「学生とシニア」の対話実施概要

−対話 in福井2008


2008.7. 松永一郎

 

1.実施主旨

 2005年度から続けている「学生とシニアの対話」の福井版。日本原子力学会の学生連絡会及びシニアネットワーク(SNW)の活動の一端として、原子力系の学生とシニアの交流を図る。エネルギー問題に発言する会主催のものから通算して23回目となる。

 福井では2005.122007.7に開催しており、今回が3回目の開催となる。昨年度から福井大大学院原子力・エネルギー安全工学専攻大学院と福井工大原子力技術応用工学科 

との2大学が参加するようになり、昨年は福井大学で、そして今年は福井工大で実施した。

 

2.対話の目的

 原子力系学生とシニアとの対話を通して、学生とシニア間の相互理解を図ると共に、今後の原子力、エネルギー産業について共に考え、これからの対話のあり方やエネルギー教育の実践あり方の参考にする。 

福井県には関電及び日本原電の発電所、JAEAのもんじゅがある他、原子力関連の多くの研究関連機関があり、地元に密着した両大学の役割は大きい。世界のそして日本のエネルギー産業における原子力の位置づけを対話を通して見につけてもらい、そして彼らが社会へ出るまえに、原子力OBの経験や気概を少しでも吸収できる機会を提供し、今後の実務への自信に繋げてもらう。 

 

3.対話の実施

(1)日時 平成20年7月5日(土)

13:00〜17:15  (懇親会17:45〜19:30)

(2)場所 福井工業大学 福井キャンパス FUタワー15F

(3)参加者  合計79名 

学生48名、シニア14名、教員7名、オブザーバ10名

@     学生

福井工大原子力技術応用工学科  学部生 36名

福井大大学院原子力・エネルギー安全工学専攻 大学院生 12名

東海大 1名(鈴木将 学生連絡会会長)

A     シニア

石井正則、石井陽一郎、岩本多實、金氏顕、岸本洋一郎、西郷正雄、斎藤修、清水昭直、竹内哲夫、林勉、前川則夫、前田肇、松永一郎、三谷信次

B     教員

福井工大 4名(中安文男教授、田中光男教授、吉岡満夫教授、砂川武義教授)

福井大 3名(飯井俊行教授、伊佐公男教授、福井教授) 

C     オブザーバ

奥谷外喜雄 北陸原懇専務理事

元井澄男 福井県環境・エネルギー懇話会常務理事

来馬克美 若狭湾エネルギー研究センター専務理事

川村 武 JAEA敦賀本部地域共生室長

佐久間 実 JAEA中・西地区連携協力推進統括者

梅垣 治 関電地域共生本部エネルギー研究開発拠点化Project Team マネージャー

山本重徳  同上 リーダー

寺川和良 福井県原子力環境監視センター 所長

岩永幹夫 福井県安全環境部原子力安全対策課 参事

玉水弥寿子 原文振エネルギー文化部副部長

D     メディア取材

福井新聞、中日新聞および福井テレビ、福井放送、(福井新聞、中日新聞の記事は別添)

 

4.実施内容

(1)   基調講演 林 勉 氏

「エネルギー・環境問題としての原子力〜皆さんの役割は〜」

(2)   対話

7班に分かれて対話 学生7名+シニア2名+オブザーバ1〜2

1G 日本人全体のエネルギー危機意識を変えるためにはどうするべきか?

2G 地域に原子力を根付かせるために、大学での原子力教育はどうあるべきか?

3G  地球環境と原子力の関わりをどう考えるか?

4G 原子燃料サイクルについてどう考えるか? 

5G FBRその他新型炉についてどう考えるか?

6G 原子力業界の隠蔽を疑われる体質について、どう考えるか?

7G 社会が要求する技術者のあり方は何か?

(3)   発表

対話終了後、各グループが対話の内容をまとめ、パワーポイントを用いて発表と質疑応答を行った。発表資料は別途資料に示す。

(4)   講評

発表終了後、シニアを代表して竹内哲夫SNW会長より講評が行われた。

(5)   懇親会

対話会終了後、対話会では十分語れなかった分も含め、対話の延長を行うとともに、懇親を深めた。

 

5.結果

 フォローアップとして参加シニアからは感想を集め、学生には事後アンケートを実施した。

(1)   シニアの感想

・学生、シニア、教員、オブザーバ全員で80名という、これまででも珍しい大人数であり、盛会であった。

・グループはB1〜M2まで学年で6年の開きがあったために、知識レベルの差が大きく、発言するのは主として、高学年層という偏りがあった。発表も高学年生に引っ張られる傾向があった。ただ、低学年層も熱心に知識や話し方を吸収しようという意気込みが感じられた。

・原子力に関する知識レベルを高めるために、福井という地の利を生かして、低学年の内から地元の発電所等の見学をさせたらよい。

・今回はグループのテーマが1つだけだったので、多少対話が拡散した面があった。あらかじめ参加する学生に質問事項を出してもらい、対話で自分達が何を吸収するのか、目的をある程度ハッキリさせた方がよい。

・フォローアップのために、シニアの自己紹介資料にメールアドレスを書いておき、学生サイドからいつでも質問でき、またそれにシニアが答えられるようにしておくと良い。

・教育プログラムにビルドインして、毎年開催が定着すればリピーターとして参加することで、成長が期待できる。

・グループ別の発表は必ずしも要領がよく、上手くまとめているとは言いがたいが、これはこれで一つの勉強であり、よいのではないか。

(2)   学生事後アンケート結果概要

48名の参加者の内、36名から回答があった。(回収率75%)

