大学における学生とシニアの対話実施報告概要

−武蔵工業大学−

報告作成 松永一郎

1.実施主旨

 今春日本原子力学会春の年会で実施した「学生とシニアの対話(学生のキャリアデザイン&夢支援)」のフォローアップ。日本原子力学会の学生連絡会の活動を支援し、これから原子力界に進む予定の学生の活性化をはかる。

2.対話の目的

 これから原子力界に進もうとしている一般学生が日頃思っている疑問や希望を聞き、経験と知識の豊富な原子力シニアの考え方を伝えることで、彼らのキャリア形成ややる気を引き出す一助とする。

 またシニアがこれからの日本/世界の原子力を背負っていく若者たちに是非伝えて行きたい考えを述べる。

3.武蔵工大における対話の実施

(1)日時 7月13日(水) 14:00〜17:10   

(2)参加

 @学生   21名

武蔵工大   19名(修士6、学部13(内女性5)) 

      東工大     1名(博士) 

      福井大     1名(修士)(女性)

 Aシニア  

エネルギー問題に発言する会会員10名

荒井利治、小川博巳、竹内哲夫、土井彰、中神靖雄、林 勉、堀 雅夫、益田恭尚、松永一郎、山崎吉秀

 Bコーディネーター 天野治氏(電中研、日本原子力学会)

(3)実施内容 

 @総合講演 

  ・今後の原子力の行方(短期、長期、採用、プラント過疎期)    竹内氏

 ・原子力・放射線が社会に受け入れられるためになすべきこと    山崎氏

  ・学生が原子力に臨んでつけておく力、女性技術者の利点・活躍   堀氏

A対話

シニア2名x5組に分かれ、各組に学生が4名〜5名ずつついて対話。対話の題材は「原子力のあるべき姿」「原子力と社会」「原子力と環境」「原子力と安全」「原子力の今後」

対話後、結果をまとめて各組学生代表から報告。

(4)結果

  参加シニアから感想を収集、学生には事後アンケートを実施

 (シニアの感想)

@エネルギー・原子力教育の貧困

今の大学生が中学・高校時代にエネルギー・原子力教育をまともに受けてきていないことに驚きを感じた。また学部生には原子力・放射線に対してネガティブなものもおり、我々世代が説明責任を果たしてこなかったとの感じもした。

 A若者の感性の鋭さとやる気

感性は鋭く、少しの時間で「自分たちのこととしてエネルギー・原子力問題を捉え、いろいろな情報を得ようという意識のめばえ」が感じられるようになった。 

 B高い観点から物事を見、反対意見の人達とも議論を戦わせながら問題点を掘り下げ、自分の考えをまとめていくと言った訓練がなされておらず、またそういった習慣もない。

 C若いひとには今後自分たちで問題点を見つけ、行動していってもらいたい。そのためにシニアがまわりから情報を提供し、支援していくことを考えてみたらどうか。

 D若い人は日頃反原子力の風潮に晒されており、今ひとつ自分たちの選択あるいは選定しようとしている進路に自信が持てないでいる。このような対話の機会をつくり、自信を持たせることが重要である。

 E周辺の反原子力を説得するのは大変な労力である。エネルギー問題や原子力の重要性を普及する活動はシニア層が引き受け、若い人が専門の仕事に没頭できる環境を作ってあげる必要がある。

(学生アンケート結果)

今回の企画を一言でまとめると大成功であった。ほとんど者(アンケート未回収のものを含め)が今回のような企画の必要性を感じているようであり、また有意義な時間を送れたといっている。これはグループ討論を行ったことが大成功の要因であったと思う。ただこのグループ討論は初めて開催されたこともあり、今後改善していく必要があると感じた。現在思いつく改善点としては、@参加者の学年分けA緊張感の和らげ(複数回開催)があると考えられる。

4.今後の対応

日本原子力学会学生連絡会は今回の対話を契機としてその基盤強化の道をさぐり、実施

していかれることを期待する。またエネルギー問題に発言する会は日本原子力学会に協力

して彼らを支援していくこととしたい。

 

5.対話写真集


天野 治 総合コーディネーター 挨拶

 

 

林 勉 エネルギー問題に発言する会幹事 挨拶

 

 

西山 潤 日本原子力学会学生連絡会代表 挨拶

(東京工大原子核工学科博士課程1年)

 

 

対話風景

 

 

 

 

対話参加者集合写真

 

 

懇親会


 


 

大学における学生とシニアの対話(詳細)

武蔵工業大学

 

さる7月13日(水)、東京世田谷区の武蔵工業大学世田谷キャンパスにおいて、同校の環境エネルギー学科の学部1年生〜4年生及び量子エネルギー工学専攻大学院修士課程1,2年生の中で原子力工学を専攻する学生19名並びに日本原子力学会学生連絡会に所属する東京工業大学、福井大学からそれぞれ1名の大学院生を加えた合計21名の学生と、エネルギー問題に発言する会の会員10名の「学生とシニアの対話」が実施された。

コーディネーターは原子力学会企画委員の天野治氏(電力中央研究所)が努めた。

以下にその内容を示す。

 

1.実施主旨

 本年3月の日本原子力学会春の年会において、同学会とエネルギー問題に発言する会が共催で「学生とシニアの対話(学生のキャリアデザイン&夢支援)」セッションを企画した。この企画は日頃我が国のエネルギー問題、特に原子力問題に関して危機感を抱いているシニア世代と、これから社会に出て、将来地球規模で現実化する厳しい環境・エネルギー問題に直接対峙し、日本および世界のために諸問題を解決していってもらわねばならない原子力を専攻する学生とが初めて同じ土俵に上がり、さまざまなテーマについて話し合うという画期的なものであった。

