NDDニュースレター 2002年 第4号 (通巻第28号)

2002/4/19

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トピックス

新任に際し思うこと

(京大炉) 小林 捷平

この度は図らずも核データ部会の部会長を務めさせて戴くことになりました京 大原子炉実験所の小林でございます。核データの大先輩である更田先生の後任 と言う「ウツワ」ではございませんが、部会の皆様のご協力、ご支援を戴きな がら、微力ではございますがお役目を果たすことができればと願っております。

新任のご挨拶と言えるほどのものでもございませんが、日頃から核データ実験 に対して個人的に感じていること等をご紹介してご挨拶に替えさせて戴きます。

核データは、今さら言うまでもなく、原子力開発・研究において不可欠であり、 原子炉の核的・熱的評価、及び環境影響評価などにかかわる安全性、あるいは 経済性評価にとっても極めて重要である。また、宇宙創生の解明においても核 データの重要性は増してきている。原子力の黎明期から核データへの関心は高 く、1960年代から1990年代の初めにかけては、多種多様の核種、それぞれのエ ネルギー領域における実験が実施され、理論解析面でも計算機の発達と共に著 しい進歩が見られた。評価済核データについても整備が進み、核データ活動の 最盛期とも言える時代であったと思われる。1990年代に入ると世界的なすう勢 としては一時期ほどの活動にも陰りの傾向が見受けられるようになってきたも のの、高エネルギー加速器を念頭においた核データにも関心が持たれるように なり、いわば核データ活動の成熟期として地道な実験研究が続けられている。

一方では、社会情勢の変化と共に信頼度の高い核データへの要請は一層高まっ てきている。最近では高レベル放射性廃棄物の処理処分技術、その研究開発の 観点から、アクチニド(MA)/超ウラン(TRU)核種、長寿命核分裂生成物(LLFP) 核種に関する核データに大きな関心が寄せられている。しかし、これらの核種 に関する核データは、安定核種の場合と異なり実験上の困難を伴うため、実験 データ数、信頼度において従来のデータは必ずしも十分とは言い難い状況にあ る。世界的な評価済核データ間においても差異が見受けられるのは、実験デー タの不足、欠落もその原因であろうと考えられる。実験の面からこれらの問題 点を考えてみれば、MA/TRU・LLFPは一般的には放射性であるため、実験におけ る十分な信号を得るためには強力な中性子源が必要であること、これらの試料 には同位体が多く、それらは不純物となるので質量分析も含めた高純度試料が 不可欠であること、これらの試料を扱える熟練した実験者/技術者が求められ るほか、核燃料・RI専用の取扱施設やその取扱量に制限が生じる等を挙げる ことができよう。特にMA/TRU・LLFP試料を用いる実験では、その試料作成の素 性が明らかであることが望ましい。今後、さらに核データ活動を魅力あるもの にして行くためには、これらの問題に立ち向かいつつ、より一層信頼度の高い 核データの取得に努めることではないだろうか。粗雑なデータは核データへの 信頼度を損なうことになりかねないので、その点は十分注意を要するところで ある。

21世紀を迎えた今日においても、高エネルギー領域も含めた核データにはなお 不十分な点があり、信頼度の高いデータへの要請は留まることはないと思われ る。初心に返って、社会のニーズに応える核データとは何か、各実験者/研究 者はどの部分について寄与できるかをよく検討して戴いた上で、互いにこれら の情報交換を行える場を設けることにしては如何でしょうか。核データ部会の ホームページを核データ活動の紹介と併せて、ユーザからの要望、実験者から の実験試料への期待/希望、理論グループとの意見交換などが行える窓口とし て活用していくことも考えられる。

核データ部会は、部会員の活動と皆様あっての部会でありますので、新しい部 会の仲間を増やしていくことも重要な課題であります。今後とも皆様のご理解 とご支援、ご協力をお願い申し上げます。

会合の報告

第5回核データ部会総会議事録

平成14年3月29日の12:00〜13:00,核データ部会総会を神戸商船大学(E会場)に て開催した.参加者は約20名であった.

1. 新旧部会長挨拶 (更田前部会長,小林新部会長)

2. 報告・審議事項

配付資料に基づいて,以下のような報告があった.また,審議事項については 適宜審議を行った.

● 企画運営報告 (山野委員)

企画担当委員より,次のような報告がなされた.

  1) 平成13年度に学会誌にて連載講座「核データ」を連載し,一般会員から
     好評を得た.
  2) 炉物理部会・核データ部会合同「日韓ジョイントセッション」を2001年
     秋の大会にて開催した.次回のジョイントセッションは,韓国光州で5月
     23,24日に開かれ,日本の核データ分野から2名の参加を予定している.
  3) 2002年春の年会では天体核物理,準位密度,核データライブラリのベン
     チマークに関する総合講演を企画した.

また,第2回4部会合同企画セッションに関する報告が馬場委員よりなされた. 第1期計画として位置付けられている中性子散乱施設に対して,ビームポート を要求する原案を準備している所である.実験装置そのものの提案や,外国を 含めたユーザグループの見積りが必要である.

日韓交流の一貫として,夏の学校を韓国で開催してはどうかという提案が,石 橋氏(九大)からあった.この件については第2期運営委員企画担当で検討する こととした.

● 編集担当活動報告 (中川委員)

編集担当委員より,NDDニュースレター発行についての報告がなされた.前回 部会総会より,第21号〜27号を発行し,2年間の委員任期の間,月1報の発行ペー スを守った.NDDニュースレターには,部会員の情報交換の場として部会員の 論文リストを掲載しているが,出版論文を編集委員が調査して掲載しているの で全てを網羅するのは難しい.部会員からの情報提供をお願いした.

● 平成13年度部会会計報告 (井頭委員)

平成13年度の収入は,会費と前年度繰越金等の209,890円である.支出総額は, 総会当日の弁当代と総合講演講師謝金・旅費,会員管理費,その他を加えて約 14万7千円となっている.平成14年3月の総合講演の旅費・謝金の正確な金額が 現段階での会計報告に含められていないが,次年度の繰越金は6万円程度にな る予定である.

最終的な会計報告書は3月末日に再度作成することとし,平成13年度の部会会 計報告は承認された.

なお,部会への配付金は前年度の会員数の実績に基づいて計算されるため,平 成14年度の配付金収入は減少している.

● 部会推薦評議員候補

部会推薦評議員候補選任の内規案に従い,小林部会長,山野副部会長を評議員 候補として部会から推薦することを承認した.

会合等のお知らせ

10th International Conference on Nuclear Reaction Mechanisms

Varenna, Villa Monastero
June 9-13, 2003

ProgramとApplication Formは6月に配布される予定.

NEA Online Bulettin (April)

http://www.nea.fr/html/new.html

部会員の最近の成果

M. Kinno, K. Kimura, T. Ishikawa, T. Miura, S. Ishihama,
N. Hayasaka, T. Nakamura
    Correlation between Tritium and ^152^Eu Induced in
    Various Types of Concrete by Thermal Neutron Irradiation
    J. Nucl. Sci. Technol., 39, 215 (2002).

T. Imamura, M. Saito, T. Yoshida, V. Artisyuk
    Potential of ^231^Pa for Gas Cooled Long-life Core
    J. Nucl. Sci. Technol., 39, 226 (2002).

これらの論文入手については、直接著者に連絡してください。

核データ部会からのお知らせ

● 現在の部会員数:133名

●「部会員の最近の成果」に載せる情報をNDDeditors@ndc.tokai.jaeri.go.jp までお知らせ下さい。