希望進路は 電力就職:19%、原子力関連メーカー就職:19%、メーカー就職:8%、研究機関:3%就職(希望未定):14%進学:14%無回答:22%

@講演内容

とても満足:47%  ある程度満足:50%  やや不満:3%

殆どの学生が満足している。

A対話内容

とても満足:51% ある程度満足:43% やや不満:6%  

殆どの学生が満足している。

B事前に聞きたいことが聞けたか

十分に聞けた:71% あまり聞けなかった:20% 全く聞けなかった:9%

十分に聞けたものが70%であったが、30%はあまり聞けなかったようである。

C対話の必要性 

非常にある:89%  ややある:11%

殆どの学生が必要性を感じている。

D対話へ 再度参加したいか

参加したい:17% もっと知識を増やしてから参加したい:76% もうよい:7%

殆どの学生がもっと知識を増やしてから参加したいと回答

Eエネルギー危機に対する認識の変化

大いに変化:27% 多少変化:37% あまり変化せず:23% 全く変化せず:13%

変化した者が64%いるが、しない者も36%いる。

F原子力に対するイメージの変化

大いに変化:10% 多少変化:31% あまり変化せず:34% 全く変化せず:24%

40%の者は変化したが、60%は変化していない。

G今回の対話で得られたこと

・具体的に何がどうなのかが聞けた

・原子力の知識、知らないことが分かった

・情報・意識の大切さ、FBRの重要性

・今後の私たちの行動について

・原子力に対する考え方が変わった

・専門家からいろいろ原子力の話を聞かれました

・以前よりも広い視野を得ることが出来た

     現状の日本のエネルギー問題の真実

など

−対話の必要性について、全ての学生から「ある」との回答を得た。また対話の満足度も殆どすべての学生が満足したと回答している。今回の対話ではグループ分けで、学生の年齢差がB1からM2まで6歳と離れており、どのグループでも発言するのは高学年層に偏っていたようだが、発言しなくても聞くことだけでそこそこ知識や対話のノウハウを身に付けていたようだ。対話への再度の参加希望のアンケートに「もっと知識をつけてから参加したい」という回答が8割近くいたことからそのことが伺われる。

−エネルギー危機に対する認識の変化、原子力に対するにイメージの変化については、変化したものとしないものが半々である。この傾向は今まで実施した原子力系の学生に共通したものである。

 彼らは元々エネルギー、原子力に関心が高かったから、原子力系に進学してきたのであり、今回の対話でより深く、現在のエネルギー問題、原子力問題に対する認識を深めたと考えればよい。

 ともあれ、「深い知識や経験のあるシニアと対話をする」という貴重な体験そのものが、学生に大きな刺激となったようである。学生が聞きたいと思っていたことにシニアが分かりやすく、説得力のある説明で応じてくれたこと、シニアの熱意に大いに感化されたことと思う。

 

6.まとめ

今回の対話を盛会裡に終えることができたのは、今年度の「原子力人材育成プログラム」に福井工大が3部門、福井大学が2部門で採択されたこと、中安先生と飯井先生の熱意が実ったこと、参加シニアに福井関係者が6名おられ表裏で力になっていただいたこと、多くのオブザーバの参加やメディアの取材があったことが挙げられる。また、開催の運営に当たった戸田雄介君(福井工大)他の学生諸君の努力が大きく貢献したことは勿論である。

 メディアとしてはプレスから福井新聞、中日新聞の2社が取材に来た他、今回初めてテレビニュース(福井テレビ、福井放送)として放映された。原子力立県として福井県に占める原子力の存在は大きく、今回のようにメディアに取り上げられたのは、参加した学生にとっても大きな励みになったことと思う。

 なお来年度、福井で開催する場合には、福井高専までも組み入れたものにしたいという、飯井福井大教授の心強いご発言があった。

 

7.今後の予定

 7月25日(金) 対話in北海道2008

 

添付資料

添付1 参加者名簿

添付2 シニア感想

添付3 学生側事後アンケート結果

参考資料

 7月6日付け 福井新聞、中日新聞の記事

 


対話写真

 

対話風景

発表

講評

 


添付資料1 対話会のグルーピング

 

1Gテーマ

2Gテーマ

日本人全体のエネルギー危機意識を変えるためにはどうすべきか?

地域に原子力を根付かせるために、大学での原子力教育はどうあるべきか?

シニア

前田 肇

シニア

岩本多實

シニア

松永一郎

シニア

金氏 顕

福井

修士

山本哲大

東海

修士

鈴木 将

福井

修士

藤井裕也

福井工

修士

田中健司

福井工大

4

森本浩三

福井工

4

小林 仁

福井工大

3

黒澤友樹

福井工

4

林 賢太 

福井工大

2

赤松岳明

福井工

3

西尾 勉

福井工大

1

荒木勇二

福井工

2

宮崎誉士

福井工大

1

横田康平

福井工

1

上野山紘

 

3Gテーマ

4Gテーマ

地球環境と原子力の関わりをどう考えるか?

原子燃料サイクルについてどう考えるか?

シニア

石井陽一

シニア

竹内哲夫

シニア

清水昭直

シニア

三谷信次 

福井

修士

前川祐希

福井

修士

辻 将隆

福井

4

田中智大

福井

修士

林 長宏

福井工大

4

香田有哉

福井工大

4

松浦史和

福井工大

3

酒井直也

福井工大

3

戸田雄介

福井工大

3

南  翼

福井工大

3

三宅隆生

福井工大

2

小野瀬亮

福井工大

2

川田智之

福井工大

1

大林 秀

福井工大

1

滝下貴行

5Gテーマ

6Gテーマ

7Gテーマ

 

 

 

FBRその他新型炉についてどう考えるか?

原子力業界の隠蔽を疑われる体質について、どう考えるか?

社会が要求する技術者のあり方とは何か?