 テーマは将来の資源状況、ものづくりなどの技術力の維持と伝承、学生のキャリアデザイン構築などに関することであり、このような「学生とシニアの対話」がさまざまな情報交換の場所として期待され、学生連絡会の活性化に繋がっていくという感触が得られた。

 セッション終了後、参加シニア及び天野治氏と今後の対応を話し合った結果、以下のことが合意された。

(1)このような対話は単発ではなく恒常的に進めていく必要がある。

(2)セッションに参加した学生は意識の高い、言わば原子力エリートであるが、もっと一般の学生にもこのような場を提供し、学生たちが学生連絡会の輪をひろげその足場を強化していくことを支援していく必要がある。

(3)最終的には学生たちが学生連絡会を中心として、我が国/世界の原子力の発展のためにアイデアを出し合い、自ら企画立案実行していけるようになれば理想的である。

そしてそれを学会、原子力産業界、官界等で支援する体制作りにつなげていく。

 

2.今回の対話の目的

 これから原子力方面に進もうとしている学生が日頃持っている疑問や希望を聞き、経験と知識の豊富な原子力シニアがその考えを伝えることで、彼らのキャリア形成ややる気を引き出す一助とする。

 またシニアがこれからの日本/世界の原子力を背負っていく若者たちに是非伝えていきたい考えを述べる。

 

3.武蔵工業大学における対話の実施

 武蔵工業大学にはエネルギー全般を学べる学科として、環境エネルギー工学科(55名/学年)と大学院修士課程に量子エネルギー専攻(24名/学年)があり、エネルギー系の学生数は全部で300人弱である。学年で原子力関係の講座に進むのは約1/4(15名/学年)で講座の選択は学部3年の初めに行われる。

原子力関係講座の学部卒業生及び大学院修了者のそれぞれ40%、70%が原子力関連産業に就職している。

 今回の対話は武蔵工業大学の学生が主体となって企画立案し、それをエネルギー問題に発言する会及び原子力学会がサポートする形で実施した。

(1)参加者

 @学生

  原子力専攻の学生だけでなく、進路未定で原子力に興味を有する学部1,2年生まで対象に入れた。その結果武蔵工業大学の学生19名が集まった。内訳は以下のとおり。

修士課程2年−3名   学部4年−5名

修士課程1年−3名   学部2年−5名  

学部1年−3名 

学部生の5名は女性であった。

また東京工業大学、福井大学からそれぞれ博士課程1年、修士課程2年の学生(女)

が特別参加した。

Aシニア

 エネルギー問題に発言する会の運営委員の中から希望者を募るとともに、できるだけ広い範囲の経験者と対話したいという学生側の要望を入れ以下のメンバーを選定した。(名簿順)

 荒井 利治(元日立製作所)

 小川 博巳(元東芝)

 竹内 哲夫(東電、元日本原燃、前原子力委員)

 土井 彰 (元日立製作所)

 中神 靖雄(三菱重工業、元JNC)

 林  勉 (元日立製作所) 

 堀 雅夫 (原子力システム研究懇話会、元原研、元動燃)

 益田 恭尚(元東芝)

 松永 一郎(元住友金属鉱山)

 山崎 吉秀(電源開発、元関電)

(2)事前調査

 対話に先立ち、学生サイドで「学生からシニアに聞いておきたいこと」というアンケートを実施し、原子力の現状と今後の展開、技術者として働く時の心構え、女性技術者の立場等に関する合計19項目の質問としてシニアに提示し、それに対してシニアサイドから回答した。回答はシニア間で分担した。

この「質問−回答」は事前に学生に配布され、対話に備えて学生の考えをまとめるために使用された。

 質問内容、回答を別添1に示す。

(3)対話

 対話は「総合講演」と「学生とシニアの対話」の2部構成とした。

@総合講演

 学生が特に興味を持っている題材を3つに絞り、竹内、山崎、堀の3名のシニアがそれぞれの題材について各15分間講演した。

 講演内容の概略は次のとおり

a.今後の原子力の行方(短期、長期、採用、プラント過疎期の対応)

・・・竹内哲夫氏 

(概要)

現代文明は安くて大量の化石燃料をエネルギー源としてふんだんに使うことから成り立っているが、これはこの150年ぐらいのことである。中でも使い勝手のよい石油の多量消費は高々50年間のできごとである。しかも早くもそのピークが見えてきた。石油に代わるエネルギーがなければこの文明の維持発展は不可能である。それに代わる次世代のエネルギー源としては原子力しかない。これからその仕事に従事していく若者への期待は大きい。

 

b.原子力・放射線が社会に受け入れられるためにはどうすればよいのか

 ・・・山崎吉秀氏

(概要)

   原子力発電事業者はまず技術力をしっかり付け、自主規制と自主管理体制を作り、トラブルを発生させないとの気概と心掛けを持って現場が遂行していくことが重要である。それでもトラブルを完全に抑えることはできないが、起こった場合でも安全規制と過去の経験やそれに基づく改良から世間に迷惑がかからないようになっていることをアピールしていく努力が欠かせない。 

