北海道大学における学生とシニアの対話実施概要


 松永一郎

1.実施主旨

 昨年度から続けている「学生とシニアの対話」の北大版。日本原子力学会の学生連絡会及びシニアネットワーク(SNW)並びにエネルギー問題に発言する会の活動の一端として、原子力/エネルギー系を主体とした学生とシニアの交流を図る。なお今回で通算7回目となるが、SNW主催の活動としては5月に発足してから初めての「対話」となる。

 

2.対話の目的

 原子力系理系学生等とシニアとの対話を通して、学生とシニアの相互理解を図ると共に、今後の原子力、エネルギー産業について共に考え、これからの対話のあり方やエネルギー教育の実践あり方の参考にする。また、彼ら学生が社会へ出るまえに、原子力OBの経験や気概を少しでも吸収できる機会を提供し、今後の実務への自信に繋げてもらう。

 

3.対話の実施

(1)日時 平成18年9月26日() 14:00〜17:50   

(2)場所 北海道大学工学部

(3)参加者

 @対象学生  40名(学部生11名 大学院生29名)

学生連絡会:1名(武蔵工大)

  学生側幹事:1名(北大)

(実際の出席者は35名。当日急遽参加を取りやめた者、予約なしで参加した者あり)

Aシニア  

SNW会員及びエネルギー問題に発言する会会員13名

天野治、荒井利治、石井正則、伊藤睦、小川博巳、金氏顕、岸本洋一郎、竹内哲夫、林勉、原田雄平村田扶美男、山崎吉秀、松永一郎

 B大学

  北大大学院エネルギー環境システム専攻  島津洋一郎教授

  北大大学院工学系教育研究センター    吉川孝三教授

  九大大学院エネルギー量子工学部門    工藤和彦教授

 

(4)実施内容 

  @総合講演 

・エネルギー問題を原点から考えよう    林 勉 氏

A対話

 7グループに分かれ、シニア1〜2名に対して、学生が5〜6名ずつついて対話。

 島津教授、吉川教授、工藤教授はオブザーバーとして、グループに入った。

対話の題材は学生に対する事前アンケートの結果から、各グループが決めた。

対話終了後に各グループから対話内容のまとめと説明がなされた。またシニアを代表して、伊藤氏から講評が、島津教授からは感想がなされた。 

 

5)結果

 シニアから感想を収集。学生には事後アンケートを実施した。

 

(シニア感想概要・・個別意見をある程度集約)

@総じて言って対話は非常にうまくいき、成功した。その理由としては今までの経験に基づき、事前アンケートにより「同じ興味を有する学生を同じグループに配分した」という的確なグループ分け、参加したシニアの数も多く、各グループに2名入れたということがある。もちろん幹事役の学生たちと、先生方の長期にわたる貢献が大きいだろう。

A学生は皆素直であり、シニアの説明や体験談をそのままに受け入れる傾向がある。原子力専攻も、かなりの自信をもって選択してきている。その一方、人の言うことにあまり疑問を持たず、反論、反発しないので多少物足りなさを感じる。広々とした大地と豊かな自然の中で勉学しているために、あまり細事にはこだわらず、反原子力の風潮も気にしない気風を感じた。

B原子力系の学生だけでなく、機械系の学生や化学系、地学系の学生も混じっており、色々な専攻の学生を対象にして対話ができるのは良いことである。これからも原子力系の学生が中心になって、他の科、学部生を集めるのは、学生間の交流に繋がり、良いのではないのか。なお、どの学生もピークオイルの理解や原子力の必要性等もよく認識しており、レベルの高さを感じさせた。

C学生は高校まで殆ど原子力、放射線の教育を受けておらず、原子力専攻になってから初めて、そちらの方面の教育を受けており、どの学生も現在の国の小中高教育の不備を訴えていた。

D対話の時間が少なく、もう少し余裕があったほうが良い。テーマの選定に時間かかるので、全部のグループが同じテーマで対話するとか、キーワードやテーマ案を予めシニアが準備しておくというのも一策。できれば、学生が事前に集まって予備打合せを行い、テーマの絞込みや、シニアに対する質問事項などを準備しておけば、さらに効果的ではないか。

 

(学生のアンケート結果概要)

 35名に配布し、24名から回答があった。

学生とシニアの対話の必要性を感じたものは24名(100%)、対話の内容に満足したものは23名(95%)、事前に聞きたいと思っていたことが聞けたというもの16名(67%)であった。またエネルギー危機、及び原子力に対するイメージに変化があったものはそれぞれ16名(67%)、11名(46%)であった。

 一般市民層に対する原子力の広報活動がうまくいっていないと思うものは23名(95%)で、殆どのものが広報活動のやり方を変えないとダメと感じている。 

以下にその内容を示す。

回答率:24名/35名(69%)

(1) 「学生とシニアの対話」の必要性についてどのように感じますか?