シニア

岸本洋一郎 

シニア

林  

シニア

前川則夫 

シニア

西郷正

シニア

斎藤 修

シニア

石井正則

福井

修士

紫 凌云

福井

修士

佐藤 健

福井

修士

柏 貴子

福井

修士

何  婷

福井

修士

本津一寛

福井

修士

平野雅裕

福井工大

4

小森拓也

福井工大

4

太田陽平

福井工大

4

阿部真人

福井工大

3

福永 忠

福井工大

3

五十嵐博

福井工大

4

関根祐一

福井工大

2

河田拓也

福井工大

3

山村啓峻

福井工大

3

牧田大地

福井工大

2

寺尾幸浩

福井工大

2

大坂尚史

福井工大

2

手鹿翔太

福井工大

1

今川芳明

福井工大

1

川上直道

福井工大

1

山本 幸

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


添付資料2 シニア感想

(鈴木 将 学生連絡会会長(東海大M2)の感想を含む)

石井正則

学生の数が多かったこと、報道が入ったことなどもあり、主催者の熱意の強さが並々のものでないことが感ぜられ、また、 中安先生始め福井工大、福井大学の先生方も多く出席され、期待が大きいことも伺われた。
参加学生は学部1年から修士まで幅広く、入学したばかりの1年生の初々しさと、修士学生の頼もしさは好対照であった。
 

ただ、対話では低学年生にも対等な対話への参加を誘導したが、発言が少なかったのは残念であった。福井工大生にとっては、この対話が学生のプログラムに組み込まれれば(実際今回の高学年生は昨年も参加していた)、毎年参加することにより成長が期待できよう。シニアとしても成長を見るのが楽しみである。福井大修士生の活発な対話からは、これまでの学習の成果も伺われたが、これが低学年生にとってのインセンティブとなれば、成功といえよう。 

私のグループのテーマは「社会が要求する技術者のあり方とは何か?」で、シニアにとっては技術者としての生き方や人生観などを含め、語りたいところが多いものであった。学生にとっては切り口が多く、具体的な質問もしにくかったようである。この結果、広範な内容となり、発表者にはプレッシャーがあったかも知れない。このような対話ではまとめを意識しすぎない方が良いように思うが、まとめと発表を担当した学生の責任感には敬意を表する。 

 

石井陽一郎

3Gのテーマは「地球環境と原子力のかかわりをどう考えるか」で、まさに洞爺湖サミットを目前にした恰好のテーマであった。

原子力は現在ほとんど電力供給に用いられる。そこで第一に現状認識として

CO2の90年2,75億トンに対する現在は3.62億トンに増えている。電力は歴史的にも環境問題には力をいれている、最近でもLNGコンバインドの効率向上などはすばらしいものがある。また日本人はまじめなところがあり、省エネにも努めてきたはずである。

しかし最近の一人当たりCO2原単位は0.418Kg/kWhと昔とかわらない。なぜか、 この間電力需要は3割のびている。 さらに新たな原発もはいっているが稼動率が低いこと、建設、コストに有利な石炭火力の投入などの原因がかさなっていることを話した。京都議定書の達成は容易でないことも理解してもらったと思う。2012年日本が達成できない場合どうなのかと心配してくれた。ともかく環境と原子力は密接に関係していることはある程度わかってもらえたと思う。

最後の3Gのとりまとめ報告で原子力はどんどん作れと、いう話をしてくれたが、誤解があるといけないので敢えて会場で補足しておいた。すなわち、自然エネルギーは結構だが、質、量とも原子力はけたはずれに大きい。国全体でもCO250を超えて70%削減といったことになると原子力抜きでは考えられないことを改めて強調した。

別の環境の意味で放射線にも関心が高く、清水教授がいろいろ説明されかなり納得されたと思う。前回の慶応大学の場合は事前に質問がたくさん出されたが、今回はメイン1本だった。焦点が絞りきれない感じもする。これだけは知りたいとか、いいたいとか46くらいの事前質問、意見があってもよかったのではないだろうか。

福井県は古くからの原子力サイトでもあり、最後に今度はもっと大々的にやりたいといった福井大の先生の発言に見られるように原子力に対する意識はかなり肯定的と感じた。

 

岩本多實

1.今回の「福井での対話」には、学生が福井工大原子力技術応用工学科から37名、福井大学修士学生12名、計49名の学生に加えて、両大学から教員が7名、地元原子力関係者10名のオブザーバー参加があり、シニアを加えて80名に達したとのことで、会は盛大狸に進んだ。また、グループ対話にはオブザーバーの参加もあって盛り上がったほか、まとめの発表もパワーポイントで討議内容を要領良く伝えた。

2.小生は、昨年3月まで福井工大で平成174月の原子力技術応用工学科の開設に関わり、2年間主任を務めた後に退任したので、学生の成長が気になっていた。今回15ヶ月ぶりに3年、4年生に接してみて、ほぼ期待通り成長していたのでほっとした。教員との密な接触の機会に恵まれた教育、3年次での専門科目履修、さらに学外との接触学修がそうさせたと思った。本対話では原子力やエネルギーについての最新の情報が得られるので学生にとって非常に良かったと思う。福井大の院生にとっても同じであろう。

3.2Gでは地域に原子力を根付かせるための大学での原子力教育について討議した。事業者側の安全と住民側の安心のギャップを如何に埋めるか、学生としては大学できちんと原子力を学び、コミュニケーション能力を身に付け、それをもとに一般の人に働きかけることが基本となるが、一般の人には小中学からの教育が必要で、そのためには教員に対する教育が必要であり、また原子力に正しく接する環境が開かれていないといけない、事業者側からや原子力に携わる者からの情報が住民に正しく伝わらないといけない、など、至極当然で実施は難しいが何とかせねばならない課題を浮き彫りにした。

4.全般を通して討議の論点は多岐にわたっているが、学生は、まず原子力を学び、次いで、如何に一般の人が原子力を理解し育てる気運になるか、その方法を模索せねばならないと考えていると思った。原子力に関わる者同士では当然のことであっても、そうでない者にとっては受け入れられないことが多い。そこで原子力に関わる学生に非原子力系の学生を交えた同年代の学生間で対話討議をやったら如何であろうか。たとえば福井では福井工大、仁愛大、福井高専、敦賀短大などの同年代の男女学生を対象とした連合大学部会を開き、テーマを設けて討議するのも一つの方法であろう。原子力の立地県において、広く若者の考えを聞く機会になろうし、また、地元福井の将来のためにもなろう。

