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* 放射線工学部会ニュースレター    2013-17号(493号)*
*                     2013年 8月 7日 *
*                       放射線工学部会発行 *
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「放射線安全及び計測技術に関する第7回国際シンポジウム」の報告


7th International Symposium on Radiation Safety and Detection
Technology (ISORD-7)

標記の国際シンポジウム(http://www.isord7.org/)が、2013年7月16日―17
日に中国海南省三亜市宝宏龍都ホテルで開催された。海南省は、中国というよ
りベトナム沖言う方がぴったりするような南の島であり、緯度はハワイとほぼ
同じということであった。ただ、真夏の日本から行った大部分の人にとって
は、蒸し暑いような気がする程度に感じられた。

前日の15日は受付だけが行われ、16日からシンポジウムが始まった。午前の最
初、中国原子力研究所(CIAE)のSenlin Liu副所長、東北大学中村尚司名誉教
授、韓国漢陽大学Jong Kyung Kim教授の開会挨拶が行われた。その後、3件か
らなる招待講演セッションがあり、日本の中村教授による先進的中性子検出器
による上空及び宇宙船の中性子計測、韓国の漢陽大学Jai Ki Lee教授による放
射線防護における公衆の線量限度の考え方、及び中国のSenlin Liu副所長によ
る中国の自然放射線の線量レベルの講演が行われた。中国の自然放射線では、
福島の立ち入り制限区域に相当するような高線量地域の高い放射線レベルが印
象的であった。

午後の最初には、ISORD-6に引き続き日本からの提案による「福島事故に関わ
る特別セッション」が開催された。日本からは3件の講演があり、放射線モニ
タリングと生態学的半減期の評価(原子力機構木名瀬栄氏)、福島事故による
放出プルトニウム同位体比の計測結果(放医研Jain Zheng氏)、食品の放射能
汚染と法令の基準設定及び健康影響調査の現状(東北大馬場護教授)が報告さ
れた。中国からは上海近郊の秦山地区における福島事故による微量放射性核種
の検出(原子力運転管理(株) Gao Yang氏)の講演が行われた。事故から2年
3ヶ月経ち、事故直後に比較して、測定及び解析がずっと詳細になっていた。

その後、3つの会場でパラレルに口頭発表が行われた。分野として、「放射線
輸送及び遮蔽」、「放射線線量計測」、「放射線計測及びセンサー技術」、
「環境放射線計測と評価」の発表が多く、その他に「放射線リスク管理及び評
価あるいは訓練」、「放射線防護の考え方」、「政策及び現状の放射線学の問
題」の分野が取り扱われた。ポスター発表は、両日ともそれぞれ30分の時間が
割り当てられていた。初日の16日にはポスター説明者と聴取者も比較的揃って
議論がなされたが、17日には説明者がほとんどいなくて、真面目に集まってい
たのは日本人くらいだった。

バンケットは、前回のISORD-6(マレーシアのランカウィ島)と同じく、浜辺
で開かれた。冒頭挨拶では、北京の中国原子力研究所の人々にとって海南島は
憧れのリゾート地であるという話が紹介された。従来のISORDより参加費が高
かったこともあるが、旨みに満ちた沢山の中華料理が振る舞われた。

プロシ―ディングスは、中国科学院上海応用物理研究所の雑誌Nuclear
Science and Techniquesの別冊号に掲載される。参加登録者は全体で140名
(中国88名、韓国35名、日本17名)であった。登録発表件数は、全体で120件
(招待講演3件、特別セッション発表4件、口頭発表56件、ポスター発表47件)
であった。今回は、プロシ―ディングが査読のしっかりした日本原子力学会の
特別号にならないことや福島の事故処理に当たっている人もかなりに上ること
なども影響にして、日本からの参加者が少なかったようである。

今回、全般的なことで気がついたことは次の通りである。(1)全体の発表件数
のうち1/3位が福島事故(影響または防止策)を研究のモチーフに使ってお
り、世界における福島事故のインパクトの大きさが実感された。(2)数回前の
ISORDに比べて、中国側に優れた研究レベルの発表が現れるようになった。中
国側では若い人の発表が多い上、全般的に質の向上が感じられる。中国で若い
人の教育をしっかり進めてきたことがうかがわれる。(3)相反するようなこと
であるが、中国側からの発表のうち約1/4が当日になって取りやめになり、至
るところのセッションで時間の空きができていた。日本や韓国から発表ではあ
り得ないことであり、習慣の違いが感じられた。

次回(2015年)のホスト国は韓国となっており、大田や済州島が会場候補地と
して検討されているようである。

九州大学 石橋健二記


以上


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ニュースレター担当:伊藤主税(原子力機構) ito.chikara@jaea.go.jp
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