学生から出された。

(福大山本君)もっともっと原子力の平和利用をPRする必要がある。東海村に行ったが、いろいろなところに「平和利用」に関するポスターがあった。美浜町も東海村から教えられる事が多いと思う。

(SNW益田氏)原子力施設の地元に住んでいる教師の人から、「名古屋在住の知人からとんでもないところに住んでいるのねといわれた」と聞いた事がある。

(?)原発銀座に住んでいるといわれていた当時、誇りを持つような教育をされた。イメージを吹き払うのではなくイメージをもっと持ったらよいということだった。

(SNW荒井氏)Eグループだけではないが、女性のフィーリングが大切である。女性が発表者に選ばれていないのが問題。

(清水美由紀美浜南小学校教頭)事故があったらどうかという不安感がある。子供達だけでなく教員にも原子力に関する知識を持たせる必要がある。

 

 

5.指導・講評

(原子力委員:松田美夜子様)

原子力委員になって、都会の人に原子力、そして高レベル放射性廃棄物地層処分をキチンと理解してもらうことが大事と思っている。その場合、教えてあげるという表現は良くない、言葉使いは大事です。教員の皆さんは本音で話をし、シニアの皆さんは技術的に説明してくれ、良かったと思う。これからのエネルギー政策を本音で考えていきたいのでよろしくお願いしたい。

(美浜町教育長:大同保様)

美浜町のエネルギー環境教育に関し、熱心な討議と提言など、ありがとうございました。私が26歳の時に美浜から大阪万博会場に電気を送った。今や15基の原子力発電所があり、原子力のメッカ、自慢出来る嶺南、美浜町です。親の背中を見ることは少なくなってきているが、親は子供達に語り継いで欲しい。反対する人はよく勉強して反対しているが、賛成の人はそうではないので、反対の声だけが聞こえるが数は少ない。美浜は海水浴を始め観光の町でもあり、風評被害には困る。美浜中学の修学旅行は広島に行き原爆ドーム、そして平和教育に徹している。

(広島商船高専:馬場弘明教授)

わが高専での原子力発電のアンケート結果は「不安だ」が大部分です。3年で蒸気タービン関係の据付などの会社に就職する学生が、会社の方と島根原子力発電所に見学に行って、将来に対する安心し目を輝かせて帰ってきた。3月8日にシニアとの対話を広島県竹原市で開催するので今日の体験を生かしたい。

(SNW:前田肇氏)

昨日、今日と子供達を対象に本物体験フォーラムを行っている。美浜町は原子力の町であると共に教育の町でもある。このエネルギー環境教育を嶺南地域全体へ、県全体へ、そして全国へ拡げていって欲しい。見学、実験などの実体験は重要である。原子力立地のメリットを活用して教育に役に立てるように、また近くにいる専門家を活用する仕組みを作り、事業者も協力していくことを考えるべきです。

 

 

 

 

6.閉会挨拶

(WERC専務理事:来馬克美様)

今日は長時間の対話会に参加頂き、感謝します。エネルギー教育を含めた研究開発拠点化計画を推進してますが、一つずつ積み上げていって、地域が元気になる、原子力が元気になるようにしたい。そして50年の歴史を持つ福井の原子力を将来に向けて引き継いでいくことが大事。本日の成果を大きなネットワークとして、次に生かせるようにしたいと思いますので、よろしくお願いします。

(SNW:山崎吉秀氏)

週末の貴重な時に、長時間の対話に参加していただき、感謝します。教員の皆様の声にも感謝します。エネルギー問題は我が国の最重要課題ですが、世間の理解はまだまだです。マスコミも「地球環境にやさしい」という美しい言葉で、自然エネルギーで全て解決できるような誤解を生む発信をしています。各エネルギーの長所短所を客観的に、冷静に判断するための知識を身につけさせることが大人の責務であり態度だと思いますので、これからもよろしくお願いします。

 

総括および感想

1.これまでの対話からは次元を異にする難しい企画だったが、案ずるより生むが易しで、11月と2月10日の2回の事前会議で関係者集まり、それぞれの活動紹介に始まり、趣旨や目的についての意思統一、関係者の役割分担、参加者決定、事前の準備、当日の設営など、約4ヶ月の準備を経て実施に漕ぎ着けた。最も苦労したのは、趣旨や目的についての関係者間の意思統一であった。

