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  放射線工学部会ニュースレター           2016-14(579号) 
                              2016年10月11日
                                     放射線工学部会発行
                                       
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 BRACSS/BRAIDコードV&Vワーキンググループが放射線工学部会の下に設立されま
した。ここに、設立趣意書をお送りします。



   放射性核種の基礎的数値算出に係る国産コードBRACSS/BRAID検証WG 
         設立趣意書

                          平成28年9月30日

1.活動の目的
 国際原子力機関(IAEA)では、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づいて
放射性核種ごとの防護上の制限値について検討し、国際的なIAEA安全基準として
発行している。これに対して、国内では放射線審議会による審議を経て、それらの
国内法令への取り入れを行ってきた。最近ではIAEA安全基準等の数値に対して国
内で確認計算を行い妥当性を確認した上で、数値の国内規則取入れが行われる傾
向にある[1]。
 国内規則に取入れられている放射性核種の基礎的数値の例としては、A型輸送物
の放射能収納限度(A1/A2値)、及び下限数量及び下限濃度(規制免除値)及び危険
数量(D値)があげられる。これらの値に対して、IAEAは加盟国からの提案に基づく定
期的な見直しを行っているが、様々な法令で参照されている値であるため、変更によ
る影響が広範に及ぶことが予想される。また、このような国際的な検討の場において、
日本が見直し提案に対する科学的且つ合理的な意見を表明するには、それら数値の
妥当性を評価するための国産コードの整備が極めて重要である。
 このような考えのもと、原子力規制庁(旧独立行政法人原子力安全基盤機構)は、
2010年より輸送安全に係る基礎的数値を検討するための原子力コード、BRACSS[2]
及びBRAID[3]の開発に取り組んできた。BRACSSは、ICRP新勧告を含む、各種の基礎
データに基づいてA1/A2値及び規制免除値及びD値を算出するための被ばく線量評
価コードである。一方、BRAIDは内部被ばく線量評価に特化されたモジュールであり、
その結果はBRACSS側で参照される。
 これら国産コードの正当性を国際的な検討において証明するには、コードのV&V
(Verification and Validation、検証と妥当性確認)を行って、その品質を保証する必
要がある。BRACSS及びBRAIDコードのV&Vについては、放射線の防護及び線量評
価に係る専門家が主体となって、日本原子力学会標準「シミュレーションの信頼性
確保に関するガイドライン:2015」[4] に基づいて実施するのが適当である。したがっ
て、本WGを日本原子力学会放射線工学部会の下に設置し、BRACSS及びBRAIDコー
ドのV&Vを実施する役割を果たすこととする。

2.	WGの構成
東北大学の中村尚司名誉教授を本WGの主査とする。本WGは、放射線工学部会の
部会員を中心とした産学等のメンバーで構成し、また放射線工学に関連した他の部
会員の参加を歓迎する。効率的な活動のために主査の下に幹事を置き、必要に応じ
て複数のサブグループを設ける。
予定されるWGメンバー名(募集中)
主査:中村 尚司(東北大学)
幹事:平尾 好弘(海上技術安全研究所)、松本 雅紀(放射線医学総合研究所)
委員:岩井 敏(原子力安全推進協会)、佐々木 道也(電力中央研究所)、
近内 亜紀子(海上技術安全研究所)、山中 庸靖(元、日立製作所)
木名瀬 栄(JAEA)、早川 信博(MHI NSエンジ)


3.開催期間
 平成28年9月から平成30年9月まで約2年の期間にわたってWG会合を適宜開催し
て活動を行う。

4.検討範囲
放射性物質輸送安全に係る基礎的数値を算出するための被ばく線量計算コード(BRACSS)
、及び内部被ばく線量計算コード(BRAID)に対するV&V検証作業(日本原子力学会標準
「シミュレーションの信頼性確保に関するガイドライン:2015」に基づくV&V検証内容の検討
を含む)。V&V評価プロセスの文書化。計算コードに使用されるICRPデータの妥当性につ
いては、保健物理学会専門研究会報告[5]を参考とする。

5.その他
 1)本WGの成果はWG報告書としてとりまとめめられる。
 2)上記検討範囲のコード及び関連データのV&Vに興味があり、積極的に活動される方
を本WGのメンバーとして歓迎する。
 3)活動の成果は放射線工学部会ホームページ、学会発表等を通じて公表する。
以 上

参考文献
[1] 	「放射線障害防止法へのクリアランス制度の導入に向けた技術的検討結果について
(第2次中間報告書)」、放射線安全規制検討会、文部科学省科学技術・学術政策局、平成
22年1月(平成24年3月 一部訂正).
[2] 	N.Hayakawa, Development of BRACSS code for recalculating Q values by Monte Carlo method
, PATRAM2016, Sept. 18-23, Kobe, Japan .
[3] 	M.Matsumoto et al., Development of a Computer Code to Calculate the Distribution of 
Radionuclides within the Human Body by the Biokinetic Models of the ICRP, 163,4, Radiation 
Protection Dosimetry (2015).
[4] 	日本原子力学会標準「シミュレーションの信頼性確保に関するガイドライン:2015」
(AESJ-SC-A008:2015)(1602) 2016年7月
[5] 	日本保健物理学会専門研究会報告書シリーズVol.9 No.2:「放射性核種ごとの防護上
の制限値に関する専門研究会」、一般社団法人日本保健物理学会、2016年5月.

以上

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ニュースレター担当:奥野功一(安藤ハザマ) okuno.koichi@ad-hzm.co.jp
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