「学生とシニア」の対話実施概要

−対話 in北海道07


石井正則

1.実施主旨 

 「学生とシニアの対話」の2007年度第一回として、北海道大学で実施した。北海道大学は昨年926日に実施しており、2回目の対話である。

2.対話の目的

 原子力系学生とシニアとの対話を通して、学生とシニア間の相互理解を図ると共に、今後の原子力、エネルギー問題について共に考え、学生の夢の実現を支援することをねらいとした。対話は原子力OBの経験や気概を少しでも吸収できる機会を提供するものでもあり、社会に巣立つにあたっての心構えの参考にもなろう。

 今回の対話は、昨年9月に引き続き2回目ということから、リピーターを如何にして参加してもらうことに配慮し、学生幹事の本間悠斗君の主導により学生が聞きたいこと(学生のニーズ)を事前に確認し、シニア側がそれに応えるという方式を採用した。この方式は今後の対話に進め方を示唆するものとなろう。

3.対話の実施

(1)日時 平成19年21日(

  1:00〜17:40  (懇親会10020:30)

(2)場所 北海道大学工学研究科 A4棟4F(A4-63)

(3)参加者

@     学生31名(原子力系)

修士課程 20名、学部生 11名

A     シニア

SNW会員、協力会員他  16

荒井利治、石井陽一郎、岩瀬敏彦、大橋弘士、小川博巳、金氏顕、金刺秀明、岸本洋一郎、齋藤伸三、土井彰、奈良林直、林勉、益田恭尚、松永一郎、三谷信治、石井正則

B     教員

北海道大学 奈良林直教授(対話にもシニア側で参加)

同上    杉山憲一郎教授(懇親会)

 (4)実施内容

 a基調講演

  『未来に向けて「エネルギー、環境、発展」を考えるー若人に未来の夢を託すー』  土井彰 氏

 b.対話

  学生が3名〜4名に対しシニア2名のグループ(全8グループ)に分かれて対話。

  グループ分けは事前に実施したアンケートにもとづきおこない、各グループ毎に学生の関心のある討論テーマを設定した。シニアもこれらのテーマに対応して組合せを決めた。

更に、当日、学生幹事より全グループ統一テーマとして、次の事項についてシニアから聞き、発表に含めることとの、要請が出された。

@       成功の秘訣

A       学生時代にやっておくべきこと

B       人生で一番真剣になった瞬間

対話終了後、各グループの討論テーマと3項目の統一テーマについて、対話内容のまとめを発表、シニアを代表して齋藤伸三氏から総合的な講評を行なった。

5)結果

シニア各人から感想を収集。学生に事後アンケートを実施した。

シニアの感想概要)

 学生幹事のリピーターに満足してもらえる対話にしようという意気込みから、学生側のここが聞きたいという点を前面に打ち出した結果、大変ユニークな対話となった。特に、あらかじめグループ毎に設定されたテーマの他、質問3題が出されたが、シニアの生き様や人生観、仕事への取り組み姿勢といったものが、これから社会に育つ学生にとって関心が高いことを示しているものと考える。

 これらを含め、今回の対話では学生にニーズが明瞭に出され、これに対応するというスタイルであり、学生の熱意を強く感じた。これらに応えるには、残念ながら時間が不足したが、懇親会でも熱心に質問された学生もおり、敬意を表する。

一方、特にエネルギー問題に関しては大学の授業とあまり変わらない内容との話もあったが、シニアは相当の危機感と使命感をもっており、単なる知識として以上のものを学生に伝えたいという意図をもっている。今後も引き続き学生に理解してもらう努力を続けてゆく必要があると考える。

 

(学生事後アンケート結果概要)

31名の参加者の内、19名から回答があった。(回収率61%)

@     対話の必要性について、全ての学生から「非常にある」と「ややある」との回答が95%を占めた。成功したシニアの経験を聞き、卒業後の仕事への取り組みの参考にしたいとの思いが反映されたものであろう。

A     エネルギー危機に対するイメージの変化については、「あまり変化しなかった」と「全く変化しなかった」が72%を占めた。エネルギー・原子力関連を専攻している学生が対象であったことから、原子力への理解が進んでいるからであろう。

