「学生とシニア」の対話実施速報R1

−対話 in八戸2009


2009/02/25 三谷 信次

1.実施主旨

 2005年度から続けている「学生とシニアの対話」の八戸工大版。日本原子力学会の学生連絡会及びシニアネットワーク(SNW)の活動の一端として、核燃料サイクル施設の集まる青森県の工業大学である八戸工大の原子力に関心を示す学生とシニアの交流を図る。SNW主催の活動としては23回目の「対話」であるが、エネルギー問題に発言する会主催のものからの通算では29回目となる。

 八戸工大では2005年9月以来、3巡目の対話となる。

2.対話の目的

 学生とシニアとの対話を通して、学生とシニア間の相互理解を図ると共に、今後の原子力、エネルギー産業について共に考え、これからの対話のあり方やエネルギー教育の実践のあり方の参考にする。学生との対話では、彼らが社会へ出るまえに、原子力OBの経験や気概を少しでも吸収できる機会を提供し、今後の実務への自信に繋げてもらう。

八戸工大は2007年度の経産省の原子力人材育成プログラム予算を使った「チャレンジ原子力体感プログラム」の実践大学に指定されており、そのプログラムの最後を締めくくる意味合いも有している。

3.対話の実施

(1)日時 平成2年2月2日(木)

13:00〜17:00  (懇親会17:30〜19:00)

(2)場所 八戸グランドホテル 双鶴の間 

(3)参加者

@学生46名(B項の学生連絡会オブザーバー参加者除く)

八戸工大 46名

M1:4名、学部4年:5名、3年:37名

Aシニア(敬称略)

SNW会員 12名

荒井利治、菊地新喜、岸本洋一郎、西郷正雄、清水彰直、土井彰、松岡俊司、三谷信次、矢野隆、若杉和彦、石井正則、大橋正雄

SNW東北(含むSNW会員兼) 4名

菊池新喜、岸昭正、菅原剛彦、松岡俊司

B教員(敬称略)

阿部勝憲、関秀廣、齋藤正博、村中健、太田勝、坂本禎智、青木秀敏

Cオブザーバー 1名

東海大学 エネルギー工学科 滝沢優司(原子力学会学生連絡会代表)

(4)実施内容

a基調講演

「エネルギー・地球温暖化問題と原子力の役割を考える」 菅原剛彦 氏

b.対話と講評

8グループに別れ、シニア2名に対して、学生が3名〜7名ずつ付いて対話。

対話の題材は各学科(添付)に関連するものを、グループ別に選定した。

対話終了後に各グループから対話内容のまとめが発表され、シニアを代表して、岸本洋一郎氏から総合的な講評がなされた。

(5)事後アンケートの概要

              追って掲載

5)結果

今回の対話は「チャレンジ原子力体感プログラム」を受講した3年生が主体であり、そのプログラムを締めくくる意味から、タイミング的に極めて意義のあるものであった。

     学生は非原子力系の工学部在学生であるが、核燃料サイクル施設が立地している青森県の工業大学の在校生であり元々原子力に対する関心が深かったこと、今回のチャレンジ原子力体感プログラムを通じて実際に原子力施設の見学等をしたことから、全体的に原子力に対する知識が深く、どのグループでも昨年、一昨年同様充実した対話ができた。

     グループ分けは専門学科別(一部学部、修士の構成状況により混成)になっており、主として、それぞれ所属する学生の提案してきたテーマに沿った対話が行われた。それだけに、対話が学生の興味から外れることなく深まった。

     学生達は全員背広姿で真面目で礼儀正しく、前向きで原子力関係に就職を希望する者が多かった。その一方でおとなしく、多少積極性に欠ける点も一部みられたのは、これまでの対話に共通した現代学生に見られた現象である。今回の対話を通じて彼らの原子力に対する関心が更に深まり、自らすすんで関連情報を取りに行ったり、家族や知り合いにその輪をひろげてくれれば対話の目的の一つは達成されたことになる。

 