 また過去には隠蔽体質を指摘されたこともあったが、現在では情報公開がこれほど進んでいる産業は他に無いと思われる。今や何事も透明で、公明正大に世間にアピールすることが大切との価値観のもとに企業活動を推進している。

 

 c.学生はどのような力を付け原子力に臨み、従事すべきか。原子力界における女性技術者の利点・活躍

・・・・堀 雅夫氏

 (概要)

   原子力の平和利用に関しては従来原子力発電という観点から論じられ、また実際にも放射線の利用は別として熱エネルギーとしては電力という形に限定されて使われてきた。しかしながら安くて豊富な石油の供給に翳りが見えてきたこと(オイルピーク)、

  化石燃料の消費に伴う地球温暖化問題が顕在化しつつあることを考えると、クリーンエネルギーの供給源としての原子力エネルギーの利用が大きく浮かび上がってくる。特に輸送用エネルギー源として、石油に代わる燃料電池用水素の供給源あるいはプラグイン・ハイブリッド車への充電用電力供給源としての原子力には大きな未来がある。学生はそのような多面的な観点を頭に入れて原子力に臨んでほしい。また日本では少なかった女性原子力技術者の働ける分野も大きく広がり、女性ならではの特長が生かせると考える。  

 

 A学生とシニアの対話

  対話はシニアを2名ずつ5グループに分け、それぞれの組に大学院生、学部学生を混在して4〜5名配置しておこなった。各組には構成メンバーを考慮した対話テーマが与えられた。対話の時間は1時間15分とし、その結果を1枚の紙にまとめて対話終了後に各グループの学生代表が各5分間程度かけて発表した。

グループ分け及びテーマはつぎのとおり

グループ

シニア

学生

テーマ

堀、土井

D1,M2,B2,B2

原子力のあるべき姿

山崎、益田

M1,B1,B1,B1

原子力と社会

荒井、小川

M2,M1,M1,B4,B2,

原子力と環境

中神、松永

M2,B4,B2,B2

原子力と安全

竹内、林

M2,B4,B4,B4

原子力の今後

    注)D:博士課程 M:修士課程 B:学部

 

4.対話結果・・感想の収集及び事後アンケートの実施

 対話終了後、対話に参加したシニアに感想を求めた。また学生サイドでは独自の事後アンケート調査を行っている。

(1)シニアの感想

シニア10名の感想を別添2に示す。

内容を分類すると以下のとおり

 @エネルギー・原子力教育の貧困

今の大学生が中学・高校時代にエネルギー・原子力教育をまともに受けてきていないことに驚きを感じた。また学部の学生には原子力・放射線に対してネガティブなものもおり、我々世代が説明責任を果たしてこなかったとの感じもした。

 A若者の感性の鋭さとやる気

感性は鋭く、少しの時間で「自分たちのこととしてエネルギー・原子力問題を捉え、いろいろな情報を得ようという意識のめばえ」が感じられるようになった。 

 B高い観点から物事を見、反対意見の人達とも議論を戦わせながら問題点を掘り下げ、自分の考えをまとめていくと言った訓練がなされておらず、またそういった習慣もない。

 C若いひとには今後自分たちで問題点を見つけ、行動していってもらいたい。そのためにシニアがまわりから情報を提供し、支援していくことを考えてみたらどうか。

 D若い人は日頃反原子力の風潮に晒されており、今ひとつ自分たちの選択あるいは選定しようとしている進路に自信が持てないでいる。このような対話の機会をつくり、自信を持たせることが重要である。

 E周辺の反原子力を説得するのは大変な労力である。エネルギー問題や原子力の重要性を普及する活動はシニア層が引き受け、若い人が専門の仕事に没頭できる環境を作ってあげる必要がある。

 Fその他

 

(2)学生へのアンケート結果(8月5日時点)・・・・別添3(仮)

対話に参加した学生19名に対して実施した。回答者は夏休みということもあり9名であった。

質問内容は「今回のような対話の必要性(4択)およびその理由・・非常に必要、必要、どちらでも良い、必要でない」「企画でよかった点・悪かった点・・自由記入」「今回の感想・・自由記入」の3項目とした。 

@対話の必要性

非常に必要:4、必要:3、どちらでも良い:2 と言う結果であり必要とする意見が大部分を占めた。

理由は産業界の人と話す機会が殆どなく、視野が広まると言う意見が多かった。  

A企画でよかった点・悪かった点

良かった点としてはグループ討論で議論の内容が深まりよく理解できたという意見が多い。

悪かった点としてはグループ討論の時間が短かった。もっと突っ込んだ話がしたかった。シニアが話しすぎて意見を言う間が無かった等、グループ討論の運営についての意見が多い。

B今回の感想

初めてにしてはうまくいった、有意義な対話であったと言う意見が多い。

 

アンケート結果まとめ

今回の企画を一言でまとめると大成功であった。ほとんど者(アンケート未回収のものを含め)が今回のような企画の必要性を感じているようであり、また有意義な時間を送れたといっている。これはグループ討論を行ったことが大成功の要因であったと思う。ただこのグループ討論は初めて開催されたこともあり、今後改善していく必要があると感じた。現在思いつく改善点としては、@参加者の学年分けA緊張感の和らげ(複数回開催)があると考えられる。

 

5.今後の対応

初めての試みであったが、40歳〜50歳の年齢差を超えてシニアと学生が危機感の一部とはいえそれを共有し、今後その輪を広げていこうという端緒にはなった。少しずつではあるが今後このような活動を積み重ねていく必要があるという認識はシニア、学生の双方にしっかりと植え付けられた。

日本原子力学会学生連絡会はこれを契機としてその基盤強化の道をさぐり、実施していかれることを期待する。またエネルギー問題に発言する会は日本原子力学会に協力して彼らを支援していくこととしたい。

 



別添1

学生からの事前質問・シニア回答

@原子力・放射線を受け入れられる社会にするにはどうすべきか?