B     原子力に対するイメージに対する変化についても、「あまり変化しなかった」と「全く変化しなかった」が72%を占めたが、エネルギー危機に対するイメージ同様、エネルギー、環境問題とその解決策として原子力を位置付けに対する理解がすすんでいる学生達が対象であったことを示しているものと思われる。一方、27%の学生が多少とも変化したと回答があったことから、シニアの思いを伝えることの必要性も感じられる。

C     事前に聞きたいと思っていたことが「十分に聞くことができた」と答えた学生は58%いる一方、「あまり聞けなかった」「全く聞けなかった」と応えた学生が42%いた。このことは対話時間が不足したことに起因したものと思われる。

D     対話内容に対する満足度は84%であった(「とても満足」と「ある程度満足」)。学生側の質問事項があらかじめ明確にされていたことで、シニアもそれに単刀直入に回答できたことと、時間不足の両面が影響したものであろう。

 

各設問に対する解答は下記の通りである。

1)「学生とシニアの対話」の必要性についてどのように感じますか?

1.非常にある    74%  2.ややある 21% 3.あまりない 5% 4.全く無い 0

2)エネルギー危機に対する認識の変化はありましたか?

1.大いに変化した 5% 2.多少変化した 26% 3.あまり変化しなかった 58%  4.全く変化しなかった 10

3)原子力に対するイメージに変化はありましたか?

1.大いに変化した 0   2.多少変化した  28% 3.あまり変化しなかった 55%  4.全く変化しなかった 17

4)事前に聞きたいと思っていたことは聞けましたか?

1.十分聞けた    58%  2.あまり聞けなかった   37% 3.全く聞けなかった 5

5)対話の内容は満足のいくものでしたか?

1.とても満足した 37%  2.ある程度満足した 47% 3.やや不満だ 11% 4.大いに不満だ 5

4.まとめ

 北海道大学では昨年9月に続き2回目の対話であった。今回参加した学生になかには昨年も参加した学生もおり、リピーターに参加してもらえる対話というのが課題であった。学生幹事の本間悠斗君のアイデアとご尽力の結果、学生側のニーズが鮮明に打ち出されたテーマが設定された。

 土井氏のシニアの基調講演でも、エネルギー問題とももに、学生を受け入れる企業における、期待される若い技術者像について触れたが、これは社会に巣立つ学生にとって参考となったと思う。 

当日追加された、社会を乗り切ってきたシニアの秘訣を聞きたいとうテーマ(追加質問3題)は、エネルギー問題を超えたものであり、シニアの人生観や生き様を参考にしてもらえるという点で、シニアにとっても関心あるものである。シニアとしても、これからの社会を託す若人の役に立てるテーマに幅広く対応して行きたいと考える。

 それにしても、時間が不足したのは残念であった。対話を効率的に進めるにしても、フランクに話を進め、学生の期待に応えるのは、ある程度の時間は必要であろう。今後の教訓としたい。 

複数の参加シニアから、対話を効率的に進めるうえで、あらかじめ事前アンケートや質問事項に対する回答を用意しておくなど、対話心得の必要性が提起され、早々に作成、次回から使用できるようになった。

「継続は力なり」というが、常に継続して参加することの価値や魅力を追いつづけることが求められるようになってきた。毎回新鮮で魅力的な対話を進められるよう心がけたい。

  今回の対話の準備と進行を精力的に進めていただき、リピーター参加に熱意をもって臨まれた北海道大学大学院エネルギー環境システム専攻修士2年の本間悠斗君のご尽力、ならびに、これを支えていただいた奈良林直、杉山憲一郎、島津洋一郎教授に感謝申し上げる。

 

5.今後の予定

 関西地区  630

 福井地区  714

 九州地区  928

 

6.対話写真

 対話写真欄参照

 

添付資料

添付1 シニア感想

添付2 学生側事後アンケート結果

 

参考資料 

学生事前アンケート結果



対話写真

総合司会・開会挨拶 本間学生幹事

基調講演シニアネットワーク 土井彰氏

対話風景

発表風景

講評 シニアネットワーク 斎藤伸三氏

懇親会

懇親会終了挨拶 杉山先生・奈良林先生

懇親会



添付1

シニア感想

 

 荒井利治

(下記の学生幹事本間悠斗さんに宛てたレターをもって感想分にかえます)