4.まとめ

 青森県は日本原燃鰍フ六ヶ所再処理工場をはじめ、同社のウラン濃縮施設、低レベル廃棄物処理施設があり、また建設準備中のものとしてMOX燃料加工施設、使用済み燃料中間貯蔵施設があり、原子力発電所としては東通村に東北電力東通1号機が稼動中であり、大間には電源開発鰍フフルMOX発電炉が建設準備中という、文字通りの核燃料サイクル県である。県下で唯一の工業大学である八戸工大は原子力工学科を有していないが、これらの企業へ地元の人材を供給する極めて重要な位置にある。

 八戸工大では2005年9月に日本原子力学会秋の大会が開催されており、その際に学生とシニアの大会を実施している。今回は3度目であるが、同大学は今年度に原子力立国計画に基づき新たに創設された原子力人材育成プログラム予算(経産省)の「チャレンジ原子力体感プログラム」の実践大学の指定を受け、3年次学生を主体として一昨年より六ヶ所再処理工場や東通原子力発電所等の見学会を実施している。

最後になりますが、今回の対話の準備と進行を精力的に進めていただいた同大学工学部機械・生物化学工学専攻修士1年の山田芳輝君と同工学科4年の山下淳君および指導教員の同大異分野融合科学研究所長教授阿部勝憲様、同教授齋藤正博様他の方々、また開催を支援して頂いた東北原子力懇談会殿に深甚なる感謝の意を表します。

また、翌日、阿部先生から八戸工業大学のキャンパスと研究室を案内いただくとともに、学長の庄谷征美先生、副学長の藤田成隆先生ならびに阿部先生と懇談、本大学の青森県におけるエネルギー教育への貢献の様子の一端を伺うことができた。これらの活動はSNWにとっても関心の高い領域である。今後の本学の活躍を期待する。(石井が一部補足)

 

対話写真

 

添付資料

1.グループ編成とテーマ

2.シニア参加者リスト

3.シニア参加者の感想

4.学生の事後アンケート結果

5.八戸工業大学見学概要

 

別添資料

基調講演資料

 「エネルギー・地球温暖化問題と原子力の役割を考える」 菅原剛彦氏(PPT

 


対話写真

 

対話会場

基調講演(菅原剛彦氏)

講評(岸本洋一郎氏)


添付資料1

グループ編成とテーマ

 

Gr.

テーマ

学生数

シニア

学部でエネルギー全般を学ぶ(広く浅く)事を社会、企業はどのように考えるか、また評価するか。

機械情報技術学科6

荒井利治

清水彰直

高速増殖炉やその他新型炉の開発状況

機械情報技術学科6

西郷正雄

矢野隆

核燃料サイクルの現状と今後

機械情報技術学科5、名

岸本洋一郎

大橋正雄

放射性廃棄物処理に関する現状と問題

生物環境化学工学科7

石井陽一郎

岩本多實

原子力業界の隠蔽を疑われる体質

生物環境化学工学科6

菅原剛彦

若杉和彦

原子力に関わる仕事にはどういったものがあるか

電子知能システム学科、システム情報工学科6

三谷信次

松岡俊司

学生は社会に出るにあたってどのような力をつけるべきか?

電子知能システム学科、システム情報工学科7

土井彰

菊地新喜

原発の耐震性について

環境建設工学科3

岸昭正

石井正則

 


添付資料2

シニア参加者名簿

 

荒井利治   元日立製作所常務、元日本ニュークレア・フュエル社長/会長、SNW副会長

石井陽一郎  元東電原子力原子力開発研究所副所長

岩本多實   元福井工業大学教授、核物質管理センター理事、日本原子力研究所東海研究所副所長

菊地新喜   東北学院大学名誉教授 電気工学(SNW東北)

岸昭正    元東北電力(株)原子炉主任技術者SNW東北)

岸本洋一郎  日本原子力研究開発機構研究フェロー、元核燃料研究開発機構副理事長

西郷正雄   日本原子力産業協会参事

清水彰直   NPO放射線線量解析ネットワーク理事長 元原子力委員会参与

菅原剛彦   元東北電力取締役(SNW東北)