A日本人全体のエネルギー危機意識を変えるためにはどうすべきか?学生はどうすればよいのか?

B将来的に望まれる本来の原子力の姿とはどのようなものでしょうか。(社会的、技術的に)

C根強い反対にたいしてはどのようにアプローチ・説得するべきか?

D化石燃料が枯渇すると言うが、それほど切迫した危機として感じることはないのではないか?

E今の学生は個人としで行動するものが多いが、どのようにつきあっていけばよいのか。

F職場に女性研究員がいた方への質問。職場での女性に対する待遇はどうでしたか?今後女性が活躍することに期待されますか?

G今後の原子力はどうなると思うか?発展?停滞?衰退?また短期的、長期的にどうか?

H原子力系の採用等就職に関して今後の展望は?

I2030年までの建設閑散期(新規プラント予定のない時期)をどのように乗り切るべきか?

Jオイルピークの問題とは具体的にどのようなことですか。将来的にどのようなことになってしまうのでしょうか。

K技術者として働く時、男女差があるなと感じる部分はどこですか。またその理由は?

L学生に何を望むのか?また武蔵工大で原子力を学ぶ学生には特に何をを望むか?

M学生はどのような力をつけて原子力に従事すべきか?

N原子力はなぜ隠蔽体質になってしまったのか。また隠蔽体質でないにしても隠蔽を疑われる現状はなぜか。

O技術者として働く時、女性だからこそ、ここの部分で有利だと思うことはありますか?

Pプルトニウム利用を社会が受け入れるためにはどのような努力が必要か?

Q学部でエネルギー全般を学ぶ(広く浅く)事を社会、企業はどのように考える、評価するか?

RFBRの開発状況および課題は?

 

1.原子力・放射線を受け入れられる社会にするにはどうすべきか。

科学合理的に考えることが大事。原子力発電はほぼ社会に受け入れられている。放射線医療も受け入れられている。再処理、廃棄物処分、医療以外の放射線利用はまだまだである。必要性、みんなの役に立つんだということを、伝わりやすい言葉で伝えることが大事。皆さんと一緒に方法を考えてみたい。

 

2.日本人全体のエネルギー危機意識をかえるためにはどうすべきか?学生はどうすればよいのか。

21世紀は、苦しい時代になる。それは、有限な地球が支えきれない人口とこれまでの遺産の石油、天然ガスをいいほうから半分も使ってしまったからである。 それを正直に話すこと。シニアは人生の前半は戦争体験があり悲惨だったが、後半は安楽に過ごせる。若い学生諸君は、これからが大変。それを実感することが大切。

 

3.将来的に望まれる本来の原子力の姿とはどのようなものになるのでしょうか。(社会的、技術的に)

原子力発電を大元のエネルギーとして、電気、輸送(水素、もしくは、深夜受電蓄電池他)、熱利用に用いられる。一方、放射線利用は、エネルギー効率がよく、またコスト効率がよいため、医療、工業、農業、食品、生活など多方面で利用される。苦しい時代には、国民の考え方も合理的に進化、成熟していくはず。

 

4 根強い反対にたいしてはどのようにアプローチ.説得するべきか?
・科学者・技術者として、科学的・技術的な事実・知見と最善の推量に基づく見解を、信念を持って、正直に、話すことだと思います。時間がかかっても、信頼を得て、一人でも多くの理解を得ることが出来ると思います。

・反対する人を説得するのは無理である。物事を総合的に考えることのできるデータを提供して最後は「反対であるが納得する、妥協する」との方向で妥協してもらう。

 
5 化石燃料が枯渇すると言うが、それほど切迫した危機として感じることはないのではないか?
・石油などはピークが過ぎたと言われていますが、200年以上の可採年数の石炭や重質の油などを含む化石燃料資源全体としては、未だ相当量あります。しかし、これらはCO2排出量が大きいため地球環境上の問題、あるいはエネルギーとして便利に使用できる状態にするのに相当のエネルギーを消費するなどの問題、があります。

・人間は本来迫りくる危機をあえて感じないようにしている。イソップ物語のキリギリスのようである。

 

6.今の学生は個人としで行動するものが多いが、どのようにつきあっていけばよいのか。

・組織が先にあって人間がはまり込むものではない。個人で行動したければ、個人で行動するか行動しやすい集団を作るべきである。

 
7 職場に女性研究員がいた方への質問。職場での女性に対する待遇はどうでしたか?今後女性が活躍することに期待されますか?
・いろいろな分野で女性が活躍しているように、原子力の分野でも女性の割合が増加してきていると思います。私は米国原子力学会の会合によく参加していますが、日本に比べて女性の数が多く、私の友人の女性二人も学会の会長経験者です。今後、日本の原子力界でも米国のように女性が活躍が増えていくと期待しています。

現在の社会で、男女で差別している例はもうないと思う。ただし、重労働や、危険作業など作業の種類によっては当然ある。職場に入った後は男女の差ではなく能力の差で一見待遇に差が出ていると錯覚している人がいればそれは誤りである。女性活躍するではなく女性活躍する社会でないと世界との競争に勝てない。

・一般論として、男性のフェミニストは結構多い。リーダーシップということも学び、心得てゆくと結構グループを束ねることにも旨く立ち廻れるところがある。粘り強さによって技術をマスターすることにも向いているとは思うが、世間を広く見る、とらえることを忘れてはならない。もう一つ、世間への原子力のアピールの場面では女性ならではのソフトさが効いて耳を傾けてもらえる機会が大いに期待できるし、重宝な存在になりうる。

 

8.今後の原子力はどうなると思うか?発展?停滞?衰退?また短期的、長期的にどうか?