本間悠斗様

昨日の対話in北海道はあなたの素晴らしいリーダーシップにより立派な成果を上げることが出来厚く御礼申し上げます。

出席したシニアの皆があなたの取り纏めに感心していました。

私は特に、あなたが登校時にひらめいて提案された、シニアに対する質問3題という発想に共鳴いたしました。私たちシニアから単に知識を求めるのでなく、シニアがこれまでの人生で何を考え、何に注力し、何に感動したか。これらを通して時代を超えての伝達が行われることを期待したいと思います。

対話の会の運営は毎回その経験を活かして改良されてきたと思いますが、確かに今回は時間が少なかった気がします。次回は時間を長く取ることと、対話の実を挙げるため、シニアが自分の意見をいうだけでなく、学生の皆さんの考えを聞きだすことに注力すべきと思います。

 

石井陽一郎

率直にいえば今回の北海道の会も面白く、そして学生以上にSNWの大人の方が勉強になった(させられた)と思う。北海道の悠々とした雰囲気も気に入った。

@     あまり個人をあげつらうことはしたくないが、本間裕斗君の去年の感想文―かなりカラクチな挨拶だがユニバーサルな意見だ。実際話しにくい事情が山のようにあるのだからムリもないところがあるが。

A     次にこういった問題をやはり少しはのりこえてSNW側もモノをいわないといけないだろう。物理的なことでは基調講演は今後は少し縮め、懇談に時間を割くことも考えたらよいと思う。

B     すなわち、土井氏の前半の話は述べ単にやる(2度、3度とやると細かい点はともかく、またかと学生も感ずるだろう)よりもポイントに力をいれる、終わりの方(字が消えていたのは惜しい)は思いがありよかった。

C     次に講師陣だがしゃべりたい人はまだいるのだし、個性もあるはずだ。メンバーを毎度偏らせるべきではない。

D     本間君の最後の提起はエスプリがあった、成功秘訣、やっておきたかったこと、本気を出した話は厳しく結構重い、こちら側がやや曖昧摸湖となったがその中で真実をかぎ取ることも期待したいが。英語+αを複数取り上げたが、本当はコミュニケーションの問題でその中に日本の歴史、冗談のやりとり、理性的な討議のはずだが若者にはこれらを踏まえて頑張ってほしい。

E     毎度だがパーテイでの談話は実りが多い。

 

岩瀬敏彦

 気候の良い初夏の大学キャンパスに若いみなさまとの有意義な対話を持つことができ若い学生のみなさまの、何事も前向きに、積極的にとらえ、がんばっていること、将来の大いなる展望のあり得ること確信いたしました。

1.              対話の準備について

あらかじめ、参加学生の方々の事前のアンケートによるグループ分けと、シニアへの、対話テーマをお教えいただけたこと、出発前の準備として良い対応でした。

2.              対話の進め方について

前述のように、事前の枠組みが見えていたため、小生のグループでのFBRをテーマとしての対話は、円滑に進められたこと、良かったと思います。

特に、学生の方から、具体的なサブテーマをあらかじめ教えていただけたことから、出発前に、関係資料などを調べ、持参することができ、効率的な対話になったと思います。(小生は、FBR原型炉もんじゅに計画のスタートから関係の研究開発等に携わった経験をふまえての対応ができました。)

 

大橋弘士

 グループHのテーマは

     日本人はエネルギー危機に対してどの程度の不安を感じているか

     マスコミの影響力をうまく利用することで、エネルギー危機意識を変えることができるか

     エネルギーに関して学んだことのある学生はどうするべきか

でした。これらについてシニアと一緒に考えることが課題でした。

 これに対して、修士1年の高田修君が

     「発言する原子力屋」とは

     原子力エネルギーの必要性を浸透させるには?

     行政への対応

     学生及び技術者は原子力技術の地位向上のために何ができるか?