1.非常にある    21                                                                        

2.ややある                                                                                                

3.あまりない                                                                                                

4.全くない                                                                                                 

           24      

(2)エネルギー危機に対する認識の変化はありましたか?                                           

1.大いに変化した                        

2.多少変化した                            12                                                                        

3.あまり変化しなかった              7                                                                             

4.全く変化しなかった                  1                                                                             

                                       24         

(3)原子力に対するイメージに変化はありましたか?                                                  

1.大いに変化した                                                                                                        

2.多少変化した                            11                                                                           

3.あまり変化しなかった              9                                                                             

4.全く変化しなかった                  3                                                                             

                                       23         

(4)事前に聞きたいと思っていたことは聞けましたか?                                  

1.十分聞けた                  16                                                                           

2.あまり聞けなかった    7                                                                             

3.全く聞けなかった                                                                                      

                         23         

5)対話の内容は満足のいくものでしたか?                                                                

1.とても満足した           1                                                                          

2.ある程度満足した       12                                                                        

3.やや不満だ                                                                                              

4.大いに不満だ                                                                                             

                         2        

(6)学生、一般市民層に対する原子録の広報活動は、現状うまくいっていると思いますか?  

1.そう思う                                                                                                

2.そう思わない              23                                                                        

3.わからない                                                                                   

                         2                    

 

4.まとめ

 今回で、昨年7月に始まった対話は7回目となり、初めて北海道地区での開催となった。日本原子力学会秋季大会という大学側にとっては忙しい最中の開催ではあったが、40名近くの学生が集まり、そのうちの1/4が非原子力系の理系の学生であった。

実施後のアンケート結果を見ると、学生側、シニア側の満足度は高く、成功したといってよいだろう。

北海道は広々とした大地と豊かな自然に恵まれており、明治の初めにクラーク博士を迎えて、札幌農学校としてスタートした伝統が今でも生きているためか、学生たちもきわめてのびのびとした感じで、反原子力の風潮などには煩わされず、率直に原子力のよさを評価し、自信をもって原子力を専攻した学生が多い印象を受けた。また、非原子力系学生も自ら進んで積極的に対話に参加してきただけに、エネルギー、原子力に対する興味が大きく、対話でも進んで発言するものが多かった。今後実社会に出るに当たって、原子力系か否かを問わず、彼ら学生たちにとって、この対話から得たものは決して小さいものではなかったに違いない。

 対話の運営は順調であった。学生側責任者の錦見篤志君(M2)の力量に負うところ大であるが、島津洋一郎先生をはじめとする諸先生方のバックアップや学生連絡会からのノウハウの伝授等にも助けられたことであろう。

 

 最後になりますが、日本原子力学会秋季大会の準備でお忙しい中にもかかわらず、今回の対話の開催を陰で支えて下さいました北海道大学の島津洋一郎教授、吉川孝三教授、奈良林直助教授他の方々に深甚なる感謝の意を表します。

 

5.今後の予定

 11月18日(土) 14:00〜18:00 対話in東京(東大における東都4大学(東大、東工大、武蔵工大、東海大)の原子力系学生とシニアの対話)

6.対話写真

 

7.添付資料

添付1  シニア感想

添付2  学生側事後アンケート結果


学生総合司会: 錦見 篤志 君(M2)

 

シニアの紹介


対話風景その1

 

対話風景その2

 

学生発表

 

伊藤 睦 SNC運営委員 講評

 

 

 

島津洋一郎 北大教授 感想

 

羽倉尚人 学生連絡会会長 挨拶

 

懇親会風景 その1

 

懇親会風景 その2


添付1 シニア感想

 