5.いずれにしろ、対話が毎年実施されれば、学生にとっては貴重な学修討議の場となり、またシニアにとっても参考になる事柄も多く、意義深いものとなろう。最後に一言。今回は参加者が多く、会場がやや窮屈であった。グループ討議を別室に移動してやっても良かったのではと思われる。

 

金氏 顕

1.学生とシニアの対話の3順目のトップにふさわしく、学生の交流相手もシニアだけでなく先生さらに地域の原子力関係者、また異なる学年、異なる大学と、日ごろ学内では話す機会の無い様々な方々との交流が出来て、きっと学生たちにとっては大変豊富な体験が出来たと思います。多くの学生、また地域の原子力関係者に参加していただいた世話役の配慮に感謝します。最後の講評と懇親会に参加できず途中退席して残念でした。

2.対話グループは2Gで、テーマは「地域に原子力を根付かせる為の大学での原子力教育のありかた」で、学生は福井工大6人で福井大はゼロ。シニアのパートナーは前福井工大教授の岩本氏、オブザーバは北陸原懇の奥谷氏と原文振の玉水氏、さらに学生運営委員会の鈴木君、と多彩な顔ぶれで,ややもするとシニアやオブザーバの経験談が長くなりかねないので、学生6人には必ず意見を言わせるよう心がけた。福井工大ではFTH(フリートーキングアワー)という一種のホームルームのような時間があり対話力養成に注力しているためか、高学年ほどハッキリと意見を述べていたのが印象的。

3.学生たちは地元出身や親が電力社員など原子力に大いに関心があって入学、更に福井県の原子力施設見学や県内での原子力関係セミナーなどに積極的に参加出来るようにしており、対話を通じて原子力の社会受容に敏感で、原子力関係に就職するかどうかに関係なく、日本人の原子力嫌いを自分たちが説明してなんとかしなければという意識が強い。その意識を大事にすることを尊重しながらも、先ずは学生時代に基礎をしっかり修得すること、地元と原子力の歴史的経済的社会的つながりをシッカリ勉強することの大事さを話した。会場受付で頂いた「知っておきたい福井県のエネルギー」福井県環境・エネルギー懇話会編は大変良い資料であり、学生には是非一読しておいて欲しいと思った。

4.実は、SNWは福井工大から原子力人材育成プログラム3件とも一部の講義を依頼されており、本日の対話に参加した学生たちが受講することになるが、その前にこ
の対話に参加したのは大変良い機会でした。対話のフォローをこの講義で試みたい。

 

岸本洋一郎

1.        私が参加したグループでは、福井工大の1年生から福井大のポスドクまでと、原子力関係の学生であるとは言え、知識レベルにかなりの幅があると感じた。また、対話のテーマが、「FBRその他新型炉についてどう考えるか」と、やや専門的であったこともあり、第3世代、第4世代という原子炉の世代分類や、高速増殖炉や高温ガス炉を理解するためのやりとりが行われるなかで、そもそも現在使われている加圧水型炉と沸騰水型炉の違いについての説明も必要となった。高速増殖炉はなぜ冷却材にナトリウムを使うかのやりとりでは、どうしても軽水炉との対比、熱中性子炉との対比がでてくるからである。

2.        こうした基礎的事柄に関して、知っている学生とそうでない学生が混在することはそれでよいが、使わざるを得ない用語についての理解を、ある程度予備知識として、あらかじめ持つよう準備すべきであったかも知れない。限られた時間での対話を、より効果的にする工夫は、グループ編成と同時に考えるべきであろう。

3.        こうした基礎的知識あるいは感覚を確実に身につけるには、福井という地の利を生かして、早いうちに若狭か志賀か浜岡のPWRBWRを見学しておくことが、有効ではないかと思う。若いうちの見学は、その後の教育やコミュニケーションに大変役立つことになると思われる。

4.        他グループの発表も含め全般的に、参加の学生さんたちには、将来の原子力を担っていく気概と積極性が感じられ、頼もしく思うと同時に、今後エネルギー・環境問題の解決に取り組む有為の人材であると感じた。

 

西郷正雄

1.    今回49名の学生参加と地域の関係者や大学の先生方のオブザーバとしての参加により、大盛況に終えることができ、中安先生を始め、福井工大、福井大の世話人の方々には敬意を表します。ただ、多くの方々が集まって頂いたために会場が窮屈になったのが少し残念でした。

2.    7つのチームの5グループでは、「FBRその他新型炉についてどう考えるか」を議論することになりました。シニアの岸本様からは、最近の石油高騰の背景や主要国の電力比率の推移などを説明され、更に将来は次世代軽水炉とFBR原子力発電より構成されることになることなども説明された。

3.    私からは、現在原子力は発電に利用されているが、将来的には、エネルギーセキュリティーと環境問題を同時に解決するには、原子力を発電だけに利用するだけでなく、熱利用としての利用を、特に水を熱分解して水素製造用に用いる高温ガス炉も重要になるであろうと説明を付加しました。

4.    このような説明の後、グループ代表の4年生のリードの基に、学生一人ひとりより意見を求めることになりましたが、学生の原子力についての知識には相当幅があるように感じました。最初に彼らのレベルを把握することをしておけば良かったと反省しております。修士の方は、良く知っているものと思っていましたが、当グループの修士の2名は、共に中国からの留学生で、かつ原子力については、まだ日が浅いとのことでしたので、原子力発電の基本的な話に終始し、すこし残念な気がしました。

5.    本「FBRその他新型炉についてどう考えるか」のテーマについては、彼らには関心があることなのでしょうが、基本的な勉強が不足しているように感じましたので、どの程度理解してもらえたのかが、多少不安に感じました。

