NDDニュースレター 2006年 第3号 (通巻第74号)

2006/7/20

Table of Contents

会合の報告

Tenth Symposium on Neutron Dosimetry (NEUDOS10)

- Progress in dosimetry of neutrons and light nuclei -

(原子力機構)佐藤大樹

2006年6月12-16日に,スエーデンのウプサラ大学にてNEUDOS10が開催された。 NEUDOSは,1972年の第1回以降,3-4年毎に開催され,今年が第10回目となる。 本年度の会議では,欧州線量計測グループ(EURADOS)が開催を後援し,欧州を 中心とする26ヵ国から177名の参加があった。発表総数は口頭発表が41件(5件 は招待講演),ポスター発表が124件であった。

今回のNEUDOS10で印象的だったのは,原子核物理に関するセッションが新たに 設けられたことだ。これはホストを務めたウプサラ大学の意向であろうか。こ のセッションの招待講演では,Dr.Koning (NRG)が最新の原子核反応コード TALYSについて紹介した。また,実験に関しても多くの興味深い報告が行わ れ,特にウプサラ大学グループによる中性子測定用反跳陽子テレスコープ検出 器SCANDALを用いた96MeV中性子の弾性散乱断面積の測定や,荷電粒子測定用カ ウンターテレスコープ検出器MEDLEYを用いた中性子入射反応における軽荷電粒 子生成二重微分断面積の測定は,大きな関心を集めた。

会議中の催しとして,ウプサラ大学が運営するTSL (The Svedberg Laboratory) の見学も行われた。TSLは,物理学,生命科学及び放射線治療のための加速器 複合施設である。加速器としてはシンクロサイクロトロンが採用されており, 陽子の場合20MeVから180MeVまでのエネルギー範囲で加速できる。中性子を用 いた物理実験のために7Li(p, n)反応を利用した準単色中性子源の開発も行わ れており,現在整備済みの中性子エネルギーは,11,22,47,94,143及び 174MeVである。上記のSCANDALやMEDLEYを用いた先進的な実験もこの準単色中 性子ビームを用いて行われた。ユーザーの使える実験エリアも広く(奥行き15m 程度),様々な体系での測定に対応可能と考えられる。

会議の最終ディスカッションでは,EURADOSの議長であるDr.Schumacher (PTB) から,中性子線量計測に関して,現状及び今後の論点が紹介された。特に 数100MeV程度までの中間エネルギー領域について,ビーム科学及び放射線防護 に関する研究開発の重要性が強調された。このような背景から,NEUDOS11は, エネルギーが200MeVまでの準単色中性子場を整備している南アフリカの iThembaで2009年10月に開催される。

今回のNEUDOS10では会議場の外でも,ウプサラ城での晩餐会や大聖堂での合唱 をはじめ,沈まない太陽,会議指定レストランでの昼食時に火災警報が鳴り避 難,サッカーワールドカップでのスエーデン勝利により街中お祭り騒ぎと,多 くの思い出深い経験をすることができた。

部会員の最近の成果

西川正史、深田智、渡辺幸信 (watanabe@aees.kyushu-u.ac.jp)
    水素—将来のエネルギーを目指して
    養賢堂 ISBN: 4-8425-0381-5 (2006).
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4842503815/249-1623875-0455519

M. Segawa, Y. Temma, Y. Nagai, T. Masaki, T. Shima, T. Ohta,
A. Nakayoshi, J. Nishiyama, M. Igashira (iga@nr.titech.ac.jp)
    A detection system for (n,n') reaction studies of astrophysical
    interest
    Nucl. Instrum. Meth., A, (2006).

T. Ariyoshi, K. Maehata, K. Ishibashi
(kisibasi@kune2a.nucl.kyushu-u.ac.jp), N. Wada, Y. Sakabe,
T. Umeno
    Development of Dielectric Microcalorimeter
    J. Nucl. Sci. Technol., 43, 611 - 616 (2006).

これらの論文入手については,直接著者に連絡してください.

核データ部会からのお知らせ

日韓サマースクール参加費補助

2006年8月6日から11日まで,韓国Daejonにおいて第2回日韓原子力学会学生・ 若手サマースクールが開催されます.核データ部会では,サマースクール参 加者を対象として,参加費用の一部補助を行います.補助を希望される方は 奮って応募して下さい.詳しくは, http://wwwndc.tokai-sc.jaea.go.jp/~ndd/summerschool_aid.html を御覧下さい.締切は2006年7月24日(月)です.

● 現在の部会員数:154名 (2006/04/26 現在)

●「部会員の最近の成果」に載せる情報を までお知らせ下さい.