(九大工) 執行 信寛
私たちは9月初旬から約3ヶ月の予定でアメリカニューメキシコ州にあるLos Alamos National Laboratoryに来てます。目的はLos Alamos Neutron Science Center (LANSCE) のWeapon Nuclear Research (WNR)施設での中性子入射中性 子生成二重微分断面積測定のテスト実験です。WNRでは、1MeV以下から800MeV の中性子を生成できます。よって、放出中性子とともに入射中性子のエネルギー も測定する必要があります。現時点では検出器等の調整段階で、どのようなデー タがとれるかは今後の課題です。こちらではRobert C. Haight博士(ND2004の Secretary)にホストになっていただいてます。
研究所はニューメキシコ州で最大の街であるAlbuquerqueから約160km、車で2 時間のところにあります。途中、州都でありND2004開催予定地のSanta Feを通 ります。Los Alamosは標高2000m以上のところにあるせいか、昼間はとても日 差しが強く、サングラスと帽子が手放せなくなりました。また、しばしば熊や コヨーテ、クーガー、鹿などが人目に付くところに現れるそうです。しかし私 は鹿以外は見たことがありません。
ご存じの通り9/11にニューヨークやワシントンでテロがありました。テロのこ とを知ったのはアメリカのメディアではなく、なぜか日本からのメールでした。 実験室にはテレビがないので、CNNなどのWebを見て、初めて事態の重大さがわ かりました。その後、研究所が午前中で閉鎖になるので早く帰るよう指示があ りました。お昼前に研究所を出ましたが、近所は帰宅の車で珍しく渋滞してい ました。幸い翌日から研究所は一見平常通りに戻りました。しかし、Badge Officeがあるところなど警戒が厳重になっているところがあります。LANSCEが ある区域は以前と変わりません。数日後、研究所の看板の側に"God Bless America"の横断幕があったり、国旗を掲げて走る車を見かけるようになり、ア メリカ人の愛国心の高さに感心しました。日本で同じようなことがあっても、 こうはならないでしょう。
ND2001のために一時帰国する際、空港で預ける荷物も全部ひっくり返したり、 セキュリティポイント通過の際、ノートパソコンは鞄から出してX線検査装置 に通すようになっていたりして、安全のためとはいえ、うんざりしました。こ れからアメリカに行かれる方には、鞄の中を整理整頓して出かけられることを お奨めします。
(原研)中川 庸雄
米国の評価済み核データライブラリー ENDF/B-VI の Release 8 が10月23日に 公開されました。release 8 の内容は、
43核種のガンマ線スペクトルの改訂、 Be-9, N-14, F-19, Na-23, Mg0, Al-27, S-0, S-32, K-0, Ca-0, Sc-45, Ti-0, V-0, Cr同位体, Mn-55, Fe同位体, Ni同位体, Cu同位体, W同位体 核分裂生成物(FP)核種15核種の改訂 Mo-95, Tc-99, Ru-101, Rh-103, Pd-105, Ag-109, Xe-131,Nd-143, Nd-145, Sm-147, Sm-150, Sm-151, Sm-152, Gd-155, Gd-157 新評価値 O-16, Cl-35, Cl-37, Sb-121, Sb-123, Pa-232, U-232, Np-236等です。このうち、FP 15 核種の評価は韓国の KAERI とBNL/NNDC の協力で行 われたものです。このほか、Lawrence Livermore 国立研究所で整備された EADL (Evaluated Atomic Data Libraly)、EEDL (Evaluated Electron Data Library)、EPDL (Evaluated Photon Data Library) も ENDF format に変換さ れ、ENDF/B-VI の一部として release 8 に入りました。
データを使いたい方は原研核データセンター中川(nakagawa@ndc.tokai.jaeri .go.jp)までご連絡ください。
(原研)中川 庸雄
「科学と技術のための核データ国際会議ND2001」が10月7日(日)から12日(金) に、つくば市のつくば国際会議場で開催された。
この核データ国際会議は約3年毎に開かれるもので、核データ関連の会議では 最大規模のものである。前回はイタリアのトリエステで開かれ、参加者は 433 人にも及んだ。このときはふんだんに補助が出され、経済的に苦しい国からも 多くの参加者があったと聞いている。
今回は、前回の例にならって資金援助を期待した人もあったのか、発表の申し 込み件数はすさまじく多く、約600件の応募があった。このため、プログラム 部会では、テクニカルツアーなどの予定を取りやめ、出来るだけ多くの発表が 出来るよう配慮してプログラム編成を行った。4月にプログラム部会での選考 結果を発表した時点で、招待講演55件、口頭発表117件、ポスター発表384件で あった。
しかし最終的には、経済的な理由で参加できない人が多く、更に9月11日のテ ロ事件の影響で米国とフランスの数名の発表が減り、以下のような数字になっ た。
基調講演 4 招待講演 50 口頭発表 116 ポスター発表 205 Summary talk 3 合計 378
参加者は、日本を含めて40ヶ国、4国際機関からの373名(日本から167人、海外 から206名)であった。米国のテロ事件のため、海外からの参加者数が激減する ことを恐れたが、結果的にはさほどの減少も無くまあまあの状況であったと思 われる。
会議の中身については、事務局員は殆ど講演を聴く時間が無かったので、残念 ながらコメント出来る立場ではない。近いうちに、原子力学会誌に報告記事が 書かれる予定なのでそれをお待ちいただきたい。さらに会議の proceedings が、日本原子力学会誌の supplement No.2 として出版される予定である。
会場となった、茨城県つくば市つくば国際会議場は、真新しい県営の施設で、 ゆったりとした設計のハイテク感覚を漂わせる建物である。ND2001の会場とし て申し分ないものであった。会期は、秋の天気が安定している期間として東京 オリンピックの開会式が開かれたという10月10日を含む週ということでこの期 間を選んだのであったが、きれいな秋晴れとは行かず、肝心の10日は台風のよ うな悪天候であった。そのほかは、さほどの天候の崩れもなかったのは、幸い であった。
標記のニュースレターが以下のURLにあります。
Nuclear Data Newsletter Issue #32 (September 2001) http://www-nds.iaea.org/ndlett32.pdf
Nuclear Energy Agency (NEA)の最新のニュースレター
NEA Online Bulettin (October 2001) http://www.nea.fr/html/new.html
Guinyun Kim(gnkim@postech.ac.kr), Youngseok Lee, In Soo Ko, Moo-Hyun Cho, Won Namkung, Daewon Lee, Hyunduk Kim, Youngho Kim, Tae-Ik Ro, Youngki Min, Jongsun Moon, Masayuki Igashira, Satoshi Mizuno, Toshiro Ohsaki, Sam Yol Lee Measurement of keV-neutron capture cross-sections for ^164^Dy Ann. Nucl. Energy, 28,1549 (2001).
これらの論文入手については、直接著者に連絡してください。
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