大学における学生とシニアの対話実施概要

−八戸工業大学−

報告作成 松永一郎

1.実施主旨

今春日本原子力学会春の年会で実施した「学生とシニアの対話(学生のキャリアデザイン&夢支援)」のフォローアップ。日本原子力学会の学生連絡会の活動の一端として、非原子力系理系学生との交流を図る。

 

2.対話の目的

非原子力系理系学生とシニアとの対話を通して、学生とシニアの相互理解を図ると共に、今後の原子力、エネルギー産業について共に考え、これからの対話のあり方の参考にする。

 なお、八戸工大はエネルギー環境教育センターのエネルギー教育に係る「地域拠点大学」の指定を受け、02〜04年の3年間「北東北におけるエネルギー教育の普及・実践活動」を八戸地区を中心にして実施している。

 

3.八戸工大における対話の実施

(1)日時 9月14日(水) 9:00〜12:00

(2)参加

 @学生   24名(D1:1, M2:4, M1:1, B4:18

専攻:電気電子工学科、機械情報技術科、電子知能システム科

           学生連絡会:4名 オブザーバー参加

 Aシニア  エネルギー問題に発言する会会員6名

荒井利治、小川博巳、柴山哲男、竹内哲夫、林 勉、松永一郎

Bコーディネーター  天野治氏(電中研、日本原子力学会)

  他にオブザーバーとして藤田成隆八戸工大教授、鈴木一雄氏(東電)、西村章氏(GNF

(3)実施内容 

  @総合講演 

・エネルギー問題:時代は変わる。学生はどう備えるか       林 氏

・青森で過ごしてみて、地方とエネルギーと今後          竹内氏

・エネルギー教育の地域拠点大学としての活動           藤田教授

A対話

5グループに分かれ、シニア1名に対して、学生が4〜6名ずつついて対話。

対話の題材は特定化せず、エネルギー産業の中の原子力について各グループで対話。

対話終了後に各グループから対話内容のまとめと説明がなされた。

(4)結果

  参加シニアから感想を収集、学生には事後アンケートを実施

 (シニアの感想概要)

@学生の殆どは東北出身者なので素直であまり斜に構えたところがない。人生の目標、自意識も都市部の学生よりあるかもしれない。感性は鋭い。

Aエネルギーを選考している学生ではないにもかかわらず、事前調査では84%がエネルギー問題に非常に、あるいは並以上に関心を持っており、また将来のエネルギー源としても54%が原子力と答えており、24人も対話に参加した積極性は大いに買える。

Bしかし、対話になると自ら議論を吹きかけたり、積極的に質問してくる者が少ない。これは、日ごろから学生同士でもまじめな題材で議論する習慣がまったくないためである。

C高校までのエネルギー原子力教育は殆どなされていない。

D非エネルギー系の学生との対話には具体的なテーマを絞った方がよい。「原子力なしでオイルピークと地球温暖化はクリアーできるか」といった明確なテーマがよいのではないか。

E対話は成功。よりよくするには

     対話の前に(ファクトシートを渡して)学生同士で議論させておく。

     1回だけでは折角の対話の成功も立ち消えになる。学生連絡会の「情報交換ネットワーク」の活用、学生同士の「エネルギーサークル」のようなものを作り継承すると言うことができないか。

 (学生事後アンケート結果概要)

 @企画について

90%以上が対話の必要性を認識

Aエネルギー危機に対する認識の変化

  45%が大いに変化。45%が多少変化。10%があまり変化せず。

 B原子力に対するイメージの変化

  10%が大いに変化。50%が多少変化。35%があまり変化せず。5%が全く変化なし

 C対話の内容

  58%がとても満足。42%がある程度満足。不満者はなし。

 Dその他感想(傾聴すべきもの)

 ・ 時間が足りない。テーマを絞り、意見をまとめる方向は初めからある程度想定しておいたほうがよい。

     シニアの原子力を前面に出したい情熱は分かるが、一般人は原子力の人が言うとなかなか聞いてくれない。抑え気味に地道に説明すべきだろう。

 

4.今後の対応

今まで武蔵工大、東工大、八戸工大と3回実施したが、いずれも成功。手作りの行き届いた対話だったからだろう。今後広げていくためにはシステム化が必要。

 

5.対話写真

 

林 勉 エネルギー問題に発言する会幹事の講演

 

 

竹内哲夫 東電顧問・元原子力委員の講演

 

 

藤田成隆 八戸工大教授の講演

 

 

学生とシニア対話風景

 


 

対話参加者集合写真

 

 

懇親会

 