土井彰    元日立製作所エネルギー研究所長

松岡俊司   元東北電力(株)理事技術部長(SNW東北)

三谷信次   JANES参与、元日立製作所

矢野信次   元三菱重工業、現(株)Jライフシステム代表

若杉和彦   原子力安全委員会事務局、元JNF、東芝

大橋正雄   三菱重工業本社主幹技師、原子力・放射線技術士

石井正則   元IHIエネルギー技術本部技監 (幹事)

 


添付資料3

シニア参加者の感想

(含む学生連絡会代表の感想)

 

荒井利治

1.今回の対話は八戸工大との第3回目で、学生6〜7名に対しシニア2名のグループが8組で対話としてはよい構成であった。私が属するグループ1のテーマは「学部でエネルギー全般を学ぶ(広く浅く)ことを社会、企業はどの考えるか、また評価するか」で極めて常識的かつ実際的テーマであった。シニアの清水彰直さんがお考えをA4半ページにまとめてこられたのが対話の助けとなり、私はいつものT定規論を展開した。

2.過去2回の対話でも感じたが、学生たちの礼儀正しさ、素直さ、純粋さは他の地方、特に都会と比べてはっきりしていた。今回も其れを強く感じたが、さらに今回は「チャレンジ原子力体感プログラム」で原子力施設の見学、放射線に関する実習、測定などを体験した後だけにいっそう真剣さが加わっていた。

3.ただ東北の人の共通点でもあるが、分かっている事柄でも人前ではっきり自分の意見を声に出して述べることに抵抗を感じているようすがある。これはある程度訓練や、場数をふみ習得することが望まれる。万事受身と取られては気の毒で、残念である。

今回懇親会を途中で退席したので、私の思いを十分伝える時間が無かったのが悔やまれる。

 

石井陽一郎

放射性廃棄物処理に関する現状と問題 というテーマで、学生は急遽席の移動で2名移り,生物化学の4名と話し合った。原子力とか放射線については無縁とのことで、基礎的教養を高めたいとの事であった。イントロに易しい本などから入るのがよいと話しておいた。岩本(元福井工大教授)先生と私で各数ページの資料を渡し、適宜関心、テーマに沿って説明した。線量を浴びてない人間はこの世にいないことを縷々話し平均2.4mSv,HLW施設もそのひとつ。

質問で印象に残ったのはHLWをなぜ宇宙に捨てないか、なぜ海の底に捨てないか、に回答し、深地層処分がHLWの処理の唯一の方策であることを納得してもらった。米国ヤッカMtや世界の動向についても話した。学生は素直で青森に現在居る関係、原子力を肌身に感じ前向きに考えてくれているのではなかろうか。八戸工大の庄谷学長は学力と人間力の融合から最後にクラークの少年よ大志をいだけ、で八戸工大誌の巻頭で述べておられる、のも好感される。

少し個人的になるが菊池教授(電気)と話し、省エネに関してかねて疑問のインバーター効率がかならずしも良くない場合がある、今後調べてみたいと確認した次第。 青森ヒバは特徴のある樹木ということもあり、環境に関連して「木の文化を育てよう」の自説を二次会で披露しておいた。26日には八戸工大の主な研究室―応力腐食割れ(基礎の追求)、トリチウム計測、廃棄物の衛星による管理、コンクリート工学、耐震試験(三次元)などをみせていただいた。頑張っておられる。今後に期待したい。

 

岩本多實

1.当グループ:4「放射性廃棄物処理に関する現状と課題、及び原子力産業における生物化学技術」

2.石井陽一郎氏と生物環境化学工学科3年学生4名(当初、4年生2名も予定されていたが、当日グループ8へ移動)と対話した。

3.テーマは学生が発案し希望したのではなく、原子力について多少でも知りたいと思って、学科から合計で13名が提示されたテーマに応募したとのことであった。学生自身は、六か所施設の見学、放射線の話の聴講(当日の午前中)を済ませているが、授業では原子力について学習しておらず、原子力、放射線は勿論、テーマについてもほとんど事前準備の無い学生たちであった。