2.          対話の対象が、既にエネルギー環境、原子力教育を実践している先生方と原子力については白紙に近い学生を加えて、原子力の知識の差が大きく、対話になるのか?も課題であったが、福井大で事前に原子力の基礎の講義を関電とINSSにやっていただき、かなり知識の差は縮まった。

3.対話のテーマをどうするか?も困ったが、美浜町のエネルギー教育に支援している伊佐先生、INSS橋場氏、JAEA、美浜町教育委員会などからの意見を尊重して2月10日の第2回事前会議で決めた。参加された15名の先生方には、何故このようなテーマなのか?と疑問に思った先生もおられたようだが、概ね今回の会に相応しかったと思われる。

4.グループ対話は小中先生3名、学生3名、SNW2名、ファシリテーター(福井大教員)1名、オブザーバー(地元原子力関係機関など)3名、計12名で、バランスが取れていたと思う。なお、オブザーバーにも積極的に発言していただき、対話会を盛り上げていただいた。

5.美浜町の先生方は原子力立地町での原子力教育推進を町教育委員会の方針として行っているが、色々考えに微妙な違いがあるように見受けられ、立地地域に於ける複雑な町民感情を垣間見た。参加した全ての方々にとってこのような組み合わせの対話は初体験で、貴重な経験であり、今後のそれぞれの活動に役立つと期待したい。

6.会の運営には、美浜町、福井大、関電、INSS、JAEAなどに全面的に支援いただき、大いに感謝します。

7.関係者の賛同が得られれば、来年度もぜひ開催したい。

以上、文責:金氏顕

 

最後に、SNWより参加したシニアの感想を掲載します。

(荒井利治)

始めての試みとしては完全に合格点

1.        世代が3代にわたる対話がどうまとまるか不安であったが、それなりに各世代が得る事があったと思う。特に第一線の小、中学校の教員の方々の実際の体験に基づく話は説得性があった。また自ら副読本を作成された熱意には驚くほか無い。

2.        フアシリテーター役の大学教授、准教授の方は始めての経験の方が多かったが流石は教育のプロで、時にシニアの多弁を抑え、大学生の発言を促しながら、小、中学校の教諭にまとめを任せられた手腕は見事であった。産業人のせっかちな体質と異なったペースが其れを生み出しているように感じた。

3.        テーマが「立地地域におけるエネルギー環境教育の中の原子力教育のあり方」というやや抽象的なものであったが、事前に教育学部の学生に原子力の基礎的知識を講義するなどの工夫で直ぐ本論に入ることができ、実のある対話となった。

4.        全体に事前の2回の準備会議により多くの関連協力組織間の意思疎通が図られたことが此の対話会の成功の鍵であったと思う。世話役の金氏代表幹事、松永運営委員両氏の大変な御努力に感謝したい。

 

(岸本洋一郎)

タイトルが示すように、今回は、従来の学生とシニアの二者を中心とした対話ではなく、小中学校の教員15名、教育系と工学系の学生15名、およびシニア10名の三者が一同に会した対話であった。こうした試みは今回が初めてではないか。加えて、ファシリテーターとして福井大、福井工大から先生方6名が配され、加えてオブザーバーとして大学美浜町の大同教育長、原子力委員の松田美夜子先生、広島商船高専の先生5名が参加、さらに地元の原子力関係機関から、多数のオブザーバーが参加し、総勢70名という規模も過去最大の部類であったが、関係者の協力により成功裏に終えることができた。とくに福井大の伊佐公男先生はじめ、エネルギー教育関係者の努力を多としたい。

 今回のような対話は、山口美浜町長や教育長が指摘されたように、シニア、教員、学生という3つの世代の対話でもあり、その意味でも対話に幅と深みが増し、どの参加者にも貴重な経験となったことと思う。

小中学校教員の参加により、教育現場からの声を直接聞くことができたことは、大きな収穫である。原子力への思いを語るシニアの立場とは大きく異なる立場の教員との対話は、双方にとって大変に貴重であり、有益であったのではあるまいか。