大学における学生とシニアの対話(詳細)

八戸工業大学

 

さる9月14日(水)、青森県八戸市の八戸工業大学において、同校の電気電子工学科、機械情報技術科、電子知能システム科の学部4年生18名と大学院博士課程、修士課程の学生6名の合計24名の学生と、エネルギー問題に発言する会のシニア会員6名との「学生とシニアの対話」が実施された。

またコーディネーターは日本原子力学会企画委員の天野治氏(電力中央研究所)が努めた。

以下にその内容を示す。

 

1.実施主旨

 本年3月の日本原子力学会春の年会において、同学会とエネルギー問題に発言する会が共催で「学生とシニアの対話(学生のキャリアデザイン&夢支援)」セッションを企画した。この企画は日頃我が国のエネルギー問題、特に原子力問題に関して危機感を抱いているシニア世代と、これから社会に出て、将来地球規模で現実化する厳しい環境・エネルギー問題に直接対峙し、日本および世界のために諸問題を解決していってもらわねばならない原子力を専攻する学生とが初めて同じ土俵に上がり、さまざまなテーマについて話し合うという画期的なものであった。

 テーマは将来の資源状況、ものづくりなどの技術力の維持と伝承、学生のキャリアデザイン構築などに関することであり、このような「学生とシニアの対話」がさまざまな情報交換の場所として期待され、学生連絡会の活性化に繋がっていくという感触が得られた。

 セッション終了後、参加シニア及び天野治氏と今後の対応を話し合った結果、以下のことが合意された。

(1)このような対話は単発ではなく恒常的に進めていく必要がある。

(2)セッションに参加した学生は意識の高い、言わば原子力エリートであるが、もっと一般の学生にもこのような場を提供し、学生たちが学生連絡会の輪をひろげその足場を強化していくことを支援していく必要がある。

(3)最終的には学生たちが学生連絡会を中心として、我が国/世界の原子力の発展のためにアイデアを出し合い、自ら企画立案実行していけるようになれば理想的である。

そしてそれを学会、原子力産業界、官界等で支援する体制作りにつなげていく。

 

2.今回の対話の目的

 今年の7月13日、8月1日にそれぞれ武蔵工業大学、東京工業大学の原子力系の学生とシニアの対話を実施した。今回初めて非原子力系の学生を対象に対話を実施し、彼ら一般学生とシニアの相互理解を図ると共に、今後の原子力、エネルギー産業について共に考え、これからの対話のあり方の参考にする。

なお、八戸工大はエネルギー環境教育センターのエネルギー教育に係る「地域拠点大学」の指定を受け、02〜04年の3年間「北東北におけるエネルギー教育の普及・実践活動」を八戸地区を中心として実施しており、その活動の中心になって活躍された同大学の藤田成隆教授のお話を伺い、エネルギー教育実践活動の一端を知ることを併せおこなった。

 

3.八戸工業大学における対話の実施

八戸工業大学は1972年に創設された私立の工学系単科大学で学部に6学科、大学院に4専攻を持っている。学生数は学部約2,000名、大学院100名の合計2、100名である。

 今回の対話は日本原子力学会学生連絡会が主体となって企画立案し、それに八戸工業大学が企画実施者として全面的に協力した。さらにエネルギー問題に発言する会及び原子力学会がサポートする形で実施した。

(1)参加者

 @学生

 学部4年生−18名、修士課程1年−1名、修士課程2年−4名、博士課程1年−1名その他、学生連絡会から4名がオブザーバーとして参加した。

 Aシニア

 エネルギー問題に発言する会の運営委員で、武蔵工大、東工大の対話経験者で構成した。なお、柴山氏が現地参加した。

(名簿順) 

荒井 利治(元日立製作所)

 小川 博巳(元東芝)

 柴山 哲男(元三菱原子力工業)

竹内 哲夫(東電、元日本原燃、前原子力委員)

 林  勉 (元日立製作所) 

 松永 一郎(元住友金属鉱山)

 Bコーディネーター、オブザーバー

  コーディネーターとして天野 治氏(電中研、日本原子力学会企画員)が参加した。またオブザーバーとして鈴木一雄氏(東電原燃サイクル部)、西村 章氏(GNF)が参加した。

(2)事前調査

 対話に先立ち、参加の意向のある学生に対して学生連絡会が準備した事前アンケートを実施した。

 アンケート内容は以下のとおり。

・出欠の確認

・所属

・質問

−エネルギー問題に関心があるか

−将来の日本の一次エネルギー源は何になると思うか。

−原子力は必要と思うか

−原子力について学んだことはあるか

−対話のテーマや、エネルギー全般についての疑問・質問

−企画に対する意見、要望

  (アンケート結果)

