「学生とシニア」の対話実施概要

−対話 in八戸2008


2008.3.15 松永一郎

1.実施主旨

 2005年度から続けている「学生とシニアの対話」の八戸工大版。日本原子力学会の学生連絡会及びシニアネットワーク(SNW)の活動の一端として、核燃料サイクル施設の集まる青森県の工業大学である八戸工大の原子力に関心を示す学生とシニアの交流を図る。SNW主催の活動としては13回目の「対話」であるが、エネルギー問題に発言する会主催のものからの通算では19回目となる。

 八戸工大では2005年9月以来、2巡目の対話となる。

2.対話の目的

 学生とシニアとの対話を通して、学生とシニア間の相互理解を図ると共に、今後の原子力、エネルギー産業について共に考え、これからの対話のあり方やエネルギー教育の実践のあり方の参考にする。学生との対話では、彼らが社会へ出るまえに、原子力OBの経験や気概を少しでも吸収できる機会を提供し、今後の実務への自信に繋げてもらう。

八戸工大は2007年度の経産省の原子力人材育成プログラム予算を使った「チャレンジ原子力体感プログラム」の実践大学に指定されており、そのプログラムの最後を締めくくる意味合いも有している。

3.対話の実施

(1)日時 平成20年2月28日(木)

13:00〜17:00  (懇親会17:30〜19:00)

(2)場所 八戸グランドホテル マリーンホール 

(3)参加者

@学生35名

八戸工大 33名  東海大学 1名  慶応大学 1名

−博士課程1、修士課程3、学部生29

Aシニア(敬称略)

・SNW会員 14名  東北原懇 1名

荒井利治、石井正則、岩崎敏彦、岩本多實、岡部健悦(東北原懇)、小川博巳、金氏 顕、斎藤 修齋藤伸三、土井 彰、中島拓男(東電)、林 勉、古田富彦、益田恭尚、松永一郎

Bオブザーバー 2名

原文振 玉水弥寿子、齋藤祐子 

(4)実施内容

a基調講演

・「地球温暖化とエネルギー大消費−原子力への期待−」    小川博巳 氏

 

b.対話

7グループに別れ、シニア2名〜3名に対して、学生が4名〜5名ずつ付いて対話。

対話の題材は各学科(建築工学、機械情報技術、生物環境化学工学、電子知能システム)に関連するものを、グループ別に選定した。

対話終了後に各グループから対話内容のまとめが発表され、シニアを代表して、齋藤伸三氏から総合的な講評がなされた。

 

5)結果

シニア各人から感想を収集。学生に事後アンケートを実施した。

シニアの感想概要・・・意見をある程度集約)

     今回の対話は「チャレンジ原子力体感プログラム」を受講した3年生が主体であり、そのプログラムを締めくくる意味から、タイミング的に極めて意義のあるものであった。

     学生は非原子力系の工学部在学生であるが、核燃料サイクル施設が立地している青森県の工業大学の在校生であり元々原子力に対する関心が深かったこと、今回のチャレンジ原子力体感プログラムを通じて実際に原子力施設の見学等をしたことから、全体的に原子力に対する知識が深く、どのグループでも充実した対話ができた。

     グループ分けは専門学科別(一部当日の参加状況により、混成)になっており、主として、それぞれ所属する学生の将来の進路に関するテーマに沿った対話が行われた。それだけに、対話が学生の興味から外れることなく深まった。

     学生達は全員背広姿で真面目で礼儀正しく、前向きで原子力関係に就職を希望する者が多かった。その一方でおとなしく、多少積極性に欠ける点も一部みられた。今回の対話を通じて彼らの原子力に対する関心が更に深まり、自らすすんで関連情報を取りに行ったり、家族や知り合いにその輪をひろげてくれれば対話の目的の一つは達成されたことになる。

 

(学生事後アンケート結果概要)

33名の参加者の内、27名から回答があった。(回収率82%)

@卒業後の進路

34%と3人に1人が電力、原子力系メーカーを希望している。残りはたのメーカーとその他に3分の1ずつである。

A講演内容について

とても満足した、ある程度満足した学生がそれぞれ63%、30%あり、殆どすべての学生が満足している。

B対話の内容の満足度

とても満足した、ある程度満足したと答えた学生がそれぞれ67%、22%であり、9割の学生が満足している。

対話によって自分の知識のなさに気づかされた、普段話すことのできないシニアと話すことができた、自分が疑問に思っていたことが聞けたという答えのほかに、もっと原子力と関係の無いことが聞きたかったという答えもある。