天野 治

伊藤睦さんと一緒にEグループで参加しました。北大からは、博士課程2年の小野綾子さんをまとめ役に、高田さん、吉田さん、田辺さんが参加されました。最初から結構フランクに議論しました。伊藤さんの用意された資料と私が原子力学会誌11月号に掲載予定の原稿を補足として使いました。大きな議論は3点で、一つは原子力発電の必要性、二つめは、今の学生に望まれること、3つめは、電力会社の不祥事と倫理観です。二つめに関しては、「この対話をすることで、たぶん就職は大丈夫でしょう。なぜなら、面接官よりも知見の豊富なシニアと議論することで自信がつく。また、そのネタなり考える方法を得ることが出来たはず。」と申し上げたら学生皆さんうれしそうでした。3つめの倫理観については、「上司の指示、命令が自分の意見と違っていたら、会社を辞めるか、従うか」との学生さんの質問がきっかけになって開始したものです。ここは、会社を経営された伊藤さんとの若干の対立をしながら、議論が展開されて、おもしろかったし、結論は出なかった。ただ、上司との常日頃のきちんとした自分の意見をいう対話、法を守るという信念、そのためには時には回り道をすることもあるが、また、トラブルが起こることをおそれないこと。(ここが伊藤さんとの対立、伊藤さんの理念はトラブルを起こさないように最善の注意を)「ある確率でトラブルは発生する。そのトラブルに倫理観を持って対処する。トラブルを起こしたことで周りからの非難、中傷があるが、それに耐える個人の強さが大事」が私の意見。

荒井利治

 対話in北海道では本当にご苦労様でした。回を重ねる度に、新しい感動があり、また反省があります。

今回感じたことは、北海道と言う北の大地の環境で、伸び伸びと勉学している学生と話して、その素直さ、純朴さを真っ先に感じました。

私たちのグループでは、特に原子力の意義や社会とのかかわりの問題を直接取り上げず、「社会に出る前に何を身につけておくべきか」という学生の問いかけに答える形で「対話」を進めたので、余計その感を深くしました。

その一方でこちらの話や質問に、疑問があれば反論すると言った、若さゆえの、反発、熱気がほとんど無かったのが少し気になりました。もっともお互いに短時間でそこまで打ち解けるのは無理かもしれませんが。

今後のやり方として事前に当方の履歴、考えを先方に伝えておくのもよいのではと思いました。今回石井正則さんが、初めての参加と言うことで、「日本流「モノつくり」の経験と原子力の将来」と題する小文を1ページ(A4)にまとめて来られ、当日配布されたのは大変有効であったと思います。

内容は

     I.  私の経歴

     II. 原子力と私の歩み

     III 日本の将来

     IV 皆さんと今後の社会への期待

 

私も今後、このような立派なものはできませんが、単なる経歴だけでなく考えを簡潔にまとめて示せればと思っています。    

 

石井正則

原子力専攻以外の学生も含め、エネルギー問題、とりわけオイルピークと原子力の重要性について大変すなおに理解されたことに感動を覚えた。また、中高教育ではほとんど原子力や放射線に関する教育を受けず、むしろJCOなどマイナスイメージの報道に接したにもかかわらず、そういったことに影響されず、真剣に原子力の将来性を期待していることが頼もしく感じた。しかしながら周囲にはいろいろな考えを持った方がいるので、これらにも聴く耳を持つと同時に、自信をもって正しい判断を行えるようになることを念願する。

私の属したGグループでは、原子力専攻者の場合は原子力業界に入るとして、その場合に企業等の一員として活躍するには、学生時代にどのようなことを身に付けておいたらよいかという点などが、共通の関心事項であった。これは原子力専攻者以外の分野にも通用するものであり、また絶対的な答えがあるわけではない。専門家として、また社会人として豊かな人生に送るため、参考になりそうな私たちの経験を話させていただいた。

就職後の企業での人生では、当人の希望と周囲の期待との乖離や、期待する結果が得られない場合があろう。これから遭遇するいろいろな課題に、信念をもって力強く対応していってもらいたい。

 

伊藤 睦

私は今回で3回目ですが、今回が最も充実した対話会だったと感じました。その理由は

(1)参加学生数が多くかつ、原子力専攻以外も参加していた。

(2)準備が行き届いており、学生の参加意識も高かった。(学会SNWの活動として認知された事、島津先生と錦見君のご尽力のお陰)

(3)シニアの参加も15名と多く、各グループに2名以上のシニアが対応出来た。

 

