(理化学研究所)小浦寛之
原子質量の実験値をまとめているG. Audiらのグループが作成している
Atomic Mass Data Center http://csnwww.in2p3.fr/amdc/
というWebページがある。ここでは彼等がまとめた評価済み質量実験値(Atomic Mass Evaluation, AME) のファイルをはじめ、最近の質量測定値や、質量推定 の理論データなどがダウンロードできるようになっている。先日、我々のグル ープが作成した質量公式がこのWebページで紹介され、データファイルをダウ ンロードできるようになったので紹介させていただく。
この質量公式を我々はKUTY(著者の小浦・宇野・橘・山田の頭文字よりとった) 公式[1]と呼んでいるが、大局的部分、平均的偶奇部分、殻部分から成るもの である。前2項については我々のグループが以前作成したTUYY質量公式[2]の それとほぼ同様であるが、殻部分に関しては次のような方法で求めた殻エネル ギーを用いる(TUYY公式では経験的に求めていた)。それは、最初に球形の一 粒子ポテンシャルを用いて球形核に対する殻エネルギーを計算し、さらに変形 核をいろいろな大きさの球形核の重ね合わせと見て変形核の殻エネルギーを導 きだすという独特のやり方である。この質量公式は軽い核(陽子数Z = 2、中性 子数N = 2)から超重核までの核種領域の基底状態の質量と形状を与え、この質 量値の AME 1995の実験値からの標準偏差は約680 keVとなっている。このKUTY 公式のデータファイルは、現在、上述のWebページ内のURL
http://csnwww.in2p3.fr/AMDC/theory/Kuty00_m246.dat
からダウンロードできる。これにはZ=2、N=2からZ=130、N=200までの原子核に ついて質量値Mcal、殻エネルギーEsh、変形パラメータalpha_2、alpha_4、alp ha_6が載せてある。ファイルのヘッダに簡単な説明と参照文献が記載してある ので御利用されたい。
この質量公式はすでにいくつかの方面で利用されている。例えば核データセン ター作成の「核図表2000(堀口隆良等、2001年)」において、半減期未測定核 種の予測半減期の推定に必要なQ値を得るために利用され、また、理化学研究 所作成のビデオ「元素誕生の謎にせまる(望月優子等、2000年)」において紹 介されているβ崩壊安定曲線の図の作成およびr過程元素合成の存在量の予測 の数値計算に利用されている。
参考文献(原研中性子科学研究センター)大井川 宏之
加速器駆動型未臨界炉(ADS)と長寿命放射性廃棄物の核変換技術に関して原 子核物理学の観点から議論することを目的に、標記ワークショップが平成14年 1月24日と25日に、原研東海研にて開催された。大学と原研を中心に、約80名 の参加があり、2日間にわたって活発な議論が行われた。
会議冒頭、本ワークショップの世話人である永井阪大教授より、「原研−KEK 共同で進めている大強度陽子加速器プロジェクトを含むADS及び核変換に関す る研究開発に、原子核物理コミュニティーとして貢献できる事項を模索した い」との趣旨説明があった。
続いて統合計画の現状、ADSの原理、原研における加速器駆動核変換の取り組 みに関する講演が行われた。ADSの型式として、溶融塩を用いた熱中性子系と、 原研の提案する高速中性子系の得失について議論があった。
加速器開発と核破砕ターゲットに関する講演では、特に加速器の信頼性に関心 が寄せられた。サイクル機構における核変換研究の現状に関する講演では、高 速炉を用いたシナリオ研究、断面積測定、燃料等の照射実験について説明があ り、ADSによらない核変換技術においても断面積測定が重要であることが示さ れた。京大炉におけるADS研究への取り組みに関する講演では、京大炉の将来 計画及びKUCAを用いた未臨界実験について説明があった。
BNLの高橋博氏の特別講演では、ADSとATW概念の解説、地下埋設型炉の概念提 起等がなされた。
原子核物理関連の講演としては、核反応断面積測定と評価、高エネルギー粒子 の挙動シミュレーション手法、Th-229の超低エネルギー励起状態等に関する講 演があった。また、原子力学会における大強度陽子加速器計画への要望取りま とめに関して現状説明があった。
自由討論では、ADSや核変換に対する核物理コミュニティーの貢献方法、大学 における研究と統合計画における研究の進め方等について活発な討議が行われ た。今後も、本ワークショップを通して、核物理と原子力の緊密な連携を図っ ていく必要があると考えられる。