C事前に聞きたかったことが聞けたか

3人のうち2人(67%)が聞けたと答えているが、残りの1人は聞けなかったようである。

時間が足りない、シニアが話しすぎて聞けなかった、原子力以外のことも聞きたかったということのほかに、自分が事前に調べてこなかったという自省的な理由もある。

D今回の対話で得られたこと

「自分の知識の少なさ」「正しい原子力の怖がり方」「将来の原子力に求められていることや求められている人材について」「人とのコミュニケーションについて」「これからのエネルギー産業のあり方について」「建築業界とCO2の関係」などである。

E学生とシニアの対話の必要性について

3人のうち2人が「非常にある」、1人が「ある」と答えている。全員がその必要性を認識している。

理由としては「原子力発展のためになる」「原子力に関係なく、経験の深いシニアとの対話はよい」との意見である。

F対話への再度の参加希望について

3人に1人はもう一度参加する気があるが、2人はもう少し知識を増やしてから参加したい意向である。なお、十分に話ができたからもうよいと言う意見も極僅かではあるがいる。

Gエネルギー危機に対する認識の変化

「大いに変化した(37%)」「多少変化した(52%)」と9割の学生が認識を新たにしている。

H原子力に対するイメージの変化

「大いに変化した(26%)」「多少変化した(41%)」と3人に2人が良いイメージに変化している。

I今回の対話で自分の学科との関連性を見出せたか

「見出せた(63%)」「どちらともいえない(26%)」「見出せなかった(11%)」であり、3人に2人が見出せたと答えている。

J対話の内容から将来のイメージができたか。

「できた(26%)」「ある程度できた(63%)」で9割の学生がイメージできている。

Kその他全体

「シニアとの対話は滅多に無いのでとてもためになった」「有意義だった」「現役と対話ができればよい」

 

各設問に対する解答は下記の通りである。

(1) 「学生とシニアの対話」の必要性についてどのように感じますか?

1.非常にある     70%   2.ややある 30%   3.あまりない 0   4.全く無い 0

(2)エネルギー危機に対する認識の変化はありましたか?

1.大いに変化した  37%   2.多少変化した  52%  3.あまり変化しなかった  11%   4.全く変化しなかった  0

(3)原子力に対するイメージに変化はありましたか?

1.大いに変化した  26%   2.多少変化した  52%   3.あまり変化しなかった  7%   4.全く変化しなかった  0

(4)事前に聞きたいと思っていたことは聞けましたか?

1.十分聞けた  67%   2.あまり聞けなかった  26%   3.全く聞けなかった  7%

(5)対話の内容は満足のいくものでしたか?

1.とても満足した  67%   2.ある程度満足した  22%   3.やや不満だ  11%   4.大いに不満だ  0

 

4.まとめ

 青森県は日本原燃鰍フ六ヶ所再処理工場をはじめ、同社のウラン濃縮施設、低レベル廃棄物処理施設があり、また建設準備中のものとしてMOX燃料加工施設、使用済み燃料中間貯蔵施設があり、原子力発電所としては東通村に東北電力東通1号機が稼動中であり、大間には電源開発鰍フフルMOX発電炉が建設準備中という、文字通りの核燃料サイクル県である。県下で唯一の工業大学である八戸工大は原子力工学科を有していないが、これらの企業へ地元の人材を供給する極めて重要な位置にある。

 八戸工大では2005年9月に日本原子力学会秋の大会が開催されており、その際に学生とシニアの大会を実施している。今回は2度目であるが、同大学は今年度に原子力立国計画に基づき新たに創設された原子力人材育成プログラム予算(経産省)の「チャレンジ原子力体感プログラム」の実践大学の指定を受け、3年次学生を主体として昨年10月より六ヶ所再処理工場や東通原子力発電所等の見学会を実施している。

 今回の学生とシニアの対話の学生参加者はそのプログラムを体験した3年次学生を主体としており、対話そのものはプログラムとは直接的な関係は無いが、それを締めくくるという位置づけにある極めてタイミングの良いものであった。

