再処理工場におけるウラン試験の開始について
日本原燃の六ヶ所再処理工場は、平成16年12月21日の9時26分にウラン試験を開始いたしました。
最先端の科学技術によって生み出されるエネルギーである原子力発電は、エネルギー資源の乏しいわが国において基幹となるエネルギーであり、この原子力発電を燃料供給の面等から支えるのが再処理工場です。即ち、これら両者が一体となってはじめて原子力発電が準国産エネルギーとして確立されるものです。更に、世界的な人口の急増とともに、経済社会の規模拡大により、地球環境問題もますます重要になってきている中で、これらの技術を確立し、次世代にしっかりと引き継いでいくことが我々原子力に携わる者の責務であると考えております。
ウラン試験は、協力会社も含め全社をあげて安全最優先で進めるとともに、試験の実施状況や発生したトラブル等について積極的かつ分かりやすく情報公開に努め、事業の一層の透明性を図ることにより、皆様の理解と信頼をいただけるよう、取り組んでいく所存です。
ウラン試験は約1年間かけて実施する計画であり、それに続いて、実際の使用済燃料を用いる総合試験(アクティブ試験)を行い、その結果を分析して安全性を確認した上で、操業を開始する予定です。
これまでの皆様のご支援に感謝すると共に、今後とも引き続きよろしくお願いいたします。
〈ウラン試験に至る経緯〉
84年 7月 電気事業連合会が青森県と六ケ所村にサイクル施設の立地を要請
93年 4月 再処理工場着工
98年10月 使用済燃料を初搬入
01年 4月 再処理工場の通水試験開始
7月 使用済燃料貯蔵プールからの出水を検出
02年11月 再処理工場の化学試験開始
04年 1月 使用済燃料貯蔵プールの補修工事を完了
11月 原子力委員会が核燃料サイクル政策維持を決定
再処理工場のウラン試験に関する安全協定を締結
(電事連の立会いの下で青森県、六ヶ所村と日本原燃で締結)
12月 ウラン試験開始
以 上
(ウラン試験について)
1.試験運転の目的
機器の動作や性能の確認等を行い、あわせて機器等の不具合や故障を操業前に早期に見つけ出し、手直しを行います。
また、試験を通じて、運転員や保修員の技術技能の向上を図ります。
この目的を達成するため、下記のように、段階的に操業状態へ近づけながら試験運転を実施してきています。括弧内は、試験に用いる物質を示しています。
通水作動試験(水、空気)→化学試験(硝酸等の化学薬品)→ウラン試験(ウランと化学薬品)→アクティブ試験(使用済燃料と化学薬品)→操業運転
2.ウラン試験の概要
ウラン試験では、操業の状態により近づけるため、操業時に処理する使用済燃料の成分のほとんどであるウランを使用し、ウランを用いなければ確認できない項目について試験を行います。
また、使用済燃料よりも放射能レベルが極めて低く、発生が予想される不具合等への対応が容易であるウランを使用して、使用済燃料を使用するアクティブ試験の前に機器等の不具合や故障を見つけ出し手直しするものです。
試験では、ウラン模擬燃料集合体、ウラン溶液、ウラン粉末の状態でウランを使用します。
形態 | 主な目的 | 使用量 |
ウラン模擬燃料集合体 | せん断設備を使って、燃料集合体のせん断処理性能を確認 | 合計53トン |
ウラン溶液 | 分離、精製、脱硝設備における抽出性能などを確認 | |
ウラン粉末 | 空気を用いて製品を専用の容器へ詰める作業を確認 |
3.ウラン試験中に発生が予想されるトラブル等への対応
六ヶ所再処理工場は、フランスやイギリス、また、東海村(核燃料サイクル開発機構)にある再処理工場を手本として、これまでのトラブル等の経験や最新の知見等を反映して改良しています。
六ヶ所再処理工場においては、このような取り組みにより工場外へ影響を与えるような事故の発生はないものと考えています。
しかし、再処理工場は規模の大きな化学工場とも位置付けられること、数多くの機器や設備があることから、軽度な漏えいや軽微な機器故障等が発生する可能性はあると考えています。
また、新たにウランを取り扱うことから、化学試験までとは異なり、ウラン溶液の化学反応に伴う配管の詰まり等が発生することも想定されます。
これらは、国際評価尺度(INES)に基づくとレベル0以下(レベル0又は評価対象外)と想定できるものですが、その内容、事故の進展性等からみて安全に影響を及ぼさないこと、復旧時の対応方法等を、事前に皆さまのご理解がいただけるよう、先行施設の情報を参考に、トラブル等事例集「再処理工場のウラン試験時に発生が予想されるトラブル等とその対応事例集」を取りまとめ公表しています。
発生した不具合や故障は、その内容、原因等に応じて整理し、これらから得られたデータや教訓を工場内の他の設備の試験やその後の試験・操業段階に反映します。
詳しくは、日本原燃のホームページ(http://www.jnfl.co.jp/)をご覧ください。
トラブル事例集や、毎日のウラン試験の実施状況、発生したトラブル等について掲載しています。
日本原燃株式会社
再処理計画部
鈴木一弘