@エネルギー問題に関心があるか

 非常にある:28%、ややある:56%、あまりない:12%、全くない:4%

A将来の日本の一次エネルギー源は何になると思うか。

  原子力:54%、太陽光:21%、火力:13%、バイオマス:8%、水力:4%

  風力:0%

 B原子力は必要であるか

  必要:84% 不要:8% 無回答:8%

 C原子力について学んだことはあるか

  ある:16%、少しある:52%、ほとんどない:32%

 D対話のテーマ希望  

 エネルギー一般:28%、原子力・放射線:49%、研究者・技術者・社会一般:22%

  

(3)対話

対話は「総合講演」と「学生とシニアの対話」の2部構成とした。

講演に先立ち、天野氏より「豊かな時代の学生に石油ピークを認識から実感へ意識改革」と題してファクトシートの説明が行われた。

 

@総合講演

  講演内容の概略は次のとおり

a.エネルギー問題:時代は変わる。学生はどう備えるか・・・林 勉 氏

(概要)

 米国は1970年ごろまでは一時原油の生産大国であったが、その後急速に生産量が低下し、今では輸入大国になっている。これは米国だけでなく、世界的な傾向にあると考えなければならない(オイルピーク)。今後の中国、インド等での石油需要の急速な増加が見込まれること、化石燃料の燃焼による地球温暖化が顕在化することを考慮すると、次のエネルギー源としては原子力しかない。特にエネルギー源のない日本はそれに備えて、原子力技術の維持、発展に努める必要がある。

                 

b.青森で過ごしてみて、地方とエネルギーと今後・・・竹内哲夫氏

(概要)

  日本は昭和35年(1960年)頃までは食糧とエネルギーで苦労していたが、その後、石油がジャブジャブはいるようになり、事態は一変した。自分は東電の火力部門にいてその恩恵にあずかってきた。その後日本原燃料社長として青森県には5年間おり、この県とは繋がりが深い。青森県は農業、漁業は勿論のこと、八戸を中心とする工業地帯もあり、最近では核燃料サイクルの原子力施設や環境研もある。

  この県はそういった意味で多様性をもっており、また県面積も広く、官から民へ、中央から地方への「小泉改革」に向いた21世紀型の県である。

  エネルギーについてネガティブな話がでているが、これは皆さん自身の将来の話である。これに刺激されて、皆さん自身で考えていただきたい。

c.エネルギー教育の地域拠点大学としての活動・・・藤田教授

(概要)

   八戸工業大学はエネルギー環境教育情報センター経済産業省からの委託を受け実施している「地域拠点大学」に、全国の大学14大学の一つとして選定され、平成14年度から平成16年度までの3年間、「北東北におけるエネルギー・環境教育の研究と実践」という研究テーマで活動した。

   活動の主体になったのは八戸工業大学を中心にし、青森県、八戸市周辺の教育機関、メディア、県内の企業、研究所等からなる「八戸工業大学エネルギー・環境教育研究会」である。

  年度別のテーマと研究のねらいは次のとおり

14年度:

(テーマ)エネルギー・環境教育の基盤づくりと情報収集

(ねらい)研究課題の抽出および事業プランの作成緒実施

  15年度:

              (テーマ)地域の小・中・高校との連携と、教科あるいは総合的学習時間等での実施

              (ねらい)指導者等の人材育成の強化

  16年度:

(テーマ)エネルギー・環境教育の広域に亘る普及活動と成果の公開及び総括

(ねらい)各関係機関との一層の連携強化、教育機関・行政への提言

 

活動の結果、地域、行政、学校との連携が深まり、エネルギー・環境教育の指導者等の人材育成に大きな貢献をすることができた。その成果が評価され平成17年度からは「地域先行拠点大学」に選定され、「エネルギー環境教育の連携ネットワークと支援プログラムの構築」というテーマに取り組んでいる。

 

 A学生とシニアの対話

  シニアを1〜2名ずつ5グループに分け、それぞれの組に大学院生を混在して対話をおこなった。各組では自己紹介のあと、それぞれのグループでテーマを選び、フリーディスカッションをおこなった。対話終了後にグループ別にまとめ、最後に学生が簡単な発表をした。

  

 Bシニア代表感想(小川氏)