という設問と設問の趣旨を準備されていましたので、これに従ってスムーズに対話が展開されたと思います。上の設問に対しては、「技術者の生き方、姿勢が大事、発言するエンジニアたれ、身近な人から伝えていくこと」と伝えられました。

 また、本間悠斗君が準備された三つの質問に答える形でも話題が展開しました。これについては、「使命感を持って仕事に取り組む、問題から逃げない、世の中にもっと発言していればよかった」などが伝えられました。

 反省すべき点としては、次のようなものが考えられます。

     対話時間をもっと増やすこと

     学生は質問をする人、シニアは答える人でなく、お互いに質問をし、答えるような真に対話になるような方向に持って行くこと

     特に、シニアは話したいことをたくさん持っているので、一つ一つの話題の時間をたとえば5分以内に制限すること

     話題はすべて事前に学生とシニアに配布されていて、それぞれが事前によく考えておくこと

それらによって、さらに効率よく効果的に対話が展開するのではないかと思いました。

 いずれにしても学生諸君の取組は素晴らしいものでした。本間悠斗君のリーダーシップをはじめとして、例えばわがグループの高田修君のように事前に適切な対話の話題を準備された学生、積極的に対話に参加された学生諸君の努力が今回の対話を意義あるものしたと思っています。

 

小川博巳

対話テーマの設定と対話の成果

事前のアンケート調査により学生の関心事を整理し、グループ分けにも工夫を凝らすなど、対話が画一的になる弊害を排除出来たと思われる。また3点に絞ってシニアの本音を聴きだす試みは、過去の反省を生かして大変ユニークな対話会であった。本間さん他、準備に当たった皆さんのご努力を多としたい。

しかしながら、設定テーマによっては時間内で双方が満足出来る対話は難しかったかもしれない。事前にフリー討議などのチャンスが持てれば、「ここを聞きたい」との各人の勘所にポイントが絞れて、より充実した対話会になったかとも思われる。

予めメモを準備して来た学生もいたが、このような意気込みで臨んだ学生は、対話から確かなものを収穫したに違いあるまい。事前準備の大切さを会得し、これからの人生の良きトレーニングであったと云えよう。

対話の接点を拡張しよう

学生諸君の多くが対話会の意義を認めつつも、時間の制約などにより、聊か満足し難い思いが残ったのも本音ではあるまいか。たった一回のしかも90分の対話会では、所詮、多くを望むのは無理かもしれない。対話時間を若干プラスするのも一案だ。

シニアとの貴重な接点が出来たことを大切にしたいとして、自らのメールアドレスを示し、メール交換による今後の対話を求めた学生が居た。

些細なことであるが、このような姿勢こそが次世代を担う者にとっては、掛け替えのない積極性ではあるまいか。対話の補足、或いは更なる交流により得られるであろうものは、大きな収穫に繋がろう。収穫も満足も与えられるものではなく、自ら紡ぎだすものであることを噛みしめたい。シニアは学生からの接触を、決して拒まないと信じている。

 

金氏顯

1.第2回対話イン北海道、は対話活動第2ラウンドのトップにふさわしく成功したと思います。これも世話役の石井正則様、北大学生幹事の本間悠斗さんのこれまでの反省の反映、周到な工夫と準備のお陰です、感謝します。特に、学生側の本間悠斗さんを中心の準備グループは、@前回参加者の意見を聞き各Gテーマ設定、リーダー決定など改善、A追加テーマとして3点(成功の秘訣、学生時代にやっておくべきだったこと、本気になった瞬間)をシニアから聞き出す、などを取り入れ、B準備期間が短かったにもかかわらずチームワークがしっかりしていた、などより活発な討議になったと思います。これからもぜひ踏襲していただきたい。なお、唯一の問題点としては開始が14時となり、いつもより対話の時間が1時間足らなかったのが残念でした。

 

2.シニア側としては、地元から2名(大学OB、電力)参加していただきありがとうございました。これからもできるだけ多くの地元の方、SNW会員に新しく参加していただくことになるので、林さん提起のシニアの注意事項を「対話参加シニアの心得」として制定することに賛同です。林さんの注意事項に若干追記したのものを添付*します。

3.Fグループは学生3人でしたが予め沢山の質問事項を提起してくれたので、こちらも予めこれらに回答、意見を準備し配布、当日はそのうちの特に対話したい事項だけを対話し、あとは後日読んでもらうことにした。私が準備した回答を添付*します。

備考 添付資料は別途対話マニュアルの参考とする。

 

