NDDニュースレター 2002年 第6号 (通巻第30号)

2002/5/29

Table of Contents

トピックス

評価国際協力ワーキングパーティー(WPEC)会合

(原研) 柴田 恵一

標記の会合が5月23、24日にベルギーのゲールにあるIRMMで行われました。日 本からは馬場氏(東北大)、河野氏(九大)と筆者の3人が参加しました。

測定に関しては、日本、欧州、米国、ロシア、中国でのアクティビティーが紹 介されました。中性子エネルギー1eVから250 MeV迄のデータを取得できるCERN のn-TOFは昨年4月に稼働しましたが、予想外の中性子のバックグラウンドのた め長らくシャットダウンしていました。n-TOFは今年の5月から再稼働されてい ます。

各国のライブラリーの現状が報告されました。日本からは、JENDL-3.3が5月10 日付けで一般公開されたことを伝えました。米国はENDF/B-VIIの2005年公開に 向けて活動をしています。JEFF-3.0は今年の4月26日に公開されたそうです。日 本はデータバンク加盟国でありながら、JEFF-3.0が公開された旨の通知を少な くとも核データセンターは受け取っておりません。全くどうなっているのか良 く分かりません。なお、JEFF-3.0は軽水炉の臨界性をかなり過小評価するため、 来年、早くも改訂版を出す予定です。その改訂版で共分散及びガンマ線データ の充実も図るようで、JEFF-3.0は暫定版のようです。

各サブグループ活動の概要は以下の通りです。

SG6(遅発中性子データ)
    秋に報告書が出版される。活動は終了。
SG7(標準断面積)
    平行して軽核の標準断面積について研究するIAEA CRPを立ち上げた。
SG9(U-235核分裂中性子スペクトル)
    熱中性子エネルギーでのスペクトルを再検討した。スペクトルはENDF/B-
    VIより硬くなる模様。
SG19(放射化断面積)
    IRMMでの実験及びAvrigeanuのグループによる解析が進んでいる。
SG20(共分散評価及び処理)
    日本は分離共鳴パラメータの共分散を推定する簡便な方法を開発した。
SG21(FP断面積の評価)
    17核種のレビューを行った。今後さらにレビューを行う予定。
SG-A(核模型コード)
    モジュールライブラリーを作成する。
SG-B(ENDFフォーマット)
    WPECでの改訂要求をCSWEGに通知する。
SG-C(High priority request list)
    以前から、もっとコンパクトなリストを作成するべきだとの議論があったが、
    それを受ける形で、とりあえず現在のグループは解散することになった。
    今後一年間かけて、どういうリストを作るべきか等を議論する。

新しいサブグループの提案

"Recommended Nuclear Data Modifications for Improved LEU-LWR
Reacativity Predictions"

これはCEA Cadaracheのグループから提案されたものです。上記にあるように JEFF-3.0ではU-235共鳴パラメータとしてLeal et al.の評価値を採用したこと により、LWRの実効増倍率をかなり過小評価することが分かっています。これ は、かなり致命的で、早急に改善する必要があるため、このサブグループが提 案されました。U-238データを主に検討することになります。日本からは、河 野氏(九大)が参加することになりました。

次回WPEC会合 2003年5月後半の米国サンディエゴ開催で、準備が進められることになりました。

Model Meeting 2002 at Geel

(九大) 河野 俊彦

2002年のWPEC開催前2日間,WPECと同じ場所で核反応モデルコード開発に関す る会合が開かれました.この会合は昨年SantaFeで行われたものの続きという 位置づけで,IAEAのM.Herman氏が中心になって活動しているものです.今年は, 日本からは,柴田氏(原研)と私の2名が参加しました.会議の趣旨は,実は少々 曖昧なところあるのですが,要するにGNASHのような前平衡 + HF統計模型計算 プログラムを作成しているグループが,お互いに協力するための場といった感 じです.

日本ではGNASHが良く知られていますが,現在,GNASHの新しいversionである McGNASHがLANLの理論グループで開発されています.元々はM.Chadwick氏によっ て作られていたものですが,最近,P.Talou氏がFortran90を使ってMcGNASHを 書き直しており,少々ややこしい状況になっているようです.

JEFF関連では,A.Koning氏が中心となって進めているTALYSコードがあります. これもGNASHと同等(それ以上?)の計算をすることができ,間もなく公開される そうです.ちなみに「タリス」とはパリとブリュッセルを結ぶTGVの名前 "THALYS" から来ているそうです.

M.Herman氏は,すでに公開されているEMPIREコードの開発を続けており,これ を用いて実際に核データ評価を行った例が,昨年のND2001でも報告されていま した.

コード開発に用いる言語に関する議論が,会議の話題の多くを占めました. FORTAN77 はもう止めましょうという話で,できるだけ Fortran90 に移行する 予定です.もっとも,ECISのようなFOTRAN77のコードが組み込まれているので, それらは結局Black Boxとして扱わざるをえないことになり,全てをFortran90 に移行するのは不可能です.筆者はもっぱら C を使っており,Cで書かれたコー ドを紹介しましたが,この議論においては方言扱いです.