短期的には、新プラントの建設の端境期に入るため、停滞する可能性がありますが、長期的には原油の値上がり、国際的エネルギー争奪戦争の懸念もあり、原子力の健全な発展がわが国のエネルギー政策上必要かくべからざるものと考えます。

 

9.原子力系の採用等就職に関して今後の展望は

現時点では、原子力ビジネスの縮小のため、総人員は縮減せざるを得ない状況にあります。しかし、かって大量に採用した人員が退職時期にきており、この自然減が大きく新人採用はそれほど影響を受けないと考えます。この状況は企業により異なりますので、個別に調査してください。長期的には人員増大が必要になるでしょう。

 

10.2030年までの建設閑散期(新規プラント予定のない時期)をどのように乗り切るか?

このままの状況を放置すると技術の維持、継承が困難になる恐れがあります。このためプラント輸出に注力すること、また国内的には原子力発電のニーズ拡大政策が必要です。具体的には、プラグイン・ハイブリッド車、水素エネルギーへの原子力発電の活用等です。若い方達の力が必要です。

 

11.オイルピークの問題とは具体的にどのようなことですか。将来的にどのようなことになってしまうのでしょうか。

油がなくなるということではなくて、安くて豊富な油の時代が終わるということです。経済的に採掘可能な油が減り、需要に供給が追いつかなくなる時代がまじかに迫っているといわれています。将来的には油の値段はもっともっと値上がりするでしょう。石油資源を巡る国際的競争、争奪戦争が激しさをますでしょう。

 

12.技術者として働く時、男女差があるなと感じる部分はどこですか。またその理由は。

残念ながら、女性とともに技術者として働いた経験がなく、あくまでも想定の回答になります。現実問題として、現在の社会通念では女性に家事、子育て負担等がかかり、継続的業務遂行が困難ではないかと考えます。能力的にはなんら本質的問題はないと考えます。女性が働きやすい環境作りが必要と考えます。

 

13.学生に何を望むか

・最近のテレビやIT産業の発達で、視覚からくる雑多な情報が世間に溢れている。自ら取捨選択すれば良いとは言うもの、掘り下げられた整理された情報は少なく、薄いように思う。その点、活字からくる情報は深堀りされた、素晴らしい情報が多い。学生諸君は活字に親しみ、しっかりとした教養を身につけて社会に出てきて欲しい。

・原子力産業は、多くの領域のエンジニアリングとの組み合せによる総合技術が求められる。専門領域以外の工学全般に亘る理解力、統合する力が求められる所以だ。先輩が構築した技術を安穏と伝承するだけでは、技術は廃る。改善と新技術の開拓に向けた問題意識と、日本の原子力の海外展開・国際協力を視野に、グローバルな視点の涵養に努めて欲しい。

・勿論、原子力の基礎知識は学んできて欲しいが、その世界に通用する専門知識は所詮企業に入って、叩き込まれなければ使いものにならないであろう。言い換えると専門知識を身につけるのは社会に出てからでも遅くない。学生時代は幅広い教養と、体力をしっかりとつけて、仕事に向かってのファイティングスピリットを持てるようにして社会に出てきて欲しい。

技術者として働く時、女性だからこそ、ここの部分で有利だと思うことはありますか?

母性本能に訴える影響力は、良し悪しに付け比重が大だ。婦人層の正しい理解を得ることが、ともすれば蔑にされて来たが、社会の理解を得る原点がここにある。原子力工学を学んだ女性が、同性の立場で親身になって説明する伝道師役に期待したい。原子力産業で働く女性の組織が結成されたが、専門家が乏しく大いに待望されている。

 

14.学生はどのような力をつけて原子力に従事すべきか?

原子力エンジニアリングでは、担任する専門領域と他部門との接点が多いので、社内外との協調性と共に、担任領域の技術・時間の約束などに対する誠実な対応と責任感が、特に強く求められる。原子力産業に携わることを通じて、社会に貢献する意識と誇りを持つことが大切だ。また、従来の沈黙するエンジニアから、自ら発言し、社会の理解を求めるエンジニアへの脱皮が、いまや求められている。

 

15.原子力の隠蔽体質は何故か

・隠蔽体質というのは、何も原子力に限ったものではない。最近の内部告発等によって白日のもとにさらされる数え切れない程の企業(食品産業、自動車産業、ゼネコン等々)の例を見ても解るとおりである。これは企業が生き抜いてゆくための知恵から出ているだけに根が深い。ただ、所詮目先の功をあせっての浅知恵にしかなっていないことはその事例が示す通りである。長期的に健全な企業活動をするためにはこの様な体質から完全に脱却しなければなるまい。原子力はと問われれば、かつては同じ穴のむじなであったと言われても仕方がなかろう。しかも、事業者と行政とマスコミ(世間)との三角関係のなかでこれが助長されてきたと言わざるを得ない。このあたりのことは短くは書ききれないので、講演の場に譲りたい。