4.このため、テーマの放射性廃棄物処理のみでなく処分についても、廃棄物の発生、種類、処理方法、処分方法など、用意し配布したプリント(12葉+5葉)で原理を含め初歩から話して概要を理解させることに重点を置き、問題点についても言及して、質問に答えながら対話を進めた。

5.たとえば、廃棄物の発生源や種類の多さ、処分に関して実施に移されていない事柄の多さ、等は理解して呉れたことと思う。また、高レベル廃棄物の永久隔離に関し、宇宙空間、海洋底下、深地層中、南極氷床の概念に言及し、地層処分に至った経緯を説明したところ、関心を惹き、理解して呉れた。

6.グループごとの学生発表を見ても、事前学習が無かった割りには、テーマのポイントを良く把握しており、上出来であった。

7.六ケ所に近い八戸で、少しでも原子力に理解のある学生が増え、現地サイドで将来を託せる学生が育つよう、八戸工大が進まれることを期待している。

 

大橋正雄

1.      テーマ:核燃料サイクルの現状と今後

2.      感想

 青森で生活し学んでいることから燃料サイクルの現状はある程度理解しているようであった。我国が安定的に原子力エネルギー利用していくためには青森が置かれている立場がいかに重要なものか、将来は世界の中でも重要な立場になること等を説明し、討議を行った。

世界の中での位置づけでは、アジア地区の原子力エネルギー利用への貢献については非常に興味を持って討論に参加してきていたように思う。

原子力分野では、やりがいのある仕事が青森地区にはそれなりにあり、皆さんのような若い人の参画が望まれているということにも理解を示していた。

 一方、産学連携と良く言われるが、産業界からの提案の待ち姿勢ではなく、大学として地元産業界へ貢献していく姿勢が必要ではないか、具体的にどのうな貢献をしているかと話を向けたが、あまり反応がなかったのが残念。

 いずれにしても、学生は当に就職戦線に立っており、わざわざこのテーマのグループに参加していることから、彼らの就職先に六ヶ所地区が候補になるとこを念じてやまない。

 

岸 昭正

今回は昨年12月に発足したばかりのSNW東北の会員として初めて学生との対話に参加しました。東北地方の原子力施設が集中している青森県での活動でもあり、東北SNWの代表幹事を務める菅原剛彦さんが基調講演をしたことには我々SNW東北の今後の活動のとっかかりとして意義が有ったと思われます。参加した学生諸君は皆さんスーツ姿で来ており、先生方の指導が行き届いている印象を持ちました。でも対話の会場では荒井副会長の声がけで、皆もネクタイを外して気楽な気分で対話に入りましたので対話もほぼ期待通りだった様に思います。私が参加したグループでは「原発の耐震性について」をテーマにしましたが、予定した建築科の学生が卒論の仕上げのため参加できなかったりしてメンバーが少なく、その場でのメンバーの入れ替わりがあって十分な議論には不足でしたが、参加した学生は原子力産業には興味を持っている様子が伺えました。このグループには原子力学会の学生連絡会の代表もオブザーバとして参加しており、対話に加わって発言してくれました。学生たちは八戸工大の原子力プログラムの中で日本原燃の六ヶ所の施設や東通発電所などを見学した経験を持っているようで、そのことが原子力に対する目を肥やし、西尾漠氏の反原発の本の内容に対する反論なども発言してくれました。やはり教育の重要性を改めて実感します。

SNW東北では八戸工大での経験を生かしながら、3月3日に宮城県の多賀城市で東北学院大学工学部の学生との対話集会を実施し、今後の活動へのスタートを切っております。今後益々SNW連絡会のご指導宜しくお願いします。 

 

