(武蔵工大) 吉田 正
済州島(チェジュ島)は韓国の最南端に位置し,東西72キロ,南北41キロの,楕 円のかたちをした風光明美な島である。中央に海抜1950mのハルラ山が聳え, 歴史にも,また海の幸,山の幸にも恵まれたこの島で,初の核データ・炉物理 合同「日韓ジョイントセッション」が開催された。
● 開催の経緯
核データ分野で近年躍進のめざましい韓国と合同で企画セッションを持つこと は,核データ部会の発足当時から話題に上っていた。一方,日本原子力学会と 韓国原子力学会(KNS)は,互いの学会に相互乗り入れして,日韓合同セッショ ンを持とうという議論を始めていた。この二つの潮流が一つとなり,今回のジョ イントセッションとなった。
● 会議から
広々と起伏の多い緑の中に,瀟洒な建物が点在する済州大学の落ち着いた雰囲 気のキャンパスで,5月24, 25の両日,KNSの2001春季学術発表会が開催され, その二日目の午後いっぱいを取り,日韓それぞれ6件ずつ,計12件の発表が英 語で行われた。うち4件が核データ,8件が炉物理である。核データの4 件は, Bi-209の捕獲断面積(東工大),Dy-164の捕獲断面積(釜山大他),シグマ委員会 とJENDLの話,それにKAERIでの高エネルギー核データの評価の話である。
● 余談
土曜日,釜山大の李先生が,核データ部会から出席した我々3人(東工大・井頭, 住友原子力・山野の両氏と私)に島を案内してくれた。帰途,だらだら坂の登 り道の途中で車のエンジンをきり,ギアをニュートラルにする。すると,あろ う事か,車がゆっくりと坂を上り始める。車を降りて眺めても,上り坂にしか 見えない。三人とも半信半疑のまま,「やはり目の錯覚で本当は下り坂なんだ」 と無理矢理納得して車に戻った。この不思議な坂道,済州島の名所なのだそう である。
● おわりに
「2001年秋の大会」(北大:9月19〜21日)の企画セッションとして,今度は日 本で日韓ジョイントセッションを持つことになった。予稿は,6月23日までに, 日本側は阪大の竹田敏一教授に送付することになっているので,自薦他薦があ りましたら,核データ部会運営委員まで,至急お知らせ下さい。
(日本原子力研究所核データセンター) 長谷川 明
標記会合が、米国サンタフェ(ニューメキシコ州)で2001年4月12-13日に開催さ れた。本Working Partyは、OECD (経済協力開発機構) のNEA(原子力機関) /NSC(原子力科学委員会) のもとで、原子力開発に必要な精度の良い核データ の提供を目指して、評価済核データについての、情報交換、評価についての共 通の問題点の解明を行っている、国際協力である。参加はメンバー制をとって おり、世界主要3大ファイルプロジェクト(ENDF, JEFF, JENDL)及びこれに IAEAを加えた4極であり、OECD/NEA加盟国に限定されず、世界が対象となって いる。
会議参加者は、日本3名(原研:長谷川、千葉、九大:河野)、米国10名、EU 5 名、ロシア1名、中国1名、韓国1名、NEA 1名、IAEA 2名、計24名であった。
各プロジェクトの核データの測定の現状に関しては、中国、日本、ロシア、欧 州、米国の核データ測定活動についての紹介があった。世界中で、ADSのため のデータ取得が活発になっている。
各プロジェクトの評価済核データファイルの開発の現状については、JENDLで は、汎用ファイルJENDL-3.3の評価の進行状況と特殊目的ファイルJENDL FP Decay Data File 2000の公開、ENDFでは、ENDF/B-VII構想が出てきており、4〜 5年かけて作成していく、JEFFではJEFF-3汎用ファイルの公開が2002年に予定、 特殊目的ファイルでは、Activation File EAF-2001が作成予定、その他CENDL (中国) 、BROND(ロシア)、FENDL(IAEA)の活動が紹介された。
傘下の核データに関する共通問題を解決するためのサブグループ活動について は、核断面積計算のためのモデルコードの開発についてや、データフォーマッ トと処理についての、ENDF/B-6フォーマットのマニュアルの改訂等、今後の活 動についての意見交換がなされた。High Priority Request List (HPRL高優先 度測定要求リスト)では、日本のHPRLリストに付け加える形で米国、欧州のデー タの入力を行い、最新版に改訂する事が決まった。その他のサブグループ活動 では、SG-6:遅発中性子データ、SG-7:標準断面積データ、SG-9:核分裂スペク トル、SG-19:放射化断面積について現状がレビューされた。日本が関係してい る、SG-10:FP非弾性散乱断面積(川合氏KEK)については、最終報告書がまとま り、終了することが認められた。また、同じくSG-20:共分散評価とその処理は、 分離/非分離共鳴領域の共分散評価手法とその処理として、九大河野氏から昨 年度提案されたテーマであるが、目的を明確に絞って行うよう注文が付き、本 年度再提案し、承認された。手法の開発を中心におくとしている。
新たなサブグループの立ち上げについては、Fission Productの断面積評価につ いてのサブグループの立ち上げがBNLのP.Oblozinskyから提案され、JENDLから は、KEKの川合氏、東工大の井頭氏、原研の中川、柴田氏の参加が決まった。