対話のなかで「教育の中立」ということがときに喚起されたり、あるいは都会では、立地地域の住民はリスクが大きくて当たり前と思っているのではとの意見が出されたりして、互いのコミュニケーションを阻みかねないという危惧を抱かせることもあったが、参加者一同の自制により、有益な議論とすることが出来たように思う。

町を挙げてエネルギー環境教育に熱心な美浜町であるから実現したとも言える今回のような対話を、嶺南地域全体へ、福井県全体へ、さらには県外へと広げていけないかと、期待表明があったが、そうした取り組みは十分に価値あるもののように思う。

 

(小川博巳)

美浜町住民の65%もが原子力関連の仕事だそうだが、子供達の家庭環境、社会環境を勘案し、偏りのないエネルギー・環境教育が、町ぐるみでスタートしたのは素晴らしい。
原爆被災地の広島の先生によれば、エネルギー・環境問題に触れることすら憚られる社会環境・教育環境だと云うが、広島・長崎でこそ原爆学習を起点にして、放射線・原子力平和利用などの教育を、国は強力に推進するべきだ。

子供達には偏らない、公平な、正しい知識を教えたいものだ。そのためには家庭と共に育み、町ぐるみで取組むことが肝要だ。本物を見せ、子供達が何を感じ取りどの様に考えるか、ほんの一寸したキッカケをつくり、そこから感動が与えられれば素晴らしい。そのような学習を経て、子供達が自分の家族を誇り、自分の町に誇りを持てるように、導いてやりたいものだ。
感想を拙い和歌に託したので、ご紹介する;

三世代の 歳の開きも違和感も へだても失せぬ ランチのおしゃべり

子どもらの素直な疑問に応えぬは 何を懼れて 何に怯ゆや   
子供らのつぶらなひとみが見上げるに じじらの思いを如何に告げばや

無邪気にも遊ぶこの子らと手をとりて 未来に向けての夢をきかまし

 

(古田富彦)

1.     今回の対話会はよく準備され、美浜町小・中学校先生、福井大及び福井工大教員・学生、広島商船高専教員、松田原子力委員、JAEA、WERC、電事連、関電担当者等が参加され、テーマ別グループで忌憚のない対話と討論がされたと感じる。

2.     Aグループは「原子力についての必要な知識とは? 教員、生徒(小学生、中学生)向けに」というテーマであったエネルギーがどんなものか何故必要かについて、あれば便利、なければ困るという実体験をさせるにはどうしたらよいのか。担任の先生のみに任せるだけでは負担が大き過ぎ、時間的に不十分であるため、各種団体の支援とともに町・家族ぐるみで取り組む必要がある。

3.     エネルギー資源、エネルギーコスト(EPR)、地球温暖化防止(CO削減)の観点から原子力は欠かせないものであることを理解させるには、美浜町エネルギー環境教育副読本およびワークシートは充実した資料であるが、内容が高度であるため生徒によく理解させるには見学会や適切なVTRを併用する必要がある。また、必要に応じボランテイアベースの出前授業を採用することが薦められる。

4.     原子力を教えるためには放射線について正しく理解させることがどうしても避けられない関門であり、公平な観点から原子力のメリットとデメリットを正しく伝える必要がある。必要な正しい知識を定着させるには家庭を含め町ぐるみで取り組む必要があると思われる。

5.     安全な状態であると認識している時の心の状態を安心というため、「安全」と「安心」が混用され、よく議論がかみ合わないのではないか。「安全」とは、「受け入れ不可能なリスクがないこと」と定義されている。(ISO/IEC Guide 51:1999) リスクの大きさがすべて受け入れ可能、又は許容可能なもののみになっている状態を指している。安全といっても必ずいくばくかのリスクが残っていて(残留リスク)絶対に安全であることを意味していない。「許容可能なリスク」については、一般的にどこにでも通用するようなものはなく、「その時代の社会の価値観に基づく所与の条件下で受け入れられるリスク」と定義されているので(ISO12100)心得ておくべき事項と思われる。

 

(前川則夫)

