NDDニュースレター 2004年 第9号 (通巻第58号)

2004/8/31

Table of Contents

会合の報告

原子力学会4部会合同日韓サマースクール

(東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター)馬場 護 

● はじめに

上記サマースクールの第1回が,日本原子力学会の「核データ」,「加速器・ ビーム科学」,「放射線工学」,「炉物理」の4部会と韓国原子力学会(KNS)の 協力によって,去る7月26-30日,韓国Pohang Accelerator Laboratory (PAL)で 開催された。PALは2.5 GeVの放射光設備を有する世界的な研究機関であり,宿泊 等の設備も整った良好な環境にある。

今回の参加者数は

    総数 85 名 
   講師22 (日本9, 韓国13名)
  学生・若手(韓国44 内DC以下17,日本19)

であり,当初の予定50名を大幅に越えた。韓国で例年開催されている 「Accelerator Summer School」との共催となったことが大きい。 なお,今回は,核データ部会から学生参加者に補助(\20,000)を支給することに なり,公募の結果,1名の応募者に支給された。 以下に内容を簡単に紹介する。より詳細については核データニュースの次号を参 照されたい。

● プログラムと内容

  プログラムの骨子は下記の通りである。  

1. Present status and prospect of particle accelerators
1) Achievement and future prospect
2) New application: principle and practice, medical use, analysis, processing of materials, ADS
3) Direction and problems in the accelerator development and accelerator application
2. Present status and the future of radiation engineering
1) New devices and methods for radiation measurement; nano and femto scale
2) Transport analysis of accelerator-relevant radiations and accelerator safety design
3. Present status and the future of nuclear data relevant to accelerator application
1) New nuclear data relevant to advanced accelerator application
2) Production of nuclear data and an intelligent utilization system of nuclear data
4. Reactor physics and engineering relevant to ADS
1) Principle and problems of ADS
2) Reactor physics and nuclear transmutation in ADS

サマースクールは,講義,Student session, 実験 で構成されている。実験は学 生を対象として28日にPALの加速器設備を用いて行われた。これに平行して恒例 の「Pohang核データワークショップ」が開催され,31日には韓国で建設中の大強 度加速器施設の見学会も設定された。

Student sessionは学生・若手研究者間の自由な交流を目的としたもので,日本 側から提案し2晩に亘って設定したものである。自己紹介,ポスターによる研究 発表,コンパを通じて非常に有意義な交流の機会となったようで,これが研究 者・民間の交流などへ発展すればと思う。今後も是非継続したい試みと考える。 実験は,Pohang Accelerator Laboratory (PAL)の1.6 GeV電子ビームと100 MeV 電子リニアックを用いた中性子実験で,PALのH.S.Lee, Y.S.Lee氏 の指導で進め られたが,これもPALならではの試みで好評であった。

講義では,加速器の現状,Accelerator Driven System (ADS)や医療利用を中心 とする加速器利用の進展,加速器利用の基礎となる放射線工学,核データ,炉物 理を基礎から最先端まで盛り込むよう講師に依頼した。

日本側講師には各部会から推薦または参加された方々にお願いし,原則的には各 テーマ毎に日韓それぞれから協力願った。各テーマの日韓の講師には予め内容の 調整を依頼し,重複や抜けのないよう配慮願った。

講義のview graphをコピーした講義録が韓国側の努力で用意されたが,合計800 ページ,2分冊に及ぶ非常に充実したものである。内容が豊富な分,現役学生に は消化不良気味であったきらいがあるが,それぞれの分野の基礎から最先端まで が手際よくまとめられ研究者にとっても極めて有益なテキストといえよう。ねら いの1つである他分野の現状を知ると言う点からも有意義であったと思う。講義 録はCD-ROMで配布される予定になっている。ご多忙中の所,工夫した講義を準備 頂いた講師の方々に改めて感謝したい。

講義にも日韓あるいは講師の個性が表れ興味深かった。どれも非常に良くまとめ られている点は上に述べたとおりであるが,いくつかの講義では,初歩からス タートしながら最新の成果までがきれいに整理され感銘を受けた。しかし,内容 が多岐にわたりすぎた点は否めず,もう少しTutorialの立場を強調すべきであっ たかもしれない。

● 今後 

今回は初回と言うことで種々,試行錯誤的な点が多かったものの,内容は非常に 充実しており,ほぼ目標を達成できたものと評価したい。

会場はPALの会議室で行われたが,学生はPALのドミトリーに宿泊し,食事もPAL の食堂でとった。講師は「迎日台」というホテルかPALの宿泊施設に宿泊した。 学生の場合,参加費,6日間の宿泊費,食費全て込みで100,000WON(〜10,000 円)であり,講師の場合は参加費・食費無料という破格の費用であった。これに よって,経済的負担を減らすことができたのは非常に幸いであり,連日の歓迎 パーティを含めて韓国側の努力に改めて感謝したい。

PALはなだらかな小山のてっぺんにあり,ドミトリーやアパートからは徒歩で10 分程度の距離にある。「迎日台」も山の麓にあるが方向が違うため徒歩という訳 にはいかず,毎日車で送り迎えしてもらった。PALは緑に囲まれたすばらしい環 境にあり,宿舎への道もかなりの坂道ではあるが快適そのものといえよう。

会期中,次回以降をどうするかについて相談を行った。開催頻度,開催機関,開 催場所など具体的な点については,今後つめることになる。韓国の学生や若手研 究者に日本を訪問する機会を与えるという視点も重要であるが,日本で開催する 場合,費用が最も頭の痛い点であり,低廉で良い環境という条件で検討を進める 必要がある。

また,今後スクールの内容や進め方とともに,大学院生のインターンシップに含 めるなど制度的な面でも位置づけを高めるよう検討することとした。

なお,日韓合同セッションはサマースクールとは目的も意義も異なるので,日韓 の秋の学会の際に交互に開催することを確認しており,今秋は10月末韓国Chung Chongで,炉物理,加速器・ビーム科学部会との合同会合を開催することになっ ている。ご意見等,お寄せ頂ければ幸いである。

核データ部会からのお知らせ

核データ部会総会におけるお弁当の予約

核データ部会総会が、秋の大会(9月16日,12〜13時,B会場)で開催さ れます。下記の様に核データ部会総会におけるお弁当の予約を受け付けますので ご希望の方は庶務担当の原田氏harada@tokai.jnc.go.jpまで御連絡ください。

代金 500円
内容 お弁当(みそ汁付)
お弁当注文の受付は9月2日(木)夕刻までにお願いします。

部会員の最近の成果

T. Ohsawa (ohsawa@ele.kindai.ac.jp) and F.J. Hambsch
   An Interpretation of Energy Dependence of Delayed Neutron Yields
   in the Resonance Region for ^235^U and ^239^Pu
   Nucl. Sci. Eng., 148, 50 (2004).

これらの論文入手については,直接著者に連絡してください.