 発表会の後、小川氏がシニアを代表して感想を述べた。

「日頃エネルギー、原子力についてあまり学んでいないにもかかわらず、これだけ沢山の参加者がいたということは大変なことである。まず参加してみるということで、皆さんは大きな一歩を踏み出したといえる。そのうえ、短時間でディスカッションの結果をまとめて発表せよというのは無茶苦茶な注文であるが、それも何とかこなした。9.11の後ニューヨークにいったが、その時イスラムの運転手が滔々と自分の意見を披瀝した。何事も自分自身で考えることが重要である。エネルギー問題についても、これから自分自身でよく考えていって欲しい。」 

 

 4.対話結果・・感想の収集及び事後アンケートの実施

対話終了後、対話に参加したシニアに感想を求めた。また学生サイドでは独自の事後アンケート調査を行っている。

(1)シニアの感想

シニア6名の感想を別添1に示す。

内容の概要は以下のとおり

@学生の殆どは東北出身者なので素直であまり斜に構えたところがない。人生の目標、自意識も都市部の学生よりあるかもしれない。感性は鋭い。

Aエネルギーを選考している学生ではないにもかかわらず、事前調査では84%がエネルギー問題に非常に、あるいは並以上に関心を持っており、また将来のエネルギー源としても54%が原子力と答えており、24人も対話に参加した積極性は大いに買える。

Bしかし、対話になると自ら議論を吹きかけたり、積極的に質問してくる者が少ない。これは、日ごろから学生同士でもまじめな題材で議論する習慣がまったくないためである。

C高校までのエネルギー原子力教育は殆どなされていない。

D非エネルギー系の学生との対話には具体的なテーマを絞った方がよい。「原子力なしでオイルピークと地球温暖化はクリアーできるか」といった明確なテーマがよいのではないか。

E対話は成功。よりよくするには

     対話の前に(ファクトシートを渡して)学生同士で議論させておく。

     1回だけでは折角の対話の成功も立ち消えになる。学生連絡会の「情報交換ネットワーク」の活用、学生同士の「エネルギーサークル」のようなものを作り継承するということができないか。

 

(2)学生への事後アンケート結果

 アンケートは対話終了直後に予め用意してあった質問用紙を配布して行った。結果を別添2に示す。

(学生事後アンケート結果概要)

 @企画について

90%以上が対話の必要性を認識

 Aエネルギー危機に対する認識の変化

  45%が大いに変化。45%が多少変化。10%があまり変化せず。

 B原子力

B原子力に対するイメージの変化

  10%が大いに変化。50%が多少変化。35%があまり変化せず。5%が全く変化なし

 C対話の内容

  58%がとても満足。42%がある程度満足。不満者はなし。

 Dその他感想(傾聴すべきもの)

 ・時間が足りない。テーマを絞り、意見をまとめる方向は初めからある程度想定しておいたほうがよい。

 ・シニアの原子力を前面に出したい情熱は分かるが、一般人は原子力の人が言うとなかなか聞いてくれない。抑え気味に地道に説明すべきだろう。

 

5.今後の対応

今まで武蔵工大、東工大、八戸工大と3回実施したが、いずれも成功したといえる。手作りの行き届いた対話だったからだろう。今後この活動を広げていくためには資金面、シニアの人材の手当てのほか、新規に社会人になっていく学生連絡会のOBの協力までを考慮したシステム化が必要である。原子力学会をその受け皿にできないか等、これから検討する。

 



別添1  シニアの感想

 

荒井利治

 

今回の八戸工大での「学生とシニアの対話」は、これまでの経験を生かし、且つ八戸工大側の皆様の受け入れ体制もよく、よい成果が得られたと感じました。

 

1.学生の大半がB4で、既に就職が決まっている人が多かったので、落ち着いた雰囲気で対話が進められたと思う。六ヶ所の原子力施設が近い為、其の知識や理解がかなりあり、更にエネルギー教育調査普及事業の拠点大学として3年間の実績があるのでよい環境だったと思われる。

 

2.グループ別の対話で感じたのは、皆素直で、浮ついたところが無い。東北出身者が殆どなのでよい意味の実直さと、芯の強さがあると思った。これは、東京の学生に見られた、やや批判めいた態度や、発言をするものが殆ど無いことで、一見よいようにも思える。しかし反面、世間にはいろいろな考えがあることや、周囲の状況を実感する経験に乏しい事に起因しているかもしれない

 

3.従って今後此純粋な感覚を持った学生を受け入れる企業、特に原子力関連企業が彼等にどのような意識づけを行い、真の推進者にするかが問われるのではないだろうか。企業がOJTで仕事を覚えさせる事とともに、其の企業目的や社会的位置付けを彼等の共感を得るように示す事が大切なように思える。

 

