NDDニュースレター 2000年 第8号 (通巻第8号)

2000/12/5

Table of Contents

トピックス

OECD/NEA での核データ関連活動について

(OECD/NEA/Nuclear Science Section) 須山 賢也

ご存じの方も多いとは思いますが、NEAにおける核データ活動 「JEF」 ( 後述 する JEFF ) の現状についてお知らせします。私自身、NEA に来て日が浅いの で、同僚の方々の仕事の様子を知るという意味からも、本稿をまとめることは 非常に良い機会でした。まとめるにあたり、Data Bank の Dr. Ali Nouri に お世話になりました。この場をもってお礼を述べたいと思います。

JEFでは、6 つの sub group あり、全体の取りまとめ等を NEA が行っていま す。 NEA で、実際に JEF をサポートしているのは Claes Nordborg 課長、 Data Bank の Dr. Ali Nouri と Dr. Mark Kellett の 3 名です。そのsub group には、

Monitor Group
Benchmarking, Testing and Evaluations
Radioactive Decay and Fission Yield Data
Intermediate Energy Data
Fission Product Data
Scientific Coordination Group

があり、年にほぼ 2 回のペースで会合を持っているようです。現在、JEF の 活動は、JEF ( Joint Evaluated File ) - 2.2 、EFF ( European Fusion File ) -2.4、そして EAF ( European Activation File ) - 99 を統合したフ ァイル JEFF ( Joint Evaluated Fission and Fusion File ) - 3 の完成に注 がれ、汎用ファイルは来年末の公開を目標にして作業が行われています(私は JEF と JEFF の区別があるのをここで初めて知った次第。すいません^^)。

JEFF 編集の道のりは、評価値選択(selection)、ファイル化( assembly )、デ ータ検査( checking )、処理( processing )という 4 段階から構成されてお り、 JEFF-3 汎用ファイルの場合、selection と assembly は終了し、 checkingが 50 - 60 % 終了したそうです。実際に作業をしているのはNouri 氏との事。また、decay data および fission yield の評価も行われています が、JEF-2.2 に比較し、収容核種数の増大と新しい評価値の採用のために、 selection と assembly の作業は終了したものの、checking までには至って いないそうです。

その他にも評価済核データブラウザーとも言うべき「 JEF-PC 」の開発、 NJOY や SAMMY のユーザーグループなど、おもしろそうなものがあったのです が、字数をオーバーしてしまっていますので、このあたりにしておきます。

NEA ではサポートをしている活動に関する情報共有(配布)に力を入れており、 JEF を含む核データのページも充実しています。いくつかの文書の取得にはパ スワードが要求されますが、アクセス状況の把握のために設定しているだけで、 誰でもパスワードを発給してもらえるとの事でした。是非、アクセスして見て ください。URL は、

http://www.nea.fr/html/dbdata/
です。

コンピュータウイルス Navidad

広報担当運営委員 中川庸雄(原研核データセンター)

11月15日、核データ部会運営委員会のメーリングリストに Navidad と称す るウイルス(ワーム)が流れました。このウイルスに感染すると exe ファイ ルの実行ができなくなります。感染したパソコンで Outlook を使っている場 合は、過去の受信メールに対する返信メールが自動的に作成され、 Navidad.exe という添付ファイルを付けて発信されます。今回は、核データ部 会運営委員会メーリングリストの過去のメールに対して返信メールが発信され たため、メーリングリストに Navidad が流れてしまいました。

11月17日には、同様のことが原研核データセンターが運営する JNDCmail で もおこり、JNDCmail 及び NDD-ml に対して、メンバーからの投稿を受け付け ないようにする処置をとりました。その後、日本原子力研究所への入り口でウ イルスチェックをするようにしたため、11月20日からは正常な運営に戻しまし た。

この間、大変ご迷惑をおかけしましたことをお詫びします。

Navidad については、以下のURLに情報があります。

http://www.zdnet.co.jp/news/0011/15/e_virus.html

またウイルスに関する情報は、以下のURLで得られます。

http://www.symantec.co.jp/

なお、「拡張子が exe となっている添付ファイルは絶対に開かない」とい う習慣を付けておくことが、この種のウイルス対策として重要です。

会合の報告

原子力学会企画委員会報告

吉田正(武蔵工業大学)

11月14日(火)に日本原子力学会第4会企画委員会が東京で開催されました。 当部会の運営に直接関係する項目を中心に審議事項の概要を報告します。

● 「2001年春の年会」について

武蔵工大で開催される「2001年春の年会」における,特別講演,招待講演, 総合報告,部会企画セッションの内容が審議され了承された。特別講演は 「長期計画」および「新しい原子力行政体制」を中心テーマに,今後の原子力 開発体制を通観しようとするものとなっている。核データ部会企画セッション には2時間の枠が与えられた。