学生への事後アンケート結果では対話の必要性や対話の満足度と言った点では、他の原子力系学生と大差はなかったが、「エネルギー危機に対する認識」と「原子力に対するイメージの変化」では大きな差がみられた。(八戸工大では「3.あまり変化しなかった」「4.全く変化しなかった」いう回答が10%以下なのに対して、原子力系では50%以上が変化していない。)今回の対話で彼らのエネルギー危機に対する認識が深まり、原子力に対するイメージが良い方へ転換した様子が読み取れる。今回の対話参加学生のすべてが地元の原子力産業に就職するわけでは無いだろうが、この結果は将来青森県の原子力産業の発展にとって、大きな成果となって返ってくるだろうことを伺わせるものである。

なお、この対話のニュースが翌日と翌々日のデリー東北、東奥日報に比較的大きな記事になって報道された。これも彼らにとって励みになるものと思われる。

 

最後になりますが、今回の対話の準備と進行を精力的に進めていただいた同大学工学部電子知能システム学科4年の下田正平君と機械情報学科4年の浪岡和也君およびアドバイザーの博士課程2年の佐々木崇徳君、ならびに指導教員の同大異分野融合科学研究所長教授阿部勝憲様、同教授齋藤正博様、学長補佐教授藤田成隆様他の方々、また開催を支援して頂いた東北原子力懇談会殿に深甚なる感謝の意を表します。

 

5.今後の予定

       大阪大学(大阪大学、近畿大学)  3月28日

       愛知教育大学           5月

       慶応大学             6月

 

6.対話写真

 対話写真欄参照

 

添付資料

添付1 参加者名簿(グループ別)

添付2 シニア感想

添付3−1 学生側事前アンケート結果

添付3−2 学生側事後アンケート結果


−対話写真−

 開会の挨拶 下田正平君

 

 

基調講演 小川博巳氏

 

 

対話風景1

 

対話風景2

 

学生発表 浪岡和也君

 

講評 齋藤伸三氏

 

閉会の挨拶 齋藤正博教授

 

 集合写真


添付資料1  対話参加者名簿(グループ別)

 

G

所属

学年

学生

シニア

テーマ

1

建築工学

3

3

3

3

長谷川朋弘

小林 明

布川慎吾

沼岡忠和

林 勉

古田富彦

原子力の建築工学について など

2

機械情報技術

 

 

 

慶大 機械工学

4

3

3

3

4

浪岡和也

梅原慎時

金田一洋介

坂本 優

小林遼太郎

荒井利治

岩瀬敏彦

原子力の機械情報技術について など

3

機械システム工学

生物環境化学工学

生物環境化学工学

東海大 応用理学

M2

3

3

M1

小松俊介

山田崇公

西塚貴司

鈴木 将

金氏 顕

中島拓男

 

原子力の機械情報技術について など

4

電子知能システム

4

3

3

3

4

下田正平

上条 望

下山 慶

山本一輝

工藤一平

石井正則

益田恭尚

原子力の電子電気について など

5

生物環境化学工学

 

3

3

3

3

3

3

3

長崎聖昌

川島友宏

久保彰孝

中田晋平

中村和也

新田展大

山本啓太

土井 彰

齋藤伸三

原子力の生物環境化学について など

6

生物環境化学工学

 

3

3

3

3

3

山谷 慎

藤野裕也

真坂 匠

村上武臣

山下 淳

岡部健悦

斎藤 修

松永一郎

原子力の生物環境化学について など

7

電子電気工学

機械情報技術

機械情報技術

 

機械システム工学

D2

4

4

4

M1

佐々木崇徳

佐藤真也
田村一磨

横濱利明

真田 学

岩本多實

小川博巳

原子力の専門技術について など

 


添付資料2  シニア感想

 

(荒井 利治)

我々(岩瀬、荒井)の第2グループは学生(八戸工大3名、慶大1名)とシニア全員が

機械系だったので話はツーカーで早かった。「原子力の機械情報は?」には岩瀬さんのPWRのカタログによる至るところに活躍の場があるとの説明を即理解し、さらに「T定規論」の展開には学生全員「T定規はよく知ってます」とメタファは完全に通じた。

