NDDニュースレター 2001年 第5号 (通巻第14号)

2001/4/10

Table of Contents

トピックス

チェンマイ大学訪問記

渡辺幸信(九大総理工)

watanabe@aees.kyushu-u.ac.jp

3月11日〜19日まで、IAEA 技術プロジェクトの派遣研究者として、タイ北部に あるチェンマイ大学の高速中性子研究施設(FNRF)を訪問しました。FNRFの施 設長は Vilaithong 博士です。核データ研究会にも何度か参加されている研究 者です。施設は、14MeV DT 中性子源に使われてきたコッククロフト加速器を 有しています。これは、阪大の高橋教授がその開発当初から関わっており、核 データコミュニティーの方々にもご存知の方が多いでしょう。現在は、中性子 実験には使用されておらず、低エネルギー荷電粒子による材料分析(例えば、 RBS 分析)に使われているそうです。FNRF という看板を上げていますが、最 近では、数台の低エネルギーイオン発生装置や小型の電子ビーム加速器が新し く導入され、材料表面改質などの材料工学や細胞照射によるバイオ科学、装置 についてはイオン源プラズマに関する研究などの応用研究に主力が置かれてい ます。今回の訪問は、現在進行形のイオンビーム研究ではなく、彼等がこれま でに測定した 14MeV 中性子反応の解析に関する技術プロジェクトでした。毎 日午前中に院生および若手研究者に核子入射前平衡反応理論に関する講義を行 い、午後は計算コード(GNASH 及び DWUCK など)の使い方を教えつつ、209Bi に対する14MeV(n,xn) 反応 DDX データの解析を手伝ってきました。すでに阪 大及び東北大で過去に測定された反応で、新味はないのですが、208Pb(p,p') の高分解能測定で得られた 70本くらいの励起レベルの変形パラメータを使い、 弱結合模型を仮定したDWBA計算で励起エネルギー約 8MeV までのバンプ構造を よく再現できることを明らかにしました。一緒に仕事をした若手研究者の1人 (Dr. S. Dangtip)は、Uppsala 大で PhD(軽核の数十MeV中性子反応に関する 実験研究)を取ったばかりで、同大の中性子実験施設の現状を詳しく知ること ができました。中高エネルギー核データに関わっている者としては、彼との出 会いが今回のタイ訪問では大きな収穫だったと思っています。

最後に、タイ料理は私の舌によく合ったようで、体重が1.5kgも増えて帰国し ました。タイは私の再訪したい国リストの上位に新たに加わったようです。

会合の報告

第3回核データ部会総会議事録

平成13年3月29日の12:00〜13:00,核データ部会総会を武蔵工業大学(B会場)に て開催した.参加者は約30名であった.

1. 部会長挨拶 (更田部会長)

2. 報告事項

配付資料に基づいて,以下のような報告があった.

● 企画運営報告 (山野委員,[代理]井頭委員)

企画担当委員より,次のような報告がなされた.

  1) 2000年秋の大会(青森大学)にて核データ部会総合講演を行った.
  2) 2001年春の年会では「大型加速器施設を利用した核物理・核データ実験
     研究の最前線」をテーマとする総合講演を企画した.
  3) 部会企画総合講演の回数を年2回開催するのが困難であるため,開催数を
     減らす提案をし,これを部会総会にて審議する.
  4) 核データ部会運営委員および部会推薦評議委員候補の選出に係る内規案
     を作成したので,これを部会総会にて審議する.
  5) 韓国済州島で5月24,25日に開かれる韓国原子力学会(KNS)春の年会に,
     KNSと日本原子力学会のジョイントセッションが行われる.日本の核デー
     タ分野から2名の参加が予定されている.
  6) 学会誌5月号より,連載講座「核データ」が連載することが決定した.

● 編集担当活動報告 (馬場委員)

編集担当委員より,NDDニュースレター発行についての報告がなされた.第6 号を10月25日に発行し,3月22日には第13号を出した.ニュースレターの内容 としては,以下のようなものを掲載する方針にしている.

  1) 会合等の報告,部会関連,委員会等
  2) 国際会議やセミナーの案内
  3) トピックス
  4) 部会員音信
  5) 部会員の最近の成果
  6) 募集記事

● 平成12年度部会会計報告 (井頭委員)

平成12年度の収入は,会費の173,500円である.支出総額は,総会当日の弁当 代と総合講演謝金を加えて125,110円となり,次年度繰越は48,390円である.

● 平成13年度部会収支予算案 (井頭委員)

平成13年度の部会収支予算案が報告された.これは平成12年12月27日時点のも のであり,前年度繰越金は考慮されていない.実際は,上記の48,390円が繰り 越される.繰越金に関して,100万円までは繰り越しが可能とのコメントがあ った.