基本的には隠蔽体質ではなく、むしろ情報開示が進んでいる産業分野だ。しかしながら、強い専門家意識が、社会に対する説明責任を必ずしも果たして来なかった点を反省すべだ。規制の在り方と産業界の対応方法を反省・見直して、画期的な改善を図った米国の事例を学びつつある。偏った報道の在り方を糺す努力と、社会への説明責任の果たし方については、産官学の役割分担を工夫すべきだろう。

 

No. 17 プルトニウム利用を社会が受け入れられるためにはどのような努力が必要か

プルトニウムが、既にこれまで長年に渉り、安全に貯蔵され、加工され、使われている実績・実状が、正しく社会に伝えられていない。プルトニウムを取り扱う作業者等が吸引した場合の人体への影響は大きいが、適切に取り扱っている限り、これ迄きちんと安全が確保されており、東海村のプルトニウム燃料工場、発電炉「ふげん」でのMOX燃料、軽水炉におけるプルトニウム燃焼等、約30年のプルトニウム利用の実績を知ってもらうことが第一に必要であり、高品位のウラン資源も有限であることから、燃えないウラン238をプルトニウムに転換し有効にエネルギーとして活用することの意義と併せ、メディア、学校教育、実地見学等を通じて普及していく努力が必要。

 

No. 18 学部でエネルギー全般を学ぶ(広く浅く)事を社会、企業はどのように考える、評価するか

社会に出てからも学ぶ機会は多いが、大学では専門分野の基礎となる知識を体系的に学習すると共に、課題を分析・判断・解決する能力を培っておくことが求められる。エネルギー全般について幅広い基礎を身につけておくことは、社会・企業でどの分野に進んでも必要なことと思われる。一方、研究職や設計等の技術職を目指すならば、社会人になってからでも良いから、それに加え、何か一つでも深く掘り下げた専門分野を持つ努力をするようお勧めする。

 

No. 19 FBRの開発状況及び課題は?

FBR実験炉「常陽」は既に30年近い運転実績を有し、発電プラント「もんじゅ」も40%出力までのデータを取得。一応FBRプラントの特性は把握済みである。今後「もんじゅ」の運転を通じ、発電プラントとしての長期信頼性を実証し、ナトリウム取扱技術や運転保守技術を確立する。課題として、経済性を高める革新技術の採用、高速中性子を利用し長半減期元素の核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅削減、核不拡散に寄与する核燃料サイクル等が挙げられ、現在実用化に向けた戦略研究として取り組んでいる所である。

 

 



別添2  シニアの感想

 

荒井利治

1.予想より大勢の21名の学生、しかも学部、修士と幅広く参加してもらえて嬉しく思

った。取りまとめの三木君を始めとする皆さんの努力の賜物と感謝したい。

2.グループ別の討論

・先輩の専門家のお話は熱意はわかるが、説明が下手だと思うとの率直な意見が出された。これは留意するべき指摘と思う。

・小川,荒井両名がメーカーは異なるが、日本で始めて原子力発電に成功したJPDRの建設で東海村に派遣された仲間であるとの自己紹介後、これらの体験者についての 学生の敬意を感じた。何事によらず、経験の重さが大切であろう。

・中学、高校での原子力関係の授業は,社会科での広島,長崎の原子爆弾、スリーマイル島及びチェルノブイの事故が殆どで、原子力発電のことは習っていないとのこと。

・此のグループは全員原子力専攻または希望者であったので(これは珍しいとのこと)話がしやすかったが,逆に討論としては突っ込みが弱かった。立場をわざと変えてのデイベート形式の方がよかったかも知れない。

3.全グループの発表

・短時間で初めての問題をまとめて発表したのだが、なかなか核心をついた出来だったと思う。単に原子力の知識を学ぶだけでなく,社会や環境とのかかわり,更に原子力のあるべき姿を学ぶきっかけになると嬉しい。

4.懇親会での交流

・原子力専攻の学生の中心には相澤教授の存在があることが,学生の言葉の端はしから分かった。学生に対する愛情を持ったよき指導者が教育には欠かせない。                 

・世代を超えた今回のような会話の必要性を実感した。ちいさな芽が今後大きく育つ事を期待したい。

 

小川 博巳

初めての試みですが、次世代を担う学生に、若干なりともエネルギー問題を考えるキッカケ作りが出来れば、先ずは成功と言うべきか。

 

大切なことは、何と言っても彼ら自身が「如何に感度を上げて現況を捉えるか」、そして「彼らの言葉で自ら発信する」ことにあろうかと思います。刹那的な現代社会の申し子に、「ロングスパンでモノを考えろ」と注文しても、一朝一夕には伝わらず、本質を見抜く訓練が必要でしょう。

先ず「やって見せ、ヤラセテ見てという繰り返しと忍耐」とが必要だろうと考えます。

 

対話の中で、それぞれがチョッと刺激すれば、良い視点、鋭い感性を持っていることが判明しました。ただ、放置すれば彼等自身ではそこに気が付かず、まして自分の意見・主張にまで論理を構築出来ません。過日の対話の纏めと発表が、如実に物語っています。

 