しかし就職内定の学生から、事前に就職先を一度も訪問したことがなく、どんな仕事をするか不安だとの話があった。今回の「チャレンジ原子力体感プログラム)が一歩前進であるが、以前から指摘されている求職側のインターンシップなどの努力不足を感じた。

 

次に慶大の学生から今日の講演から「日本のエネルギー情勢、世界の環境問題は理解できるが、何故その解が原子力だけなのか?」との問いが出され、八戸工大側から「明快な解が無いときは、現実を踏まえて誰かが原子力のような既存のものをやるべき」と反論。

ここで都会的発展志向と地方的実直志向のデイベートに全員参加。当方も国立環境研の

「低炭素社会に向けた挑戦」のシナリオAとBを紹介、ドラえもんの社会とサツキとメイの家の比喩にも若者は的確に反応。話は盛り上がったが時間切れとなった。

 やはり今回も対話の時間不足と其れを感じてあせるシニアたる私のしゃべりすぎが反省される。ともあれ今後の対話の進め方への貴重な勉強をさせていただいた八戸であった。

 

(石井正則)

今回のプログラムは、「チャレンジ原子力プログラム」の終了とリンクして行なわれたことにより、大変有意義な対話となったように思いました。

特に、原子力以外の工学(私のグループは電子知能システム工学専攻の学生)との間で、違和感なく対話ができ、また、発表もきちんとされたことには、感銘とともに若者のすがすがしさを感じました。原燃サイクル施設や原子力発電所に近いこと、それらに就職する学生も多いことが背景にあるとは思いますが、その一方、かつての原子力船の時代の混迷や、今もって異を唱える向きがあることを思うと、学生が正しく理解することに前向きに取り組んでいる姿を拝見し、「チャレンジ体感プログラム」をはじめとし、学校の努力の成果も感じられました。

原燃サイクルや発電所などの関連事業に就職される学生もおり(私のグループの4年生はその方向への就職が決まっている由でした)、大変頼もしく思いました。しかしながら、原子力産業は今後ますます国際化し、幅が広がります。また、それ以外の分野でもエネルギーや環境は重要な要素です。どのような分野で活躍することになろうと、学生のとって有意義な対話となるよう、シニアとしても努力してゆきたいと思っております。


岩瀬 敏彦)

 当日は北の地、寒さの中ではありましたが、穏やかな空模様のなか、八戸の中心に位置するホテルの会場にての対話は、大いに盛り上がり、参加学生の皆様の力強いがんばりの姿勢を強く感じました。

1.          グループ対話について

第2グループは機械情報技術学科の3名(学部4回生1名、3回生2名)に加え遠路から参加の慶大機械工学生1名の計4名、シニアは 荒井副会長、小生の構成メンバーで、4回生のリーダのもと、対話が活発に進められた。

対話テーマは“原子力の機械情報について など”。

先ず学生から、“原子力において、機械工学はどう活かされているか?”対話テーマが示され、それを受けて、シニアから、原子力実務を例に説明を行った。原子力は総合工学であり、学生の関心を持ってもらえるよう、若干時間をとって説明をした。

八戸工大は「チャレンジ原子力体験プログラム」へ参加し、原燃サイクル立地県たる青森県の最大の工業都市八戸にキャンパスが所在するなど、原子力への学生の関心は高く、従って、シニアの話にできるだけ理解しようとの意欲を持つことが伺えました。

基礎工学の話についで、将来社会に出て、活躍するに当たっての心構えについて議論し、身につけた基礎学問とチームプレーの大切なことが結論付けられた。(T定規論のお話を例にした説明議論からの理解として。)シニアが現役時代の実務体験などの話には、非常に関心を持って聞いていただけた模様です。

2.          全体的なこと

グループ対話に続き、各グループからの対話のまとめ、他グループからの質疑応答、シニアからの前向きのコメント、説明など活発な議論が進められ、学生のみなさんの原子力への関心が大きく、将来の活躍の場の候補にと思えるような意向も伺うことができ、対話の成果を強く感じた次第です。

また、今回の対話では、建築工学科、生物環境化学学科の学生の皆様の参加は、従来の対話参加学生メンバーとは異なるスペクトル(例として建築工学科学生から原子力施設への免震構造導入に関する質問など)が示され、対話の発展の新しい方向の示唆を受け取った次第です。

 

(岩本多實)