今回の対話会で感じた学生の意識は次のように感じた。

(1)自分達は原子力の必要性は解っている。

(2)社会にどうやって解ってもらうかを自分達も悩んでいる。

(3)実社会が自分達に何を具体的に期待しているのか、酌全としてない。

 

今回の対話会の反省

(1)各グループの討論が幅広い問題(エネルギー問題から、原子力業界の将来問題、社会の受け入れ問題、就職後の対応問題など)を取り上げたため、各グループほぼ同じような議論になったようだ。(Gグループを除く)

(2)いろいろな事を対話できた事は良かったが、時間の制約もあり、突込みが不足していたようだ。

(3)福井での対話会の様に、グループ毎にある程度テーマを絞り込む事を検討すべきではないか。

(4)対話会当日は北大の先生の参加が少なかったことそして翌日の企画セッションには北大の学生の参加が少なかったのは、学会準備・対応の為であろうが、折角の機会であるので残念だった。

 

 小川博巳

 総じて言えば「大成功」であったと、ご同慶の至りに存じます。

ひとえに準備万端を整えられた、島津先生および学生側の錦見君他、北大関係者のご尽力に依るところ大であったと、感謝します。     

 

@事前準備の効果

事前アンケートの実施とそれを基にしたグループ編成など、過去の運営ノウハウが活かされて、効果的でした。

欲を言えば、学生も当日になって初めて顔合わせしたのが実態のようだが、出来れば事前の予備打ち合わせがなされていれば、対話テーマの絞込み、シニアに対する質問事項、原子力産業への注文等など、更に効果的な対話が出来たのではなかろうか。「シニアが来て話しを聞けるそうだから、参加してみようか」と、気楽な参加であったように見受けられ、それ自体を批判する積りはないが、折角のチャンスを活かして「参加シニアから何かを搾り取ってやろう」との気概を求めるのは、無理な注文だろうか?

 A ”Boy's be ambitious!”

学生の気風に、純朴でナイーブなものが感じられて、好感が持てた。

若者らしい初々しさと、伸び伸びと豊かで感度の良い応答は、これからの原子力を委ねる人材に極めて大切な要素だ。しかしながら敢えて逆説的に言えば、今は未だガムシャラニ、誤りを懼れず突き進む積極性も大切だ。今まさに「新たな原子力の帳」が開かれようとしている時こそ、受けの姿勢でなく「自ら切り拓くマインド」、まさに ”Boy's be ambitious!” を期待したい。

Bたった半日の対話でも、得たものは大きい。

グループ別けして初対面の挨拶と、懇親会を経て別れの挨拶での目つきに、大きな違いを見出して、学生諸君が得たものの大きさが推し量られた。シニアの語った言葉は千差万別であった筈だが、その中に色々なヒントと指標を見出し、シニアの熱い思いを自らの胸の内に醗酵させ始めていると見た。

しかしながら、一回の対話に全てを期待するのは、無理がある。受け手の学生も千差万別だ。卒業までに2度・3度の機会が持てれば、より効果的なのは目に見えている。北海道地域のシニアとの対話会を、是非とも軌道に乗せたいものだ。学生諸君は何の遠慮も要らない。シニアをコキツカイ、大学と産業界を大いに利用して、自らを育てる環境を創り上げることに ”hesitate”すべきでない。何故なら、その様な積極的な若者こそ、企業が求めている人材なのだから。

 C「発言する原子力屋」になって貰いたい。

過去の原子力業界の最大の反省は、「黙して語らず」であった。私個人の反省でもあるが、このことが今なお、社会の理解が得られていない一因であることを考える時、次世代を担う若者には、是非とも「発言する原子力屋」になって貰いたい。身近な者に自ら進んで語り、一人でも多くの市民が納得し、「お前がやっている原子力なら安心だ!」と言わせて欲しいものだ。及ばずながら、身の丈に合った市民活動をしている者のとして、「先ず隗より始めよ」との古語を学生諸君に贈りたい。

幸いにして、「エナジートーク21」或いは「拠点大学」として小中高教職員との対話の機会などがあると伺った。是非ともこれらの機会を利用して、自らの言葉で語りかける訓練を積んで貰いたい。一対一から一対多数へと広がり、やがてはメディアを介する市民への情報発信に展開しよう。「発言する原子力屋」として頑張って貰いたい。

D学生とシニアのメールアドレスを交換しては如何?