対話集会のあと先生の一人からこんなメールを頂いています。

「先日の対話集会では、有益なお話を聞かせていただきまして有難うございました。シニアの皆様の高くて深い識見は、まさに原子力エネルギー開発という先端科学の最前線でご活躍されてきたという実績の中で培われ、蓄えられてきたということを、私自身、実感することができました。まるでNHK番組のプロジェクトXの主人公とはなしているような感覚なりました。」

身に余るお言葉ですが、この地域の子供達はこのような先生に育くまれているのだと思うと、頼もしく感じました。

原子力事業と何らかのかかわりにある父兄が60%にも達するこの地域の先生は、世論の中で時に浮遊する原子力問題を教えることの難しさを自ら乗り越えてこられた苦労とそれに裏づけされた自信が、原子力教育の中に生かされているように感じました。原子力事業者の広報もこのような目線もよく理解しながら推進していくべきでしょう。

原子力については、自分自身の思考ではなく伝聞や経験等によって、その安全性を理解しておられるように感じられ、先生方がより科学的に理解できる機会を増やす必要があると感じた。

原子力の安全性議論の原点は核暴走を起こさない、核燃料の溶融を起こさない、起したとしても多重の壁で閉じ込め、外部への影響は許容範囲に治めることであったが、いつの間にか少量の放射性物質も外部に漏らさない、放射線は危険であるに変質している。

医療被曝で国民の被ばく線量が上がっても安全、原子力は少しでもだめという非科学的論理や社会の不公平の深層に入り込み、学校教育を是正していく必要があり、正しいことは正しいといえる日本人を育成していくことにつながると思われる。

国、電力をはじめ原子力推進サイド自身の理解も正しいのかと絶えず問い直し、原子力を推進していく必要がある。

 

(益田恭尚)

美浜町という土地柄で対話会を開催でき、いろいろな面で新しい経験ができた。特に、小中学校でエネルギー問題を正課として教えておられる先生方の苦労話は実感があった。

モデル地域として、実際の授業で努力されておられることに敬意を表すと共に、全国の小中学校への展開に非常に貴重な経験となろう。ただ、副読本も全国に展開するには少し詳しすぎ難しすぎる一方、放射線について触れていないのは気になるところである。また、学年展開をどうしていくかについても、今後検討が必要であろう。

今回は立場の違った多くの方の参画で、コーディネーターの方も苦労が多かったと思うが、皆に満遍なく意見を言ってもらうのと、記録を残す意味から考えると、カードに記名入りで、キーワードでよいから意見を書いてもらう方式の導入につて検討すべきであろう。

(松永一郎)

1.     原子力施設立地の地元の小、中学校の先生方の口から直接、原子力教育に関する色々な問題点を聞けたのは、今後の原子力推進活動のために非常に参考となった。また先生方にとっても、日頃接する事の無いシニアや福井大の教員、学生との対話は大きな刺激になったようである。

2.     Eグループは「立地地域としての誇りを持たせるには」いうテーマであった。美浜地区は茨城県大洗町とともに、全国の原子力教育の先進地区となっており、平成19年度から副読本なども独自に作ってエネルギー・原子力教育を推進していることから、当然のテーマと考えていたところ、参加した教員から「なぜこのテーマなのか」といわれてはなはだ驚いた。「嶺北の人からよくそんなところに住んでいられるのねといわれたが反論できなかった」とのこと。原子力についてののイメージがないためであり、生徒に教える先生自身の知識が不足している事を痛感した。

3.     その一方で、もと反原子力であった社会科の先生が、美浜町に来て地元の原子力関係の父母との交流を通じて、原子力の安全性と重要性について知り、原子力推進に変った事を体験談を交えて説明した。教育者に関しても、地元の原子力施設関係者との信頼関係が最も重要であることを改めて感じた。

4.     今回の対話方式を立地地域の原子力教育推進のモデルケースとしてPRして、他の立地地域にも拡げていけないものか検討する必要があろう。

 

添付資料

1.美浜町小中学校先生方の事前アンケート結果と疑問質問への回答

2.福井大学、福井工業大学学生の事前アンケート結果と疑問質問への回答

3.参加者名簿

4.事後アンケート結果:美浜町先生

5.同上:福井大学、福井工大学生

6.同上:高専・大学先生、原子力関係者

7.同上:SNWシニア

 

最後に、懇親会から・・・・