八戸工大は、六ヶ所村に近いのに学修科目で原子力関連は「原子力工学」が4年前期に学部共通の選択科目としてあるのみで少ないと感じていたが、教授陣の話で次年度から授業内容に「原子力」を強化することで増やすとのことであり、時宜を得た当面の措置だと思った。「原子力」にエネルギー利用ばかりでなく放射線利用も含められることを望みたい。

対話した機械情報技術学科の学生を含め、学生諸君は真面目で純朴な子が多そうなので、はっきりした目的意識を持って、ものに取り組みやり遂げる学修態度や生き方などを「シニアによる対話」や「チャレンジ原子力体験プログラム」などを通して学んで呉れ、原子力に向かう学生が多くなるよう期待するとともに、大学でも基礎学力のしっかりした原子力人材の育成が推進されることを願っている。

(岡部 健悦)

対話の準備に当たられた学生幹事、シニア幹事、阿部先生、それから参加された学生諸君、シニアの方々に敬意を表します。

私が対話したのは、生物環境化学工学科の3年生でしたが、「チャレンジ原子力体感プログラム」で東通原子力発電所と六ヶ所日本原燃サイクル施設を見学していましたので、原子力に関する理解が進み、就職先としての選択肢の一つに上がっているなと感じました。

一方、学生たちは、あまり原子力や将来の仕事に対しての情報やコミュニケーションの機会が少ないようにも感じられました。

例えば、原子力発電所で働く人たちはどのような技術的な勉強(電気、機械、化学、情報、原子力、放射線など+語学)をしてきているかなどの情報があれば、原子力系の企業に就職しようとするときの参考になると思います。

このためシニアと学生の対話が今後ますます重要になってくるとの意を強くしました。

 

(小川博巳)

参加学生の所属学科が多岐にわたり、若干の懸念が伴ったが、事前アンケート及び対話会の反応はそれを払しょくするものであった。

「チャレンジ原子力体験プログラム」を通し、事前の勉強と、東通1号機・むつ・核燃サイクル見学会は、効果的なものであったと理解される。プログラムの締めくくりとして、対話会を設定した企画には敬意を表したい。今回の対話会の学生の反応を踏まえて、「チャレンジ原子力体験プログラム」を更に次年度も継続して頂きたい。

基調講演では、グローバルな潮流を伝えたいとの思いから、敢て海外事情などを盛り込み、聊か駆け足の紹介になったが、事後の学生聞き取り、或いは事後アンケートなどから、かなり理解された模様で胸を撫で下ろす思いであった。八工大のシラバスを勘案すれば、原子力については若干の解説が必要であったかも知れないが・・・。

何時ものことであるが、「学生一人一人がシニアに何をぶっつけ、何をひきだすか」の事前の心構えが、対話会を更に効果的なものに変質させ得る余地があろう。日頃から与えられることに慣れている若者には、次世代を託す立場から、自らブツカッテ、奪い取る鍛錬をさせたいものだ。

この点に付き、対話会のマニュアルに一筆加えたい。

 

(金氏 顕)

1.まず八戸工大の学生が全員背広姿で礼儀正しく、大変好感が持てた。当日の午前中にプログラムの修了式があったのでそのためか?と聞いたところ、そうではなくシニアとの対話なので社会人として恥ずかしくない服装ということで阿部先生が指導したようだった。この大学の教育理念が「良き技術は良き人格から生まれる」というのが実践されていると感心した。
2.学生幹事、副幹事が大変ハキハキしていて、会の進行をし、また学生達は我々シニアから何かを学ぼうという意欲があり、大変気持ちよかった。
3.懇親会で阿部勝憲教授部勝憲教授の他に藤田成隆学長補佐、斉藤正博教授ほかの先生方が同席したのは学生にとってもシニアにとっても大変良い世代を超えた対話になり、学生達は色々なことを学んだと思われる。対話は学生が主体であるが先生達も関心を持って参加することが良い教育効果をもたらす。
4.地元新聞2紙(デーリー東北、東奥日報)に記事が掲載され、これも学生にとって良い記念になった。
 

(斎藤 修)