6.    各グループ発表については、わずかな議論の中より、まとめなければならないために、中身について云々すると言うのではなく、このわずかな時間の中で、原子力というものを世代を超えて話し合うことで、彼らが感じたことを率直にまとめることが重要であると感じました。またプレゼンの練習としても良かったのではないかと思います。

7.    いずれにしましても短い限られた時間の中で、クループ討論をすることになりますので、次回以降については、参加者に対し、グループ討論においては、「自分はこの場で何を得ようと思うか、予め準備して臨んでもらうこと」をお願いしては如何かと思います。

 

斎藤 修

1.参加者

事前の話では参加者の集まり具合を心配していたが、学生が50名、シニアとオブザーバーを入れると参加者が約80人という大人数になったのにびっくりした。オブザーバーも今までになく多く、さすがに電源県だけのことはあると感心した。また大学側のご努力に改めて感謝申し上げたい。

2.テーマ

テーマとグループはあらかじめ定められており、私の参加した第6グループのテーマは「原子力産業界の隠蔽を疑われる体質についてどう考えるか」で、我々原子力業界のシニアとしてはなかなか厳しいテーマであった。

私は第三者の立場にある斑目東大教授のまとめた「原子力業界の不祥事とその背景」という資料にある次のような言葉を述べて、説明した。

・不祥事の原因の多くは、モラルの低さにあるのではなく、携わる者の社会性の欠如にある。

・社会は説明責任を求める方向に変化している。

・技術が優れていてもそれだけでは社会に受け入れられない。原子力は多くの人に支えられていることを認識しなければならない。

しかしそれだけでは少し物足りなかったので、原子力発電所での役所の検査官に対する現場の人々の声や不満など、現場事情についても説明した。また参加されたオブザーバの方からの「ルールが不明確だ。報告すべき事項も明確でない。トラブルは堂々と言えばよい。」という話もあった。

一方学生から電力に対するペナルティ少ないという声もあったが、東京電力は社長・会長が辞任しており、原子力発電所は全数停止して点検するなど、決して甘いものではないことを説明した。

3.学生

学生は学部の1年生から修士までの人が参加しているので、全員がよく理解したかどうか不明確な点もあるが、3年生くらいになると自分の意見もはっきり言えるし、またその内容も的確であり、しっかりしているという印象を受けた。

4.旧知の人との出会い

私が、国民に対する放射線の理解活動が必要であるという−問題を話すとき、敦賀発電所の廃液漏えい事故に対するマスコミの取り上げ方のことをよく引き合いに出すが、まさにその当時福井県庁におられてトラブル処理に当たられた方に、懇親会の場でお目にかかった。現在福井工大におられるとのことで、数十年ぶりの思いがけない出会いであった。

この事故は日本で初めての原子力発電所からの放射性物質の漏えい事故である。当時の通産省の課長が朝5時に開いた、暁の新聞記者発表という異例な行動もあり、一流新聞の第一面全面を占める大きさで取り上げられた。私はこの事故が新聞に出た日、たまたま放射線防護の専門家の集まりである保健物理学会の大会で、お隣の芦原温泉に滞在していたが、大会発表者に予定されていた原電と関電の放射線管理の責任者が学会に出席できず、発表に穴があいてしまった。やむを得ず急きょ代役として、私が講演したことを今でも思いだす。敦賀事故と原子力船むつの問題は、いずれも放射線に関連して、たいしたことではないことを、あたかも大事件であるかのようにマスコミに取り上げられた代表的な例である。最近、中越沖地震における新潟県の風評被害がいまだに尾を引いているとの報道を聞くが、理不尽に誇張された事件として、これらの三つの出来事が頭の中に思い浮かんでくる。

 

清水 彰直

1. 80人の参加者、新聞社2社の取材、及び初めて福井放送、福井テレビの取材等から、今回の対話は成功であった思います。SNW、福井工大、及び学生の世話役の皆様の努力の賜物であり、感謝します。

2. 学生を小数の集団に分け、集団毎にシニアとの対話の後、まとめを学生が発表する形式は、大学の講義、演習とは異なる効果があり、今後継続が望まれます。

3. 今後改良すべき課題として、以下の点が挙げられます。

1)  発言する学生の偏り:

私は3Gでしたが、具体的な質問をしたのは約半分でした。学生の全員が発言するよう、シニア、学生双方の工夫が必要と思います。

2)  テーマがあいまい:

3Gのテーマは「地球環境と原子力の関わりをどう考えるか」ですが、内容があいまい(観念的)でした。対話in福井2007では、各グループ毎に具体的な質問が準備されており、その方が対話をしやすかったと思います。対話はテーマだけでなく、参加学生に一つづつ具体的な質問を事前に準備することにしたらどうでしょうか。

3)  対話のアフターケアー:

折角、縁があって対話をしたのですから、その後のアフターケアーを考えたらいかがですか。例えば、シニアの自己紹介にEメールアドレスを示し、今後、質問があればメールで対話をするように勧める等。

 

竹内哲夫

@     開催大学が福井工大、福井大との合同。しかも参加学生49名でシニア、オブザーバ合計約80名という、これまでに珍しい多人数が一堂開催の盛会だった。しかも工大は学部1-4年、福大は修士という学生の年次が広いグループ討議だった。取り上げた課題は、各自咀嚼できるテーマにしてあったので各学生はそれなりに議論に参加できた。

A     福井県は原子力発電の多種・多用の立地点で実用的な教育に熱心で、なかんずく工大は学部に原子力名をつけた先鋒を切り取る初めての大学であり、参加学生もこの種の議論の必要性をおのずと理解しており、加えて新聞、報道などメデイア収録もあり、活気ある盛会だった事は喜ばしい。

B     ただ、工大の学部1-4年生と福井大修士学生の年次と履修学歴が5-6年違う学生を縦にグループ化したので、水平的な若者・シニアの議論になりにくく、グループ内の特定の学生に議論が、特に発表は引きずられる傾向が見えた。

