NDDニュースレター 2001年 第14号 (通巻第23号)

2001/11/27

Table of Contents

会合の報告

原子力学会第3回企画委員会報告

(武蔵工業大学)吉田 正

11月21日(水)に日本原子力学会第3回企画委員会が開催されました.当部会 の運営に直接関係する項目を中心に審議事項の概要を報告します.

● 研究専門委員会

「マルチスケール輸送現象の解析」,「二相流データベースの評価・整備」 「シビアアクシデント時放射性物質移行に係る熱流動評価」の3つの研究専門 委員会の新設を承認した。

● 枠組み編成会議メンバー選出

任期を終えて退任した3人に代わり,瓜谷,森,渥美の3氏を新任した。第 II区分の波戸芳仁氏(KEK)の後任は瓜谷章氏(産業技術総研)。

● 年会・大会オンライン受付

春と秋の学会における口頭発表申込みのオンライン化を小宮山印刷に発注す ることを了承した。

● 2つのワーキンググループ発足

「年会・大会国際化検討WG」が吉田委員(武蔵工大)を,「国際会議補助金 WG」が奈良林委員(東芝)を,それぞれ主査に発足した。「年会・大会国際 化検討WG」では,年会あるいは大会の国際化につきジョイントセッション (日韓の例など)のあり方を含めて検討する。

● 2002年春の年会

「2002春の年会」(平成14年3月27〜28日,神戸商船大)における特別講演, 招待講演,総合報告を検討した。部会企画セッションが増えたのと開場数の制 約から,企画セッションでの発表を1件あたり30分までで,3〜4件を標準と し,最大でも5件までとすることとした。

● 次回平成14年1月9日10:30〜13:30 (引き続きプログラム編成会)

「マイナーアクチニド核廃棄物の変換のための核分裂生成物収率データ」

第3回調整会議

(原研)片倉 純一

平成13年10月29日から11月 2日にオーストリアのウイーンで開催されたIAEAの 協力研究計画(CRP: Coordinate Research Program)「マイナーアクチニド核 廃棄物の変換のための核分裂生成物収率データ」の第3回調整会議に出席した。

本協力研究計画は、1997 年から 4 年計画で開始され(原研は 1998 年より参 加)、本年がその最終年となっている。この研究計画の目的はマイナーアクチ ニドを処理するための原子炉や加速器駆動システムの概念検討等に必要な核分 裂収率データを入射エネルギー150 MeVまでの範囲で予測するシステマティック スを作成することである。これまで、既存の実験データの収集・評価のほか、 原子核理論に基づく計算や実験データの解析によるシステマティックスが提案 されている。

今回の会議では、参加者のこれまでの進展について報告された。システマティ ックスで有名な米国の Wahl 氏は都合が悪く出席できなかったが、代理出席者 が、これまでのシステマティックスの拡張について報告した。筆者も森山−大 西システマティックスの拡張について報告した。他の参加者もそれぞれ、実験 データの編集・評価、理論計算の試み、新しい測定、システマティックス作成 の試み等について報告した。ただ、現在までのところ、どのシステマティック スも予測性という点では、実用上満足すべき状態にあるとは言えず、本協力研 究をどのように終了させるかが、議論の中心となった。その結果、終了させる に当たって、ベンチマーク計算をこのCRPで提案されている理論計算やシステ マティックスで計算し、比較をすることにより現状を把握するのが良いとの結 論となった。このため、現CRPを1年延長し、その間、このベンチマーク計算を 幾つか代表的な核種、エネルギーについて行うこととなった。ただ、延長が認 められるか不明なため、認められなかった場合は、来年の5月末までに、報告 書を作成するとともに、ベンチマーク計算を縮小し、現作業の中で出来る範囲 で実施することとなった。

ANS 2001 Winter Meeting

(原研)片倉 純一

平成13年11月11日より11月15日まで米国ネバダ州リノ市で開催された米国原子 力学会(ANS)の冬の大会(Winter Meeting)に出席し、原研で整備している 評価済核データファイルJENDLの特殊目的データファイルの一つである JENDL FP Decay Data File を用いた崩壊熱計算について、米国の原子炉崩壊熱の国 内基準 ANS-5.1との比較を含めて報告した。

発表したセッションでは、他にORNLでの崩壊熱計算コードの評価について報告 があった。これは、NRC の使用済燃料の崩壊熱に関する Regulatory Guide 3. 54 の拡張のための評価であった。現在のRegulatory GuideではPWR及びBWRそ れぞれ50及び45 GWd/tまでの燃焼を想定し、冷却時間1年から110年までの崩壊 熱計算法を規定してあるが、測定データは、燃焼度39 Gwd/t以下、冷却時間10 年以下しかなく、この範囲を越える場合、不確実さは大きくなる。実際、測定 データのある範囲では、不確実さは5 %程度であるが、測定データの無いとこ ろではPWRで11 %、BWRで16 %の不確実さを与えてある。現在、この不確実さを 下げるために 51 GWd/t まで燃焼させた燃料での崩壊熱測定が計画されており、 計算コードの評価に利用する予定とのことである。また、燃料の長期貯蔵に伴 い、アクチニド核種の崩壊熱への寄与が大きくなり、現在のANS-5.1では、長 期貯蔵への適用が不十分であるとの報告があった。現在のANS-5.1で考慮され ているU-239及びNp-239以外のアクチニドのFP核種を含む全崩壊熱への寄与は、 原子炉停止後1日で既に約3 %あり、10年では、アクチニドの寄与は約 30 % に なる。この計算結果は、燃焼度や燃焼履歴等に依存する。このため、計算モデ ルの適切な設定が重要となるとの報告であった。