次期核データ国際会議の候補地として、当地サンタフェが挙げられ、Los Alamos National Laboratoryが主催する予定であることが示唆された。決定は、 この6月にパリで開催されるNEA/NSC会合で行われる。
本ワーキング・パーティーは、評価済データに共通する問題解決で、日本 JENDL開発にも多くの貢献をしている。国際的にもつかえるリソースは年々少 なくなってきている今日、この国際協力は今後とも重要である。
詳しい報告は、6月発行予定の核データニュースを参照ください。
http://psttg.mne.psu.edu/wshop02/wshop02.html
http://www.nea.fr/html/science/meetings/arwif2001/
http://physor2002.kaist.ac.kr/
(eds.) N.Yamano, T.Fukahori Proceedings of the 2000 symposium on nuclear data, November 16-17, 2000, JAERI, Tokai, Japan JAERI-Conf 2001-006 (March 2001) V.N. Manokhin, N. Odano(odano@koala.tokai.jaeri.go.jp), A. Hasegawa Consistent evaluations of (n,2n) and (n,np) reaction excitation functions for some even-even isotopes using empirical systematics JAERI-Research 2001-013 (March 2001) V.N. Kondratyev, 丸山敏毅, 千葉 敏(sachiba@popsvr.tokai.jaeri.go.jp) Magnetic field effect on masses of atomic nuclei Astrophys. J., 546, 1137-1147 (2001) T. Maruyama, A. Bonasera, and S. Chiba (sachiba@popsvr.tokai.jaeri.go.jp) Nuclear fragmentation by tunneling Phys. Rev. C63, 057601 (2001) 向山武彦, 滝塚貴和, 水本元治(mizumoto@linac.tokai.jaeri.go.jp), 池田裕二郎, 小川 徹, 長谷川 明, 高田 弘, 高野秀機 Review of research and development of accelerator-driven system in Japan for transmutation of long-lived nuclides Progress in Nucl. Energy, 38, 107-134 (2001) M. Mangun Panitra (panitra@avocet.nucl.nagoya-u.ac.jp), A. Uritani, J. Kawarabayashi, and T. Iguchi Energy Spectrum Improvement for CdZnTe Semiconductor Detector Based on Euclidian Distance with Digital-Analog Hybrid Signal Processing System J .Nucl. Sci. Technol., 38, 301 (2001) M. Mangun Panitra (panitra@avocet.nucl.nagoya-u.ac.jp), A. Uritani, J. Kawarabayashi, T. Iguchi, and H. Sakai Pulse Shape Analysis on Mixed Beta Particle and Gamma-ray Source Measured by CdZnTe Semiconductor Detector by means of Digital-Analog Hybrid Signal Processing Method J .Nucl. Sci. Technol., 38, 306 (2001) K. Tsujimoto, T. Iwasaki (tomohiko.iwasaki@qse.tohoku.ac.jp), N. Hirakawa, T. Osugi, S. Okajima and M. Andoh Improvement of reactivity coefficients of metallic fuel LMFBR by adding moderating material Anal. Nucl. Energy, 28, 831 (2001)
● 現在の部会員数:135名 (2001年6月4日現在)
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