4.上記2.の問題の進展を図る一つの方法として、都会と地方学生の交流を図ることが考えられる。実際の対話が経済的または物理的に無理ならば、それに代わるものとして、今回西山君が発表した「情報交換ネットワーク」が活用できる筈だと思い、今後の展開に期待したい。

 

 

小川博巳

 

原子力工学を学んでいる武蔵工大・東工大と比較して、一般学生の認識と反応を知る上で、貴重な対話であったかと受け止めております。工学部の学生ですから、エネルギー・原子力への基礎的なリテラシーは高いのだろうと思いますが、辛口のコメントも含めて一つ二つ記します。

 

花丸をあげたい:

エネルギー・原子力工学に関係ない学生が、「エネルギー問題の対話会」に出席したこと自体には、まず合格点をあげたい。

 

学生の受身のスタンス:

少なくとも「対話の主旨」が事前に伝えられ、アンケート調査などがなされていたのであれば、予め何か質問事項を準備する、或いは意見交換のテーマをそれぞれが若干でも準備するなどの、「心の準備」が欲しかった。冒頭での問いかけに対して、殆どの学生が何も用意をしていなかったのは、誠に残念であった。「与えられるのを待つ」反応は、インターンシップ意識調査に於ける、「受入れ情報がなければアキラメル」反応と同質だ。即ち、八戸工大に限らず、現代学生気質が一般に「受身」であることを考えれば、特異事象ではなく通常の反応かもしれないが、我が国の次世代を託す若者を育てるには、「心の準備」を指導するところから出発せねばならないのであろうか。次回への此方サイドの反省事項の一つかもしれない。

 

発言することへの躊躇:

八戸工大に限らず此れまでの共通事項であるが、「自由闊達な発言」が聊か乏しかったのが残念だ。昼食時の雑談の中で判ったことであるが、普段の学生同士の対話では、ごく当たり障りの無い会話のみで、「意見を披瀝するような会話は皆無」であるという。それのみか、数人が集まって会話する機会すら殆ど無いのが実態のようだ。まして、まじめな意見に対しては、「マジ?」との蔑視ともとれる友人の反応も、現代若者気質の典型のようだ。このような環境では、「発言することへの躊躇」があるのも当たり前かも知れない。

我が国教育システムの中に、「議論」あるいは「意見交換」の比重が、余りに軽視されている弊害かも知れない。

次世代を託す若者達は、事に触れ、思索の深浅は別として、己の意見を堂々と開陳出来る若者であって欲しい。

 

刺激に対する反応:

感受性には鋭いものがある。こちらからの刺激に、かなり敏感に反応し理解を示し、「魚釣り」に於ける「魚の反応」に相通じるものがある。即ち、「餌をコヅキ」あるいは「餌をオドラセ」などの動きを加えると、彼らの感覚を刺激して「パクリ」と喰らいつく。彼らに反応させるには、此方の釣りのテクニックも磨くことが肝要だ。

また、一たび反応し始めると連鎖反応が期待できる。従って、この手の対話は単発でなく、二回程度の繰り返しが効果を挙げるものと期待できる。が、それでは当方が堪らない。そこで、次回からは学生同士の意見交換を予めさせることが、より有効であると愚考するが、如何であろうか。ご検討賜りたい。

 

 

柴山哲男

 

1 初めて参加しましたので従来との対比は出来ませんが、皆様特にシニアの方々の熱心な努力に感動しました。八戸工大の学生の方々も原子力に対して特別の勉強をしていたわけではないと思いますが、かなり強い関心を持っているように感じました。原子力に関してもう少し勉学の機会を与えることが出来れば良いと思いました。

 

2 グループディスカッションは活発でしたが、時間が少なく、また、内容が広いため十分に対話が出来なかったように思います。もう少し時間をとるか、一杯飲みながらの方が良いかと思います。テーマを絞るのも一つの方法かと思います。勿論議論の中で他のテーマが飛び出すことは差し支えないと思いますが、例えば今回は場所柄、六ヶ所などにテーマを絞って見ても良かったのではないでしょうか。次回以降も主テーマをその時の状況に応じて考えていくのも一つの方法であると思います。

 

3 グループディスカッションの終わりに、これでお終いというのも残念な気がしたので、メンバーの一人に私のメールアドレスを渡し、皆さんに連絡して、今後何時でも連絡して欲しい旨を伝えましたが、今のところ反応はありません。

 

 