情報公開が懸念されている昨今ではあるが、真摯に原子力を学ぶ学生は、社会のルールを守り自らの倫理観を持っていると信じたい。そのような前提に立って、シニアと学生のメールアドレスを交換し、対話を接点として、更なる交流が何がしかの相談・支援に発展できるならば、大方のご賛同が得られるかと愚考するが如何であろうか。

 

金氏 顕

ボーイズ・ビ・アンビシャスの北海道での若き学生との対話はこれまでと又違った感じかと期待して参加した。
1.対話の全体の準備は大変行き届いて、学生代表の錦見さんを中心とする世話役の労を多としたい。また、彼らを支援し指導した島津洋一郎教授の働きも大きい。島津先生は4月ごろに9月の秋の大会にあわせ北海道で行うことを話しした時に、5月の九州にわざわざ北海道から参加してくれて体験していた。これからも新たに行う大学は先生、学生にその前に経験していただくことが重要で、そのために遠路来て頂く旅費宿泊費の予算も確保した。
2.私のグループ6人には原子力専攻4人、機械2人で、特に機械の学生が大変に前向きにエネルギー問題、原子力問題に興味を持ってくれたのは大きな成果。また企業が若者に何を求めるかなどの話にはみな大変興味を持って聞いていた。これからも原子力の学生が中心になって、出来るだけ他の学科、学部の学生を集める、そして学生間の交流の機会を作ることも必要。
3.北大の学生は素直でおとなしいが芯は強いと言う感じ。広く緑豊かなキャンパス、夏は涼しく、冬は4ヶ月以上雪に閉じ込められる気候、豊かな自然、豊富な農畜産物、等本土とは違った歴史風土に育まれたものだろう。九州や関西それぞれ違う印象で、実社会に出ても出身大学や地域のDNAは大事にして欲しい。』

岸本洋一郎 

原子力や放射線について、小中高校で教わったことのない学生が殆どであった。お粗末な教育の悲しい現状を目の当たりにした感がある。原子力関連の専攻に進んだのは、勧められてのことではなく、原子力発電所の将来性や、廃棄物処理と環境問題への興味など、それぞれに原子力のイメージをもつ機会があってのことだったようだ。高校までの教育の不足、基礎的知識と的確な情報の不足は、憂うべき事態であり、このことは学生たち自身も同感のようであった。ナトリウムの漏洩でなぜ10年以上「もんじゅ」が止まるのか、理解できないという疑問もあった。

 

ピークオイルの理解、原子力の必要の理解など、学生たちの素直さには、ちょっとした驚きであるが、それだけポテンシャルが高いと期待できるかも知れない。同時にリアルさと迫力には不足していると感じたが、これは実務経験、現場経験がほとんどない状況ではやむを得ないことかも知れない。現場体験を高等教育期間中に取り入れることができれば、教育効果は一層高まるのではないかとも思う。

ともあれ、北海道以外の出身の学生も多く、卒業後全国に散ると思うと、今後が楽しみな学生たちである。良い対話であった。

 

参加人数が多かったためか、自己紹介などにも時間を要し、幾分時間不足気味だったかなとも思いますが、毎年やるのであればこの程度かなとも思います。

 

竹内哲夫  

@多人数の学生が参加し、原子力専攻以外の学生が多く参加したことは、SNWの活動方針からも「原子力特殊部落視の排除」からは良かったと思う。

  参加学生はこれまで先例の中で最もナイーブで純粋で物に囚われていない感じであり、一方ではオイルピーク論などは全く素直に理解し、信じていた。

  この反面、原子力専攻の学生が、原子力のある一面の優位性を主張する、プロの専門的なアッピールが殆どなく、開発の進め方や倫理問題などの入門的な発表が多かった。

A学生は、原子力専攻になって初めてエネルギー、原子力、放射線といった教育を受けたことには、彼等も現在の国の小中高教育の不備を訴えていた。

「入試に原子力を出題」は速効性ある改革だと言っていた。ただ周辺の目が原子力専攻に冷たいという「隠れキリシタン」的な抑圧はなく、実に北国らしくおおらかで自由闊達な雰囲気で勉学している若者だった。