テクニカルセッションの発表とは別に、ANSの基準委員会の炉物理関係の基準 委員会(ANS-19)が12日(月)に開催されたので、出席した。原子力学会事 務局の1名を含む15名が出席した。ここで議論されたのは、ANS-19.1(Nuclear Data Sets for Reactor Design Calculations)、ANS-19.3(Reaction Rate Distributions and Reactivity)、ANS-19.3.4(The Determination of Ther- mal Energy Deposition Rates in Nuclear Reactors)、ANS-19.6.1(Reload Startup Physics Tests for PWRs)、ANS-19.11(Moderator Temperature Coefficient)、ANS-5.1(Decay Heat)、ANS-19.8(Fission Product Yields )、ANS-19.9(Delayed Neutrons)、ANS-19.10(Neutron Transport to PV Cavity)であった。このうち、核データと関連するのは、ANS-19.1、ANS-5.1、 ANS-19.8及びANS-19.9である。ANS-19.1では、現行の基準には米国の評価済フ ァイルENDFしか言及されていないが欧州や日本にも評価済ファイルはあるので、 それらを含めるよう国際的にメンバーを募ろうということであった。また、 ANS-19.8ではDraftが出来ており、検討を継続すると言うことである。ANS-19. 9では、リーダーのParishがIAEAへ移ったため、リーダーが不在となったが、 Wilson氏が引き継ぐこととなった。ANS-5.1の崩壊熱は改訂中で、来年6月まで にはDraftを作成するとの予定である。全般的にどの基準も改定作業はメンバ ー不足もあって遅れているとの印象をもった。

なお、トピカルミーティングとして、臨界安全及び加速器利用の会合が同時に 開催され、聴講することが出来た。

会合等のお知らせ

ISINN-10

ホームページ: http://isinn.dubna.ru/
   期間・場所: 2002年5月22日〜25日、ロシア・ドゥブナ

PHYSOR 2002

ホームページ: http://physor2002.kaist.ac.kr
   期間・場所: 2002年10月7日〜10日、韓国・ソウル
   Topical Area : 核データ、炉心解析の設計、将来炉の設計、運転制御、高
                  度計算、加速器、医療、ラジオグラフ、安全性、研究炉、
                  試験炉、遮蔽、コンピュータコード、教育
   サマリー提出締め切り: 2002年1月15日

Invitation letter 希望の方は、12月15日までに竹田敏一教授(阪大)に、 その旨e-mail(takeda@nucl.eng.osaka-u.ac.jp)してください。

NEA online bulettin

Nuclear Energy Agency (NEA)の最新のニュースレター

   NEA Online Bulettin (November 2001)
http://www.nea.fr/html/new.html

その他の核データ関連会合の予定

http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/~ndd/gakkai.html

部会員の最近の成果

K. Watanabe(kenichi@avocet.nucl.nagoya-u.ac.jp), T. Iguchi, T. Ogita,
A. Uritani, H. Harano
   Development of Failed Fuel Detection and Location Technique Using
   Resonance Ionization Mass Spectrometry
   J. Nucl. Sci. Technol., 38, 844 (2001).

H. Yamana(yamana@HL.rri.kyoto-u.ac.jp), T. Yamamoto, K. Kobayashi,
T. Mitsugashira, H. Moriyama
   Production of Pure ^236^Pu Tracer for the Assessment of Plutonium
   in the Environment
   J. Nucl. Sci. Technol., 38, 859 (2001).

K. Kobayashi(koba@rri.kyoto-u.ac.jp), S. Yamamoto, S.Y. Lee,
H.J. Cho, H. Yamana, H. Moriyama, Y. Fujita
   Measurement of Neutron-Induced Fission Cross Sections  of ^229^Th
   and ^231^Pa Using Linac-Driven Lead Slowing-Down Spectrometer
   Nucl. Sci. Eng., 139, 273 (2001).

H. Sekimoto(hsekimot@nr.titech.ac.jp), K. Ryu, Y. Yoshimura
   CANDLE: The New Burnup Strategy
   Nucl. Sci. Eng., 139, 306 (2001).

これらの論文入手については、直接著者に連絡してください。

核データ部会からのお知らせ

● 現在の部会員数:135名(2001年9月6日現在)

●「部会員の最近の成果」に載せる情報をNDDeditors@ndc.tokai.jaeri.go.jp までお知らせ下さい。