C     年齢と学歴が広すぎ、問題の理解度、自分の人生設計が個人で差違があるのは当然だが、原子力の必要性の理解はまだ、新聞論調の域を出ていない学生も多かった。また学生自身として、社会に今何が出来るか、家族・親戚友人さらには小・中・高校の後輩指導みたいな社会活動をするような気概と気風を作って欲しい。

D     発表は仕上げの表面的効果、すなわち試験の成績を上げるような表皮的効果を狙った物も散見したが、若者学生自身が自分で何が知識で足りないか、また将来の悩みをもっと率直に表現するべきだと講評で述べた。

 

林  勉

 今回は会場の福井工業大学の学生はもとより、福井大学からも多数参加し、シニア側も地元の方、先生方も多数参加いただき、総勢80人近い盛況であり、大成功であったと思います。

私は基調講演を担当させていただきましたが、学生さんたちは皆原子力系の方達であり、共通の基本認識があると言う前提で、原子力の健全な推進の上での問題点と対策や、これから原子力界に入っていく学生さん達への期待と言う点に焦点を絞って話させていただきました。皆さん真剣に聞いていただいたと受け止めています。

私が参加した対話グループのテーマは「電力会社の隠蔽体質をどう考えるか」と言うのがテーマでした。ちょっと学生さんが取り上げるテーマとしてはいかがなものかという印象はありましたが、そこに関心があるならと言うことで本音のところを包み隠さず話し合いました。隠蔽がなぜ起こるか、隠蔽せざるをえなかった状況とはどういうものかなどについて実例を踏まえて説明をしました。これから社会に出てどんな職場であっても似たような状況に直面することは避けられない、そのときどう対応できるかについて問いました。学生さんたちは真剣に自問自答し悩んだ末隠蔽はやむをえないかもしれないと考えるひとが大多数でした。私はそのように考えるのは十分理解できるが、そう簡単に「隠蔽やむなし」と言ってもらいたくない。少なくともひとりの問題とせず、組織とりわけ上司にはきちんと相談した上での結論としてほしいと話しておきました。この当たりの問題は微妙な問題であり、だれも避けて通りたい問題だが、今回学生さんたちと話し合えたことは、良かったのかなというのが現在の心境です。ただ少し残念だったのはグループ発表の時にはこのあたりの一番核心に触れる点が報告されていませんでしたので、あえて私の感想の中で触れさせていただきました。

 

前川則夫

 学生、先生方、シニア、オブザーバを含めて約80人もの人達が若者の未来に思いを寄せて熱心に議論を交わす熱気は素晴らしいという一語に尽きると思います。

私は今回初めての参加ですが、ここまで育てて来られた関係者の継続したご努力に敬意を表したいと思います。

 私は福井の出身ということもあり、報道関係について中安先生と一緒に努力しましたが、前回より一歩前進することが出来、ほっとしているところです。

 私のグループのテーマは「社会が要求する技術者のあり方とは何か」という誰でも参加し、発言出来るテーマと思ったのですが、1年生から修士過程の学生まで幅広く、社会を眺める視野や思いにはことのほか差があることに気づきました。発言したくとも出来ない学生、積極的に発言する学生まで千差万別、社会経験の豊富な私達にはなんでもない課題が学生の一部には予想外に難しいテーマだったとは驚きでした。

 次に学会の目線と国、企業、社会の目線の差異に着目すべきところが、学会、国、企業の目線と社会の目線という構図で話が進んでいったところが大変気になりました。

 学会が国などを引っ張る気概を大切に活動するならばもっと大きな果実が実るのではないかと思いました。

 

前田肇

1.今回は参加学生49名、7グループでの対話となり盛況であったが,会場がやや狭く且つ柱の存在等で参加者全員の意見交換にはやや難点があり、またグループ同士が接近していたため隣卓の声が耳に入りやすく議論の妨げになる場合もあった。FUTタワーの他の部屋は全て座席固定となっているためやむを得なかったようだが、今後の会場設定の場合は一考を要すると考える。

2.参加学生は1年生から修士課程まで幅広く、その知識の程度もまちまちであった。知識・経験の浅い低学年生は矢張り発言が殆ど無く、一方高学年生は確りした意見を積極的に発言しており頼もしい成長振りを見せていた。もっと低学年生に発言させる工夫がいるのか、或いは高学年生の学識の高さを実感することにより低学年生のモチベーションが高められることを期待してよしとするのか、今後の対話集会の進め方の一つの課題かと思う。

3.学生達は原子力に対する関心が大で(当然とは言え)、特に高学年生は今後の原子力の推進や社会の理解活動には自分達も責任があると自覚しており,大変頼もしく感じた。

4.1G のテーマは「日本人のエネルギー危機意識を変えるには」というもので、マスメデイアの過大・偏向報道を正すには徹底した情報公開と不断のコミュニケーションが重要という議論があり、オブザーバとして参加していた福井県原子力安全対策課の岩永氏が日常的に記者達と懇談している様を説明したところ学生達が強い関心を示した。 オブザーバが議論に加わることには賛否両論があろうが、一般的議論ではなく特定の主題に関してオブザーバの実体験に即した発言をしてもらうことは対話の内容を濃くする効果があると思う。

 

松永一郎

1.福井における対話は平成17年12月、昨年の7月に続いて、今回で3回目であるが、回をますごとに充実度が上がっている感がする。今年は学生だけで49名、シニア14名、教員とオブザーバを入れて合計80名という大人数であり、メディアも福井新聞、中日新聞と新聞以外に福井放送、福井テレビまで入った大掛かりなものであった。それだけに熱の入った対話ができたものと思う。

2.グループ分けは7つで、学生配分はそれぞれB1からM2まで、学年構成が縦になっており、それぞれ自分の関心のあるグループに配属されていた。

第1グループの7人に出身をたずねたところ、地元の福井は2人だけで、あとは大阪2人、奈良、三重、群馬が各一人であった。全員はじめから原子力を学びたいという意欲を持って入学してきており、その意味で頼もしさを感じた。