3. 審議事項

● 運営委員会内規

部会運営委員の選任の内規案について審議を行った.委員の任期について,運 営の継続性のためには委員の任期をずらした方がよいのではないか,との意見 が出された.これについて,部会員の数が少ないので委員が再任される可能性 が高く,運営の連続性を保つことは可能との立場から,任期をずらすことは行 わないとした.また,電子メールによる運営委員投票は,無記名性が保てない との意見が出されたが,選挙管理委員には守秘義務を課すとした.部会運営委 員会内規は,原案のまま承認された.

● 庶務担当運営委員の選任

運営委員のなかに新たに庶務担当委員を置く.平成14年3月31までの委員とし て,田原義壽氏(三菱重工)が推薦され,承認された.

● 部会推薦評議員候補選任内規

部会推薦評議員候補選任の内規案について審議を行った.この選挙管理委員会 は運営委員会選任での選挙管理委員とは異なること,また部会長・副部会長は 選挙管理委員にはなれないとのコメントがなされた.部会推薦評議員候補選任 内規は,原案のまま承認された.

● 部会総合講演の開催頻度

部会企画運営報告にあったとおり,部会総合講演の開催頻度について審議を行 った.炉物理・核データ特別講演は年1回とし必要なら2回開催するとの方針が シグマ委員会運営委員会で決められ,炉物理部会と協議を行っている。炉物理 部会も承認している.核データ部会総合講演も,年1回は開催するが,2回行う かどうかは弾力的にその都度検討するとした.また,核データ・炉物理に関す る韓国とのジョイントセッションを秋の大会で開くために,早急に検討に入る 必要があることが指摘された.

4. その他

● ND2001準備状況 (長谷川委員)

ND2001(科学と技術のための核データ国際会議)の準備現状および今後の予定 について報告があった.約600件応募があり,3月 8日のプログラム部会で講演 の採択・棄却・口頭発表者の選択等を行った.40件の棄却についてその理由に 対する質問がなされたが,それら殆んどは out-of-scope のために棄却したと のことである.

● その他

部会予算についての質問があった.部会予算を確保するには,学生会員をもっ と増やすべきとの意見がだされたが,実際に部会活動を活発にするには正会員 が必要であるとされ,部会員を増やす努力をする.これについて,学会誌に部 会入会案内の記事が掲載される予定であるとのコメントが出された.

5. 閉会挨拶 (吉田副部会長)

会合等のお知らせ

IAEA Nuclear Data Section Newsletter 最新号

標記のニュースレターが以下のURLにあります。

       Nuclear Data Newsletter Issue #31 (March 2001)
http://www-nds.iaea.org/ndlett31.pdf

NEA online bulettin

Nuclear Energy Agency (NEA)の最新のニュースレターが以下のURLにあります.

       NEA Online Bulettin (April 2001)
http://www.nea.fr/html/new.html

ENDF format 処理コード PREPRO2000

ENDF format で作成されている評価済核データファイルの処理コード群の最新 版(PREPRPO2000)が次の URL から公開されています。

http://www-nds.iaea.or.at/ndspub/endf/prepro/

PREPRO2000に入っているコードは、以下の16個です。

  Linear     - Linearize cross sections
  Recent     - Cross sections from resonance parameters
  Sigma1     - Doppler broaden cross sections
  Activate   - Activation cross sections (MF=10) from MF=3 and 9 data
  Legend     - Calculate/correct angular distributions
  Sixpak     - Convert double differential data to single differential
  Fixup      - Correct format and cross sections
  Diction    - Create reaction dictionary (MF=1, MT=451)
  Merger     - Retrieve and/or Merge evaluated data
  Groupie    - Group averages and multi-band parameters
  Complot    - Plot comparisons of cross sections (MF=3, 23)
  Evalplot   - Plot evaluated data (MF=3, 4, 5, 23, 27)
  Mixer      - Calculate mixtures of cross sections
  Virgin     - Transmitted uncollided flux and reactions
  Convert    - Convert codes for computer/precision/compiler
  Relabel    - Relabel and sequence programs

核データ部会からのお知らせ

● 現在の部会員数:129名(2001年4月5日現在)

● e-mail address に変更があった方は、NDD-ml の配布先を変更しますので、 NDDeditors@ndc.tokai.jaeri.go.jp までご連絡ください。

●「部会員の最近の成果」に載せる情報をNDDeditors@ndc.tokai.jaeri.go.jp までお知らせ下さい。