金刺秀明

1.良かった点

     グループの人数が学生5人,シニア2人と適正な人数割であった。

     興味あるテーマごとにグループを分類できたので学生も積極的に参加できたのではないか。

     事前に学生から質問があり、それに沿って応える形で対話を進めることができスムーズに進行できた。

     事前準備が良かった。本間さん他準備をして下さった人の努力は大いに評価したい。

2.改善を図るべき点、要望

     基調講演プレゼンテーションの設定に時間がかかりすぎた。

     基調講演の時間が短く、講師の意図が十分に学生に伝わったかどうか。

     シニアとの対話時間が短かった。そのため事前質問にシニアが答えるだけで学生と十分にやりとりする時間がなかった。

     全体的に時間が足りなかったように感じました。(13時開始がよかった)

     シニアの失敗体験が学生の興味を引く(失敗学会 畑村先生)ようですので、次回は失敗談を交えてはいかがでしょうか。

     学生とシニアの年齢差の中間(4,50代)または女性が加わると、視点が変わった話ができるのではないでしょうか。

 

3.トピックス

今回の対話のトピックスと言ってもよい、対話開始時点で学生側からシニアへの   3項目の質問はまさに、対話の「みそ」としてグループ内での、岸本シニア及び小生からの回答につき、中身を理解するとともに中身の真意などに深い洞察を加えるなど、岸本様や小生の経験からの回答に温かく受け取っていただけたと思う次第です。全体討論での各グループからの報告でもそのように受け取れたと思いました。

4.対話の進め方について

これまでの数回の対話に参加しての反省として、学生はシニアから対話で何を求めるか、期待するかについて、事前にある程度の対応準備の交流ができればさらなる成果へ繋がると思います。

次に、対話でのやりとりとしての関係資料などは、出席予定のシニアの判断でOKとおもいますが、小生としては、これまでも、適当に見繕って持参し、対話時にお渡しし、もしさらに必要な場合には、希望される学生(または幹事の方)へお送りするなどして、学生側の探求心を深める一助にと思う次第です。

 

岸本洋一郎

グループAでは、FBRに関し、その構造や特徴、歴史、開発状況と課題などについて、シニアから説明し、それを踏まえ対話を行うことにしていました。与えられた時間の割にはテーマが大きすぎるという懸念がありましたので、出来るだけ簡潔な説明に努めましたが、説明にやや時間がかかったこともあり、全体として時間不足、幾分物足りない結果に終わったのではないかと懸念しています。

対話のテーマ設定のやりかたによりますが、今回のように、テーマの説明にある程度の時間を必要とし、かつ、今回ユニークであったシニアへの質問3点を追加するといった場合には、対話時間を30分程度延長し、2時間半程度とすれば、うまくカバーできたのではないかと思う次第です。

とは言え、全体としては、前回の経験を踏まえて改善工夫を行うことにより、毎年行ってもなおその意義が高まるようにすることが可能であることを、今回は実証した対話であったように思います。学生連絡会担当の本間悠斗君をはじめとする皆さんの努力の賜物であったと思います

 

齋藤伸三

 学生との対話も二巡目となれば、当然、前回の評価を行った上でより充実したものを目指すべきであろう。その意味で、シニアの方は、学生側は原子力、エネルギー全般、環境問題等に関しどの程度の知識を持っているのか知っておく必要があり、学生側もシニアから何を聞きたいか、議論したいかを準備して対話に臨むべきであろう。今回、開会の挨拶で、学生側幹事の本間君の昨年の反省として、大学の授業と変わらない話が多かった、全体討論の意味がなかったとの話は衝撃的であった。そこで、今回はグループ毎にテーマを設定し対話することになったことは当然の帰結であろうと思うが、直前の本間君から提出された後悔せずに、仕事で成功する秘訣等の追加質問こそ厳しい仕事をやり抜いてきたシニアだからこそ、若者に伝えることが期待されるところであろうと思われる。無論、各グループのテーマもほぼ適切に設定されていたと思われるが、対話のまとめで発表された報告からは、十分に議論が深められたか疑問に感ずるところもあり、もっと時間をとるべきであったろう。そのような中、懇親会中も、資料とノートを持って詳細な質問をしてきた極めて熱心な女子学生の向上心には感心させられた。

 

