NDDニュースレター 2004年 第3号 (通巻第52号)

2004/4/10

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トピックス

核データ部会長就任に当たって

(東北大CYRIC) 馬場 護

            このたび,核データ部会部会長の任を仰せつかりました.これから2年間、田原 副部会長及び部会運営委員の方々と共に、責を果たすべく努力いたしますのでご 協力よろしくお願いいたします.更田、小林部会長に続いて三代目ということに なりますが、多くのベテランの方々が相次いで一線を退かれ,厳しい現状ではあ りますが、少しでも前進できますよう努めたいと思います.   さて,核データ部会を巡る現状をみてみますと,この3月の原子力学会春の大会 で核データ分野から小林捷平前部会長が「マイナーアクチニド及び長寿命核分裂 生成物核種の核データに関する実験研究」の功績により学術業績賞及び特賞,柴 田恵一,中川庸雄,河野俊彦の三氏が「Japanese Evaluated Nuclear Data Library Version 3 Revision-3:JENDL-3.3」の功績により論文賞を受賞されまし た.受賞された方々に心からの祝福申し上げると共に,核データ分野全体にとっ ての名誉でもあると受け止めて部会員の皆様と共に喜びたいと思います.昨年、 井頭政之氏が中性子捕獲の研究で仁科賞を受賞されたことも核データ分野にとっ て大きな喜びでありました.さらに、文部科学省の大型プロジェクトである「革 新的原子力システム」において核データ関連の課題「高度放射線計測手法による 革新的原子炉のための核データの測定」が採択され,研究が進められています. これらの事実は、核データ分野の重要性と活動の意義を改めて示したものであり、 これによって核データ分野を取り巻く厳しい状況が一挙に好転する訳ではないと しても,前進のための極めて強力な武器になりえるのではないでしょうか.

一方,核データセンターを通して核データ活動の屋台骨を支えてきた原研は平成 17年核燃料サイクル機構と統合されることになっており,これに伴って核データ などを巡って大きな方針変更の生じる可能性があります.これに関してはすでに 一昨年,部会から原子力学会に働きかけ学会長名で両機関の長宛に、原子力の基 盤である核データ活動が軽視されることのないようにという要望書を提出してお りますが、今後の動向に十分注意していく必要があると思います.

また、近年は大学においても、"Innovative" がkey wordとなり、とかく目新し く耳目を集めやすいものが重視される傾向にあり、地味な核データなどにとって はいささか不利な条件にあります.しかし、"Innovativeな新しいこと"を始める にも基礎となる核データがきちんとしていないことには何も進まない訳で、この ことを主張すると共に我々もそのことを具体的に示す努力をすることが必要と思 います.これはなかなか容易ではありませんが、具体的な設計活動などと連携し て具体的な課題への取り組組を強めることが重要と思います.同時に、 "Innovative" な活動を展開することの必要性も言うまでもありません.   部会にとってはやはり原子力学会の年会と分科会や委員会活動がやはり中心にな るべきものと考えます.この点で最近核データ分野の発表件数が減少傾向をたど っていることは大きな問題であり、何らかの手だてを講じる必要があると考えま す.今回の発表件数は12件であり、10年ほど前に比べると半数近い数になってい ます.今回は幸いなことに、会場は満席以上でかつ討論も非常に活発であったこ とは救いですが、発表件数が少なければ分野の存在意義が問われかねません.上 に挙げたポジティブな面から考えると分野のアクティビティが低下している訳で はないと思います.10年前と言えば、JENDL-3の完成に向かって特に軽水炉や高 速炉、核燃料サイクル関連のアクティビティが高かった次期であり、それに比べ て近年は対象が原子炉のみならず核融合、加速器、医療、基礎物理など多方面に 分散化しており、核データ以外のセッションで発表されている場合も少なからず あるように思います.今までも経験されたことですが、核データという切り口で 発表・討論することによって問題が明確になる、あるいは解決の糸口が見つかる ことも少なくないという気がします.また、これを通して新たな核データニーズ を発掘することも期待されます.とにかく部会員の方には核データセッションで 発表することを意識していただきたく思います.そのための方策を運営委員の 方々と検討してきたいと思っています.

また、核データ分野は原子力学会の中でもっとも純粋な物理に近い分野であり、 物理あるいは基礎科学と原子力の架け橋的な存在でもあると思います.私自身は 物理的な内容の発表がある、あるいはそうした観点からの議論がある、というの が核データの魅力、面白さの1つであると思っています.また、核データをよく 知っていることはいろんなシステムのより合理的な設計を可能にするとも思って います.    そのような核データの魅力ないしは特長をますます発揮できるような手伝いがで きればと思います.その活動が、部会員の増加にも繋がることを願っています. 部会委員各位のご協力をお願い致します.

平成15年度日本原子力学会賞受賞

第36回日本原子力学会賞として,核データ部会員から以下の方々が受賞され, 2004年春の年会の初日(3月29日)に岡山大学にて贈呈式が開催されました.

   ・学術業績賞・特賞
     マイナーアクチニド及び長寿命核分裂生成物核種の核データに関する
     実験研究 (京大炉)小林捷平氏
   ・論文賞
     Japanese Evaluated Nuclear Data Library Version 3 Revision-3:
     JENDL-3.3  (原研)柴田恵一氏、中川庸雄氏、(LANL)河野俊彦氏
   ・学術業績賞
     核平衡状態の研究 (東工大)関本博氏
   ・奨励賞
     ヘリウム蓄積型中性子フルーエンスモニタの開発
    (サイクル機構)伊藤主税氏

全受賞者のリストは以下に掲載されております.

http://wwwsoc.nii.ac.jp/aesj/news/2003awards.htm
受賞概要については、学会誌第46巻第3号の後付をご覧ください.また、 学会賞の贈呈式の様子を
http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/~ndd/2003awards.html
に掲載しております.