今回の対話の対象の学生は生物環境化学工学科ということで原子力の学生ではなかったが、六か所再処理工場の近辺であることから再処理工場への就職を希望すると述べた学生が二人いた。そのうちの一人は放射線主任者の資格を取りたいと希望を持っており、大変頼もしく感じた。このような具体的な目標を持ち、それを実現するための努力をしていくことが将来の大成につながる道であり、ぜひその希望が実現することを願わずにはいられない気持ちになった。

最後の発表はうまくやれるか心配して見ていたが、上手にまとめ、会場からの質問にもちゃんと答えていたのに感心した。

 

(齋藤 伸三)

対話のグループが生物環境化学工学科の3年生と言うこともあり、原子力に関してそれ程基礎知識がなく、ややもすると基礎原理の説明に時間がとられることもあったが、原子力の平和利用と核不拡散、ウラン資源問題、原子炉の廃止措置、放射線の多様な利用等について真摯な質問を受け、理解を深めて貰うことに役立ったと思います。当該学科と原子力との関係では特に放射線の利用や放射能分析等考えられるので、八戸工大では、今後、このような分野の教育を行っていただき、卒業生の就職先を広めていただくのも一案ではなかろうか。 無論、今回、学生諸君が原子力の理解を深め、家族や知り合いの人に、その輪を広げてくれれば、我々の目的の一つは達成したことになると思う。

 

(土井 彰)

227日に実施した八戸工業大学における学生との対話の感想を述べます。

1.          まじめな学生が多数集まり、気持ちよく有意義な時間を過ごすことが出来た。

2.          しかし、原子力関連の授業が無いため、この分野の知識はほとんど無く、巨大技術と巨大産業に驚いた様子であった。その分、未知のものを知る喜びを感じていた様子であった。われわれも時間の許す限り説明した。

3.          なぜ原子力なのか(?)の疑問には十分答える時間がなかった。しかし。一方であまり原子力に片寄った導きには注意が必要と感じた。

 

(中島 拓男)
1.全体を通じて司会の進行がよく、時間等はよくコントロールされていた。
2.学生たちは、真面目で礼儀正しく話を聞く意欲が感じられた。
3.但し、少々積極性に欠けるところが見受けられ、もっと自分の意見を言ってほしかった。従来のような課題を事前に決めて議論する方法のほうが学生の意見が出やすいのではないでしょうか。
4.藤田学長補佐、阿部教授ほかの大学の教員たちがこのプログラムを含め、学生の教育に積極的であり、そのことが会全体の雰囲気、学生の意欲にプラスになっていたと思います。

林 勉)

今回は一般の工学系の学生が対象であったが、学生が熱心に対話に取り組んでくれたという印象が強い。事前アンケートの結果ではかなりの学生たちが原子力の必要性について正しく認識していることに驚いたが、これは「チャレンジ原子力体験プログラム」の成果であることがわかり、納得するとともにこの種のプログラムの重要性を認識した次第です。

私のグループは建築工学の3年生4人と古田さんでした。学生のまとめ役をやってくれた小林君が中々しっかりしていて、全体をリードし、最後には立派な発表をやってくれたのには感心しました。建築と原子力との関連についての質疑応答がけっこうありましたが、幅広い事項について適切な対話ができたと思っております。

懇親会では多くの学生達と会話をしましたが、皆一様に「日頃接触できないシニアの方たちと対話ができて楽しかった、また大変に勉強になった」と言ってくれました。前向きで積極的で好ましい学生が多かったと言うのが全体的感想です。

今後とも原子力以外の学生達との対話がより多く出来るように計画していただければと思います。

 

(古田富彦)

全体として前向きで積極的で誠実な学生が多かったという印象です。私が林さんとともに担当した建築工学科の3年生4人は、とても熱心に対話に応じ、原子力発電所の耐震性、原子力、エネルギー、環境、CO2削減、放射線被ばく問題等について一応理解をしたと思います。質疑・応答はまとめ役の小林君が全体をリードし、すべて忠実に記録し、見事に要約・発表したのには本当に感心しました。今回担当した学生と対話in東京2007(11/24、武蔵工大)で担当した学生(Cグループ)とは、原子力発電所の耐震性および放射線被ばくによる影響に関する知識については、両者ともほとんど白紙で特に大きな違いはないと思いました。今後盲点となる留意すべき分野ではないかと考えられます。
一期一会を大切に心と心の交流もできればと思い、懇親会後担当した学生4人と二次会、三次会と付き合い、悩み、就職等諸々の問題について忌憚なく話し合うことができ、今後の絆となれば幸いと思います。今後とも学生達との対話がより多くできるように計画していただければシニアとしての生きがいにもなります。

