核データ部会の紹介

目的

軽水炉から核融合炉に至る核エネルギーシステムの巨大技術は,原子核の反応というミクロの現象に立脚しています.これらの技術が進歩し,世の中により広く受け入れられてゆくためには,この小さな世界をより詳しく知らねばなりません.核データは,原子核反応や核の構造・崩壊に関する情報を数値データベースとして提供するもので,科学技術の進展とともに核データへの精度の要求は高くなっていきます.

一方,放射線工学や加速器・ビーム工学等の原子力関連技術が,物理学・生物学・医学・環境科学・天体核物理といった領域へ裾野を広げつつあります.核物理等の基礎研究領域と原子力関連技術の応用分野のボーダーレス化が進み,その結果,必要とされる核データも極めて多岐にわたるようになってきました.

応用としての原子核物理の研究,そして核データ利用者の要求としてのデータベースの量的拡大という2兔を射止めるために,情報交換と議論を行なえる場が学会内に必要です.「核データ部会」設立の目的は,近年やや分散化の傾向にある学会内での核データ関連活動を再編成し,核データ研究に携わる研究者・技術者の間の情報伝達と議論をさらに円滑にし,これを活性化することにあります.これにより,関連する他の部会,あるいは他の学会・協会との機能的な連携が可能となり,結果として日本原子力学会全体の活動の活性化とバランスある発展が可能となります.

組織及び活動

部会総会および部会運営委員会を,原子力学会年会および大会毎(年2回)に開催しています.また,部会活動の活発化および迅速な案件処理のため,メーリングリストを活用して随時審議および処理を行っています.運営委員会は,企画・庶務・会計および編集で構成されています.部会が企画した連載講座「核データ」(学会誌43巻5-8月号)は,核データを利用しているが,そこでどのような研究開発が行なわれているかといった話には縁の少ない原子力関係者に好評でした.

部会員への情報交換の場として,電子メールによるニュースレター(NDD Newsletter)を発行しています.毎号内容の変わるトピックス的なものを頭におき,その他,会議案内および報告,部会からのお知らせ,部会員の研究成果といった内容が月に1通程度の頻度で送信されます.なお,過去の記事は全て部会ホームページ内にアーカイヴされています.部会編集担当者を毎回悩ませているのがトピックスですが,核データに関連した最新の話題についての記事を専門の方に書いて頂いています.NDD Newsletterのアーカイヴを見て頂ければ,多岐にわたる核データ関連の話題から,核データ研究の「平均温度」の高さを知って頂けるとか思います.

年会および大会での核データ部会総合講演は最低年1回開催しますが,2回行うかどうかは弾力的にその都度検討しています.また,炉物理部会,放射線工学部会,加速器・ビーム工学部会との4部会による合同企画セッション「大強度加速器計画への取り組み」等の合同企画セッションにも柔軟に対応しています.

部会活動は国内だけに留まらず,韓国との交流もさかんに行なっています.本学会と韓国原子力学会との相互協力協定の下で部会間での協定を作成し,運用手続きを簡単化して活発な交流を進めていくことを決めました.これに伴い,本部会と韓国核データ分野側間でジョイントセッション等を企画し,韓国済州島での韓国原子力学会(KNS)2001年春の年会,本学会2001年秋の大会(以上,炉物理部会と合同),および2003年春の年会(炉物理部会との合同および加速器・ビーム工学部会との合同を個別に行った)等の日韓ジョイントセッションとして開催しました.

核データの研究・開発・利用を円滑に進めるためには,それをとりまく環境に対しても発言していく必要があります.現在まで,原研・サイクル機構の二法人統合後の新法人が実施する基礎基盤研究に対する要望書,大強度陽子加速器計画に関する要望書を関連機関に提出しました.大強度陽子加速器計画に関しては,炉物理部会,放射線工学部会,加速器・ビーム工学部会との合同という形で要望書を作成するなど,学会内での連携も積極的に行なっています.

今後の活動

国内協力に関しては,炉物理部会との共同活動としての学会で合同パネルディスカッションの開催をはじめ,原子力学会内の各部会のみならず様々な協力・連携を検討しています.セミナー等に関しては,放射線工学部会,加速器・ビーム科学部会等との共同で夏期セミナー開催の協議を予定しており,現在,平成16年度開催に向けた準備を始めています.日韓交流の一貫として,夏期セミナーを韓国で開催する事も視野に入れています.年会・大会における日韓ジョイントセッションは,今後,年1回のペースで実施する予定で,次回は2004年に韓国で開催予定です.

21世紀を迎えた今日においても,核データにはなお強い要求があり,信頼度の高いデータへの要請は留まることはないと思われます.社会のニーズに応える核データとは何か,各実験者・研究者はどの部分について寄与できるか,をよく検討した上で,部会編集・広報活動としての情報交換の場を提供しようと考えています.このため,部会の部会のホームページを核データ活動の紹介と併せて,ユーザからの要望,実験者からの実験試料への期待/希望,理論グループとの意見交換等が行える窓口として活用していくことを検討しています.