最終的には,各開発者が所有している種々のプログラムあるいはその断片をモ ジュール化してライブラリとしてまとめ,今後の開発に利用しようということ で話がまとまりました.このようなコード(あるいはコードシステム)には, ECIS の様な他人が作ったものが組み込まれており,これらを安易にライブラ リ化して公開するのは,著作権に関してかなり問題がある気がします.私はこ の件について発言しましたが,理解を得るには時間がかかりそうです.

会合の報告

平成13年度核データ部会会計報告

(単位:円)

1. 収入
前年度  繰越金        48,390
配付金               160,000
会費                   1,500(平成12年度未納分)
セミナーテキスト           0
セミナー残金               0
論文集売上                 0
雑収入                     0
[収入合計]         209,890

2. 支出
会議費                15,000(注1)
通信費                     0
「会報」印刷               0
「ニュース」印刷           0
雑印刷費                   0
講師謝金・旅費        63,355(注2)
セミナー補助金             0
会員管理費            60,000(注3)
その他                 5,500(注4)
[支出合計]         143,855

3. 収入支出差額       66,035

注1 平成13年9月総会の弁当代:500円×30個
注2 平成13年9月の4部会合同講演の旅費負担金及び
    平成14年3月の部会総合講演の非会員講師旅費・謝金
注3 部会から学会事務局への定額支出で、オフコン借料等に充当している。
注4 李大遠運営委員への弔電費

平成14年度核データ部会収支予算

                    (単位:円)

1. 収入
前年度  繰越金        66,035
配付金収入           149,000
寄付金・賛助金収入         0
セミナーテキスト売上収入   0
その他収入                 0
[当期収入合計]     215,035

2. 支出
会議費                30,000(注1)
通信・発送費           4,000
会報印刷費                 0
ニュース印刷費             0
雑印刷費                   0
講師謝金・旅費        55,000
セミナー補助金             0
会員管理費            60,000
その他支出                 0
予備費                     0
[当期支出合計]     149,000

3. 当期末収支差額     66,035

注1 これまで総会弁当代に当てていたが、今後は部会費から
    弁当代は支出できなくなったので他の費目で用いる予定。

部会員の最近の成果

K. Watanabe (kenichi@avocet.nucl.nagoya-u.ac.jp), T. Iguchi
   Trace Element analysis using Resonant Laser Ablation
   J. Nucl. Sci. Technol., 39, 312 (2002).

S. Yoshida (neutron@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp), I. Murata,
A. Takahashi
   Asessment of Tritium Behavior in Man Using a Modified
   Three-Compartment Model
   J. Nucl. Sci. Technol., 39, 316 (2002).

K. Oyamatsu (oyak@asu.aasa.ac.jp)
   Exploring Neutron-Star Matter Using RI Beam
   J. Nucl. Sci. Technol., 39, 337 (2002).

T. Ama (ama-tsuyoshi@tepsys.co.jp), H. Ikeda, S. Kosaka,
H. Hyoudou, T. Takeda
   Effect of Moderator Density Distribution of
   Annular Flow on Fuel Assembly Neutronic Characteristics
   in Boiling Water Reactor Cores
   J. Nucl. Sci. Eng., 39, 487 (2002).

O. Shcherbakov (shcherba@tokai.jnc.go.jp), H. Harada
   Resonance Self-Shielding Corrections for
   Activation Cross Section Measurements
   J. Nucl. Sci. Eng., 39, 548 (2002).

M. Sasaki, E. Kim, T. Nunomiya,
T. Nakamura (nakamura@cyric.tohoku.ac.jp),
N. Nakao, T. Shibata, Y. Uwamino, S. Ito, A. Fukumura
   Measurements of High-Energy Neutrons Penetrated
   Through Concrete Shields Using Self-TOF, NE213,
   and Activation Detectors
   Nucl. Sci. Eng., 141, 140 (2002).

K. Suyama (kenya@s4a.tokai.jaeri.go.jp), H. Mochizuki, T. Kiyosumi
   Revised Burnup Code System SWAT: Description and
   Validation Using Postirradiation Examination Data
   Nucl. Technol., 138, 97 (2002).

K. Ogata (kazuyuki@rcnp.osaka-u.ac.jp), Y. Watanabe,
Sun Weili, M. Kohno, M. Kawai
   Semiclassical distorted wave model analysis of
   the complete set of spin transfer coefficients for
   multistep direct (p,nx) at 350 MeV
   Nucl. Phys. A, 703 152 (2002).

これらの論文入手については、直接著者に連絡してください。

核データ部会編集委員会からのお知らせ

核データ部会ホームページの画像募集

核データ部会のホームページ

http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/~ndd/index.html

にある画像を募集いたします.現在の画像は断面積のグラフをデザインしたも のになっていますが,部会員の皆様から頂いた画像を一定期間,簡単な説明と 共にこの部分に表示いたします.実験施設の写真やイラスト等,内容はなんで も構いませんが,できれば核データに関連したものをお願いします.

画像サイズ : 縦200dot x 横300dot程度
フォーマット : jpg, gif, png

上のフォーマット以外でも受付ますが,編集の方で変換させていただきます. 画像を添付の上,編集委員 NDDEditors@ndc.tokai.jaeri.go.jp までメー ルでお送りください.なお,画像には簡単な説明をお願いします.また画像説 明から研究機関へのリンクを付けたい場合は,その旨御連絡頂ければ対応いた します.

核データ部会からのお知らせ

● 現在の部会員数:133名

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