NDDニュースレター 2002年 第11号 (通巻第35号)

2002/10/17

Table of Contents

会合の報告

第11回原子炉ドシメトリー国際シンポジウム

(京都大学原子炉実験所) 小林 捷平

第11回原子炉ドシメトリー国際シンポジウム(11-th International Symposium on Reactor Dosimetry:ISRD-11)が、去る8月18日〜23日、ブリュッセルのホ テルMetropoleにおいて開催された。当シンポジウムは、原子炉圧力容器(RPV) や炉内構造物の照射損傷を評価するための放射線場のキャラクタリゼーション に基軸が行かれており、米国材料試験学会(ASTM)とユーラトム(現在の欧州原 子炉ドシメトリーワーキンググループ:EWGRD)が中心となって開催を続けてき た。1975年に第1回のシンポジウムがオランダのPettenで開催されて以来、今 回で11回を数える。1996年プラハで開催された第9回目以来、日本原子力学会 (AESJ)も共催に加わり、ASTM、EWGRDと共に3者共催によるシンポジウムが開 催されてきた。今回の開催の世話はEWGRD側が務めたが、ISRD-11への参加者は 104名(米国23、EU33、CIS/旧東欧23、日本20、イスラエル4、韓国1)を数えた。 本シンポジウムの主テーマは「炉材料の照射量評価のため、および放射線計測 技術・データベース・標準化の実験のための原子炉ドシメトリー」である。

今回のシンポジウムでは、旧ソ連型の原子炉が多い欧州からWWERの健全性評価 に関わる基礎研究の発表と、遡及(Retrospective)測定による原子炉材料組織 の健全性評価法が注目され、特に後者はワークショップのテーマとして今回初 めて取り上げられた。このような原子炉材料の照射損傷や標準に基軸をおいた 研究テーマの他に、BNCTや高エネルギー領域の加速器/核破砕中性子源を対象 としたドシメトリーにも幅が広がってきている印象を受けた。しかし、核融合 に関連するドシメトリー研究としては一時期より少なくなって来ているように 思われる。シンポジウムに関する紹介は、別報1),2)に譲る。

次回のドシメトリーシンポジウムは、ASTM側のお世話により2005年5月に米国 テネシー州ガトリンバーグで開催されることになった。我が国からも、大阪や やブリュッセルのシンポジウムを上回る発表が出ることを期待したい。これに よりアジアを加えた米国、欧州を三極とし、次々回のドシメトリーシンポジウ ム開催の順番をアジア地域において受け入れられるか否かの正念場を迎えるこ とになる。

参考

  1) 小林 捷平, 林 克己, 日本原子力学会誌, 近刊掲載予定
  2) 小林 捷平, 核データニュース 近刊掲載予定

「軽核標準断面積の改良」に関する技術会合

(九大総理工) 河野 俊彦

標記の会合が9月23日〜27日の5日間ウィーンのIAEA本部で開かれた.これは IAEAが主催する国際プロジェクトとして今後3年にわたって継続されるもので, この会合はResearch Coordinate Meetingの第1回目にあたる.ドイツ,オース トリア,ロシア,中国,韓国,日本,アメリカからの参加者で構成された国際 プロジェクトであるが,内容がENDFの標準断面積の再評価に主眼が置かれてい るため,3名はアメリカからである.ENDFの軽核標準断面積用核種として H,He3,Li,C,Bが採用されているが,この内,R-Matrix及びGMAによる同時評価を 用いて評価されたLiとBの断面積の評価が今回の会合の主な目的である.

今回の会合では,最初に既存のR-Matrixコードの比較が行われた.Li6(n,t)反 応の実験データを数種類用意し,それらから得られる共鳴パラメータの比較を 行って,SAMMY(ORNL), EDA(LANL), RAC(Tsinghua Univ.)の3つのコードが同じ 結果を与えることを確認した.今後はそこから得られる共分散を比較する予定 である.

同じ実験データに対してGLUCS, GMA, SOKコードによる最小自乗フィットも行 われたが,ここで少々面白い結果が得られた.それは,実験データの相関が非 常に強い場合は最小自乗解が実験データそのものよりも小さくなってしまうと いうものである.これはPPPと呼ばれる現象と同じであろうということになり, KAERIのOh氏がそれについて解説した.これを回避する方法として,データの 対数をとる方法が挙げられたが,SOKコードだけはデータの対数を使うので, 結果的にこの問題は起こらなかった.もし本当にPPPのようなことがGMA等の計 算で起こっているなら,今までの評価値を見直す必要があるため,今後の重要 な検討課題である.

その他,新しい実験データに関するレビュー,共分散行列のpositive definitenessの議論,理論計算や最小自乗法で評価された共分散の検討,重核 データを取りこんだ同時評価手法等が議論されたが,全体を通じて,日本 (JENDL)の成果が十分に評価されていないのでは無いかという印象を受けた. 日本の核データ研究者は,もっと海外のコミュニティに対して声を出すべきで はないだろうか.

会合の案内

R&D Needs for Current and Future Nuclear Systems

「将来の原子力システムにおける研究開発の必要性」に関するワークショップ

2002年11月6日-8日, Paris, OECD/NEA/NSC

http://www.nea.fr/html/science/rd/index.html

2002年核データ研究会 (再掲)

    日時: 2002年11月21日(木),22日(金)
    場所: 日本原子力研究所東海研究所
           先端基礎研究交流棟会議室(茨城県東海村)
    問合せ・申込先:
           〒319-1195  茨城県那珂郡東海村白方白根2-4
                       日本原子力研究所 核データセンター
           Tel: 029-282-5907, FAX: 029-282-6216
           e-mail: fukahori@ndc.tokai.jaeri.go.jp
WWW:  http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/nds/index_J.html

部会員の最近の成果

Y. Hirata (hirata@ims.u-tokyo.ac.jp), A. Ohnishi, Y. Nara, T. Kido,
T. Maruyama, N. Otuka, K. Niita, H. Takada, S. Chiba
   Sideward peak of intermediate mass fragments in high energy
   proton induced reactions
   Nucl. Phys. A, 707, 193 (2002).

V. M. Maslov (maslov@bas-net.by), Yu. V. Porodzinskij, M. Baba,
A. Hasegawa
   Evaluation of the unresolved resonance range of ^238^U
   Ann. Nucl. Energy 29, 1707 (2002).

M. Saito (msaitoh@nr.titec.ac.jp), A. Stankovskii, V. Artisyuk,
Yu. Korovin, A. Shmelev, Yu. Titarenko
    Radiological hazard of spallation products in accelerator-
    driven system
   Nucl. Sci. Eng., 142, 22 (2002).

これらの論文入手については,直接著者に連絡してください.

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