NDDニュースレター 2005年 第4号 (通巻第64号)

2005/4/12

Table of Contents

会合の報告

2005年春の年会核データ部会総会議事録

第11回核データ部会総会 日時:2005年3月31日(木)12:00-13:00 場所:東海大学湘南校舎16号館16-307教室

●開会挨拶(馬場部会長) 本部会関連でサイクル機構原田グループが論文賞を,京大八島氏が奨励賞を受 賞された.日頃の研鑽の結果で喜ばしいが,本年会での発表が13件で少ないの は問題であろう.ぜひ発表をお願いしたい.以上等の挨拶があった.

●報告事項 企画担当報告が井頭委員よりなされた.企画セッションは本年会ではない.秋 の大会では,核データ,炉物理,加速器・ビーム及び放射線工学の4部会合同 で「J-PARCにおける核変換施設の実現に向けて」に関するセッションを設ける 予定であるので,ご協力をお願いしたい.

編集担当の深堀委員よりNDD News Letterの発行の報告及び記事提供の依頼が あった.

2004年10月28,29日の韓国原子力学会での日韓合同セッションに関する報告が 田原副部会長よりなされた.核データ・炉物理合同セッションに日韓各4件,加 速器/ビーム科学・核データ合同セッションでは各5件の発表があった.本合同 セッションを今後も継続したい(次回は秋の大会の八戸工業大学にて).若手の 参加を促し,件数を減らして発表時間を伸ばすことも考える.前回,韓国原子 力学会の日程が定まらず,連絡が遅れたため,参加者が少なかったので,次回 は情報をタイムリーに提供したい.

昨年,核データ研究会の前日に開催された核データチュートリアルについて田 原副部会長より報告があった.講演は,「崩壊データの評価とその応用」(原 研,片倉氏),「核反応理論入門」(九大,渡辺先生)について行われ,昨年と ほぼ同様の41名の参加があった.次回は,今回つみ残したテーマについて行い たい.

H16年度の決算報告が,奥村委員よりなされた.三菱重工でのセミナー残金及 び学会賞受賞者からの寄付で予算増であり,主な支出は国際協力事業(3人分の 韓国への派遣補助)への6万円であった.会計監査の河出先生より寄付金で息を ついている状況では良くないので,何らかの方策を考えるべきであろうとの意 見があった.

●審議事項 部会賞について田原副部会長より,核データ部会賞原案(学術賞(1名),奨励賞 (40歳以下,2名)等)の説明があり,了承されれば来期から運用したいと提案さ れた.対象となる会合の部分に核データ部会主催でなくても考慮できるように 「本会が認める国際会議」を追加,対象を個人からグループに変更,選考委員 の減員,提出書類の簡略化,賞を出す時期は秋の大会等の議論が行われた.こ れらを検討し,修正の上,メールで承認を受けたい旨,馬場部会長より提案さ れた.

日韓サマースクール・合同セッションの計画について馬場部会長より以下のよ うに提案があった.合同セッションは,炉物理部会等との合同で秋に八戸工業 大学で行う.サマースクールは,核データ,炉物理,加速器・ビーム及び放射 線工学の4部会合同で,7月23-27日(27日はJ-PARC見学会)に東海村リコッティ (サイクル機構施設)で開催したい.詳細は,メール等で案内する.また,サ マースクールに関しては,国際協力委員会との協力を検討している旨,報告さ れた.

H17年度予算案について,奥村委員より提案があった.学会理事会での承認は 済んでいる.予算変更は可能だが昨年より手続き(費目追加)が面倒になった. これら提案は承認された.

J-PARCに対する原子力委員会への要望に関する報告を田原副部会長が行った. 今後,4部会合同で,ユーザコミュニティーを広げ,他分野との連携を促進 し,長計へ入れられるように活動する予定である.本件に関しメールにて御意 見を御願いするとともに,協力をお願いしたい.

学会フェローの部会推薦(1名以内の推薦が可能)に関して,馬場部会長より, 小林先生(京大)を推薦し,学会からは承認済みであることが報告された.

2005年春の年会セッション報告

(原研)深堀智生

原子核物理,核データ,核反応工学セッション(L37〜L49)で,チャンネル結合 法及び核分裂に関する理論(L37〜L40),2次粒子スペクトル測定(L41〜L44), 中性子捕獲反応(L45〜L49)に関連する12件の発表があった(プログラムでは13 件だったが,1件の発表取り消しがあった).