土井 彰

北大に於ける学生との対話の感想を述べます。

1.          若い学生の物事に取り組む真摯な姿に触れることができ、とても気持ちがよかった。

2.          学生が考えている『自分はこのままでよいのか?』、『自分の人生で何が達成できるのか?』などの不安や疑問に対して分かりやすく話し合いをすることが重要と考える。

3.          若いが故に知識の範囲が狭く、その範囲ですべての物事を判断してしまおうとの傾向は見られるが、今後、知識や経験が広まるにつれ、原子力に対して技術者としての正しい判断ができるようになる。若いオピニオンリーダーとして活躍することを期待したい。

4.          自分の意見と相反する意見の他人と意見を述べあって討論する習慣がない。討論を深める中で、問題を掘り下げてゆく訓練をしてほしい。

5.          自分の特徴、得意な分野は何かを常に考え、社会の中で、自分の特徴をどのように活用するかをさらに考えてほしい。   

6.          学生から見ると、シニアは人生の大成功者に見える。ただでさえ威圧感を感じているので、これをあまり強調するようなことは避け、抑え目にしたほうがよいかもしれない。

 

林 勉

1.今回は本間君が工夫して、ゲループ別にテーマを決めてくれたことやシニアからの回答希望項目を3点指定してくれたことなど、学生幹事からの新しい取り組みが行われたことは大いに評価すべきことと思います。ただこのなかでやはり時間不足が目立ち、十分な議論が行われなかった事は今後の反省として対処すべきことと思います。

2.時間不足についてはシニア側も大いに反省しなければならないと思います。シニアの自己紹介や意見の発表に長い時間をかける人がかなりおられるのは事実ですので、このあたりの反省を次回以降にいかすべきと思います。そこで提案ですが、シニア側の「対話マニュアル」のような物を作り、これに準拠するように努力すべきと思います。マニュアルには以下のような記述を加えるのがよいと思いますが、みなさんのご意見も加えてまとめていただければと思います。

  ・説明は常に学生にとって必要なことかという判断基準をもって行う。

  ・自己紹介はA41枚以内。説明は1分以内(厳守)。説明しきれないことは読んでもらうようにする。

  ・意見発表も一件1分以内(厳守)。

  ・自己の関係した業務、会社等の宣伝と思われるような説明はさける。真に学生にとって必要かの判断をきちんとする。

  ・懇親会の対話も学生に真に役立つ内容であるように十分に配慮する。シニアの自己満足、自慢話、気をひく暴露話等は真に役立つか十分に配慮する。

等です。特に新しく参加する方は様子がわからず、とかく自己紹介や自己の業務関係の詳細な話に重点が行き過ぎるケースもあるようですので、注意が必要です。

 

益田恭尚 

1.学生幹事の本間悠斗君は既に原子力業界に就職も決り原子力分野の一員としての自覚もあり、学生を集めることにも尽力したらしく、中々のよい纏め役であった。良い纏め役を得ることの重要性を再確認した。

2.新提案について

本間幹事よりOBから「成功の秘訣」「これだけはやっておけばよかったこと」「人生で一番真剣であった瞬間」について話すようにとの提案は中々よい提案であった。良い提案として受け入れ、今後もなんらかの形で取り入れることはグッド・アイデアであるが、短時間の対話時間の中でどう処理するかを含め宿題となった。

3.対話会について

テーマ:日本の原子力業界の将来展望:発展?停滞?衰退?

参加者:青木彦太(安全M2奥村基史(炉工M1横塚和寛(環境M1大竹史郎(安全B4

シニア:三谷信次、益田恭尚

今回は4年生以上の原子力を相当理解した学生のグループでテーマも日本の原子力業界の将来展望:発展?停滞?衰退?と比較的絞られたものであった。比較的話やすかったといえよう。君達はどう考えると何回か設問した心算であるが、あまり具体的な意見はないようで、否定的な解答はなく、シニアから自分達の考えが間違っていないことの確認をとりたかったのかと思はれた。

 

シニアからは、原子力に頼らざるを得ない状況と、軽水炉といえどもまだまだ改良の余地があることを具体例を説明し、(技術はそう言うものであることを含め)理解に努めた。また、海外への飛躍は日本の役割であることを説明した。