3.対話のテーマは「日本人全体の危機意識を変えるためにはどうするべきか」というものであった。実際の対話で発言したのは、主としてB4以上の半数だったが、B3以下の学生も非常に興味を持って対話に参加している様子が伺われた。これらの学生はシニアと高学年学生との対話から、できるだけ多くのものを吸収したいという態度で参加しており、それはそれで良いのではないのか。

4.「学生とシニアの対話」の目的にはいろいろあるが、プリミティブなものとしては、これをきっかけとして、自分達が学んでいることと実社会とのつながりを実感し、興味を持ってもらい、さらに独自で勉強したり、仲間とのコミュニケーションでそれを深めてもらうことがある。その意味では十分に目的を達していると思う。次回の対話でリピーターとして参加してきたときの成長振りが楽しみである。

 

三谷信次

 今年も昨年に引き続き「対話jn福井」に参加させて頂く機会を与えて頂きましたことに厚く感謝致します。

  総勢80人近くで、複数の地元メディアを始め多数のオブザーバの方の参加のもと成功裏に終わったことに地元関係者の皆様の原子力に対する並々ならぬ熱意と迫力を感ぜずにはいられませんでした。

  福井は福井工大の多数の学部学生と少数の福井大院生の構成で、昨年はシニアがかなり

誘導したが今年は学生達が自主的に議論を進めていく意気込みが頼もしく思えた。

 第4班に所属し竹内会長とご一緒で「核燃料サイクル」のテーマで短時間に全体を網羅して議論しつくすには十分な時間が無かったが、@「六ヶ所の再処理施設」は現行軽水炉用のもので、FBRの技術が確立すればFBR用の核燃料サイクルが回り出し、「FBR用の核燃料再処理施設」が別に必要になること、AFBRのサイクルにまで持っていかないと将来の石油枯渇などのエネルギー危機に我が国は対応できないことなどを始め、 学生達が新たに再認識出来たことが数多くあったと思われる。

  内容は理解できたようだが、プレゼンの表現能力は今一の感があった。シニアの誘導によるプレゼン資料作りにはお手伝いしなかった。学生諸君一人一人が自分達の考えを精一杯まとめるに任せた。他グループの学生からの質問にもどの程度取り纏め者が立ち向かえるかを試し、回答に窮しながらも答えようと努力することも教育の一つと考えました。 優等生の模範解答では、本当のことが伝わってこなくて面白くない、との竹内会長の意図が同じ4班で対話に参加させて頂いてよく理解出来ました。

  プレゼンの表現能力などは場数を踏めばすぐに上達できるものと思われます。素朴、誠実という点で小利口で口のうまい都会の一部若者達とは一味違う魅力を感じました。

 

「学生とシニアの対話in福井2008」感想

2G 学生連絡会運営委員長 鈴木将(東海大)

 今回の対話の学生参加者は福井大学、福井工業大学でその他の大学からの参加は私だけだった。対話での話し合い、懇親会で地域性がある話が出たので、ほかの大学生と違うと感じた点、対話後の学生が印象に残った話について記載する。

 学生の話で興味深かった点は地域のことを考えている、という点だ。同じグループにいた小林君は福井の敦賀出身で日本原子力発電に就職が決まり、地域のために働きたい、とのこと。2年生の宮崎君は親が関西電力に勤めていて地域の方々の反対運動について疑問を持っていたり、福井大の学生も地域で原子力系の仕事をするならどういう仕事があるか、ということで質問をされたりした。普段活動をしている学生連絡会の学生を見ると燃料サイクルの必要性について考えていたり、原子力の国際的な問題に視点があったり必要であるが地域性はそれほど感じることはなかった。私事になるが私の地元は福島県で、原子力発電所はかなりの数あるが高校に入るまでその存在は知らず、就職はPWRに技術的な魅力を感じてしまい関西に行くという親不幸者だ。福井で学んでいる学生全員が地域のことを考えているわけではないだろうが、かなりの学生が自分のたちに身近な「地域」を考えていることが興味深かった。

 グループでの話し合い後の学生の意見として「実際にその人が行った話が聞けてよかった。」という意見があった。「自然エネルギーも必要だが原子力も今後は必要不可欠だ。」といった一般論より「福井の原子炉の配管が破断をし、調査のために配管を東海村にまで持っていって分析をしてその対応をやらされていた。」といった体験談を聞くことが学生にとって印象に残るように感じた。


添付資料3

「学生とシニアとの対話」の事後アンケート集計結果

 

「学生とシニアとの対話in福井2008」に参加した学生48名中36名回答

 

(1)回答者の学年、専攻、希望進路

学年・・・学部1年:8名 学部2年:5名 学部3年:9名 学部4年:10名 修士:3名 博士:1名 

専攻・・・工学(原子力系):2名 工学(非原子力系):2名 無記入:2名

希望進路・・・就職:23名(電気:7名 原子力関連メーカー:7名 メーカー:3名 研究機関:1名 無記入:5名) 進学:5名(原子力系:4名 無記入:1名)    無回答:8名

 

(2)講演の内容は満足のいくものでしたか?その理由は?

1 とても満足した(17/36)

2 ある程度満足した(18/36)

3 やや不満だ(1/36)

4 大いに不満だ(0/36)

 

図1 「講演の内容は満足のいくものでしたか?」の集計結果

 


代表的な理由

@ とても満足したと回答

     ベテランの専門家の話が聞けた。(修士1年)

     原子力に関して知らない実体を知ることができた。(学部4年)

     自分で調べたことや大学で聞いたこと以外の事が聞けた。(学部2年)

     いろんな話を聞けてとてもいい刺激になった。(学部1年)

A ある程度満足したと回答

     何回か聞いたことのある内容で、具体的にこれから自分たちはどうするべきかもう少しお聞きしたかったです。(修士1年)

     普段は聞けない話を聞くことが出来た。(学部4年)

     自分の知識の内におさまる程度の内容をとても簡潔にまとめられていた。(学部2年)

 

(3)対話の内容は満足のいくものでしたか?その理由は?