チャンネル結合法及び核分裂に関する理論では,「軟回転体模型+チャンネル 結合法による遇遇核の散乱断面積の系統的計算(原研,L37)」の発表で,C-12 〜U-238までに適応したポテンシャルを求め,軟回転体模型とチャンネル結合 法で弾性及び非弾性散乱に関する計算を行った.グローバルポテンシャル(A= 22-122)も検討した.「核データ計算プログラムの開発(原研,L38)」では, C++言語でコーディングしたチャンネル結合法と光学模型部分(CCOM),DWBA部 分(CCDM),前平衡過程部分(CCPM),統計模型部分(核分裂を含む,CCSM)からな る国産核データ評価用コードが紹介された.「Pu-239の共鳴領域における遅発 中性子収率の微細構造(近大,L39)」では,マルチモード核分裂とMadland-Nix モデルによる遅発中性子計算を個別の共鳴ごとの解析に適用した.JENDL-3.3 より平均で6%程度小さくなると報告された.「選択チャンネル核分裂モデル に基づくチャンネル依存の核分裂ポテンシャルの計算(サイクル機構,L40)」 では,核分裂片を固定(核分裂経路が決まっている)した核分裂計算に関して報 告された.核分裂障壁を用いたポテンシャル計算に進展があった.

2次粒子スペクトル測定では,線量評価,半導体エラー計算,加速器中性子 源,核融合炉用材料損傷研究のためのスペクトル測定に関する報告があった. 「数10MeV陽子入射反応に対する2次重荷電粒子生成断面積の測定(東北大, L41)」で,ブラッグカーブスペクトロメータ(BCS)及びエネルギーTOF法(E- TOF)を用いたHe-4,Li-7のスペクトル測定が,「数10MeV中性子による2次フラ グメントのスペクトル測定(KEK,L43)」で,東北大,原研の共同で中性子の直 接測定が行われた.「50MeV陽子入射による生成中性子二重微分断面積の測定 (東北大,L42)」では,以前のTTYデータとLA150の計算値との差異の解明のた め,50MeV陽子入射でC,Fe標的からの中性子DDXがTOF法で測定された.DDXは LA150が過小評価している.「ビーム状DT中性子を用いた荷電粒子放出二重微 分断面積の測定(阪大,L44)」では,荷電粒子DDX(Al-27(n,xα),Be-9 (n,xα),(n,xt),C-12(n,xα))をFNSのビーム状中性子源とSSDテレスコープで 測定した.ビーム状DT中性子のためSN比の向上が期待できた.運動学的解析に より粒子崩壊及びbreakup分岐比の導出が行われ,3体breakupの割合は大きく ないことがわかった.

中性子捕獲反応で,東工大の一連の中性子捕獲断面積及び捕獲γ線スペクトル 測定、γ線波高スペクトルのベースライン歪曲効果の報告があった.「Zr-90 及びZr-94のkeV中性子捕獲断面積及び捕獲γ線スペクトルの測定(東工大, L45)」は,LLFPのZr-93測定の前段階として,試料中の安定同位体の寄与を除 くため行われた.JENDL-3.3は,Zr-90について30 keV領域が過大,500 keV領 域は過小,Zr-94について30 keVの部分だけ過小,500 keV領域は過大評価で あった.550 keVの断面積,γ線スペクトルは初めての測定である.「Be-9の keV中性子非共鳴捕獲γ線スペクトルの測定(東工大,L46)」では,JENDL-3.3 とENDF/B-VIの評価の差を検証するため,今まで実験値の無い420keVでのデー タが得られた.2つの評価値の中間の実験結果となった.「Mg-24の46 keV及び 84 keV中性子共鳴捕獲γ線の測定(東工大,L47)」は,幅の広い中性子共鳴に よる捕獲を系統的に測定する一環で,Ge検出器を用い部分放射幅及び全放射幅 を測定した.「中性子捕獲実験におけるγ線波高スペクトルのベースライン歪 曲効果(サイクル機構,L49)」では,ガンマ線収率の補正係数計算のため,従 来使われていた固定波高バイアスに対する提言がなされた.TOF波高スペクト ルのベースラインがエネルギーにより違う(ベースライン歪曲効果)ため,系統 誤差の原因となる.これはγフラッシュまたはRFノイズが原因とされ,γフ ラッシュの影響を除くのに有効ではないか.

PCプロジェクタでの発表に慣れたようであり,スムーズに発表が進んだ.PC解 像度の関係で,1件適切に表示できなかった.特殊なディスプレー環境のPCを お持ちの方は注意の必要がある.

部会員の最近の成果

H. Tanaka, T. Ariyoshi, T. Uemura, H. Arima, K. Maehata,
Kenji Ishibashi (kisbasi@nucl.kyushu-u.ac.jp), Y. Matsumoto
    Study of the liquid-methane ionization chamber
    Nucl. Instrum. Meth., A539 (3), 613 - 621 (2005).

これらの論文入手については,直接著者に連絡してください.

核データ部会からのお知らせ

● 現在の部会員数:147名

●「部会員の最近の成果」に載せる情報をNDDeditors@ndc.tokai.jaeri.go.jp までお知らせ下さい.