NDDニュースレター 2005年 第2号 (通巻第63号)

2005/3/4

Table of Contents

会合の報告

Cross Section Evaluation Working Group (CSEWG)会合報告

(原研) 深堀智生

標記会合が2004年11月2-4日にNational Nuclear Data Center (Brookhaven National Laboratory, BNL)で開催された.以下,agendaにしたがって,アウ トラインを報告する.一部の報告に関し印刷された資料集が配布され,筆者が 保管しているので,必要であればご連絡いただきたい.

N. Larson (ORNL)の提案した「コンパクトな共分散行列の格納フォーマット」 に関してはサイクル機構のERRORJコードで処理可能であり,同じく「Reich- Moore拡張フォーマット」はNJOY及びPREPROで既に処理できるとされたため, 採用となった.A. Trkov (IAEA/NDS)が報告したWPECからのフォーマット提案 (「Reich-Moore公式を用いた非分離共鳴パラメータの記述」)に付いても採択 された.D. Brown (LLNL)の「核分裂後のβ崩壊からのγ線に関するフォーマ ットの追加」(資料有)に関しては,本当に必要なのかどうか疑問等の意見が 出されたが,マニュアルを準備すれば,NNDCでチェックすることになった. 新マニュアル(ENDF-102)は http://www.nndc.bnl.gov/csewg_members/ENDF-102/ からダウンロードすることができる.

ENDF/B-VI.8からENDF/B-VIIへ持ち越すものに関して,MOD,EMAX,NEVER等は 自動的に変更した.このファイルは,ENDF/B-VIIの0次ファイルとなる.現在, NNDCに提出された核種数は,中性子入射56核種,陽子入射10核種,重陽子入射 5核種,三重陽子入射3核種,He-3入射2核種,α入射2核種,光子入射160核種 の合計236核種である.BNL/KAERI及びBNL/JAERIの協力でFP核種の多くの評価 がなされた.また,WPEC/SG-23からの寄与でFP核種に対し200核種ほどの中性 子核データ評価が追加される予定である.ENDF/B-VIIの評価に関しては http://www.nndc.bnl.gov/csewg-members/eval/ から現状を見ることができる.中性子標準断面積評価は,IAEA/CRP及びWPECと の協力で行われており,2004年中に終了する予定である.H-1弾性散乱に関し ては,30 MeVまでの評価は終了しており,これを標準としている実験に関する 再規格化を行い,今後の評価に利用する.主要アクチノイド核種の評価は,基 本的に共鳴パラメータ評価をORNLが,それ以外の反応断面積評価をLANLで行う という構造で進んでいる.U-238の捕獲断面積の1-2.5 MeV領域はENDF/B-VIと 同様であり,数百keV領域でJENDL-3.3より5 mb小さく,2003年のLANLにおける 評価から10 mb程度大きくなっている.WPEC/SG-22の低濃縮炉心に関する検討 結果では,k_effのC/Eで±0.3%程度とPre ENDF/B-VIIは非常に改善されている と報告された.これに関し,O-16(n,α)反応断面積も重要であり,JENDL-3.3 のこの値は他より良いようだ.ENDF/B-VII.0の公開は2005年12月を予定してお り,Nucl. Sci. Eng.への論文は公開から時間をおかずに投稿する予定だそう だ.

この他のトピックスとしては,M. Smith (ORNL)よりMentoring in Nuclear Information Technology (MINIT)の提案があった.ENDF及びENSDFの人的資源 は,現在55歳以上のメンバーが85%を締めており,10年以内に半減するという 危機に見舞われている.知識を継承するため,NNDCにおける1年間の基礎訓練 の後,USNDPの関連サイトで2年間,上級研究者と評価研究を行う.これを 2人/年程度の割合で行い,3年後にスタッフメンバーとして予約できるように 奨励することを少なくとも6年程度継続すれば,この危機が回避できるのでは ないかという提案である.いずこも同じような問題に直面しているようであ る.また,長年NNDCの中心的役割を果たしてきたDunfordが完全に退職するそ うだ.日本でもこのような人的資源の問題は,先のことだと言ってはいられ ない.具体的な提案はすぐには無理であるかも知れないが,検討を始める必 要があると思われる.

