NDDニュースレター 2007年 第9号 (通巻第86号)

2007/7/10

Table of Contents

会合の案内

核データ・炉物理日韓合同セッション報告

(武蔵工大) 吉田正

1. これまでの経緯 平成12年(2000年)に核データ部会が発足した当時から,日韓の核データ,炉物 理両分野の相互交流の必要性が議論されていた.日本原子力学会(AESJ)と韓国 原子力学会(KNS)それぞれの大会に,両分野の専門家が相互乗り入れし,英語 をworking languageとした合同セッションを持つというのが具体的方策であっ た.いま手元に「2001春季学術発表会要約集(韓国原子力学会)」と言う冊子 (といっても全552ページと厚い)がある.これによると,第一回の合同セッ ションは韓国済州島の済州大学校で5月24日13:00-17:00に開催され,核データ と炉物理,それに両者の中間領域もあわせて12件の発表が行われている.その 後,この企画は両部会の歴代部会長,運営委員各位の努力によって継続し,相 互交流の実をあげて来た.しかし最近は,公募論文がセッションを組むに十分 な数だけなかなか集まらず,毎年の開催はすこしきついのではないかとの意見 が,両部会の関係者から聞かれるようになった.また,韓国側でも同じような 感触を持っているとの伝聞もあった.そこで,昨年11月,「第2回COE-INES国 際シンポジウム」を機に来日中だった,韓国側の責任者でKNSのReactor Physics and Computational Science DivisionのChairpersonであるNam Zin Cho氏(KAIST)と,核データ,炉物理両部会長および運営委員等関係者が横浜で 会合を持ち,合同セッションの運営法に関する合意に達した.合意の要点は以 下の通りである.

● 原子力研究かかわる技術情報の交換と両国の人的交流の促進を目的とする. ● 合同セッションは2年に1回,5月のKNS大会と3月のAESJ年会の枠内で交互に 開催する. ● 論文主題は両国における最新の研究成果あるいは研究動向に関するものと する. ● 参加者の相手国学会参加費は免除される.

等である.最後の項目については,日本側は両部会が負担する等,柔軟な運用 が必要となろう.

2. 協定書 問題となるのは,隔年開催となると,両部会とも部会長,運営委員とも完全に 入れ替わっており,合同セッションの運営方針や経験を継承することが困難に なることである.それどころか,開催それ自体が「伝承」としてしか伝わらな くなり,いつの間にか消えて行ってしまう可能性も大である.そこで,横浜会 合の合意内容を文書として残すこととした.一方,KNS側では,早くも昨年12 月の時点でReactor Physics and Computational Science Divisionの Chairpersonが,Nam Zin Cho氏からJonghwa Chang氏に交代した.同氏はKAERI の核データグループのヘッドとして長いから,旧知の方も多いだろう.但し, 現在はNuclear Hydrogen Development and Demonstrationのプロジェクトマ ネージャーに栄転(韓国の知人はそう言っていた)している.炉物理部会庶務幹 事である東工大の小原徹氏が中心となり英文の合意文書が起草され,最終的に 両部会運営委員会と韓国側の合意をへて協定書が完成した.

3. 本年度の合同セッション 協定書での合意内容に沿って,今年5月11日,KNSの春の大会の二日目午前に, 日韓合同セッション“KNS/AESJ JOINT Session on Reactor Physics and Nuclear Data”が開催された.会場は奇しくも冒頭に記した第一回目と同じ済 州島済州市であったが,今回は大学ではなく,近年開設したばかりのLamada Plazaと言う豪華ホテルであった.空港から済州市の繁華街に入るあたりに有 り,アクセスも良い.核データ部会からはJNESの山本徹氏と吉田が参加した が,核データ,炉物理の別なく全発表題目と著者を末尾に記しておく.核デー タに限っても,第一回(2001年)以来の韓国側の研究の深化には著しいものを感 じた.また,日本を飛び越えてのアメリカとの密接な協調にも留意したい. Young Sik Cho氏,Young Ouk Lee氏らの末尾リスト最初の論文を始め,今回話 はなかったが,ENDF/B-VIIのためのFP断面積の評価(Y.Han, Y.O. Lee)もあ る.自国製の評価済み核データライブラリーはあえて持たないという韓国のポ リシーがあるなら,なおさらのこと,なんとか韓国をJENDL圏内に引き止め, 共存共栄の道があるのではないかと考える.(が,この言い方,なにやら大東 亜共栄圏みたいで,心に引っかかるものもある).そんな観点からも,この日 韓合同セッションは大切にして行くべきである.

4. 閑話 今回韓国へは,学校の一限目を終えてから釜山経由でそのまま直行した.近い とはいえやはり外国.会場のLamada Plazaについたのは7時過ぎ.KNSのレセプ ション会場では,もう後片付けが終わりかかっていた.諦めて1人で夕食を済 ませ部屋に戻ると,小原さんからの,下のカラオケで皆と飲んでいますから, とのメモが入っていた.行くとカラオケどころではなく話がおおいに盛り上 がっていた.2週間前にニース(ND2007)で別れたばかりのChangさん,小原 さん,京大炉の宇根崎さん,JNESの山本さん達を中心に,ガス炉絡みで General Atomicsから韓国に来ている米国のエンジニアや,KAERIに滞在中のア ルメニア人など多士済々で,あっという間に11時をすぎてしまった.翌朝の発 表が心配だったが,こういうときはまあ何とかなるものである.Changさんは 核データ国際会議ND2010のGyeongju(慶州)開催になみなみならぬ自信のほどを 見せていた.

最後に4月末から5月半ばにニースと済州島で抜けた学校絡みの穴を取り繕うの に忙しく,本件のご報告が遅れたことをお詫び致します. Y.S.Cho, Y.O.Lee, M.Herman, S.F.Mughabghab, and P.Oblozinsky: “Development of a Module for the Evaluation of the Resonance Region”

T.Yoshida and J. Katakura: “Recent Nuclear-Data Activities in Japan”

S.G.Hong, K.S.Kim, JS.Song and N.Z.Cho: “A Rapidly Convergent Generalized Rebalance Method for Discrete Ordinates Transport Equations”

T.Yamamoto: Analysis of LWR Full MOX Core Physics Experiments with Major Nuclear Data Libraries”

N.Z.Cho H. Yu: A New Approach to Effective Thermal Conductivity for VHTR Fuels”

T.Takeda, K.Kiriyama and K.Yamaji: “Improvement of SPH Factor Calculation in Fuel Lattice”

Y.Kim: “Application of the RPT Method to Diluted Kernal TRISO Fuel”

H.Unesaki, T.Takeda, A.Yamamoto, M.Mori and M.Yamasaki: “Current Status of R&D on Erbia-Bearing Super High Burnup Fuel”

K.H.Lee,J.W.Choi,H.P.Kim,Y.J.Yu and D.G.Hwang: “HANARO Cold Neutron Source design”

T.Obara and H.Takezawa: “Neutronic Analysis of Pulse Core and Laser Module Couples System for Nuclear Pumped Laser”

部会員の最近の成果

S. Nishinohara, S. Chiba (chiba.satoshi@jaea.go.jp), S. Oryu
    The Coulomb scattering in momentum space for few-body systems
    Nucl. Phys., A790, 277 - 281 (2007).

核データ部会からのお知らせ

● 現在の部会員数:160名 (2007/05/25 現在)

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