NDDニュースレター 2006年 第1号 (通巻第72号)

2006/4/4

Table of Contents

会合の報告

2006年春の年会セッション報告

(JAEA)原田秀郎

原子核物理、核データ、核反応工学のセッションで、MAの核データ測定、FPの 核データ測定、核データの評価と解析、核反応のモデル計算、粒子生成反応の 測定に関連する19件の発表[K26〜K44]があった。

MAの核データ測定研究が着実に進んでいる。核変換研究上重要な241Am、243Am の熱中性子捕獲断面積が測定され、評価値との比較が議論された。また、核分 裂断面積の測定エネルギー範囲を拡張する技術や全立体角Geスペクトロメータ の開発など測定技術の進捗も報告された。

FPの核データ測定研究では、逆反応を用いた新しい中性子捕獲断面積測定手法 が151Sm,90Zrに適用される他、keV中性子に対し118Snの中性子捕獲断面積が測 定された。今後、核反応モデル計算を取り入れた解析に期待がかかる。

核データの評価では、最新の実験データを反映したFP核種の共鳴パラメータの 評価が進むとともに非共鳴領域を評価するための手法開発が進んでいる。ま た、18Oの中性子全断面積の詳細な解析が報告された。

核反応のモデル計算では、軽核の核反応、数MeV以上のエネルギー領域での中 性子捕獲反応、中高エネルギー核反応での放出粒子、および252Cfの核分裂中 性子スペクトルを計算する試みが報告された。今後の予測精度向上に期待がか かる。

粒子生成反応の測定では、線量評価や半導体メモリエラー評価で重要となる核 反応で放出される荷電粒子の生成微分断面積が精度よく測定されるとともに遮 蔽設計の高度化を目的にnatBe(p,xn)反応の2重微分断面積が測定された。ま た、中高エネルギー入射による重陽子生成断面積及び中性子生成2重微分断面 積の測定が行われた。詳細な解析が今後期待される。

2006年春の年会核データ部会総会議事録

第13回核データ部会総会 日時: 2006年3月26日(日) 12:00 - 13:00 場所: 日本原子力研究開発機構大洗開発センター水流動試験室 (K会場)

●報告事項 馬場部会長の挨拶の後,企画担当の井頭委員より,企画セッション,合同部会 に関する報告がなされた.2005年度下半期は2006年春の年会の部会セッション と放射線工学部会との合同セッションのみであった.

編集担当の深堀委員より,NDD Newsletterの発行状況の報告がなされた.学会 編集委員会からの報告として,論文投稿料改定され,基本料金25,000円,10 ページ以下では1万円/ページ,それ以上では1ページ2万円となること,第2分 野の大崎敏郎氏 (東工大) 退任のため4月より執行信寛氏 (九大) に交代す る,深堀委員も後1年編集委員に留任する,第2分野では5名が任期満了で退任 するため,後任の自薦他薦の要請があった.

田原副部会長より,LANL核データ研究夏期国際交流事業の報告があった.部会 長,副部会長,企画担当委員で構成される選考委員会で審査の結果2005年度 は,九大の学生1名が採用され,3ヶ月間LANL理論部門原子核物理グループで研 究を行った.

会計担当の奥村委員より,2005年度の収支決算報告が行われた.日韓夏期セミ ナー費用を学会が全額負担してくれるなど,国際協力事業費がほとんど掛らな かったため,77,939円の黒字があり,繰越金の累計は652,749円となった.こ の収支決算報告は,会計監査担当の河出委員より正しいことが確認されたこと が報告された.また,2006年度から全部会とも特別予算枠が廃止(経常予算に 一本化)され,従来の特別予算を含めた繰越金が100万円以上になる場合には使 用計画書を学会に提出する必要があるとの報告があった.

●審議事項 企画担当の井頭委員より,旧企画委員会の業務の大半を引き継いだ部会等運営 委員会の2006年6月からの委員に深堀委員を選出することが提案され,承認さ れた.

会計担当の奥村委員より2006年度予算案の説明がなされた.学会からの配布金 収入と管理費支出が,部会員人数比例で見直されることになり,配布金収入は 微増,管理費支出は前年度までの約半額となり,核データ部会には有利となっ ている.2006年度は夏期セミナーと合同セッションが韓国で開催予定であるた め,派遣費補助に例年より大きい73,000円を計上しており,17,000円の支出超 過となっている.この予算案はそのまま了承された.また,ここ数年で繰越金 は大幅に増大しているが,学会からの配布金以外の定常収入はなく,そのほ とんどを寄付金に頼っている現状が報告された.