ADSのための標準核データラブラリーに関するIAEA技術会合報告

(原研) 深堀智生

2004年12月15-17日にADSのための標準核データラブラリーに関するIAEA技術会 合(IAEA/TM)がウィーンのIAEA本部で開催された.会合に先立ち,IAEA/NDSの A. Trkov及びIAEA/Div. of Nucl. PowerのA. Stanculescuから,本会合の背景 であるADS中性子工学計算のための断面積ライブラリ作成のためのIAEA構想及 び未臨界炉心と外部中性子源の組み合わせにかかわる計算・実験的解析方法の 検証等が目的のIAEA/CRPに関する概略を報告した.IAEAでは設計研究等ADSに 関するR&Dデータベース(http://www-adsdb.iaea.org/index.cfm,ID及びパス ワードが必要でa.stanculescu@iaea.orgに連絡すれば発行してもらえる)を作 成している.

技術報告として,廃棄物核変換処理のための核データの現状(A. Ignatyuk, IPPE),ロシアの中高エネルギー核データ(Y. Shubin,IPPE),中高エネルギー 核データファイルの現状及び原研で利用されているコードの紹介(深堀,原 研),ADSに関連する核データ(Y. Kadi,CERN),CERN/n-TOF計画(A. Mengoni, CERN),ADS用核データのためのITEPの活動(V. Batyaev,ITEP),SAD (Sub- critical Assembly at Dubna,30 kWベンチマークADS原型炉施設)に関する紹 介(V. Shvetsov,JINR),先進的燃料形態(セラミックス等)の高エネルギー陽 子及び中性子による損傷の研究(R. Klein Meulekamp,NRG),ADS設計に関する 核データ及び中性子工学コードのニーズ(H. Ait Abderrahim,SCK-CEN), NUDATRA (Nuclear Data for Transmutation,E.M. Gonzalez-Romero,CIEMAT) について報告された.

議論の結果として,本グループは,現存するENDF/B,JEF,JENDL,BROND, CENDL等の評価済み核データファイルからの核データレベルでの選択に基づく 標準核データファイルを準備することを推奨する.標準核データファイルは少 なくとも150 MeVまでの中高エネルギーデータも含むべきである.このファイ ルには共分散データが含まれることが望ましい.核データファイルは,NJOYも しくは同等のENDF/B処理ツールにより取り扱うことができるものであるべきで ある.標準核データファイルは3年程度の期間毎に更新されるべきである. IAEAは,ACE及びMATXS形式のファイルを準備するENDF処理コードの開発及び援 助により活発な役割を果たすべきである.このために専門家グループによる (1) ADSベンチマークシリーズを解析するサブグループ,(2) 標準断面積ライ ブラリのための標準評価済み核データファイルを作成するためのサブグルー プ,(3) 断面積ライブラリ等の処理のためのサブグループ,(4) ベンチマーク 解析を実施するサブグループの4作業グループを組織することを提案した.こ れに沿って,サブグループメンバーの候補を提案し,種々のADSベンチマーク 問題の準備,この解析に必要な核種のリストの作成,標準断面積ライブラリの 基礎となるべきデータを選択,標準断面積ライブラリの処理,核データ新測定 に対する提案リストの作成等のアクションプランを採択した.

部会員の最近の成果

K. Shibata (shibata@ndc.tokai.jaeri.go.jp)
    Uncertainty Analyses of Neutron Cross Sections for U-235 in the
    Resonance Region
    J. Nucl. Sci. Technol., 42(1), 130 - 133 (2005).

O. Shcherbakov, K. Furutaka, S. Nakamura, H. Sakane, K. Kobayashi,
S. Yamamoto, J. Hori, H. Harada (harada@tokai.jnc.go.jp)
    Measurement of Neutron Capture Cross Section of ^237^Np from
    0.02 to 100 eV
    J. Nucl. Sci. Technol., 42(2) 135-144 (2005).

K. Hibi (koki_hibi@mhi.co.jp), H. Sekimoto
    Investigation of Neutron Reaction Behavior in Water-cooled FBR
    with MOX Fuel
    J. Nucl. Sci. Technol., 42(2) 153-160 (2005).

M. Harada (harada@cens.tokai.jaeri.go.jp), N. Watanabe, M. Teshigawara,
T. Kai, Y. Ikeda
    Neutronic studies on decoupled hydrogen moderator for a short-pulse
    spallation source
    Nucl. Instrum. Meth., A539 (1-2), 345 - 362 (2005).

A. Zukeran, T. Nakagawa (nakagawa@ndc.tokai.jaeri.go.jp), K. Shibata,
M. Ishikawa, T. Hino
    Criticality and Doppler Reactivity Worth Uncertainty Due to
    Resolved Resonance Parameter Errors - Formula for Sensitivity
    Analysis -
    JAERI-Research 2004-026 (2005).

これらの論文入手については,直接著者に連絡してください.