1 とても満足した(18/36)

2 ある程度満足した(15/36)

やや不満だ(2/36)

4 大いに不満だ(0/36)

5 無回答(1/36)

 

図2「対話の内容は満足のいくものでしたか?」の集計結果


 


代表的な理由

@ とても満足したと回答

     自分の疑問に素直に答えていただけた。(修士1年)

     初めて参加したが、知らなかったことが聞けた。(学部1年)

     普段、聞くことができないことが聞けて有意義だった。(学部4年)

     すべてが新鮮だった(学部3年)

     本などで知ったことより、より深い話を聞けた。(学部4年)

A ある程度満足したと回答

     自分のためになる話を聞くことができた。(学部3年)

     意見の違う人々と討論できた。(学部3年)

     実際の体験談は重みがありよかった。(学部4年)

     パワポでの資料作成、まとめの時間はもっとほしい。(修士1年)

B やや不満だと回答

     テーマが抽象的すぎた(学部4年)

 

(4)   事前に聞きたいと思っていたことは聞けましたか?

十分聞くことができた(25/36)

2 あまり聞けなかった(7/36)

3 全く聞けなかった(3/36)

4 無回答(1/36)

 

図3 「事前に聞きたいと思っていたことは聞けましたか?」の集計結果


 


(5) 今回の対話で得られたことは何ですか?

     世代の違う方と話が出来て良かった(学部3年)

     具体的に何がどうなのかが聞けた(学部1年)

     原子力の知識、しらないことが分かった(学部4年)

     積極力(修士1年)

     情報・意識の大切さ、FBRの重要性(学部2年)

     原子力の必要性(学部4年)

     今後の私たちの行動について(学部1年)

     原子力に対する考え方が変わった(学部2年)

     知らないことが多いとわかった(学部1年)

     専門家からいろいろ原子力の話を聞かれました(博士)

     以前よりも広い視野を得ることが出来た(学部3年)

     現状の日本のエネルギー問題の真実(学部4年)

 

(6)「学生とシニアの対話」の必要性についてどのように感じますか?

その理由は?

非常にある(31/36)

2 ややある(4/36)

3 あまりない(0/36)

4 全くない(0/36)

5 無回答(1/36)

 

図4 「学生とシニアの対話の必要性についてどのように感じますか?」の集計結果

 


 


代表的な理由

@ 非常にあると回答

     価値観が全然違う。(学部4年)

     シニアの知識が得られるため。(学部4年)

     様々な人と話し、意見交換することは大切だから(学部1年)

     知識をうけついていけると思う。(学部3年)

     世代を越えた議論が出来る。(修士1年)

     学生では、わからないことがある。(修士)

A ややあると回答

     いろいろな話が聞ける(学部3年)

 

(7)今後、機会があれば再度シニアとの対話に参加したいと思いますか?

まだまだ話したりないので参加したい(5/36)

2もっと知識を増やしてから参加したい(22/36)

3十分話ができたからもういい(2/36)

4二度も必要ないと思うからもういい(0/36)

5その他(0/36)

 

図5「今後,機会があれば再度シニアとの対話に参加したいと思いますか?」の集計結果


 


(8)   エネルギー危機に対する認識に変化はありましたか?その理由は?

大いに変化した(8/36)

2多少変化した(11/36)

3あまり変化しなかった(7/36)

4まったく変化しなかった(4/36)

5無回答(6/36)

 

図6 「エネルギー危機に対する認識に変化はありましたか?」の集計結果

 


代表的な理由

@ 大いに変化したと回答

     詳しく知れたから。(学部3年)

     原子力が大切なことがよく分かった。(学部3年)

A 多少変化したと回答

     今後のことを考えなければならない。(学部4年)

     知らないことが多々あったから。(学部4年)

     原子力やクリーンエネルギーの必要性が分かった。(学部2年)

B あまり変化しなかったと回答

     以前からエネルギー問題に興味があったから。(学部3年)

     元より危機感があった。(学部4年)

C まったく変化しなかったと回答

     前から知っていた。(学部3年)

     自分の意識とか変わらない話だった。(学部2年)

     元々エネルギー危機に対する認識があったため。(学部4年)

 

(9)原子力に対するイメージに変化はありましたか?その理由は?

大いに変化した(3/36)

2多少変化した(9/36)

3あまり変化しなかった(10/36)

4まったく変化しなかった(7/36)

5無回答(7/36)

 

図7 「原子力に対するイメージに変化はありましたか?」の集計結果


 


代表的な理由

@ 大いに変化したと回答

     難しいことは最初のイメージでしたが、おもしろい面があることはイメージ変化したことです。(博士)

A 多少変化したと回答

     今後は原子力発電が必要になってくる。(学部4年)

B あまり変化しなかったと回答

     変わらず原子力は大切だと思ったから。(学部4年)

C まったく変化しなかったと回答

     必要だと思っているので。(修士1年)

     元々原子力に対して良いイメージを持っていたため。(学部4年)

 

(10)原子力に対する関心の低い10代、20代の若年層に対する原子力広報活動はどんな方法が良いと思いますか?

     学校授業で正しい知識の提供(学部4年)

     中高における簡単な原子力講義を行なう(学部2年)

     義務教育中の原子力に関する科目の取り入れ(学部2年)

     TVや雑誌等により活発に宣伝を行なうべき(学部4年)

     メディアを味方につける(学部4年)

     このような話し合いなど(学部1年)

     ボランティアなど(学部3年)

     身近なものや関心のあるものとからめて説明する(学部1年)

     直接に話し合うこと(修士)

     力強くおす(学部3年)

     漫画や絵にするなど、見やすいものにする(学部2年)


参考  7月6日付 福井新聞、中日新聞記事