NDDニュースレター 2002年 第3号 (通巻第27号)

2002/3/22

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トピックス

KEK-JAERI大強度陽子加速器計画について

(東北大)馬場 護

原研と高エネルギ−加速器研究機構(KEK)のジョイントプロジェクトとして, 大強度陽子加速器の建設がスタートしました。

詳細は http://jkj.tokai.jaeri.go.jp

この計画では

   1) 400 MeV陽子線形加速器、400-600 MeV超伝導線形加速器、
   2) 3 GeV 陽子シンクロトロン(333マイクロA)
   3) 50 GeV 陽子シンクロトロン(15マイクロA)
からなる大強度加速器コンプレックスと付随する実験装置を建設して,
   a) 50 GeV陽子を用いた原子核・素粒子物理
   b) 中性子散乱を用いた物質・生命科学(3 GeV)
   c) カミオカンデなどと連携したニュートリノ物理
   d) 核変換物理・工学(600 MeV)
の新しい研究を推進することを目的としています。

この施設では,1 MW(最終的は5 MW)という例のない大強度が特徴の一つであ り,これによって生成される大強度中性子ビームや中高エネルギーの陽子ビー ムは核データ測定にも極めて有効と考えられます。特に,中性子散乱施設で実 現される大強度の減速中性子ビームによって,従来不可能であった強放射能で サンプル量の少ないマイナーアクチニドの実験等が可能になると期待されます。 しかし,核データ測定設備は現在計画に入っておらず,核データ部会では原子 力学会の他部会(炉物理,放射線工学,加速器・ビーム科学)と共同して設備 要求を検討しています。核データ部会については私が窓口を仰せつかり,核デー タ実験者及び施設設計チームの方々と検討を進めてきました。

核データでは,広いエネルギー範囲をカバーする必要がありますので,上述の 加速器のエネルギー範囲に応じて

   1)低エネルギー領域:中性子散乱施設
   2)中エネルギー領域:核変換物理実験施設
   3)高エネルギー領域:50 GeVビームテスト実験コース
での実験を考えています。

1)の中性子散乱施設は第一期計画として位置づけられており,計画の策定を急 ぐ必要があり,東工大井頭先生に検討を御願いし,第一次案を作成していただ いた段階です。

2)は,エネルギーの高い領域の実験に必要な短パルスの生成が可能な設備部 分として着眼したもので,核変換物理実験施設で計画されているTOF設備が利用 できると考えられます。

3)この場合は,ビームピックアップ型の実験になるものと考えられ,汎用のビー ムコースを利用して実験を行うことが考えられます。2),3)は第二期になりま すので1)に比べ若干時間的余裕はあります。

この加速器計画では厳しい予算的制約の中,他の計画と競合しながら,場所や 設備を獲得しなければならないという核データのみならず原子力学会分野にとっ ても初めての試練を乗り切る必要があります。そのため,研究の意義,着眼点 や手法の新しさなどいろんな面で計画を練って洗練して行く必要があります。

これについては,秋の原子力学会で四部会合同セッションが開かれ,原子力学 会としての議論の端緒となりました。この春の年会でも合同セッションが開か れ,その後の進展が論議されます。核データ部会からは1)と2),3)について提 案を述べる予定です。多くの方の参加を期待します。また,ご意見等をお寄せ 下さい。

KEK-JAERI大強度陽子加速器計画(低エネルギー領域)

(東工大)井頭政之

KEK-JAERI大強度陽子加速器計画が進んでいます。

核データ部会としても東北大の馬場護先生を纏め役として、統合計画の核破砕 中性子源を用いた実験装置を提案すべく各方面と調整しています。この過程で、 低エネルギー領域(数100keVまで)の実験装置については井頭が担当となり、 計画が先行しているAstrophysicsグループ(阪大RCNPの永井泰樹先生が纏め役) と共同で提案するよう調整することになりました。現在、提案書の最終案を作 成する作業を行っています。

この装置を使って以下のようなプロジェクト研究を予定しています。

1.速中性子反応と宇宙核物理

重元素は恒星内でslow(s)過程及びrapid(r)過程で合成される。s及びr過程元素 合成に関連して以下の問題に取り組む。

   (A) s過程
     (A-1) 低金属度恒星内元素合成
     (A-2) 同位体異常の問題
     (A-3) 中性子密度の問題
     (A-4) 中性子源の問題
   (B) r過程
     (B-1) r過程元素合成の問題
     (B-2) 宇宙年齢の問題
     (B-3) r過程元素合成と核分裂断面積