B次の日午前の学会SNWの部での、今回の学生代表の錦見君のプレゼンテーションはすばらしかった。前夜、すべて終わってから何人かと語って作ったとのことだが、このような熱意、自発性こそ、時代をになう若者に期待される。プレゼンの構成も良かったが、彼が使う日本語の用語が極めて正確で明確だったのが印象に残る。正しい日本語は北海道にあると再認識した。

C関係各位 多謝  

 

林 勉 

対話 in 北海道ご苦労様でした。SNW主催での最初の会でありましたが、関係者の皆様のご尽力のおかげで成功裏に終えることができまして、ご同慶のいたりです。

学生さんたちが大変に素直に、原子力の必要性を理解し、そのために自分達がどんな貢献ができるかということに思いをめぐらすところまでに成長したことは大きな成果であったと思いました。この力をどのように拡大していくかが今後の課題であると思います。   

 

原田雄平
     
小生は、シニアネットワークへの初めての参加の機会をいただき、次のような感想を抱きました。
(1)参加された学生さんから、「コミュニケーションは先ず、聴くこと」 Communication  is the first listening. を教えられました。学生さんの態度や挙動から、「先輩から、何かを盗ろうとする真摯さ」と「理解する力の速さと深さ」とともに、上品な「素直さ」感じました。
(2)しかしながら、小生の学生時代(ちょうど1970年頃の学園紛争)と比べる と、「素 

直過ぎる」のではとも、思いました。ひとつの例えとして、他者の論文を読む際には、先ず、疑って読め」と、ある先輩から、小生は教わりましたが、小生の言葉では「学びつつ、批判せよ」です。

(3)だからして、北大の女子も含め、男子は、もう少し「生意気」ぐらいが、ちょうど良いと、考えました。

  
最後に、島津先生、吉川先生、ならびに、錦見さんを始め学生の方々に、このようなコミュニケーションの機会を与えられたことに感謝します。                                                                

 

松永一郎

 学生との対話は今回で7回目(武蔵工大、東工大、八戸工大、福井大、対話in関西、九大、北大)となる。対話担当として、全てに参加してきた。どの大学(関西のみ4大学合同)もそれぞれ特徴があるが、今回の学生が一番率直に原子力のことについて、あまり疑問をもたず、自分たちの進んでいる道に間違いが無いという気持ちで将来を見ている感じがした。高校までは、どの地域の大学の学生たちも押しなべて原子力についての教育を受けていないので、この違いがどこからきているのかはよく分からないが、道内では原子力に関する些細なトラブル情報などに、あまり振り回されないという風土があるのかもしれない。ともあれ、このような学生たちが、今後実社会に出てから全国の原子力産業界を自信をもって引っ張っていくであろうことに、心強さを覚えた。

 翌日のSNWシンポジウムで対話の学生幹事の錦見さんから「わずか半日の対話であったが、一般講義の何日分にも相当する収穫があった」という感想を聞き、シニアサイドとしても、対話の継続実施に対する自信を深めた次第である。

 成功裡に終えることができたのは、島津先生、錦見さんをはじめとする大学側の協力に負うところが大きく、深甚なる感謝の意を表します。

 

村田扶美男

小生初めて参加させていただきました。下記の感想を持ちました。
(1)熱心な議論を通じて、主催者側/参加者(学生)の意思疎通が図られ、今後の学生側のものの考え方に少なからず影響 を与えたと思います。特に、学生時代はエネルギー問題などに興味がなく(白紙)なので、こういう議論は良い印象を与えたと思います。

(2)基調講演、グループ討議は時間が少なくもう少し余裕がほしいと思いましたが、色々な制約の中で仕方ないかもしれません。

(3)グループ討議は議論の入り口の為のkey wordなり、項目をシニヤ側から議論のテーマとなる候補を準備していたほうが良いかも知れません。勿論それに縛られることは有りませんが。
またテーマに沿って、共通データなどを準備しておくともっと説得力ある会話ができると思います。この方法はますます時間を要することになり兼ねませんので要注意です

(4)初めてこういう対話に参加させて頂き、有難うございました。良い経験になりました。

最後になりましたが、多勢の参加を得て成功裏に終わったことは、島津先生はじめ学生諸氏の努力のお陰と思います。深くお礼申し上げます。
 

山ア吉秀

私達のグループでの討議でも、又後程の各グループ発表でもそうでありましたが、原子力の必須性を心得た上で、安全・安心・マスコミ・倫理等々対処しなければならない問題があると認識し、真面目に取組んでいる姿がうかがえた。多分これは島津教授他、先生方の日頃のご指導の成果ではと拝察いたします。