岸本洋一郎

20059月、20082月に続き、今回で3回目の八戸工大学生との対話。シニアネット東北発足後初の対話行事ということで、SNW東北代表幹事菅原剛彦氏の1941年の対日石油禁輸措置を織り込んだ基調講演から始められた。3年生:36名、4年生:5名、M1:4名が参加。ただし3年生の一部は就職活動で参加できず。教員では、阿倍勝憲教授をはじめ、機械の斎藤正博教授、生物環境の村中健教授、電気の関秀廣教授、機械の太田 勝講師が参加された。幹事M1の山田義輝君、副幹事4年山下惇君が全体進行を立派にこなした。

8グループ編成下、様々なテーマで対話が行われたが、対話を通じて相互に認識を高めるべきと感じた点は以下。

1.社会人として、コミュニケーション能力、対話能力の涵養は、不可欠。

2.青森の地の利を活かし、将来への発展性を持つという点で、原子力及び新エネルギー関連の勉強は有益。ただし、エネルギー全般の知識が将来に皆さんの仕事に直接役立つということではなく、20年、30年先まで考え、ものの見方、視野を深め広げることに役立つということ。

3.地域における産学連携の活動は、学生の将来性を広げるという点からも大学の重要な取り組みであろう。

今日の技術は、新たな経験やその革新への挑戦を通じて理解を深めるというプロセスのなかで次の世代に継承され、発展していくものであり、特に原子力のような総合技術は、そうした色彩が強い。新潟県中越沖地震の経験は、柏崎刈羽発電所を作った先人の技術者の想像の及ばないものであったかも知れないが、今や次世代の技術者に完全に引き継がれたといって良いのではないか。これから原子力分野に進むかも知れない若者と話していて、改めてこのことを感じた対話であった。

翌日午前中、シニア8名ほどで大学構内を見学、庄谷征美学長、阿倍勝憲教授の案内で、学長室にて創立時の建学の精神を表わす書『正己以格物』(己を正し以って物に(いた)る)―この書は地元出身農林大臣三浦一雄の揮毫になる―を拝見。「物」を工業技術と解すれば技術の有りようは己の精神の有りようによることを諭すことばと感心。その後、参加された先生方の研究現場を見学し、当大学の教育研究につき理解を深めることが出来た。

 

西郷正雄

最初に学生に対し、シニアより「今回の対話会では、何か一つでも良いから学んで帰ってもらいたい」と話してから始めることにしました。

2グループのテーマ(将来炉)に対応する内容として、高速増殖炉と高温ガス炉についてシニアより簡単に説明し、各学生より質問を受ける形で対話活動は展開された。学生には、将来炉については、やはり知識として、あまり持っていないようであったので、まさに質疑応答と言った展開となった。全体的におとなしくはあったが、真剣な取組みのもとに質問が出たので、それなりに何かを得られたのではないかと思い、最後に、今回の体験についての感想を各人に一言書いてもらってメールで送ってもらうよう依頼した。その結果、以下の感想が送られてきた。

・北川 裕章
  高速増殖炉の将来性について学ぶことが出来た。

学生でこのような体験に恵まれてよかった。
・阿久津 宗徳
  高速増殖炉や高温ガス炉の可能性や安全性について知ることが出来た。
・福士 博輝
  高温ガス炉という新しい内容を知ることが出来た。

・斎藤 惇平
  高速増殖炉の利点、安全性など理解することが出来た。
  また、高温ガス炉の目的について知ることが出来た。
・坂井 雄輔

高温ガス炉で発生する高温の熱とIS法を用いて、水を熱分解して水素を製造するという仕組みがよく理解できた。原子力が発電だけでなく熱利用にも使えることを知り、今までよりも原子力に対する期待を膨らませることができた。

彼らが、将来炉として、高速増殖炉と高温ガス炉について、少しでも知識が増し、原子力への関心が多少高まったことは、今後社会人になった時の何かに役立てばと思っている。

 