馬場部会長と次期編集担当の原田委員より学会誌の部会企画について提案が あった.河出委員より,核データの魅力をアピールするような記事を部会企画 として検討してはどうかとの提言があった.対象読者や内容によって,単発ま たは連載記事とするか,学会誌あるいは和文論文誌に投稿するかを決める,内 容は多くの人からの意見を聞いて編集担当委員が集約することとなった.ま た,依頼原稿は投稿料が必要ない,経済的理由で原稿はカラーより白黒の方が 好ましいとの指摘があった.

田原副部会長より,LANLから2006年度も夏季研修生の受入可能性が高いとの連 絡があった旨報告があった.昨年の応募者が一人であったことを踏まえ,実施 にあたっては, (1) 情報伝達を前向きに行い応募者の拡大を図る (2) 原子核物理学を含め,ENDF/B-VII関連+炉物理分野などの可能性を検討する (3) LANLと上記二点を早めに相談しながら進める 等の点を次期運営委員会が対応することとなった.

石川委員と深堀委員より炉物理・核データ合同会合アクションのための準備委 員会の発足が発案された.2003年秋の大会から始まった核データ部会と炉物理 部会の合同企画「核データ・炉物理研究と社会との係わり」は2005年12月に一 旦終了し,2005年秋の大会で次の取り組みを行うことが決定した.テーマの案 は, (1) 炉物理コードと核データライブラリの組み合わせ調査 (2) 核データ・炉物理における不確かさの定量評価 (3) Social Responsibilityと核データ・炉物理研究をテーマ の3点である.具体的な取り組み方法として, (1) 核データ部会と炉物理部会それぞれの部会総会で了承を得る(炉物理部会 は承認済) (2) 準備委員会委員を両部会のメーリングリストを通じて募集する (3) 準備委員会を開催し,取り組み内容や方法を検討し学会の研究専門委員会 の設置提案書としてまとめる (4) 期間は2年とし,活動終了時に報告書を発行する, という案が提出され,了承された.

田原副部会長より,部会賞について提案があった.2005年度は6名からなる部 会賞選考委員会と2名の専門家が学会賞に準じた基準で審査し,國枝賢氏が奨 励賞を授賞した.昨年導入時の部会賞内規では,9月1日から9月31日までの期 間に候補者の推薦を求める事になっていたが,秋の大会での表彰に間に合わせ るため,候補者推薦期間を7月1日から7月31日間での期間に変更することが承 認された.また,推薦期間の1ヶ月程度前から部会メーリングリストやホーム ページで告知することとした.次に現在の内規では,6名の選考委員会と受賞 候補者1名につき2名の担当委員を選任し,さらに5名の選考者 (選考委員や識 者) を選任することになっているが,正当性を確保しつつ機動的な運用を図る ためにシステム検討の必要性が指摘された.この件については次期運営委員で 検討することとなった.

馬場部会長と深堀委員より,日韓サマースクールと合同セッションについての 現状報告があった.合同セッションについては,場所は未定だが10月26日と27 日に開催される韓国原子力学会(KNS)の会議内で設定する.学生・若手研究者 交流事業運営連絡会で,核データ,炉物理,放射線工学,加速器・ビーム科学 部会の4部会と熱流動,原子力発電,計算科学技術の3部会の2件のサマース クールが計画されており,2件とも原子力学会主催となることが決定された. 核データ部会など4部会のサマースクールは日程は未定(8月上旬?)だが韓国テ ジョンのKAERI研修センターで行うことが決定している.7月までに企画書を提 出する予定である.今年は学会からの補助を受けられるかは未定であることが 報告された.

編集担当の深堀委員より,新しい核データ研究会検討について提案があった. 日本原子力研究開発機構発足に伴い,2006年度以降は従来の核データセンター が主体となった核データ研究会を開催できなくなったため,新しい核データ研 究会を開催することを検討することとなった.当初は核データ部会を主体と し,軌道に乗った段階で炉物理,放射線工学,加速器・ビーム科学部会の協力 を得ることを考慮する,依頼講演の講師への旅費を4部会から少しずつ融通す る,場所は原子力機構以外の場所も考慮する,核データチュートリアルに合わ せて「夏の学校」形式も検討することとなった.アクションプランとして, (1) 他部会との連携をふまえた準備・検討小委員会を設置する (2) 他部会の了承が得られれば,実行委員会を組織する (3) 実行委員会で開催方法,時期,場所,プログラム等を検討する が挙げられ,(1)の準備・検討小委員会設置が承認された.新しい研究会にお いても原子力機構から発行できるという意見があった.