 一方学生ですから、これから社会に出てゆくに当って、あるいは社会に出てから、何を心掛けておくべきかということに大変な関心があることがうかがえた。特に懇親パーテイーの席上で熱心に問いかけられるものですから、私の場合3人しか対応する時間がありませんでした。発表の学生さんのなかで麻雀でコミュニケーションをといった面白いものがありました。私も同感で、大学では原子力の基礎知識を身につけるのは勿論ですが、一般教養や趣味といったものも身につけて、社会のなかで、いいチームプレーが出来る人間に育って欲しいと思います。最近電気事業者も、採用に当って、体育系を重視する風潮も出てきておりますが、体力・精神力・チームプレーを大切にする1つの現れであると思います。

 


添付2 学生側事後アンケート結果

 

(1) 「学生とシニアの対話」の必要性についてどのように感じますか?

1.非常にある    21                                                                                     

2.ややある                                                                                                

3.あまりない                                                                                                

4.全くない                                                                                                 

           24                                                                                     

                                                                                                         

理由(回答番号)                                                                                      

様々な世代の人と話をするのはいいことだから。(1)

シニアの方々の経験や、そこから生まれる考え方を聞くことができるから。(1)

普段聞くことのできない現場の話が聞けるから。(1)

現場を離れた方の意見は、率直で制約を受けていないので、非常にためになる。(1)

普段では絶対にない対話の機会であるから(1)

実際に第一線で働いていた方との対話はよい経験になる(1)

講演会などではしにくい素朴な質問などが気軽にできる場は重要だと思うため。(1)

原子力についての知識を広めることができる。(1)

シニアの方と話す機会がなかなか無いため。(1)

少人数で話し合うことで現実味を持った話を聞けたので。(1)

ただ原子力の勉強をするだけではなく、関連した、幅の広い話を聞ける。シニアの方の経験に基づいた話を聞ける事が大きい。(1)

実際の仕事と大学での勉強との差を知ることができとてもいいと思う。(1)

学生にとって非常に貴重な機会である。 (1)

社会で活躍してきた方から話を聞くことができた。 (1)

普段聞けないような話が聞ける良い機会だから。 (1)

現場で長い間働いてこられたシニアの方々の経験や話を聞く機会は貴重であったから ()

一般市民層に対する意識改正のために、将来的に中心となる学生が自分たちの役割を再認識するとても良い機会だと思います。(1)

若い世代は次の世代を担うので、若い世代の意識を変えることが大切だから。 ()

マスコミが報道しないこともあり、深刻さを普段感じることがなかったから。()

重役を担われた方々との話をすることはとても有意義だから。()

 

(2)エネルギー危機に対する認識の変化はありましたか?                                          

1.大いに変化した                                                                                                     

2.多少変化した                            12                                                                        

3.あまり変化しなかった              7                                                                             

4.全く変化しなかった                  1                                                                             

                                       24                                                                           

                                                                                            

理由(回答番号)                                                                            

石油の現在の採掘方法を聞いて ()

自分を含めて、日本全体に危機感が足りないことに気づいた。 ()

原子力に関する議論ではなく、就職関係の内容だったから(2)

エネルギーに関しては今までの認識。(2)

オイルピークについて関心がわいた。 (2)

実際に現場で働いていた方の話を聞いて刺激になった。(2)

今まで聞いたことの無かった話が聞けたから(2)

知識が増えたため(2)

将来展望など自分なりに見聞きするようにしていたので、大きな変化というわけではない

個人的に普段からエネルギー問題には興味があって、世界全体ではどうか、日本の現状と

けど、違う観点からの情報が得られて良かったです。(2)

深刻さがよくわかったので。(2)

に感じるにはもう少し時間がかかりそう ()

大学の教育で、エネルギー危機について話を何度か聞いているので、再確認できた。 ()

基本的には知っている内容。時間がもっとあれば深い話ができた。(3)

対話前から危機感を持っていたため ()

ある程度同じ認識だった(3)

元からの認識が深まったというのが当てはまる。(4)                                                                                 

 

(3)原子力に対するイメージに変化はありましたか?                                    