清水彰直

シニアの一人として学生との対話に参加しました。今回が4回目です。

全般についての感想

1        今回参加された八戸工業大学の学生は、シニアの発言を素直に受け止め、それをそのまま発表する傾向が顕著でした。この傾向は、「原子力発電の危険性」に関する偏見、風評には毒されてはいないという点で好感を持ちました。一方、学生との対話では、知識だけでなく、「ものの見方、考え方」を伝えたかったのですが、それが本当に理解されたかどうかについて疑問が残りました。

2        懇親会では、少数の学生ではありますが、親しく話すことが出来、また別れ際には、その学生からお礼を言われました。これは、学生との対話では初めての経験です。

今後の課題

 細かいことですが、今後の課題として気がついた点を述べます。

対話のテーマの事前通知

私が参加したGroup 1のテーマは、シニアには事前に知らされていましたが、学生は会合に出て初めて知ったようです。これでは、充分な対話はできません。学生にも、事前に所属するグループと対話のテーマを知らせ、具体的な質問を準備して貰う方が良いと思います。

 

菅原剛彦

対話の前に基調講演ということでプレゼンテーションしたが,国の予算がついている「体感プログラム」で学生は六ヶ所や原発を見学し講義も聞いている由で,既にある程度の基礎知識を有していると思われたので,原子炉の構造,ECCS系の構造,燃料サイクルなどはさらりと触れるだけにした.

対話では「原子力産業界の隠蔽体質」というテーマについて,シニアの若杉さんから昔はそんな誤解を生むような事もあったこと,当方からは現在は何でも公表することになっていることを説明した.親が医者という学生から,「医者の間では六ヶ所には白血病が多いといわれている」という発言があり,若杉氏から,われわれの知見ではそのような事実は無いので,よく調べてはとアドバイスした.このような風評はあちこちであり得るので,対話の際,放射線の影響については最新の知見やデータを持っていた方が良さそうである.

対話のもう一つのテーマは「原子力産業における生物化学技術」であったが,八戸工大の生物環境化学学科では,例えば,生物が選択的に元素(ウランなそ)を吸収するのを利用する研究を行っているので,このようなテーマになったようである.一方,学生は3年生で今度配属が決まったばかりで,どんな研究を行うのか分らず対話に戸惑っているようすであった.

学生の印象としては真面目で素直であり,また,先生方の熱意やキャンパスなど教育環境が非常に恵まれていると感じた.なお,対話の会場もよかった.

 

土井 彰

225日に実施した八戸工業大学における学生との対話の感想を述べます。

1.          まじめな学生が多数集まり、気持ちよく有意義な時間を過ごすことが出来た。

2.          しかし、原子力関連の授業を受けていないため、この分野の知識や経験がほとんど無く、巨大技術と巨大産業に驚いた様子であった。その分、未知のものを知る喜びを感じていた様子であった。われわれも時間の許す限り説明したが、討論する時間に対して、問題の設定が大きすぎ、難しすぎるように思った。

3.          なぜ原子力なのか(?)の疑問には十分答える時間がなかった。しかし。一方であまり原子力に片寄った導きには注意が必要と感じた。

 

松岡 俊司

対話グル−プの学生は(院1名、学部3年生4人の計5名)ブラズマや核融合関係の研究室から3名、システム情報関係2名で、全員原燃サイクルや東通原子力発電所の施設見学をしていた。総括すると原子力の知識がどの程度かは掴み切れないところもあるが、原子力について4人の学生は前向きに捉えており、幾人かは就職先として考えているなど相当関心が高い。

テ−マの「原子力に関わる仕事は」については、施設見学などを通しある程度知識を得ているようで、シニアからは若干の補足で理解したようだ。

シニアの質問や話題提供の中から、主なものとして

     家族(母親)も原子力は心配しておらず安定した職域とみており、学生自身も原子力関係の仕事を希望している。その中の一人は、懇談の場でも特に原子力分野に進みたいと情報収集にも熱心であった。また、学生の一人は女川のトラブルは小さい頃から聞いていたが、東通は何もないので原子力は心配していないとのことであった。