プログラム(pdf)が以下のURLからダウンロードできますので、核データ関連 セッションを御確認ください。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/aesj/meeting/2002spr1.pdf
なお、NDD Newsletter No.25
http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/~ndd/archive/ndd0025.html#sub2
で紹介した、セッションに加えて、核データ部会、炉物理部会、放射線工学部 会、加速器・ビーム科学部会合同の企画セッションもありますので、お忘れな く。
3月27日(水)13:00〜15:00、E会場 大強度陽子加速器計画の進展と提案 座長:(北大)鬼柳 善明 (1) 大強度陽子加速器施設の建設の現状 (原研)大山 幸夫 (2) 提案の概要について 1) 提案の全体スコープ (北大)鬼柳 善明 2) 物質・生命科学実験施設 (東工大)井頭 政之 3) 原子核・素粒子実験施設テスト実験施設 (九大)石橋 健二 4) 核変換実験施設(ビームライン) (東北大)馬場 護 5) 核変換実験施設(炉物理) (名大)山根義宏、(東北大)岩崎智彦 6) 提案についての討論
September 16 - 19, 2002, Almaty, Republic of Kazakhstan First Announcement が http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/Mtgs/2002/ENPIA-2002.PDF にあります。
http://www.nea.fr/html/new.html
K.Kobayashi (koba@rri.kyoto-u.ac.jp), T.Iguchi, S.Iwasaki, T.Aoyama, S.Shimakawa, Y.Ikeda, N.Odano, K.Sakurai, K.Shibata, T.Nakagawa, M.Nakazawa JENDL Dosimetry File 99 (JENDL/D-99) JAERI 1344 (Jan. 2002) T.Maruyama, A.Bonasra, S.Chiba (sachiba@popsvr.tokai.jaeri.go.jp) Nuclear Fragmentation by Tunneling Phys. Rev., C63, 057601_1 (2001) ORIGEN2によるPWR燃料燃焼計算結果に適用する核種組成補正因子の導出 須山賢也(suyama@nea.fr)、村崎穣、望月祐志、野村靖 JAERI-Tech 2001-074 (Nov. 2001) K. Suyama (suyama@nea.fr), J. Katakura, T. Kiyosumi, T. Kaneko, Y. Nomura Comparison of Burnup Calculation Results Using Several Evaluated Nuclear Data Files J. Nucl. Sci. Technol., 39, 82 (2002). T. Ama (tama@nucl.eng.osaka-u.ac.jp), H. Hyoudou, T. Takeda Effect of Radial Void Distribution within Fuel Assembly on Assembly Neutronic Characteristics J. Nucl. Sci. Technol., 39, 90 (2002). 「シグマ」特別専門委員会 「シグマ委員会」における核データ収集・評価活動 - 1999, 2000年度の作業報告 - 日本原子力学会誌, 44, 106 (2002).
これらの論文入手については、直接著者に連絡してください。
次の14名が、2月10日を以て次期運営委員に決まりました。正式には、3月29日 の核データ部会総会で承認された後、4月1日より、ご活躍いただくことになり ます。
次期運営委員会委員決定者(敬称略、五十音順、*は現運営委員を示す) 井頭政之(東工大)*、大澤孝明(近大)、小田野直光(海技研)、 河野俊彦(九大)*、小林捷平(京大炉)、瑞慶覧 篤(日立)、 田原義壽(三菱重工)*、千葉 敏(原研)、馬場 護(東北大)*、 原田秀郎(サイクル機構)、深堀智生(原研)、松村哲夫(電中研)、 村田 徹(アイテル)、山野直樹(住友原子力)*。
平成14・15年度の部会推薦評議員候補として、小林捷平氏(京大炉)と山野直 樹氏(住友原子力)を推薦しました。
● 現在の部会員数:133名
●「部会員の最近の成果」に載せる情報をNDDeditors@ndc.tokai.jaeri.go.jp までお知らせ下さい。