新提案もあり時間配分は上手く行かなかったが、事後アンケートの結果をみても、それなりの熱意は伝えられたのではないかと考える。

4.今後への提案

提案といえるほどのものではないが、今まで何回かやってきての感想として次のような点がある。

1)      学校、専攻、学年によって原子力・放射線についての認識、エネルギー問題の知識等のレベルは千差万別のように感じられる。事前アンケート等による調査により相手に合わせた対応が必要であろう。

2)      クラス分けもその点は考慮してはどうか、但し、クラス毎のアンバランスがでることは覚悟し、それに応じた対応をとる必要がある。

3)      シニア側の参加者も新人を増やしていかなければならないだろう。その際、参加に当っての心得的なものを作っておいたほうが良いだろう。心得は、今までの経験者が議論し、自分達の反省を含め箇条書きでポイントを示すのがよいと思う。
この中には経歴メモの書き方も含めておくとよい。

(備考 提案に関しては別途対話マニュアルの参考とする)

 

松永一郎

1.北大における対話は昨年の9月に続き、2度目であり、2順目の最初の開催大学となった。当初参加者予定者が20名そこそこであったが、最終的に31名(昨年40名)の多くを数えたのは、「昨年以上の対話にしよう」という学生幹事の本間悠斗さんの熱意と杉山先生からのサジェスチョンの結果かと思います。こういった会での幹事の熱意が重要であることを再認識しました。

2.事前準備で学生側がかなり具体的な質問を集めていた結果、シニアとして答えを準備できたことは良かったのですが、質問がメンバー共通のものではなく、その中の何を本題にして対話すべきか、ポイントが絞れなかったきらいはあります。

対話を始める前に、その点について参加学生に確認すべきであったというのが私の反省点です。

対話を始める前に、その点について参加学生に確認すべきであったというのが私の反省点です。

3.今回。本間さんの発案で、特にシニアへの3つの質問として「成功の秘訣」「40年前、これだけはやっておけばよかったことは何か」「人生で一番真剣であった瞬間」がだされた。

実は対話の目的には次の2つがある。 

@     対話を通して、学生とシニアの相互理解を図るとともに、今後の原子力、エネルギー問題について共に考える。

A     学生が社会に出る前に、原子力OBの経験や気概を少しでも吸収できる機会を提供し、彼らが実社会へ出た後の仕事への自信に繋げてもらう。

今までの対話のテーマとしても両方あったが、殆どの対話は@を中心としたもので、Aについてはあまり無かった。

実はAが目的として非常に重要であるというのが、私としてのかねてからの認識でしたので、正面から取り上げられたのは非常に良かった。ただ、一つの質問だけでも奥が深く、たっぷりと時間を掛ける必要があり、今回のように@とAに関する両方のテーマについて対話するにはあまりにも時間が短かったと思います。

なお、このような質問が出てきた背景として、今年参加した10名のM2の学生がすべて原子力系企業に就職が内定していることもあるのでしょう。彼らにとって、原子力が上向きに転じたことを肌で感じているわけで、今更原子力の問題をテーマにする必要は無い。それよりも実社会に出る前の「心構え」を知りたい、ということかと考えます。

今後の対話のあり方の参考になる、今回の対話であったというのが私の感想です。

 

三谷信次

初めての参加でありましたが、以前から聞いていたとおりベテラン会員の皆様や当地の 杉山先生他のご指導、リーダーの本間さまの司会等、短い時間で実に中味のあるコミュニケーションが行なわれた事に感服致しました。感じた点と私の提案を以下に申上げます。

1.最初の土井さんの講演は、類似のテーマでこれまで色々な方が1時間はかけて話される内容を20分で要領よくお話しになり、かつ地元に結びつけて風力発電の事例を紹介される等、リスクコミュニケイションを主たるテーマしている私には大変参考になるものが多くありました。

2.対話はDグループに入り、ベテランの益田さんと一緒に対応致しましたが、結果  的に時間不足をきたし、今後は予めグループリーダーと話し合い、テーマ毎に時間配分を最初に設定してから始めるのが良いと思いました。

3.また、学生がシニアに「40年前にコレだけはやっておきたかった事」など3点あげ、シニアが学生に即答したことをOHPの終わりの部分で学生が説明していましたが、シニアの言ったことが今ひとつ十分に伝えられていなかったのは、彼らのせいではなく時間不足が原因の一つであったと思っています。これをうまくやるために次回からは次のようにしては如何でしょうか。