     原子力発電所の廃棄物増加への対応、再処理施設のトラブルの様子、原子力の電源構成比率はどの位まで上げられのか、夜間の余った電力の活用方法等々の質問があり、夫々シニアサイドからペパ−等も参考に説明した。

小生、「学生とのシニア対話」は初参加で、対話のマニアルを意識しつつも活発な対話をと、話題提供したもののどの程度理解されたものか、また、話がくどかったのではないかと自問自答している

八戸工大では学生諸君が在学中に電気主任技術者の資格試験に挑戦し、合格者も出している事を知り(対話学生の中に科目合格者もいた)、学生諸君の積極性と指導の先生方に敬意を表したい。また、翌日、学内の研究施設や研究内容の説明を聴き、諸先生方が地域の特質を活かして取組み、成果を上げておられることにあらためて敬意を表したい。

 

三谷 信次

 小職のグループは8班、「原子力に関わる仕事にはどういったものがあるか」とか「原子力産業における電気情報技術」というテーマで対話が始まった。学生達は「電気・電子情報工学、電子知能システム、或いはシステム情報」といった専攻学科で電気系の学生達が多かった。そのためか、相棒の東北シニア松岡さんの電力系統網や負荷変動の話に興味が集まった。ほとんどが地元東北地方の出身者で、将来は東北電力、日本原燃を希望する学生が多く、入れなかったらメーカーだというので、どこに行きたいのかと聞いたら、日立だという。何故東京でなく日立かと聞いたら、東北の南端だからと答えた。日立は関東の北端と認識していたが、そのような見方もあるものだと再認識した。学生達は皆礼儀正しく、実直で朴訥ではあるが中味は良く理解していた。東通原発を見学して初めて、原子力に対する認識が180度変わったとのこと。見学していない一般の多くの住民は原子力に対して、如何に実態とかけ離れた認識をしているかということが、学生達を通して思い知らされた。

 

矢野 隆

グループ対話についての感想を述べます。

私の属した第2グループは学生5名とシニア2名で、予め与えられた「高速増殖炉やその他新型炉の開発状況」というテーマで議論を行いました。新型炉は、多くの原子力関連施設を有する青森県にあっても馴染みが薄く、また情報量も少ないため、シニアから概要を紹介した後に学生から質問を出して議論を進める形となりました。FBRでの増殖の必要性やHTTRでの熱利用の有用性について基礎理解が得られたものと思います。

 最後の各グループの成果発表では、シニアの難解な(?)説明を咀嚼し、極力自分の言葉で成果発表を行う姿勢も見られ、次世代への伝承の手ごたえを感じました。

 有意義な対話会に参加でき、企画・推進役の方々をはじめ皆様に感謝申し上げます。

 

若杉和彦

5グループ参加シニアの感想

参加者 第5グループ  学生6名(含女子3名) シニア2名(菅原剛彦、若杉和彦)

テーマ ・原子力業界の隠蔽を疑われる体質

    ・原子力産業における生物化学技術

対話会ではまずシニアと参加学生の相互の自己紹介から始め、女子3名を含む参加学生6名からそれぞれ対話会参加の動機を聞き、テーマに関する質問に答える形で対話を開始した。学生達にはそれぞれある程度原子力に関する科学的知識はあるものの、やはりTV等の一般メディアからの影響からか、原子力業界にまだ隠蔽体質が残っているのではないか、親が地元の医者だという学生からは青森地区にはがんの発症率が高いと言われているが本当に原子力は大丈夫なのか等の心配そうな発言が多くあった。シニアからは菅原氏の当日の講演資料や第7回SNWシンポジウムでの竹内会長の講演資料(「社会と原子力界との相互信頼をもとめて」)等を参照して、原子力界は透明性をさらに高める努力をしていること、放射線影響については疫学調査が全国的に実施されており、原子力施設従事者についても有意な差は出ていないこと、リスクの報道については、原子力以外のリスクとも公正に比較したバランスある報道が望ましいこと等を体験を踏まえて説明した。学生達は真面目に対話に参加し、シニアからの説明は概ね理解されたように思う。特に女子学生の方が男子学生よりも積極的であったが、全体としてもう少し積極性があってもいいように感じた。