深堀委員より,核データ測定に関する検討小グループの提案があった.理研で 開催されたRIBFワークショップで,理研の施設が工学的測定にも門戸を開いて きており,何らかのお墨付きがあればPACを通さずに核データ測定に優先的に マシンタイムを割り当てることも可能で,良い研究に対しては共同で予算獲得 に動いても良い,という状況になりつつある.そこで,オールジャパンの体制 で人的・経済的資源を効率的に配置する小委員会のようなものを核データ部会 単独あるいは,炉物理,放射線工学,加速器・ビーム科学部会と共同で設置を 検討する.この小委員会では, (1) 国内施設の横断的利用 (2) 核データ測定のニーズ集約 (3) 各タスクに対する測定グループの組織 (4) 具体的計画や予算確保 を検討する.この小委員会設置が承認された.人選は深堀委員を中心として行 い,詳細は次期運営委員が検討することとした.

●その他 馬場部会長より,次期部会運営委員と次期代議員の選挙結果が報告され,以下 の構成となった.また,次期運営委員の挨拶があった. 部会長: 吉田正 (武蔵工大) 副部会長: 丸山博見 (GNF-J) 企画担当: 深堀智生 (JAEA),奥村啓介 (JAEA),渡辺幸信 (九大)

村田勲 (阪大),岩崎智彦 (東北大)

編集担当: 原田秀郎 (JAEA),加藤幾芳 (北大),執行信寛 (九大) 宇根崎博信 (京大炉) 会計担当: 池田一三 (三菱重工) 会計監査: 片倉純一 (JAEA) 庶務担当: 安藤良平 (東芝) 代議員: 吉田部会長,丸山副部会長

部会員の最近の成果

S. Oryu, S. Nishinohara, K. Sonoda, N. Shiiki, Y. Togawa, S. Chiba
(chiba.satoshi@jaea.go.jp)
    A novel three-charged-particle Faddeev-type equation in momentum
	space
    AIP Conference Proceedings Vol.768, 433 - 435 (2005).

K. Sumiyoshi, S. Yamada, H. Suzuki, H. Shen, S. Chiba
(chiba.satoshi@jaea.go.jp), H. Toki,
    Postbounce Evolution of Core-collapse Supernovae: Long-term
    Effects of the Equation of State
    Astrophys. J. 629, 922 - 932 (2005).

H. Nakamura, T. Fukahori (fukahori.tokio@jaea.go.jp)
    Unified model of nuclear mass and level density formulas
    Phys. Rev., C72, 064329 (10 pages) (2005).

T. Nakagawa (nakagawa.tsuneo@jaea.go.jp), S. Chiba, T. Hayakawa,
T. Kajino
    Maxwellian-averaged neutron-induced reaction cross sections and
    astrophysical reaction rates for kT = 1 keV to 1 MeV calculated
    from microscopic neutron cross section library JENDL-3.3
    Atomic Data and Nuclear Data Tables, 91, 77 - 186 (2005).

T. Kawano (kawano@lanl.gov), S. Chiba, H. Koura
    Phenomenological Nuclear Level Densities using the KTUY05 Nuclear
    Mass Formula for Applications Off-Stability
    J. Nucl. Sci. Technol., 43 (1), 1 (2006).

Y. Tahara (tahara@edc.atom.hq.mhi.co.jp), Y. Oda, T. Shiraki,
T. Tsutsui, H. Yokobori, T. Yonai, M. Baba
    Engineering Design of a Spallation Reaction-Based Neutron Generator
    for Boron Neutron Capture Therapy
    J. Nucl. Sci. Technol., 43 (1), 9 (2006).

K. Suyama (suyama.kenya@jaea.go.jp), H. Mochizuki
    Corrections to the $^{148}$Nd method of evaluation of burnup for
    the PIE samples from Mihama-3 and Genkai-1 reactors
    Ann. Nucl. Ene., 33 (4), 335 - 342 (2006).

これらの論文入手については,直接著者に連絡してください.

核データ部会からのお知らせ

● 現在の部会員数:150名 (2005/04/22 現在)

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