1.大いに変化した                                                                                                        

2.多少変化した                            11                                                                           

3.あまり変化しなかった              9                                                                             

4.全く変化しなかった                  3                                                                             

                                       23                                                                                         

                                                                                            

理由(回答番号)                                                                            

現場で仕事をしてきた人たちが気さくな方々が多く、原子力に対し親近感を感じた。 ()

EPRなどのエネルギー収支が高いなどの原子力の良い点を生かすべきだと思った(2)

自分の勉強不足の処理の話を聞きたい。(2)

エネルギーを取り出す火力なども同様にリスクを持っていると思った。(2)

再認識された。(3)

特に変化なし(3)

元々いいイメージ。(3)

元々必要性を強く感じていた。(3)

学部時代に多くの先生から原子力について教わったので、原子力のメリット、デメリットや、報道されているようなマイナスのイメージなどはないです。 (3)

元々持っていた知識を掘り下げたから (3)

今まででも原子力は必要であると思っていたため(4)

 

(4)事前に聞きたいと思っていたことは聞けましたか?                                             

1.十分聞けた                  16                                                                           

2.あまり聞けなかった    7                                                                             

3.全く聞けなかった                                                                                      

                         23                                                                           

                                                                                            

5)対話の内容は満足のいくものでしたか?                                                   

1.とても満足した           1                                                                          

2.ある程度満足した       12                                                                        

3.やや不満だ                                                                                              

4.大いに不満だ                                                                                             

                         2                                                                          

                                                                                            

理由(回答番号)                                                                            

自分が足りなかった部分の知識を多く頂いた。(1)

原子力以外のことも聞け、とても満足した(1)

知りたいことが十分に聞けたので。(1)

実際にたくさん経験を積まれた方の話を聞けたので。(1)

議題がしっかりと定まっていない感があった(2)

発言が少なめだった ()

シニアの方が思っていた以上に元気で、学生よりしゃべっていたから(2)

やはり時間、もっとじっくり話を聞きたい ()

タグループの話をもう少し聞きたかった ()

いろんな面白い話が聞くことができたので(2

対話と言うより一方的に聞いてしまった。(2)

自分の事前準備が足りなかった。(2)

時間が少し足りなかったから。(3)

(6)学生、一般市民層に対する原子録の広報活動は、現状うまくいっていると思いますか?  

1.そう思う                                                                                                

2.そう思わない              23                                                                        

3.わからない                                                                                   

                         2                                                                          

                                                                                            

理由(回答番号)                                                                                            

PRセンターや展示場が充実してきているとは思うが、小中高校の教科書の充実が必要(2)

実際に原子力についてどう思うかを聞いてみても、間違った情報を得ていることがわかる。(2)

一番の課題であると思う。 解決できれば原子力は明るいと思われる。()

原子工学科以外の学生や友人から原発に対するいい意見が聞かれない。(2)

実際のところ普段の生活の中で、そういったものをそんなに見ていない気がするため。 ()

最近はずいぶん原子力への理解(必要性の認識)が進んでいると思うが、まだまだ危険なエネルギーというイメージは強いだろうと思う。 ()

このような活動があることを最近知ったため。(2

反対派がいるため。(2)

正しい理解を得られていない、一般にブラックな部分が多いと思う。(2)

TVの影響は大きいため(1)

まだまだこれからだと思う。(2)

難しいから聞く耳を持たない。(2)

未だに不毛な裁判などが続いているから。(2)

安心を与えるには十分でなく、原子力に対する不信感がまだあるから。(2)

一般的な偏見があり、自己や故障ばかり大きく取り上げて報道し、原子力に対する大きな誤解を招いていると思います。(2)

一般市民層からの反感は、まだ厳しいものがあるので。 (2)

身近に反対する人がたくさんいるので。(2)

 

 (7)本企画を通して全体の感想・意見などがあれば自由に書いてください                    

全体のパネルディスカッションがあればいいと思います。

貴重な話を聞くことができて良かった。

原子力反対派の人間がいれば、ひと味違う対話になったかもしれないと思う。

もっとエネルギー問題に関心を持ちたいと思った。

授業と違い、筋の通った一方向からの見方ではなく、多面的な見方で話ができて面白かった。

貴重な話を聞ける数少ない機会で、とても有意義な物になりました。

私は機械なので、違う分野の方々とお話しできて本当にためになりました。

対話で原子力反対派のグループを作ったりすると、さらに充実したものになると思います。

以上