NDDニュースレター 2004年 第11号 (通巻第60号)

2004/10/29

Table of Contents

会合の案内

2004年核データ研究会

日本原子力研究所シグマ研究委員会

核データ研究会実行委員会

「2004年核データ研究会」を下記の通り開催しますので御案内申し上げます. 皆様の多数の御参加をお願いいたします.本研究会への参加を希望される方は, 10月29日(金)までに,WWW Home Page又は 申込書に必要事項を御記入の上,原 研核データセンターまで御返送下さいますようお願いいたします(できるだけ e-mailにて御返送下さい.申込書をFAXまたは郵送でもかまいません.).参加 者の制限はありませんので周囲の方々にもお知らせ下さい.なお,原研の宿泊 施設の利用を希望される場合は10月29日(金)までにご連絡下さい.

開催期日:2004年11月11日(木)9:50 〜 12日(金)16:30 チュートリアル: 2004年11月10日(水)13:30 〜 17:00 開催場所:日本原子力研究所 東海研究所 先端基礎研究交流棟大会議室

プログラム(案)等は http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/nds/ を参照して下さい

会合の報告

ND2004報告

(九州大学) 執行 信寛

2004年9月26日から10月1日までの間,International Conference on Nuclear Data for Science and Techonolgy 2004 (ND2004)が,ロスアラモス国立研究 所(LANL)の主催で,アメリカニューメキシコ州サンタ・フェ市のエルドラドホ テルにおいて開催された.

31カ国と2国際機関から総勢422名の参加があった.内訳は開催国のアメリカか らが最も多い193名,次いで日本からの39名,3番目はロシアからの35名,以下 フランス (+NEA),ドイツから各26名,ベルギーから14名,オーストリア,ス イス,スウェーデンから各7名,イギリス6名,オーストラリア (+IAEA),ブラ ジルから各5名,チェコ,ハンガリー,南アフリカ,ルーマニアから各4名,イ タリア,インド,ウクライナ,オランダ,カナダ,韓国,スペイン,スロバキ ア,中国,ブルガリアから各3名,ベトナムから2名,アルゼンチン,ナイジェ リア,パキスタン,ベラルーシから各1名であった.中国からの参加者が思い の外少なかったのは,ビザ取得が間に合わなかった方が多かったためである.

会議はANLのP.J. Finck氏とILLのD. Dubbers氏の基調講演から始まった.

印象的だったのは,CERNのn_TOFでの(n,gamma),(n,xn),核分裂,中性子捕獲 などの断面積の実験データが多く報告されたことである.またUppsalaのTSLに おける,中性子散乱,荷電粒子放出,生成残留核や反応断面積測定の報告, LANSCEでの中性子捕獲実験装置DANCEで取得され始めたデータ,GSIで計画中の 実験についても発表されていた.日本からも東北大,東工大,京大,阪大,九 大,原研,KEKなどから実験結果について発表があった.

理論計算については,NRGで開発中のTALYSやINFNで改良継続中のFLUKA,LANL で性能向上がされているMcGNASH,FermilabのMARS,その他Empire等の計算 コードの現状について発表があった.これらのコードに不可欠な核子・核子断 面積や核内カスケード,前平衡,励起子,光学模型などの核反応模型の改善に ついても報告があった.さらにJENDLやENDF,JEFFといった評価済核データ ファイルの進展についても多数の発表がされていた.

また,昨年亡くなられたS. Raman氏とS. Pearlstein氏の追悼講演も行われて いた.

最後はLBLのE.B.Nowman氏とUS Naval AcademyのJ. Ziegler氏による講演で幕 を閉じた.次回は2007年にCEAの主催で,フランスのプロヴァンス地方で開催 される予定である.

この会議の概要やプログラムはまだこのwebにあるので,興味のある方はご覧 頂きたい. http://t16web.lanl.gov/nd2004/

このような会議でちょっとしたハプニングが付き物だと思われるが,今回はポ スターを貼るポードの数がなぜか足らなかったり,バンケットの時に会場に入 れずに別の場所で食事をされた方も何名かいらした.また,コンサート会場が 目立たない建物だったため,迷われた方々もいらっしゃった.

サンタ・フェはアメリカ人が一番行きたいと思う観光地だそうで,中心地には 古い町並みが残っており,情緒あふれる景色が広がっている.また,芸術家が たくさん集まる街でもあり,ギャラリーが数多くある.そのためか同伴者向け の観光案内には,LANL職員のご婦人方も大層尽力され,同伴者の方々も大変喜 ばれていたとのことである.

ND2004とLos Alamos見学

(東北大学CYRIC) 萩原 雅之,糸賀 俊朗

このたび,私たちは核データ国際会議ND2004への参加とLANSCE (Los Alamos Neutron Science Center)の見学の機会を得ましたので,簡単にその様子を紹 介したいと思います.

ND2004は2004年9月26日から一週間の間,アメリカ・New Mexico州・Santa Fe で開催されました.Santa Feは小さな町ながらNew Mexico州の州都で,Adobe と呼ばれる日干しレンガで作られた家の並ぶ歴史ある街で,San Francisco等 の大都市とは全く違った趣のある町です.会場となるEldorado HotelはSanta Feの中心近くにあり,Adobeで作られたこの町で最も大きな(そして高級な)ホ テルの一つです.

会議は各国からの多数の参加者で賑わっており,演題も様々な検出器で得られ た核データ,新しいモデルコード等などのこの会議の中心的な話題から,半導 体エラーやそれにまつわる核データといった近年重要視されている問題,また, 今後の核データライブラリの動向といった話題まで広範な内容に亘っておりま した.CERNにおけるnTOFの実験,LANSCEの新しい装置など新しい話題とともに 核反応論,核分裂,共鳴などの基礎的な研究が営々と続けられているのには, 核データ研究の奥深さを知る思いでした.また,会議中各国からの若手やかな り有名な人も含めて議論し知り合いになれたのはなんと言っても最大の収穫 だったと思います.