竹内哲夫

@あの程度の導入部と時間では無理がある。
残念ながら、サンドイッチの昼食ではコミュニケートの時間が短かった。やはり会食は夜ですね。

A林さんの2項と同じ意見。
今の日本の教育ではDebatingが足りない。NHKで紹介されるような、近代的な良い学校教育例ばかりに見ていたので、現実は昔どおりで、まだママの指導、乳離れしていない幼稚園のようにも思えた。突然に原子力という彼らにとって異分野の問題は大学生になると立派な答えを作ろうとテラウので無理になる。それだけ原子力、オイルピークという突然突飛なテーマだと、高校生の方がむしろ柔軟に議論に入れるのかも知れぬ。

B自分の人生の目標、自意識はこれまでの東工大、武蔵工大よりも高い(学生が多かった)。 逆に言うと、今原子力と銘打った学科に来ている(進学している)学生の方は無目的、漂流型が多いのかと危惧している。(私が採用官で、スカウトするなら八戸工大のほうが良い素材の人が多かった。)

C先回同様 彼らの中高時代の原子力、放射線の教育受講はまともな物は無く、一部には反戦反核教師に操られたとの意見がある。戦後教育はこの60年余り変わっていない。

(郵政の小泉さんみたいな社会劇場の演技をしないと日本は変わらない。このままだと22世紀まで続く) 

Dたまたま 未来テーマの「レーザー」を既に専攻研究しているグループだったので、放射線の 効用、特質については専門度の高い知識を持っていた。 

 

 

林 勉

 

1.今回の対話についての学生達の感想を聞いてみました。今回の経験は大変に勉強になったし、何よりも日頃真面目な問題で話し合う機会のない学生同士で一緒に話しあう場が持てたことが良かったと言っていました。

  一般学生であったにもかかわらず、シニアの説明をかなり理解し、エネルギー危機についての理解を深めたと思います。しかしこのようにして伝えた内容も今回の学生達の多くが来年就職してしまうという現実があり、立ち消えになってしまいます。

 

2.小川さんの感想では下記のように書かれています。

  「八戸工大に限らず此れまでの共通事項であるが、「自由闊達な発言」が聊か乏しかったのが残念だ。昼食時の雑談の中で判ったことであるが、普段の学生同士の対話では、ごく当たり障りの無い会話のみで、「意見を披瀝するような会話は皆無」であるという。それのみか、数人が集まって会話する機会すら殆ど無いのが実態のようだ。まして、まじめな意見に対しては、「マジ?」との蔑視ともとれる友人の反応も、現代若者気質の典型のようだ。このような環境では、「発言することへの躊躇」があるのも当たり前かも知れない。我が国教育システムの中に、「議論」あるいは「意見交換」の比重が、余りに軽視されている弊害かも知れない。」

  

私も昼食懇談の会話の中で、全く同じ経験をしました。学生同士、若者同士が真面目な問題で真剣に話し合う場がないことが大きな問題であると感じました。学生達の話し合いがない現実では、「学生とシニアとの対話」をやっても立ち消えになってしまいます。このような状況を少しでも改善出来るような方策はないか自問してみました。

3.昼食懇談時に、今回の学生側の世話役をやってくれた、佐々木さんと意見交換し、以上のような問題点を話し合いました。佐々木さんは東北大学からきて博士課程にいるそうですが、やはり学生同士の会話のなさを感じていました。

  そこで、何か学生同士の「エネルギーサークル」のような物を作り、共通問題である「エネルギー」を土俵にして勉強し、議論するような活動ができないか、また構成は1年生から4年生さらには大学院学生も含めるような形で、活動が立ち消えにならずに継承出来るようにできないか、など提案してみました。その様な考えは良いかもしれないというところで時間切れで終わりました。

 この問題は八戸工大だけの問題ではなく、共通問題だと思います。学生連絡会では原子力学会との連携の枠組みで原子力の学生との接点しか考えられないかもしれませんが、もう少し大きな「エネルギー」という枠組みの活動として、各工業大学ひいては一般大学への展開なども視野にいれられなでしょうか?これは原子力学会としてのテーマかもしれません。関係する皆様で今後の課題として取り上げていただきたいと思います。

 

 

松永一郎

1.エネルギーを専攻している学生ではないにもかかわらず、事前調査では84%がエネルギー問題に非常に、あるいは並以上に関心を持っており、また将来のエネルギー源として54%が原子力と答えており、24人も対話に参加した積極性は大いに買える。皆熱心に講演を聴いており、自分ごととして関心を持っている様子は伺われた。また、武蔵工大、東工大の学生から受けた感性の鋭さもどうように感じられた。

 