    @対話の数日前に、予めシニアに「聞きたい事」をメールしておく。 

        Aシニアは当日までにA4半ページ程度に回答を事務局に提出する。

           (最悪の場合でも手書きで当日提出)

        Bグループリーダーがグループ毎にそこのシニアのものを紹介する。

        Cその時、シニア全員に通し番号を付けておき、紹介内容と番号が一対になって

     いて一目で分かるようにしておく。

        D懇親会ではシニアは番号付きの名札をつけて会場に臨む。

        E対話の席で紹介内容に興味を持ったり、突っ込んだ話を聞きたい学生は、番号          を憶えておいて、その番号の名札を付けたシニアに近づいてじっくり話をきく

いまのところ以上が私の提案ですが、次回時間的に無理であれば次々回、もしくは標準マニュアルを作成されるさいなどにご検討頂けると幸甚に存じます。

 

石井正則

従来の対話では、シニア側が学生を勇気付け、夢支援をするという色彩が濃かった。二巡目として参加者を募集するには、それだけでは魅力がないことを認識できたことは、今後の進め方の示唆となろう。M1、M2、B4あたりの参加者を想定すると、在学中に2回程度の参加が想定され、リピーターが参加し甲斐のある対話という点に、学生リーダーの本間君に苦心し、その結果、学生のニーズ(質問事項)が全面にでた対話となり、それだけに学生の熱意も感じられた。

今回はグループ毎のテーマの他、当日急きょ当日全グループ統一テーマとして成功秘訣など3テーマが加えられた。案外学生が興味のあるのはこれら3テーマかも知れないが、ややもすれば、社会にでた時の処世術になってしまうことも懸念される。まじめに仕事をしてきたシニアの人柄があらわれ、そういう方向にならなかったことは救いであった。

立国計画の進展、海外プラントの受注など、原子力業界が変化するなかで、原子力専攻の学生の知識も進化しており、シニアの対応もそれにあわせて改善してゆく必要性を強く感じた対話であった。このためには学生の状況の把握が重要である。

今回の対話では、学生側のニーズの把握とそれへの対応のための準備期間不足や、討論時間の不足など、シニアの世話役として至らない点をお詫び申し上げます。



添付2

「学生とシニアとの対話」事後アンケートの集計結果

 

621日に北海道大学にて開催された「学生とシニアとの対話」の事後アンケートを集計したので,結果を以下にまとめる。今回は,学生の参加総数31名のうち19 名から回答を得た。参加人数の内訳は表1に示す通りである.

1 参加人数の内訳

シニア

16

職員

1

学生

 

M2

10

M1

10

B4

11

学部生合計

31

総計

48

 1 「学生とシニアの対話」の必要性についてどのように感じますか?

非常にある   14

ややある    4

あまりない   1

全くない    0

理由

シニアの人からしか得ることのできない知識や経験がある。

シニアの意識を知るため。

原子力系の学生が危機感を持たねばならないから。

 

2 エネルギー危機に対する認識に変化はありましたか?

大いに変化した      0

多少変化した       5

あまり変化しなかった   11

全く変化しなかった    2

理由

大学の授業で多くのことを学んできたから。

 

3 原子力に対するイメージに変化はありましたか?その理由は?

大いに変化した      0

多少変化した       5

あまり変化しなかった   10

全く変化しなかった    3

理由

大学の授業で大体のことは聞いた話だから。

 

4 事前に聞きたいと思っていたことは聞けましたか?

十分聞くことができた  11

あまり聞けなかった    7

全く聞けなかった     1

 

5 対話の内容は満足のいくものでしたか?その理由は?

とても満足した   7

ある程度満足した  9

やや不満だ      2

大いに不満だ    

理由

今日の話を聞けば国民はついてくると思ったから。

今時間が足りなかったから。

 

6 原子力に対する関心の低い10代、20代の若年層に対する原子力広報活動はどんな方法が良いと思いますか?

身近な人から少しずつ押す

初等教育に取り入れる

メディアを味方につける

イベントの企画

 

7 本企画を通して全体の感想・意見などがあれば自由に書いてください。

大変ためになり、面白かった。

来年も参加したい。

時間が足りない。

以上