おしらせ

学会賞受賞者からの副賞の部会への寄付について

(核データ部会長) 馬場 護

皆様ご承知と思いますが、第36回(平成15年度)日本原子力学会賞に際して3月ま で当部会の部会長を努められた小林捷平先生が「マイナーアクチニド及び長寿命 核分裂生成物核種の核データに関する実験的研究」の功績で学術業績賞を、柴田 恵一・中川庸雄(原研)、河野俊彦(LANL)の3氏が「Japanese Evaluated Nuclear Data Library Version 3 Revision-3:JENDL-3.3」の功績で論文賞を受 賞されました.受賞者の方々に心よりお祝い申し上げるとともに、部会にとって の名誉としても部会員の皆様とともに祝福したいと思います.

この受賞に際して、小林捷平先生と柴田恵一、中川庸雄(原研)、河野俊彦 (LANL)の3氏から、部会活動の支援にと言うことで,学会賞の副賞を、部会にご 寄付頂きました.受賞者各位に厚く御礼申し上げますとともに、部会活動に有効 に役立てるための方策を工夫したいと思います.若手や国際交流への補助などが 考えられるかと思いますがアイデアをお寄せ頂ければ幸いです.

会合の報告

第9回部会総会議事録

第9回核データ部会総会
日時:2004年3月30日(火)12:00〜13:00
場所:岡山大学4号館第11講義室(K会場)

● 開会挨拶

小林部会長より総会開会の挨拶があった.

● 企画報告

副部会長,各運営委員より,企画報告として,以下の報告があった.

   (1)学会賞受賞について(山野副部会長)
     小林部会長がMA等の核データ測定に関する研究に対して学術業績賞・特賞
      を,柴田氏,中川氏,河野氏の各部会員がJENDL-3.3に関して論文賞を受
      賞されたことが報告された.
   (2)部会企画セッション(井頭運営委員)
     部会企画セッションとして「我が国の核データ測定施設の展望と世界情
      勢」を企画したことが報告された.
   (3)日韓サマースクール(馬場運営委員)
     炉物理部会,放射線工学部会,加速器部会,核データ部会の4部会合同で
      日韓サマースクールを開催する予定である.期間は7/26〜30の5日間,場
      所は韓国のPohang,50名程度の参加を想定している.セミナーを領域横断
      的総合セミナー「加速器の先端的利用」として位置づけ,学振の日韓科学
      協力事業に開催資金の補助を申請している.学振の補助が得られない場合
      も実施する方向である.日韓合同セッション(炉物理,核データ,計算科
      学部会3部会合同セッション)は秋の韓国の学会(10/30,31)で実施され
      ることになるが,それとは別に実施する.
   (4)部会賞(井頭運営委員)
     今年度から部会賞を開始した部会がある.核データ部会は16年度からを予
      定している.山野副部会長,深堀委員が内規を検討しており,若手研究者
      に賞を出す方向で検討中である.内規は案ができ次第,メーリングリスト
      で各部会員に検討していただく.
   (5)「核データ・炉物理研究と社会の係わり」メーリングリスト活動の途中経
      過報告(原田運営委員)
     メーリングリストで議論されている内容について報告があった.

● 編集報告(深堀運営委員)

前回総会から今回総会までに発行したニュースレター(6回分)の概要につい て報告があった.部会員の成果欄に掲載する情報の提供について,部会員に依頼 があった.

● 会計報告(村田運営委員)

15年度の予算執行状況,監査結果の報告があった.また,16年度予算が示され た.16年度は部会賞に関する費用を計上している.予算案は承認された.

● 選挙結果について(山野選挙管理委員長)

次期運営委員及び次期評議員候補の選挙結果について報告があり,承認された.

● 新部会長,新副部会長挨拶

次期運営委員より,馬場部会長と田原副部会長が選出され,それぞれより挨拶 があった.

● 運営委員分担(井頭運営委員)

運営委員の分担案について紹介があり,承認された.各運営委員より挨拶があ った.

部会員の最近の成果

H. Takemoto, M. Fukushima, S. Chiba (sachiba@popsvr.tokai.jaeri.go.jp),
H. Horiuchi, Y. Akaishi, and A. Tohsaki
  Clustering phenomena in nuclear matter below the saturation density
  Phys. Rev., C69, 035802 (2004).

K. Iida and K. Oyamatsu (oyak@asu.aasa.ac.jp)
  Surface tension in a compressible liquid-drop model: Effects on
  nuclear density and neutron skin thickness
  Phys. Rev., C69, 037301 (2004).

井頭政之,柴田恵一,高野秀機,山野直樹,松延廣幸,喜多尾憲助,
片倉純一(katakura@ndc.tokai.jaeri.go.jp),中川庸雄,長谷川明,岩崎智彦,
小田野直光,岡島成晃,千葉敏
   シグマ委員会の2001,2002年度における核データ研究活動
   日本原子力学会和文論文誌 3(1), 128 (2004).

これらの論文入手については,直接著者に連絡してください.

核データ部会からのお知らせ

● 3月30日に開催された核データ部会総会において,運営委員会メンバーが以下の通り承認されました.部会員の皆様のご協力をお願いいたします.

http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/~ndd/unei.html

● 現在の部会員数:140名

●「部会員の最近の成果」に載せる情報をNDDeditors@ndc.tokai.jaeri.go.jp までお知らせ下さい.