2.ただし、いざ対話が始まってみるとこちらから水を向けないと質問も出ず、なかなか対話が進行しない。この原因としては対話のようなものに慣れておらず、ただシニアの誘導に従うだけでどうしたらよいのか分からないということのようである。日本の教育に議論、討議といったものが欠けているのが大きな問題であろう。

 

3.また、非エネルギー関連の学生だったこともあり、テーマをもっと具体的なものに絞るべきだったのかもしれない。シニアサイドからあまりにいろいろなことを言ったために問題点が拡散してしまったきらいがある。「青森県民にとって原子力とは何なのか」とか「原子力なしでオイルピークと地球温暖化はクリアーできるのか」とかいったテーマが考えられた。

 

4.今まで武蔵工大、東工大、八戸工大と3回対話を実施したが、自分自身の反省点としてどうしてもシニア→学生というレクチャー形式に陥りがちなことである。できるだけ学生に話をしてもらうためにはどうしたらよいか、学生への事前アンケートを良く見て彼ら彼女らの関心がどの辺りにあるか、対話の前に良くつかんでおく必要があろう。

 

別添2 学生への事後アンケート結果

(1) シニアと学生の対話の必要性についてどのように感じますか?

 

 

 

こういった機会自体が少ないので、我々学生にとって大変よい刺激になった

 

 

長年の経験、現場の現状などを交えた生の話を聞くことができた。更に自分の考え、知識をシニアに伝え、新たな知識を得たり、間違っていた知識を訂正できた。

 

 

 

大学などの講義とは異なる、生の声を双方で交換できる貴重な機会である。

 

 

当然のことながら学生も含めて、市民との対話をする必要があります。そういう意味で学生に限定する必要性はありません。

 

 

 

意識しない学生への勧めは大変重要であると考える。

 

 

 

シニアの方々の経験を聞くことができる

 

 

 

 

 

 

 

 

専門分野への精通がすごい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

価値観や意識が違うので頻繁に行わなくともよい。

 

 

 

 

やはり経験の差が全然違うので学ぶものがたくさんありました。

 

 

 

自分と違った年齢の人と話すことで色々と経験となった。

 

 

 

働いた人からの考えを聞くことでこれからの生活、研究に生かせることができるから

 

今後の世界を担っていく上でも、エネルギー事情への意識の向上が何よりも第一であると考えているため。

 

 

 

大学外の方の話を聞く機会が必要かもしれない。

 

 

 

 

 

日本人為限らず、便利な生活を送っている人間は、省エネルギーや今の生活を制限されることに抵抗がある。今先どのようにすべきか老若男女問わずみんなで考える。

 

 

 

普段あまり交流のない方々との対話は貴重なものでした

 

 

 

学生とは違うシニアの意見が聞けるのは良い

 

 

 

 

 

 

シニアと若い世代で考え方が偏るのは良くない。

 

 

 

 

 

第一線のシニアの方と最新の話を聞くことができた。

 

 

 

 

 

(2)エネルギー危機に対する認識に変化はありましたか?

 

 

 

 

 

思っていたとおり、危惧すべき状況であることを確認した

 

 

化石燃料がいずれ無くなることはわかっていたことだが、最新のデータや現状を聞き、自分が考えている以上にエネルギー危機は深刻なものであった。

 

以前から石油資源の危機については各所で問題となっているのを知っていたが、考えていたより事態は深刻なようであった。

 

原子力も決して無限ではない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原発が無くなるかもしれない!というのは危機だと思います。頭の固い市民は原発で得られた電気を供給しなきゃいいんです。リスクを受けた人が恩恵を得る権利を持つと言うことで・・・

 

新エネルギーへの興味が深まりました

 

 

 

 

 

 

 

以前から石油等の枯渇は危惧していたが、改めて意識した

 

 

資源の枯渇は早い段階で指摘されていたので、逆にあまり進展がないように思えた。

今まで漠然としか考えていませんでしたが、具体的にエネルギー危機に関する数値(石油のピーク年、エネルギー消費量など)を見たときに、明らかに自分の中で意識的変化がありました。

 

ガソリンのことだけでも資料や話を聞いて意識が変化した

 

 

ただ、今の状況をしのぐだけでなく将来性を見通した意識の変化が必要だと思った

化石燃料が今後数十年でなくなることは認識していたが、人類が誕生して数万年の間の中の100年ほど化石燃料が使用されてきた。その期間に日本が発展を遂げたことに、その重みを意識し始めた。

 

現状を聞いたから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

限りある資源をどう使っていくか、我々はどのようにしてこれから生活をしていかなければならないのか。結局どんなに科学が進歩しようとも地球に生かされていると言うことを忘れてはならない。

 

自足を4%しかできていないことに驚いた

 

 

 

 

 

 

化石燃料の利用の幅広さに驚いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)原子力に対するイメージに変化はありましたか?