ところで,会議場でマイクを持ってちょこまか動いている学生がいたと思いま すが,私たちもNew Mexico大学,九州大学の方々とともに学生アシスタントの 一員として,質問者にマイクを渡したりポスター発表会場の準備をしたりして いました.セッションでは盛んに議論が交わされ,マイクを運ぶ我々としては しんどいところでしたが,LANLの方々の万全の準備もあって会議は大盛況のう ちに幕を閉じ,2007年のフランスへと引き継がれました.

学会後,LANSCEの見学まで,土,日と時間がありましたので,我々はMonument Valleyへと向かうことにしました.往復1000 mileの旅です.大まかな地図を たよりに一路Monument Valleyへと向かったわけですが,早々に道を間違いTaos という町に来てしまいました.幸いなことに,丁度この時期,この辺りの山々 はアスペンと言う白樺に似た木々が黄色く色づき,そのすばらしい景色に出会 うことができました.山から見下ろす大地の紅葉は日本のそれとは違いまたす ばらしいものでした.Monument Valleyはこのような景色とはまったく対極の 世界で,広大な赤褐色の荒野に巨大な岩石がまさにモニュメントのように孤立 するまさに西部といった風景でした.

週が明けて,月曜はLANSCEの見学です.見学に際してはLANLの河野氏やR.C. Haight氏等にお世話になりました.LANSCEは800MeV陽子による核破砕中性子源 を用いた世界で最もアクティブな核データ実験施設ですが,ここではfission 関係の研究が積極的に行われており,FIGARO,DANSE,GEANIEなど最新の研究 を見学することができました.どれもターゲットの周りを隙間無く検出器が埋 めており,その様は圧巻でした.我々からしてみれば力技ともいえる検出器で すが,我々が大学で頭をひねって地道に実験している一方で,これらの検出器 のように確実に大量のデータを取得する手段も必要なのだということを再認識 することができました.しかしながら,このようなすばらしい検出器,設備が ある一方で,測定室はというと掘っ立て小屋であったり,フェンスで囲まれて いるものの中性子ビームラインが屋外にむき出しであったりと,日本とアメリ カとでは管理区域の認識がこうも違うものかと驚かされました.狸が実験中に ビームラインに入り込んだことによる狸補正などがあるとか.放射線管理研究 部に所属する私たちとしては気になるところでした.

見学の後,河野氏の家に招いていただき日本食の夕食をご馳走になりました. しばらく白飯から離れ肉と豆ばかりの我々にとってはまさに感謝感激というと ころでした.有難うございました.

検出器,施設,谷,岩,山,地図・・・,どれをとっても日本とのスケールの違 いに驚かされ,またアメリカというお国柄を体験できた貴重な旅になりました.

最後にこのようなすばらしい体験を得る機会をあたえてくれた馬場護先生に感 謝します.

部会員の最近の成果

S.A. Sultana, D. Maki, G. Wakabayashi, Y. Uozumi, N. Ikeda, Syafarudin,
F. Aramaki, T. Kawaguchi, M. Matoba (matoba@ip.kyusan-u.ac.jp),
H.M. Sen Gupta
   The 96Mo(p,d)95Mo reaction at 50 MeV
   Phys. Rev., C70, 034612 (15 pages) (2004).

T. Ohsawa (ohsawa@ned.kindai.ac.jp), F.-J. Hambsch
   An Interpretation of Energy Dependence of Delayed Neutron Yields in
   the Resonance Region for 235U and 239Pu
   Nucl. Sci. Eng., 148, 50 - 54 (2004).

K. Nishio, H. Ikezoe, Y. Nagame, M. Asai, K. Tsukada, S. Mitsuoka,
K. Tsuruta, K. Satou, C. J. Lin, T. Ohsawa (ohsawa@ned.kindai.ac.jp)
   Evidence of Complete Fusion in the Sub-Barrier 16O + 238U Reaction
   Phys. Rev. Lett., 93, 162701 (4 pages) (2004).

K. Asai, T. Iguchi (t-iguchi@nucl.nagoya-u.ac.jp), K. Watanabe,
J. Kawarabayashi, T. Nishitani, C. I. Walker
   Detailed design of ex-vessel neutron yield monitor for ITER
   Rev. Sci. Instrum., 75 (10), 3357 - 3359 (2004).

D. Inui, T. Iguchi (t-iguchi@nucl.nagoya-u.ac.jp), K. Watanabe,
J. Kawarabayashi, T. Nishitani
   Development of fusion neutron camera using organic liquid
   scintillator and wavelength shifting fiber
   Rev. Sci. Instrum., 75 (10), 3578 - 3580 (2004).

J. H. Kaneko, T. Teraji, Y. Hirai, M. Shiraishi, S. Kawamura,
S. Yoshizaki, T. Ito, K. Ochiai (ochiai@fnshp.tokai.jaeri.go.jp),
T. Nishitani, T. Sawamura
   Response function measurement of layered type CVD single crystal
   diamond radiation detectors for 14 MeV neutrons
   Rev. Sci. Instrum., 75 (10), 3581 - 3584 (2004).

H. Yashima, Y. Uwamino, H. Iwase, H. Sugita, T. Nakamura
(nakamura@cyric.tohoku.ac.jp), S. Ito, A. Fukumura
   Cross sections for the production of residual nuclides by high-
   energy heavy ions
   Nucl. Instrum. Meth., B226 (3), 243 - 263 (2004).

これらの論文入手については,直接著者に連絡してください.

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