NUCEFセミナー開催に寄せて

          田中 知 (東京大学/日本原子力学会再処理・リサイクル部会副部会長)

 再処理・リサイクル部会は3年前に発足しまして日本の再処理リサイクルのあるべき姿を議論しながら、組織を離れ一つの学会の集合体として、いろんな提言やサポート等をしております。このNUCEFセミナーにも後援という形でご協力をさせていただいております。

 さて、今我が国の原子燃料サイクルあるいは放射性廃棄物の問題に関しましては、非常に変化の激しい時期に来ております。ご存知のように、電力は自由化の中で原子力も One of Them という形で考えており、メーカは新プラント激減により原子力技術者の維持が困難な状況になっています。このような状況下では、原子力、とりわけ燃料サイクルあるいは廃棄物の技術開発は、ますます原研とサイクル機構が中心的役割を担うことが重要となります。

 両機関の研究開発は、審議会や課題評価委員会などで、実施内容の妥当性や成果を評価されるわけですが、そのような場というのはどうしても狭い社会になってしまう傾向にあります。そのような観点については、もっと組織を離れて日本という立場から、学会、部会が一緒になって考えて、提言なり方向性なりを、ある時は立場を変えて発信をお手伝いし、お互い双方向でコミュニケーションをしていくということが必要になってくると考えます。

 今後、原研とサイクル機構は新法人に移行して行きます。より強力なコンセントレートされた研究開発機関が生まれるわけです。その時、新法人の皆様方に期待することは、意識改革というと少し大げさですが、新たな視点から、今まで以上に幅広い視点から、自分の役割、研究開発の位置付けを認識することではないかと思います。原子力は次の50年に入りました。大学の独立法人化にも見られますように、投資対成果が厳しく問われます。研究開発には、長期的、中期的、短期的のものがございます。それらをきちんと分類して評価し、やるべきことをやるというような観点から Plan・Do・Check・Action を着実に実行していただきたいと思います。また、研究開発の節目節目において、外部への情報発信を励行いただければ幸いです。我々部会の方としても、一緒になって考え、一緒になって発信していきたいと思います。そういう意味でこのNUCEFセミナーを後援させていただいているわけでございます。

 もう少し極端な言い方をしますと、例えばNUCEFが今までの歴史をさらに発展させ、その結果生まれた新しい概念なり価値が、投資対効果があるということを発信できるかという観点から常にチェックする必要があるということです。それが説明責任であるわけです。それは、単に研究だけではなくて、研究する人がいれば、研究を工学的に進展させる人、工学を実際のビジネスに生かす人、この3つが適切に組み合わされなければいけません。今までは研究の側面が強かった感がありますが、研究、工学、ビジネスの3つの要素をどのように組み合わせるか、考え実行していくことが重要と考えます。これはNUCEFや新法人だけではなく、部会や学会を通し、原子力委員会や原子力安全委員会を通し、あるいは原子力産業界を通して、議論していかなければならないところです。発展的に進化させなければならないという観点から、今後どんどんNUCEF、新法人、部会、学会、関連組織が機能していかなければならない。そのためにも、まずは新法人の方から積極的な情報発信をお願い申し上げます。

 以上お願いした内容のかなりのところは、原研、サイクル機構に対してのみでなく、我々の再処理・リサイクル部会および、国内にある様々な原子力関連機関、組織にも共通するところであります。21世紀のエネルギーを考えたとき、燃料リサイクルを伴う原子力エネルギーは必須であると信じております。そのために我々は重要な役割を果たすべきであります。その意味で協働していきたく思います。

 我々は後援して2回目でございますが、今後ともいろいろな機会を捉えて「一緒に考え発信」、あるいは「双方向」というキーワードで協力していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。今回参加された皆様方にも、温かいご支援をお願いいたします。