 

 

 

 

 

 

基本的に事前知識があるので特に変化がない

 

 

 

 

放射線はただ有害なだけだと思っていたが、活用方法があると機器、原子力に対する悪いイメージは薄れた。

 

以前から原子力の安全性についてはある程度知っていた

 

 

石油、天然ガスが無くなっていくので、原子力は必要になってくる

 

別に怖いとか嫌とか思っていませんでしたので、変化は特にありません。

 

危険であると思っていたものが必ずしもそうではないと言う方向へ変わった

 

研究室である程度学習していたため

 

 

 

 

 

 

 

職員の安全の考慮

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八戸工業大学では原子力に関する講義はあまり無いので、原子力に関して色々勉強になりました。

時間がなかったためにあまり話を聞けなかった

 

 

 

 

元々原子力発電の管理・必要性は学んでいたので、イメージとして変化はあまり無かったから

原子力と聞くと「人体への影響」という言葉が先に思い浮かぶ。しかし、実際には車などへの応用が示唆されていることを知った。やはり関係者のみならず一般の方の正しい認識も必要だといえる。

 

原子力の利点、欠点を事前に勉強したため

 

 

 

 

 

マスコミによるイメージや実際バケツでウランをあつかったニュースを見てしまうと、隔離されている原子力発電所は本当にちゃんと管理されているのかと不安になる。もっとオープンにすべきである。

 

芽を抑えることができるなど、色々利用できることを知ったので

 

 

 

(4)対話の内容は満足いくものでしたか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内容が身近なものだとより危機感を感じることができた

 

 

新鮮だったのはある

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の研究にも対応した対話をして頂いたのでとても参考になった

 

やや過去にこだわっている感があった

 

 

 

 

 

 

 

少し短かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やや時間が不足していたように感じた

 

 

 

 

 

 

 

自分の考え、疑問を聞けたし、エネルギー危機の現状を知れた

 

 

安全というのはどれぐらい追求できるか、しても良いのか。というのはおもしろい問題だと思います

普段こういったディスカッションをする機会があまり無く、原子力について疑問などいくつかありましたが、対話を通じて投げかけた問いに対して答えがきちんと返ってきたのでとても満足です

 

色々と学べるものがあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誤った知識、そして認識を改める意味でも非常に充実した会であった。

 

 

いろんな考えを持つ人々、原子力の関係者の方にお話を聞けてラッキーと思いましたし、もっといろんな方向から話をしていければなとおもいました。こういう話し合いはもっと増やすべき

 

 

 

 (5)本企画を通して全体の感想・意見などがあれば自由に書いてください。

 

 

・今後もこういった企画は必要です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・少し発表までの時間がなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・原子力を理解する良い機会が得られたことをうれしく思います。この企画が幅広く行われていけば、日本人の原子力に関する意識が変わると思います。

 

 

・これだけエネルギー資源問題は逼迫しているのにも拘わらず、クールビス、ウォームビスと名ばかりで環境問題への対策がほとんどされていない。押収を見習い国民一人一人が考えなければならない。すべてが起こってしまってからでは遅い。

 

 

 

・今回の対話に参加して、自分の知らないことをたくさん学べた。また自分のしている研究にも多少はつなげることができた。もっとこのような「対話」ということをやってほしいと思う。

 

 

 

・一般市民の方の参加もあれば、エネルギー事情に関する理解が広まると思う。

 

・またこういったディスカッションの機会があれば参加したいです

 

 

 

・セッションの時間が少ないと思います。意見のまとめる方向などぐらいはシニアとの対話で自然と結論が得られるようにした方がよいと思います。明確な意図を持たない対話などでは時間の無駄です。

 

 

 

・大変ためになる話を聞けたので良かった。ディスカッションの内容が「原子力」と大きく、1時間では足りなかった。テーマをもっと絞ればもう少し深くはなせると思う

 

 

 

・シニアの方々の情熱はわかるのだが、一般市民にとって以前原子力はネガティブなイメージがあるという厳然たる実情にたいする認識がまだ甘い。一般市民から見れば原子力に携わる人々が何を言っても、都合のいいことを言っているようにしか聞こえない(聞いてくれない)。原子力を前面に出したい気持ちはわかるが、それを抑えて地道に説明し、また人為的ミスのような凡ミスで信頼を損なうようなことがないように努力すべきだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上