残念ながら我が国の教育体系では、社会事象や国家戦略、政策などについての、個人個人の明確な主張を戦わせる教育・訓練をしておりません。しかしながら、エネルギー産業、とりわけ原子力産業にこれから携わる若者には、是非とも積極的に発言するエンジニアになって貰う必要があります。此れまでの「黙する原子力屋」は許されません。自ら道を切り拓く気概を持たせたいと念じております。

 

このような観点からも、学生との対話が、彼らに対して貴重な「キッカケ」になればと期待しています。それには先にも触れましたが、シニアは繰り返しと忍耐の覚悟が必要かと思われます。

 

竹内哲夫

シニアから聞いたエネルギーの予見初めての話で驚いた。実感が沸かない。ただ、若い自分たちの問題だと感じた。
しからば何をすべきか?簡単にまとまらないが、学生で問題提起、アッピールするよう運動(キャンペーン)すべきではないか。

驚いた事、今の大学生が中高校生でも原子力、エネルギー教育はほとんどなされていなく、彼らも原子力専攻になるのに家族、周囲から冷ややかに見られているのには驚いた。

 

土井 彰 

1.若い学生様の物事に取り組む真摯な姿に触ることができ、とても気持ちがよかった。

2.若いが故に知識の範囲が狭く、その範囲ですべての物事を判断してしまおうとの傾向が見られる。これは致し方のないことであるので、今後知識、経験が広まるにつれ、その時には原子力に対しての賛否も反転することがある。

3.自分の意見と相反する他人の意見とを述べあって討論する習慣がない。討論を深める中で、問題を掘り下げてゆく訓練をしてほしい。

4.自分の特徴、得意な分野は何かを常に考え、社会の中で、自分の特徴をどのように活用するかをもっと考えてほしい。

 

 

中神靖雄

エネルギー・環境或いは原子力に関心のある学生の皆さんに接し、我々にとっても有意義だったと思います。
学生の皆さん方の感想も、「如何にこれまで、エネルギー問題や原子力について、きちんとした教育を受けて来なかったか、正しい知識を得る機会が少なかったか」だったようです。
限られた時間の中で、皆さんが日頃疑問に思っている事に答え、結果として、教育や対話の重要性に議論が進んだのだと思います。
今回を機会に、学生の皆さんが、今後何を勉強し、行動していったらよいか考え、議論の輪を拡げていって頂ければと希望しています。
我々シニアは、それぞれの立場で、伝承の役割を果たしていくことが大切であり、積極的にそのような場を作っていくことの必要性をあらためて感じた次第です。
                        

 

林    勉

限られた時間の中で学生さん達とうち解けた雰囲気の中で話し合いができましたことは大成功であったと思っています。議論の中身事態は時間も十分ではなく、中途半端のところもあったと思いますが、学生が真面目に真剣に取り組んでくれ、日本のエネルギー危機について、ある程度の理解をしてくれたことは大きな収穫であったと思います。この運動をもっと発展した形で展開していくのも面白いと思います。

学生と話ながら、どうしたら世の中の関心をエネルギー問題に向けさせることが出来るかを考えていました。学生さんもこのようなエネルギー問題をどうしてメデイアがもっと伝えないのか不思議であると言っていました。歴史を振りかえって見ますと大きな転換点では若者が社会を変えてきています。明治維新がその典型ですが、我々の時代では安保闘争があります。この時は学生側が敗れ、その後学生運動は全くの骨抜きになってしまいました。この話をしても今の学生は安保闘争のことも樺美智子さんの事も何もしりませんでした。そこで社会が間違っていると思ったらそれを正すのは若者である、シニアではないことを話して聞かせました。「自分たちのエネルギー問題」をどうするのかという学生運動を起こしたらどうかと提案してみましたら、面白いといってかなりノッテきました。皆さんは生きる目標を定めにくい世の中にいるが、「自分たちのエネルギー問題」というのは取り組むべき問題として価値有ることではないかと言いましたら、これにも納得した様子でした。そこで提案ですが、皆理解して納得すれば行動する素地はまだ残っていると思いますので、何かこのような学生の自発的動きを引き出す方向に展開を考えてみるのも面白いと思います。学生側に「マイ・エネギー会」でも結成してもらって、しっかりした活動を始めれば、メデイアもこれは学生の新しい動きとして報道するでしょう。そこで学生側の大きな全国的動きとなれば、政治も動かす事はできるでしょう。このような展開の中で、我々シニアが支援できることを考えてはどうでしょうか。情報提供、学生活動への支援参加等、その形態も色々考えられると思います。

このようなことも考えさせてくれた今回の企画は大成功でした。皆様ありがとうございました。

 

堀 雅夫

1、久しぶりに若い世代の率直な意見を聞く機会を持つことが出来た。
2、学生は真面目に自分の選んだ勉学の道に励んでおり、原子力に関しても、世間のいろいろな風評にも拘わらず、そのリスク・コスト・ベネフィットについて、正しい情報・知識を得ようとしているのは、好感が持てた。

3、自分の周りの反原子力の人との議論で、その人たちを説得するのは大変な労力であるのを実感しており、むしろ自分の好きな仕事に力を注ぎたいという感想を言っていたが、これから科学・技術を職業とする人として当然だと思う。エネルギー問題や原子力の重要性を世間に理解して貰う仕事はシニア層が引き受け、若い人が専門の仕事に没頭できるような環境を作ってあげるべきだと思った。

 

