NDDニュースレター 2001年 第13号 (通巻第22号)

2001/10/25

Table of Contents

トピックス

Los Alamos滞在記

(九大工) 執行 信寛

私たちは9月初旬から約3ヶ月の予定でアメリカニューメキシコ州にあるLos Alamos National Laboratoryに来てます。目的はLos Alamos Neutron Science Center (LANSCE) のWeapon Nuclear Research (WNR)施設での中性子入射中性 子生成二重微分断面積測定のテスト実験です。WNRでは、1MeV以下から800MeV の中性子を生成できます。よって、放出中性子とともに入射中性子のエネルギー も測定する必要があります。現時点では検出器等の調整段階で、どのようなデー タがとれるかは今後の課題です。こちらではRobert C. Haight博士(ND2004の Secretary)にホストになっていただいてます。

研究所はニューメキシコ州で最大の街であるAlbuquerqueから約160km、車で2 時間のところにあります。途中、州都でありND2004開催予定地のSanta Feを通 ります。Los Alamosは標高2000m以上のところにあるせいか、昼間はとても日 差しが強く、サングラスと帽子が手放せなくなりました。また、しばしば熊や コヨーテ、クーガー、鹿などが人目に付くところに現れるそうです。しかし私 は鹿以外は見たことがありません。

ご存じの通り9/11にニューヨークやワシントンでテロがありました。テロのこ とを知ったのはアメリカのメディアではなく、なぜか日本からのメールでした。 実験室にはテレビがないので、CNNなどのWebを見て、初めて事態の重大さがわ かりました。その後、研究所が午前中で閉鎖になるので早く帰るよう指示があ りました。お昼前に研究所を出ましたが、近所は帰宅の車で珍しく渋滞してい ました。幸い翌日から研究所は一見平常通りに戻りました。しかし、Badge Officeがあるところなど警戒が厳重になっているところがあります。LANSCEが ある区域は以前と変わりません。数日後、研究所の看板の側に"God Bless America"の横断幕があったり、国旗を掲げて走る車を見かけるようになり、ア メリカ人の愛国心の高さに感心しました。日本で同じようなことがあっても、 こうはならないでしょう。

ND2001のために一時帰国する際、空港で預ける荷物も全部ひっくり返したり、 セキュリティポイント通過の際、ノートパソコンは鞄から出してX線検査装置 に通すようになっていたりして、安全のためとはいえ、うんざりしました。こ れからアメリカに行かれる方には、鞄の中を整理整頓して出かけられることを お奨めします。

ENDF/B-VI Release 8

(原研)中川 庸雄

米国の評価済み核データライブラリー ENDF/B-VI の Release 8 が10月23日に 公開されました。release 8 の内容は、

 43核種のガンマ線スペクトルの改訂、
   Be-9, N-14, F-19, Na-23, Mg0, Al-27, S-0, S-32,
   K-0, Ca-0, Sc-45, Ti-0, V-0, Cr同位体, Mn-55,
   Fe同位体, Ni同位体, Cu同位体, W同位体

 核分裂生成物(FP)核種15核種の改訂
   Mo-95, Tc-99, Ru-101, Rh-103, Pd-105, Ag-109,
   Xe-131,Nd-143, Nd-145, Sm-147, Sm-150, Sm-151,
   Sm-152, Gd-155, Gd-157

 新評価値
   O-16, Cl-35, Cl-37, Sb-121, Sb-123, Pa-232,
   U-232, Np-236
等です。このうち、FP 15 核種の評価は韓国の KAERI とBNL/NNDC の協力で行 われたものです。このほか、Lawrence Livermore 国立研究所で整備された EADL (Evaluated Atomic Data Libraly)、EEDL (Evaluated Electron Data Library)、EPDL (Evaluated Photon Data Library) も ENDF format に変換さ れ、ENDF/B-VI の一部として release 8 に入りました。

データを使いたい方は原研核データセンター中川(nakagawa@ndc.tokai.jaeri .go.jp)までご連絡ください。

会合の報告

科学と技術のための核データ国際会議ND2001

(原研)中川 庸雄

「科学と技術のための核データ国際会議ND2001」が10月7日(日)から12日(金) に、つくば市のつくば国際会議場で開催された。

この核データ国際会議は約3年毎に開かれるもので、核データ関連の会議では 最大規模のものである。前回はイタリアのトリエステで開かれ、参加者は 433 人にも及んだ。このときはふんだんに補助が出され、経済的に苦しい国からも 多くの参加者があったと聞いている。

今回は、前回の例にならって資金援助を期待した人もあったのか、発表の申し 込み件数はすさまじく多く、約600件の応募があった。このため、プログラム 部会では、テクニカルツアーなどの予定を取りやめ、出来るだけ多くの発表が 出来るよう配慮してプログラム編成を行った。4月にプログラム部会での選考 結果を発表した時点で、招待講演55件、口頭発表117件、ポスター発表384件で あった。

しかし最終的には、経済的な理由で参加できない人が多く、更に9月11日のテ ロ事件の影響で米国とフランスの数名の発表が減り、以下のような数字になっ た。

      基調講演          4
      招待講演         50
      口頭発表        116
      ポスター発表    205
      Summary talk      3
      合計            378

参加者は、日本を含めて40ヶ国、4国際機関からの373名(日本から167人、海外 から206名)であった。米国のテロ事件のため、海外からの参加者数が激減する ことを恐れたが、結果的にはさほどの減少も無くまあまあの状況であったと思 われる。

会議の中身については、事務局員は殆ど講演を聴く時間が無かったので、残念 ながらコメント出来る立場ではない。近いうちに、原子力学会誌に報告記事が 書かれる予定なのでそれをお待ちいただきたい。さらに会議の proceedings が、日本原子力学会誌の supplement No.2 として出版される予定である。

会場となった、茨城県つくば市つくば国際会議場は、真新しい県営の施設で、 ゆったりとした設計のハイテク感覚を漂わせる建物である。ND2001の会場とし て申し分ないものであった。会期は、秋の天気が安定している期間として東京 オリンピックの開会式が開かれたという10月10日を含む週ということでこの期 間を選んだのであったが、きれいな秋晴れとは行かず、肝心の10日は台風のよ うな悪天候であった。そのほかは、さほどの天候の崩れもなかったのは、幸い であった。

会合等のお知らせ

IAEA Nuclear Data Section Newsletter 最新号

標記のニュースレターが以下のURLにあります。

   Nuclear Data Newsletter Issue #32 (September 2001)
http://www-nds.iaea.org/ndlett32.pdf

NEA online bulettin

Nuclear Energy Agency (NEA)の最新のニュースレター

   NEA Online Bulettin (October 2001)
http://www.nea.fr/html/new.html

部会員の最近の成果

Guinyun Kim(gnkim@postech.ac.kr), Youngseok Lee, In Soo Ko,
Moo-Hyun Cho, Won Namkung, Daewon Lee, Hyunduk Kim, Youngho Kim,
Tae-Ik Ro, Youngki Min, Jongsun Moon, Masayuki Igashira,
Satoshi Mizuno, Toshiro Ohsaki, Sam Yol Lee
   Measurement of keV-neutron capture cross-sections
   for ^164^Dy
   Ann. Nucl. Energy, 28,1549 (2001).

これらの論文入手については、直接著者に連絡してください。

核データ部会からのお知らせ

● 現在の部会員数:135名(2001年9月6日現在)

●「部会員の最近の成果」に載せる情報をNDDeditors@ndc.tokai.jaeri.go.jp までお知らせ下さい。