益田恭尚)

 原子力関連学科がない大学ではあるが、先生方の原子力への理解が深く、また、六ヶ所村に近いこともあり学生の原子力への理解が進んでいることに感心した。これはまた「チャレンジ原子力体験プログラム」の成果が大きいことを示しているものと思う。学生にどのような経緯で原子力を理解したか聞いた所、子供の時からそのような環境で育ったからだと云っていたが、それを示すように発表会でもその点を発表していた。

懇親会では副学長を初め教授陣とお話ができ有意義であった。

 

(松永一郎)

八戸工大における対話は2年半前に一度実施している。そのときの事前調査では84%の学生が非常にあるいは並み以上にエネルギー問題に関心をもっており、また将来のエネルギーとして原子力を挙げたのが50%を超えていた。今回参加したのはそういった学生の中で、「チャレンジ原子力体感プログラム」を学んだ3年生が主体だったので、非常に熱心に対話に参加したとの印象である。春休み中にもかかわらず、30名を越す学生が集まったのもこのような学生の熱意と、阿部先生他の指導教官の熱意が相俟って実現したものと思う。我々の第6グループは生物環境化学工学科の3年生4名であったが、全員将来六ヶ所再処理工場で働くことを希望していたり、興味を持っており、それだけに熱意ある対話ができた。発表内容も発表態度も原子力系学生と遜色なく堂々としており好感が持てた。学生幹事の下田正平君と副幹事の浪岡和也君の対話会進行もスムーズであり、立派なものであった。

 


添付3−1 学生側事前アンケート結果

対話前 アンケ−ト結果

 

1)エネルギー・環境問題に関心がありますか

1、 非常にある 2、ややある 3、あまりない 4、全くない

 

2)原子力は必要であると思いますか

1、 積極的に推進 2、やや推進 3、(代替エネルギー源がないため)許容 4、なんとなくイヤ 5、絶対イヤ

 

3)原子力について学んだことがありますか

1、 ある(講義など) 2、少しある(一般常識など) 3、ほとんどない

 

 

4)対話のテーマや、エネルギー問題全般について疑問・質問があれば自由に書いてください。

以下の選択肢から選んでも結構です。(複数回答可)

 

エネルギー問題について

1、 エネルギー資源と将来の見通し

2、 温暖化対策と技術開発

3、 日本におけるエネルギー問題への取り組みは?

4、 大学では何を学ぶべきか?

 

原子力・放射能について

1、 原子力に関わる仕事にはどのようなものがあるか

2、 原子力産業では工業の専門分野はどのように活かされているか

3、 高速増殖炉などその他新型炉の開発状況

4、 核融合炉の開発状況

5、 放射性廃棄物の処理・処分

6、 海外の原子力情勢

7、 原子力業界が直面している問題点

8、 核燃料サイクルの現状と今後

9、 原子力報道の在り方

10、      原子力発電所の耐震性

11、      地域の役割

 

 

研究者・技術者、社会一般について

1、 学生は社会に出るにあたってどのような力をつけるべきか?

2、 職場での女性に対する待遇はどうであったか?今後どのような場面で女性が活躍されることを期待されるか?

 

 

 

5)本企画に対する意見・要望

     原子力に対して全ての人が賛成ではないはずなので、メリットだけでなくデメリットも説明することで理解が得られると思う

     専門的すぎて理解しにくいところがあったので、次回チャレンジ原子力体感プログラムを受講する学生のためにも改善してもらいたい

     原子力は被ばくないのか?また被ばくした人への対応はどうしているのか?

 


添付3−2 学生側事後アンケート結果

「学生とシニアの対話」 事後アンケート

 

(1)   八戸工業大学学生  学部3年生:19名 学部4年:6名 修士2年:2名 計27名

希望進路 : 就職 (1電力 ・ 2原子力関連メーカー ・ 3メーカー ・ 4研究機関 ・ 5その他)   進学 (原子力系分野 ・ その他の分野)

 

(2)        講演の内容は満足のいくものでしたか?その理由は?