益田恭尚

全体的感想としては思ったより学生は真剣に対応しており、このような会合を広げていく意義は大きいと感じた。
一般の人が自然放射線の存在を知らされていない上、原子力は放射線を撒き散らし、放射性廃棄物を出し続けるから悪だと考えている実態は認識していたが、エネルギー学科に在籍する大学生の一部も自然放射線の存在を知らないし、原子力発電に対しても同じような印象を持っているという実態は、我が国のエネルギー・原子力教育は想像していた通り、或いはそれ以上に貧困であり、我々が常に主張している教育の重要性はいくら言っても云い足りないことを痛感した。
このような教育の貧困が原子力拒否反応に繋がっていることを再認識した。学生の感想に「私達は原子力が問題だという教育をずっと受けてきており、今日一日話を聞いたぐらいではその考えを変えることはできない」との発言があったが、当然な意見とは言え、教育の貧困の付が如何に大きいかを痛感した。

先ず、学生自身が、我々人類は何時までも便利な化石燃料に頼っていることはできなくなるという実態を認識し、自分達が社会で活躍する頃には原子力に頼らざるを得ないということを理解し、先輩が悪い、政府が悪いといっても問題解決にならないという考えに立ち、なんらかの活動を広げていくことを期待したい。
それに向けてできるだけの手助けをしていくことが、我々OBの義務であろう。


松永一郎

学生にとっては学外の高度な知識と経験を有する人たちと、ひざを接して話しをするのは初めて。初歩的な質問もあったが発表を聞いてみて、エネルギー問題を自分ごととして考え、また原子力を専攻したことに間違いはなかったという自信が湧いてきた学生も出てきたような感じを受けた。今の学生は原子力を専攻するに当たってとかく周辺の反原子力の風潮にさらされてきており、自分の選択した道に自信が持てないでいる。

今後の日本/世界の原子力を担ってもらうにはまずは自信を持ってもらうことである。

まずはともあれ、このようなことをするのが大切で、実施して本当に良かったという印象である。

山崎吉秀

この大学においても、原子力が環境・エネルギー工学という学科のもとに吸収されていると聞いてやはりと、世の移ろいを改めて実感した。
しかもそこでエネルギーを学ぶ若者たち(1年生)が原子力・放射線について、むしろネガティブな気持ちを持っていることに驚きを感じた。
同時に我々世代が説明責任を果たしていない、怠慢ではとの感さえ感じた。
順を追っての原子力の対話で、いきなり親派になってくれたとは思わないが、少しは距離
が縮まったように思うし、今後もこの努力を怠ってはならないと痛感した。

 



別添3(仮)

「学生とシニアの対話in武蔵工大 事後アンケート結果」

武蔵工業大学 修士課程2年   三木 陽介

(日本原子力学会学生連絡会 副代表)

・回答数 -

@「今回のような企画の必要性」

・非常に必要である 4

(産業界の方々の考え方を知るまたとない機会だから)

(学生がシニア(社会人)と話す機会はほとんどなく、対話することで視野が広がる)

(学生には現実に対する危機感がないから)

・必要である 3

(シニアのかたの考え方を知ることが出来たから)

(今回のような機会がないと、社会の方と話をするチャンスがない)

・どちらでも良い 2

・必要でない 0

「結果をみると、ほとんどのものが必要性を感じているようである。回答の内訳をみると学年が進むほど必要性を感じており、逆に学年が低いほどまだそれほど必要性を感じていないという傾向が見られた」

 

A「企画で良かった点・悪かった点」

・良かった点

グループ討論は話しやすかった

ただの講演でなく、グループ討論を行うことで効果的に内容を理解できた

グループ討論で聞きたいことが聞けた

グループ討論では討論が深まり興味深かった

・悪かった点

もっと突っ込んだ話がしたかった

グループ討論の時間をもっと増やして欲しい

グループ討論の際に話が発散してしまうことがあった

意見を言う間がない(シニアが話しすぎる)

ある程度の知識がないと厳しい

途中でメンバーを変えた方が良い

「グループ討論の評判が非常に良い。特に内容を理解しやすくなるという点で評価が高く、熱意や情熱が伝わりやすいのではないか。悪い点では、今回参加者の年齢層が広かったことに起因する意見が多かった。また緊張が基になっている意見もあったので、これを解決する方法を考える必要がある(この点では複数回開催する事が非常に有効か)

 

B今回の感想

・初めてにしては順調に進行されたと思う

・事後アンケートは,その日のうちに取れたほうが良い

・学生もなかなか頑固というかすぐにシニアの話(考え方)を受け入れなかったことが印象的であった.始める前は,もっとシニアから刺激を受け,考え方ががらりと変わったという感想を述べる学生が多いかと思われたが,実際はそうではなかった.これは,今後こうした機会をくり返し持つことによって学生の意識がどのように変化するかを注意深く観察する必要があるように感じた.

・今度は年齢の近い若手技術者とも対話をしてみたい

・今後を考える上で非常にためになった

・原子力への興味が深まった

・非常に有意義な時間になった

 

まとめ

今回の企画を一言でまとめると大成功であったと思う。ほとんど者(アンケート未回収のものを含め)が今回のような企画の必要性を感じているようであり、また有意義な時間を送れたといっている。これはグループ討論を行ったことが大成功の要因であったと思う。ただこのグループ討論は初めて開催されたこともあり、今後改善していく必要があると感じた。現在思いつく改善点としては、@参加者の学年分けA緊張感の和らげ(複数回開催)があると思う。

 

以上