● 部会予算について

平成13年度の部会費の配付基準が提示された。同資料によると核データ部会 への平成13年度配付金は159,527円と試算されている。予算の執行に関して「部 会収支予算書」および「部会特別予算計画書」の各書式と,書式記入の指針と なる「部会活動に係わる予算手続きについて」が,各部会長宛に送付される。 「部会活動に係わる予算手続きについて」に記されている特別予算の対象とな る事業を参考までに付す。

ア  部会が企画し,開催する国際会議,シンポジウム等
イ  海外で開催される国際会議等で研究発表を行う部会員に対する支援等
ウ  部会が開催するワークショップ等に海外から講演者を招聘する事業
エ  部会が開催する研究会および無料配布の出版事業
オ  その他部会の事業で前各号に準ずるもの

● 「枠組み編成会議」メンバー

年会・大会の発表プログラムの大枠を決める「枠組み編成会議」メンバーに 第II区分から上蓑義明氏(理研)の退任にともない,波戸芳仁氏(KEK)が新任 された。

● 年会・大会開催地

                        春の年会              秋の大会
平成13年度       武蔵工大(3/27-29)        北大(9/19-21)
平成14年度       神船大  (3/27-29)    いわき明星大(9/14-16)
平成15年度            九州地区              中部地区

● シンポジウム

「原子炉熱流動と安全に関する第2回日韓シンポジウム」が日韓それぞれ 106人と30人の参加者を得て福岡で成功裏に開催された旨報告された(10/15-18)。

核データ研究会開催報告

2000年核データ研究会実行委員長 山野直樹(住友原子力)

国内外の核物理・核データ関連分野で活躍する研究者・技術者が一同に会し 研究成果を発表する日本原子力研究所(原研)シグマ研究委員会・核データセ ンター主催の標記研究会が2001年11月16日,17日の両日,原研東海研究所で開 催されました。

本年度はアジア・オセアニア諸国との研究交流のため,アジア諸国(中国, タイ,バングラデシュ)から若干名の研究者を推薦により本研究会に招聘しま した。招聘した研究者は後述する国際セッションでの口頭発表またはポスター 発表を行いました。

参加者は155名,そのうち海外からの参加が7名であり,国内から参加した外 国人9名を加えると,参加者の1割が外国人という国際色豊かな研究会として 定着した感があります。

さらに,本年度も昨年度と同様Poster Presentation Award(ポスター発表 賞)を設けました。本年度は原研の今野力氏と九大の池内丈人氏が受賞されま した。おめでとうございます。

口頭発表プログラムは,一般公募によって寄稿されたアブストラクトを基に 本年度は核データ評価と利用の観点より,現在評価作業中のJENDL-3.3及び JENDL High Energy File (JENDL-HE)の評価活動とベンチマークテストを中心 としたプログラムを実行委員会で選定しました。1日目は特別講演,最近の実 験, JENDL-3.3の整備,国際セッション,2日目はJENDL-3.2の積分テストとし てNUPECが実施したMISTRAL実験解析,JNCによるSEG及びSTEK実験解析,トピッ クスとして,OKLO原子炉による基本相互作用定数の話題,QMDの発展,放射線 防護データの現状を選定し,JENDL-HEの評価と積分テストをその後に配置しま した。特別講演として,日本原子力学会核データ部会長である日本海洋科学振 興財団の更田豊治郎氏より,日本における核データ研究の先駆者であり,本年 相次いで急逝された百田先生と中嶋先生の追悼講演が行われました。なお,口 頭発表総数は18件でした。

ポスター発表は41件の発表があり,1日目と2日目に分けて発表が行われまし た。

本年度も原研東海研の先端基礎研究交流棟の会議室において研究会が行われ たので,照明や空調も快適であり,また広さも適当でした。ただ,トランスペ アレンシーの投影画面が若干小さく,後ろの座席の参加者には見えにくかった と思われます。20ポイント以上のフォントの使用が望ましいと毎回口頭発表者 には注意を喚起していますが,残念ながら守られていません。議論は1日目の 最初から質問・コメントも多く活気がありました。本年度は昨年準備できなか った集合写真を撮影しました。この集合写真は核データセンターのWWWに載り ますので見て下さい。