2.マイナーアクチニド及び長寿命核分裂生成物の中性子核データ

LLFP及びMAの核変換処理基礎研究、ADS研究開発、及びエネルギー増幅研究に重 要な中性子核反応断面積に関連して以下の課題に取り組む。

(1) LLFPとMAの熱外中性子捕獲断面積の精密測定(En=0.5eV〜500keV)
(2) LLFPとMAの熱外中性子捕獲ガンマ線スペクトルの測定(En=0.5eV〜500keV)
(3) MAの熱外中性子核分裂断面積の精密測定(En=0.5eV〜500keV)
(4) LLFP及びMAの熱外中性子核反応の系統的研究

本提案についてのご意見を井頭(iga@nr.titech.ac.jp)までお寄せ頂ければ幸 いです。

会合等のお知らせ

原子力学会2002年春の年会(再掲)

核データ(第2区分)関連プログラム

   3月27日13:00 - 15:00 E会場 4部会合同企画セッション
      (炉物理,放射線工学,加速器・ビーム科学,核データ)

   3月28日 9:00 - 10:30 D会場 核データ部会総合講演

   3月29日 9:00 - 12:00 E会場 核データ関連のセッション(11件)
          12:00 - 13:00 E会場 核データ部会総会
          13:00 - 14:05 E会場 核データ関連のセッション(3件)

プログラム(pdf)は以下のURLからダウンロードできます。セッション内 容を御確認ください。

http://wwwsoc.nii.ac.jp/aesj/meeting/2002spr1.pdf

Workshop on Nuclear Structure and Decay Data Evaluation

      IAEA, Vienna, 18 - 22 November, 2002
      詳細は
http://www-nds.iaea.or.at/ann-nsdd.html
      を御覧ください。

FREDERIC JOLIOT & OTTO HAHN SUMMER SCHOOL IN REACTOR PHYSICS

"Nuclear Waste Transmutation and Related Innovative Technologies"

      CEA Cadarache, France, August 21-30, 2002
      詳細は
http://www.cad.cea.fr/fjohss/fjohss1.htm
      を御覧ください。

部会員の最近の成果

K. Kobayashi (koba@rri.kyoto-u.ac.jp), S.Y. Lee, S. Yamamoto,
H.J. Cho, Y. Fujita
    Measurement of Neutron Capture Cross Section of ^237^Np
    by Linac Time-of-Flight Method and with Linac-driven
    Lead Slowing-down Spectrometer
    J. Nucl. Sci. Technol., 39, 111 (2002).

T. Kai (kai@shield4.tokai.jaeri.go.jp), M. Teshigawara,
N. Watanabe, M. Harada, H. Sakata, Y. Ikeda
    Optimization of Coupled Hydrogen Moderator
    for a Short Pulse Spallation Source
    J. Nucl. Sci. Technol., 39, 120 (2002).

T. Kitada (kitada@nucl.eng.osaka-u.ac.jp), T. Takeda
    Evaluation of Eigenvalue Separation by
    the Monte Carlo Method
    J. Nucl. Sci. Technol., 39, 129 (2002).

S. Chiba (sachiba@popsvr.tokai.jaeri.go.jp), T. Fukahori,
K. Shibata, B. Yu, K. Kosako, N. Yamamuro
    JENDL Fusion File 99
    J. Nucl. Sci. Technol., 39, 187 (2002).

M. Sugawara, S. Mitarai, H. Kusakari, M. Oshima, T. Hayakawa,
Y. Toh, Y. Hatsukawa, J. Katakura, H. Iimura, Y. H. Zhang,
M. Sugie, Y. Sato
    Rotational bands of ^159^Dy
    Nucl. Phys. A699, 450 (2002).

これらの論文入手については、直接著者に連絡してください。

核データ部会からのお知らせ

● 現在の部会員数:133名

●「部会員の最近の成果」に載せる情報をNDDeditors@ndc.tokai.jaeri.go.jp までお知らせ下さい。