NDDニュースレター 2007年 第10号 (通巻第87号)

2007/10/3

Table of Contents

会合の報告

2007年秋の大会セッション報告

(JAEA) 金政浩,柴田恵一,千葉敏,原田秀郎

(東工大) 片渕竜也,(武蔵工大) 吉田正

原子核物理,核データ,核反応工学では20件の研究発表があり,およそ35名前 後の聴講者があった.1件の発表当りの質疑応答は平均約3件であった.発表概 要を以下に報告する.

高エネルギー核反応のセッションでは,核内カスケード模型ベースの核反応 コードにノックアウトプロセスや確率量子化法を導入して計算精度の向上を目 指す研究の他,がん治療の分野で重要な炭素に対する高エネルギー炭素ビーム 入射高エネルギー陽子生成断面積や炭素に対する中性子入射軽イオン生成断面 積の測定研究が報告された.また,原子炉材料の照射損傷で重要な核子入射に よるd,αなどのクラスター生成断面積の計算精度が,国枝ポテンシャルによ り改善すると報告された.

核分裂と崩壊熱のセッションでは,二中心殻模型により核分裂生成物の分布を 計算した結果が報告され,β安定線から離れた核種では片倉の系統式と非常に 異なる分布を示した.FPの崩壊熱については,TAGSデータと理論計算との詳細 比較が進められる一方,ガンマ線成分にに残った不一致は欧州グループのTAGS データでほぼ解消された.また,アクチニド崩壊熱について誤差ファイルを整 備する取り組みが報告されたが,進展が期待される.

核データ評価と積分テストのセッションでは,半導体やコンクリートの主成分 であるSi同位体,超伝導コイルの材料の主成分であるSn同位体,原子力開発で 最も枢要なウラン同位体について,各種断面積が系統的に計算され最新の実験 データ及び評価値との比較検討が行われた.今後の誤差評価に期待がかかる. また,MAの高速中性子について積分データによるJENDL Actinide fileの検証 結果が報告された.積分データと微分データ間の相互作用の進展が楽しみであ る.

中性子捕獲反応断面積のセッションでは,FPやMAの中性子捕獲断面積測定が報 告された.京大ライナックでは,Pd-106について2.4 keVまで共鳴を確認し, Np-237については15 eVまでの共鳴について共鳴解析が行われ,熱中性子を除 きJENDL-3.3と平均で1-2%の一致となった.東工大では,Sn-120について15- 550 keVの測定が行われるとともに,Sn-126の予測を目的として理論計算との 比較が行われた.また,弥生炉を用いて,高速中性子捕獲断面積を放射化法で 測定する試みが紹介された.

核データ測定技術のセッションでは,核準位を構築する手法を高度化するため 多重即発γ線同時計測の手法がCl-36に適用された.また,全立体角Geスペク トロメータをカロリーメータとして用いることにより未知の中性子共鳴の同定 に適用可能と報告された.レーザ逆コンプトン光を用いた測定研究では,Se- 79の中性子捕獲断面積研究のため逆反応であるSe同位体の(γ,n)断面積を系統 的に測定する研究が開始されるとともに,レーザ逆コンプトン光をRe-185の放 射化に利用しRe-184の半減期を測定する研究が報告された.

2007年秋の大会核データ部会総会議事録

第16回核データ部会総会 日時: 2007年9月27日(木) 12:00 - 13:00 場所: 西日本総合展示場AIM-FG会議室 (M会場)

部会等運営委員会担当の深堀委員より,企画セッション時間枠の検討,2008年 春の年会に関するスケジュールが報告された.

核データ研究会担当の深堀委員より,2007年度の核データ研究会の実施要領お よび研究会プログラム案が報告された.

シグマ委員会担当の奥村委員の代理で,深堀委員より,本総会に引き続き行わ れるシグマ特別専門委員会(特別)の予告があった.井頭先生より,本委員会は 公開のものであり核データに関心のある会員の皆様には積極的に参加してもら いたいとの補足説明があった.

学術交流担当の丸山副部会長より,2007年5月に韓国済州島で開催された韓国 原子力学会における炉物理・核データの日韓合同セッションの報告が行われ た.次に,日韓合同セッションに関する覚え書きについて,調印が行われたこ とが報告された.

学生・若手担当の村田委員より,Los Alamos国立研究所への派遣事業について 報告された.1名の推薦者に対し,1名を選定する状況であり積極的な応募依頼 があった.

編集担当の原田委員より,ウェブサイト更新及びニュースレター発行の報告が 行われるとともに,会議報告などの情報提供の依頼があった.

平成19年度の会計中間報告(8月末時点)が池田会計担当委員の代理で,深堀委員 よりなされた.これに関して,繰越金を有効利用してはどうかとのコメントが 出されたが,2007年核データ研究会に補助を出す予定が報告された.

深堀委員より,学会編集委員からの報告として,論文審査システムの改訂作業 が11月より開始され審査に要する時間のさらなる短縮が期待できることが報告 された.現在,印刷の順番待ちで時間がかかっているとの補足説明があった.

丸山副部会長より,2007年度核データ部会賞の選考結果報告があり,吉田部会 長より核データ部会学術賞(国枝賢氏(JAEA)及び核データ部会奨励賞(近藤恵太 郎氏(阪大))の表彰が行われた.

部会員の最近の成果

H. Ohgaki, S. Koda, Y. Iwasaki, Y. Takabayashi, K. Yoshida,
T. Tomimasu, Y. Uozumi (uozumi@nucl.kyushu-u.ac.jp),
K. Ishibashi
    Study on Energy Variable Laser-Compton Gamma-ray with a Fixed
    Energy Electron Beam
    J. Nucl. Sci. Technol., 44, 698 - 702 (2007).

N. Otuka (ohtsuka.naohiko@jaea.go.jp), T. Nakagawa, K. Shibata
    Uranium-235 Neutron Capture Cross Section at keV Energies
    J. Nucl. Sci. Technol., 44, 815 - 818 (2007).

S. Kunieda (kunieda.satoshi@jaea.go.jp), S. Chiba, K. Shibata,
A. Ichihara, E. S. Sukhovitskii
    Coupled-channels Optical Model Analyses of Nucleon-induced
    Reactions for Medium and Heavy Nuclei in the Energy Region from
    1 keV to 200 MeV
    J. Nucl. Sci. Technol., 44, 838 - 852 (2007).

T. Myo, K. Kato (kato@nucl.sci.hokudai.ac.jp), H. Toki, K. Ikeda
    Roles of tensor and pairing correlations on halo formation in 11Li
    Phys. Rev., C76, 024305 (8 pages) (2007).

K. Y. Hara, H. Harada (harada.hideo@jaea.go.jp), F. Kitatani, S. Goko,
S. Hohara, T. Kaihori, A. Makinaga, H. Utsunomiya, H. Toyokawa,
K. Yamada
    Measurements of the 152Sm(γ,n) Cross Section with Laser-Compton
    Scattering γ Rays and the Photon Difference Method
    J. Nucl. Sci. Technol., 44, 938 - 945 (2007).

核データ部会からのお知らせ

● 現在の部会員数:160名 (2007/05/25 現在)

●「部会員の最近の成果」に載せる情報を までお知らせ下さい.