NDDニュースレター 2003年 第9号 (通巻第46号)

2003/9/30

Table of Contents

会合の報告

「トリウム-ウラン燃料サイクルのための評価済み核データ」

IAEA CRP 第1回研究調整会合

岩本 修(原研)

2003年8月25日から29日までウィーンのIAEA本部で開催された表記の会合に参 加しました。このCRPの目的は、トリウム-ウラン燃料サイクルで重要な核種に 対して、核データ評価に必要なモデル計算、共分散評価のための実験データの 統計処理、共鳴パラメータの評価、核分裂生成物収率及び崩壊データ、ベンチ マークテストに関する議論を通して、新しく信頼性の高い評価データを提供す ることです。参加者はIAEA関係者以外では、ヨーロッパを中心に旧ソ連、アメ リカ、中国、インド、日本等から10名でした。

はじめにCRPの取りまとめ役であるIAEAのTrkovからCRPの概要の説明がありま した。対象とする核種はトリウム燃料サイクルで重要となるTh-232, Pa-231, 233, U-232, 233, 234, 236です。エネルギー範囲はADSでの利用を考慮して 150 MeV程度まで延長することを視野に入れているようです。CRP内で評価手法 に関して議論し、新しい実験データを用いて共鳴パラメータを含めた再評価を 行い、最終的には新たな評価済み核データファイルを作成することを考えてい ます。IRMMのGELINAやCERNのn_TOFで新しい実験が行われており、来年内には 新たな共鳴パラメータが得られるようです。ファイルはTh-232の中性子反応断 面積の他に核分裂生成物収率及び崩壊データ、ガンマ線生成データ、共分散デ ータ等を含んでいて、評価におけるモデル計算の妥当性の検討や評価値のベン チマークテストを行うことで、高い信頼性を確保しようとしています。

今回の会合で一部の評価者は、自分の評価の正当性を非常に強く主張していま したが、根拠に乏しく議論がかみ合わない場面が多く見られました。また自分 のモデル計算と測定値にずれがあった場合に、測定値の方が間違っていると主 張する場面もあり、非常に単純化された現象論的モデルで測定値を再現できな いからといって、測定値の間違いを主張する考え方はやりすぎの感がありまし た。

核データニュースのNo.76にもう少し詳しい記事が掲載される予定です。

The 6th Workshop on Nuclear Data Production and Evaluation

山野 直樹(住原工)

韓国PAL(Pohang Accelerator Laboratory)で8月28, 29日に開催された核データ ワークショップに参加したので報告します。標記のワークショップは毎年8月末 にPohang(浦項)で行われており、今回で6回目になります。韓国の大学、研究 機関から研究者や学生など50名程の参加があり、外国からは、日本、中国、ロシ ア、ベトナムからの参加がありました。日本からは馬場先生とD1の萩原さん (東北大)、猪野さん(KEK)と山野の4名が参加・発表しました。セッションは 3つで合計20件の発表がOralで行われ、活発な質疑応答が行われました。今年の 春まで京大炉にいたSamyol Leeさんも奥さんとお揃いで発表するなど旧知の人も 多く、楽しい会議となりました。

来年は、韓国と日本の合同でSummer Schoolを開こうと計画しており、その準備 のための打ち合わせも行われました。なお、報文集は韓国原子力研究所 (KAERI)から発行される予定です

   ワークショップ参加者の写真
http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/~ndd/image/ndd0046-pohang.jpg

Workshop on Nuclear Data for the Transmutation of Nuclear Waste

山野 直樹(住原工)、井頭 政之(東工大)

ドイツ重イオン研究所(GSI)で9月2〜5日に開催された標記ワークショップに参 加したので報告します。本ワークショップは欧州のHINDAS project (High and Intermediate Nuclear Data for Accelerator Driven Systems)の成果報告会と して企画されましたが、放射性廃棄物の核変換に重要な中高エネルギー核データ の研究会として広く世界中からの参加を求めたもので、米国、日本、韓国、ロシ アなど多くの国からの参加者があり、130名を超える国際会議となりました。GSI はフランクフルトから25km程南下したダルムシュタット郊外の森の中にあり、超 重元素合成で有名な研究所です。私達はダルムシュタット市街に宿泊したので、 GSIが手配した毎朝8時00分出発のバスで会場に直行し、帰りは夜8時過ぎのバス でホテルに戻り、それから夕食というハードスケジュールでした。(GSIのバス は往復この一便しかなかった。)

セッションは毎朝9時より始まり、最終日を除いて夜7時過ぎまで続きました。井 頭は3日の午後5時から口頭発表し、山野は4日の午後6〜7時にポスター発表を行 いました。中高エネルギー領域の実験施設、測定装置、断面積測定、理論、核 データ評価、データベース構築など多くの研究発表が行われ、特に欧州の成果に は眼を見張るものがありました。アブストラクトは

http://www-wnt.gsi.de/tramu/

より見ることができます。論文集は来年このホームページに掲載され、参加者に はCD-ROM版が配布される予定です。ダルムシュタットの宿では核データ部会の運 営委員の河野さんを含む米国人が同宿していましたので、ビールを一緒に飲みな がら秋らしくなってきたダルムシュタットの夜(15℃)の涼しさに震えていまし た。

会合のおしらせ

PHYSOR-2004

The Physics of Fuel Cycles and Advanced Nuclear Systems:
Global Developments
      日時  April 25-29, 2004
      場所  Hyatt Regency Hotel, Chicago, Illinois, USA.
詳細  http://www.physor2004.anl.gov

2003年核データ研究会(再掲)

      日時  2003年11月27日(木), 28日(金)
            チュートリアル: 2003年11月26日(水)
      場所  日本原子力研究所 東海研究所 先端基礎研究交流棟大会議室
詳細  http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/nds/index_J.html

部会員の最近の成果

W. Sun, Y. Watanabe (watanabe@aees.kyushu-u.ac.jp), E. Sh. Sukhovitskii,
O. Iwamoto, S. Chiba,
   Coupled-channels analysis of nucleon interaction data of ^28,30^Si up
   to 200 MeV based on the soft rotator model
   J. Nucl. Sci. Technol., 40, 635 (2003).

これらの論文入手については、直接著者に連絡してください。

核データ部会からのお知らせ

● 現在の部会員数:140名

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