1とても満足した ・ 2ある程度満足した ・ 3やや不満だ ・ 4大いに不満だ

理由 ・対話を通してこれから何を目指すのか少しわかった気がした

・原子力の反対と賛成のどちらでもない両立の立場の話を聞きたかった

・原子力の知識に関してはあまり理解することができなかった

・シニアの方々と話すことが面白かった

 

(3)        対話の内容は満足のいくものでしたか?その理由は?

1とても満足した ・ 2ある程度満足した ・ 3やや不満だ ・ 4大いに不満だ

理由  ・対話によって自分の知識がないことに気づいた

・シニアの方々とは普段は話すことができないのでいい機会だった

・自分が疑問に思っていたことを聞くことができた

・もっと原子力とは関係ないところを聞きたかった

 

(4)        事前に聞きたいと思っていたことは聞けましたか?

1十分聞くことができた ・ 2あまり聞けなかった ・ 3全く聞けなかった

理由  ・聞きたいことをもっと具体的に考えてくればもっと有意義な対話になったと思う

・就職活動のアドバイスなども聞きたかった

・もっと時間がほしかった

・シニアの方々が元気で自分から話せなかった

 

(5)        今回の対話で得られたことは何ですか?

・自分の知識の少なさ

・正しい原子力の怖がり方

・将来の原子力に求められていることや求められている人材について

・人とのコミュニケーションについて

・これからのエネルギー産業のあり方について

・建築業界とCO2の関係を知ることができた

 

(6)        「学生とシニアの対話」の必要性についてどのように感じますか?その理由は?

1非常にある ・ 2ややある ・ 3あまりない ・ 4全くない

理由  ・原子力の発展には必要だと思う

     ・原子力に関係なくシニアの方々の話は貴重だと思う

     ・貴重な体験によって自分にプラスになることが多かったから

     ・座学だけでは学ぶことができないことも学べるから

 

(7)        今後,機会があれば再度シニアとの対話に参加したいと思いますか?

1まだまだ話したりないので参加したい ・ 2もっと知識を増やしてから参加したい ・ 3十分話ができたからもういい ・ 4二度も必要ないと思うからもういい ・ 5その他(空欄に記入)

 

(8)   エネルギー危機に対する認識に変化はありましたか?その理由は?

1大いに変化した ・ 2多少変化した ・ 3あまり変化しなかった ・ 4まったく変化しなかった

理由  ・具体的なデータを見ることができたから

・予想していたよりエネルギー問題は深刻だった

・前々からエネルギー危機は感じていたが、前以上に危機感が強くなった

 


(9)   原子力に対するイメージに変化はありましたか?その理由は?

1大いに変化した ・ 2多少変化した ・ 3あまり変化しなかった ・ 4まったく変化しなかった

 

   理由  ・元々悪いイメージは持っていなかったが、必要であるということを再認識した

・思ったとおりのイメージだった

 

(10)      原子力に対する関心の低い10代、20代の若年層に対する原子力広報活動は  どんな方法が良いと思いますか?

・「チャレンジ原子力体感プログラム」は良かっし、広報活動になると思う

・メディアをうまく利用するといいと思う

・学校での教育の一部として取り入れる

・全国的に原子力を身近に感じられる場所を増やす

・偏らない意見を言うべきだと思う

 

(11)      今回の対話で自分の学科との関連性を見出すことができましたか?その理由は?

1見出せた ・ 2どちらともいえない ・ 3見出せなかった

理由 ・原子力は総合的な知見が必要だということ

     ・原子力だけでなく風力・地熱・太陽光などの発電制御について理解することができた

    ・免震構造について理解することができた

・電力分野に対する視野が広がった

 

(12)      対話の内容から将来のイメージができましたか?その理由は?

1できた ・ 2ある程度できた ・ 3あまりできなかった ・ 4全くできなかった

理由  ・自分が「こうしたい」というイメージがおぼろげに出来てきた

・自分の将来だけでなく地球の将来のイメージをすることが出来た

 

(13)      本企画を通して全体の感想・意見などがあれば自由に書いてください。

・シニアの方々との対話は滅多にないので大変いい機会だった

・参加できてとても有意義な時間を過ごせた

・シニアの方々だけではなく現役の方ともっと話がしたったか

以上