 対話後のグループ発表では青森県に原子燃料サイクル施設が集中していることを踏まえて、名実ともに日本の原子力の中心にしたい、世界にもここから発信出来るようにしたい等の発表が他のグループからあり、大変頼もしい印象を受けた。懇親会では学生達の私生活にも触れることが出来、シニアの体験談を交え、特に学生達にとっては有益な時間を過ごせたのではないかと考える。また、翌日の午前中八戸工大の施設を見学出来、庄谷学長他関係教授達とも意見交換する機会を作っていただき、これも学校側とSNW側にとって今後の活動を計画するに際し大変有益になると考えられ、関係者に感謝したい。以上

 

学生連絡会オブザーバー感想

東海大学工学部エネルギー工学科2年 滝沢 優司

私は、学生とシニアの対話は今回で3回目の参加となります。in八戸は八戸工業大学の原子力人材育成プログラムの一環ということで、多くの学生が参加されていました。原子力の専門の学科を持たない大学でありますが、地元の県に原子力の施設があるということが、多くの学生が参加されたのだと第一に素直に感じました。

数人ではありますが学生と話をした時、原子力関係に就職または研究したいと言っていました。実際に原子力の施設を見学して、原子力に対しイメージが漠然としているのではなく、自分の肌で感じているためしっかりとしたイメージを持っていると感じました。

 環境の違いは当たり前ですが、やはり近くに原子力の施設がなく、あまり見学等できない関東の学生として、実際に原子力の施設等を見学することにより原子力を体感できる環境であることが羨ましく思いました。ただ漠然と勉強するのではなく、どんな形であれ実際に原子力の施設・技術を自分の目でしっかり見ることが出来る環境が必要ではないかと感じました。

私にとって今回参加した学生とシニアの対話in八戸は、大学に原子力専門の学科はないが地元に原子力の施設がある大学の学生と、地元に原子力の施設がなく大学で原子力専門の学科で勉強をしている学生との原子力に対する気持ちの面の違いを感じた対話となりました。

 


添付資料4 学生の事後アンケートの結果

準備中

 


添付資料5

八戸工業大学見学概要

 

 学生とシニアの対話集会(前日25日、グランドホテル)に参加した原子力学会シニアネットワークメンバーの有志が下記のにより、八戸工業大学を見学した。

 

日時:2009年2月26日(木)9.0011.00

9.00頃 来学(宿泊のグランドホテルからジャンボタクシーで)

9.009.30 学長室での懇談(資料 エネルギー・環境フォーラム報告書)

9.3011.00 学内見学

おおよその目安

  9.30−構造棟

  9.50−藤田研

  10.10−斉藤研

  10.30−村中研

  10.50 休憩

  11.00 出発

  蕪島、八戸大橋、工場地帯経由 八食センター(昼食)

  13.30頃 八戸駅着

参加者 11名(敬称略)

石井陽一郎  元東電原子力開発研究所副所長

岸本洋一郎  日本原子力研究開発機構研究フェロー、元核燃料サイクル開発機構副理事長

清水彰直   NPO放射線線量解析ネットワーク理事長元原子力委員会参与、元東工大教授

土井彰    元日立製作所エネルギー研究所長

松岡俊司   元東北電力(株)理事電力システム部長(SNW東北)

矢野隆   (株)Jライフシステム代表、元三菱重工業

若杉和彦   原子力安全委員会事務局、元JNF、東芝

石井正則   元IHIエネルギー技術本部技監 (幹事)

岩本多實   元福井工業大学教授、核物質管理センター理事、日本原子力研究所東海研究所副所長

菅原剛彦   元東北電力取締役(SNW東北)

大橋正雄   三菱重工業本社主幹技師、原子力・放射線技術士

以上