懇親会は1日目の夜,阿漕ヶ浦倶楽部で行われ,開会の冒頭,日本の核デー タ研究の発展に顕著な功績を標した更田豊治郎氏の勲三等旭日中綬章の叙勲を お祝いして花束贈呈が行われました。更田氏は原研の核データセンター室長や 副理事長を務められ,現在でも,日本原子力学会の核データ部会長として,日 本の核データの発展に寄与されています。核データ分野に携る我々にとっても 名誉な慶事であります。更田豊治郎氏のご挨拶があり,シグマ委員会主査の吉 田正氏の乾杯で始まりました。当日は恒例のフランスのボジョレーヌーボーの 解禁日でもあったため,会場内にも何本か用意されており,興味のある人は Tastingを楽しんでいました。懇親会参加者は64名で盛会でした。学生とOB には懇親会費の特別割引があるため,学生とOBの参加が18名と多いのが本 研究会の懇親会の特徴です。第一線の研究者と懇談できることは学生にとって も良い刺激になると思われますし,若者に核データ分野に魅力を持ってもらう ことはさらに重要なことでしょう。

天候に恵まれなかったためか,参加者が昨年度より若干減少したことは残念 です。核データ分野の研究者・技術者にとって,最新情報を交換する場として 本研究会が果たすべき役割は今後ともますます重要になると考えられます。 今年の研究会でも,外国人が参加者の1割を占めました。ハンガリー,韓国 からは自費で参加した著名な研究者もいます。本研究会のプロシーディングス はJAERI-Confシリーズで毎年英文で発行されており,外国人研究者によるその 引用頻度も極めて高いものがあります。

最後に,本研究会の開催に当たり,準備段階から色々お世話になりました日 本原子力研究所の関係者の方々,運営にご協力頂いたエネルギーシステム研究 部事務室,並びに核データセンターの皆様,当日座長を快くお引き受け頂いた 諸先生方に厚く御礼申し上げます。また,当日遠方より参加された方々にもお 礼申し上げます。 2000年11月30日 記

会合等のお知らせ

2001年春の年会(武蔵工業大学 3/27〜29)研究発表募集

学会誌11月号と原子力学会ホームページに募集要領が掲載されています。

http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/aesj/meeting/youryou.html
応募受付締め切りは12月18日(必着)です。部会員の積極的な応募を期待して おります。

ND2001論文アブストラクトの締め切りは12月20日

2001年10月に茨城県つくば市で開かれるND2001(科学と技術のための核デー タ国際会議)の論文アブストラクト締め切りは、本年12月20日です。それまで にPDFまたはPostScript形式で作成し、以下のaddressに送ることになっていま す

                  nd2001-abs@ndc.tokai.jaeri.go.jp

採否の判定結果は2001年3月31日までに連絡される予定です。アブストラク トの書式等その他の詳細な情報については、以下のURLを参照してください。

http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/nd2001/

本国際会議についての問い合わせは事務局(hasegawa@ndc.tokai.jaeri.go.jp) まで。

理研(加速器研究施設)第11回冬の学校

"In-beam Gamma-ray Spectroscopy with RI Beams"を2001年1月8日〜13日ま での6日間、新潟県中魚沼郡津南町のグリーンピア津南で行います。主テーマ は、ガンマ線核分光による不安定核研究です。

今回の冬の学校では、原子核の高スピン状態や不安定核の核構造に関して第 一線で研究をされている方々を講師に招き、ガンマ線核分光学の基礎から最近 の研究への展開について講義をお願いしています。

講議は全て英語で、大学院生、ポスドク、(若手)研究者向けの学校です。 申し込み締めきりは12月8日です。詳細は以下のURLを参照してください。

http://rarf-conf.riken.go.jp/Winter-School/11th/

NDSとNNDCのニュースレター

IAEA Nuclear Data Section (NDS)とNational Nuclear Data Center (NNDC) の最新のニュースレターが以下のURLにあります。

   NDS   No.30 (Sep., 2000)
http://www-nds.iaea.org/ndlett30.pdf

   NNDC  No.135(Dec., 2000)
http://www.nndc.bnl.gov/nndc/newsletters/news2000-03.html

部会員の最近の成果

須山賢也(suyama@nea.fr)、他
    JENDL-3.2 に基づく軽水炉 MOX 燃料用 ORIGEN2 ライブラリ
    JAERI-Data/Code 2000-036 (Nov., 2000)

大井川宏之(oigawa@omega.tokai.jaeri.go.jp)、他
    核変換実験施設の概念検討、1:核変換物理実験施設の概要
    JAERI-Tech 2000-062 (Sep., 2000)

C. Tsuchiya, et al. (I. Kimura: kimura@inss.co.jp)
    Simultaneous Measurement of Prompt Neutrons and
    Fission Fragments for ^239^Pu(n_th_,f)
    J. Nucl. Sci. Technol., Vol.37, No.11, 941 (2000).

E. Sh. Sukhovitski, et al.
    Nucleon interaction with ^58^Ni up to 150 MeV
    studied in the coupled-channels approach based
    on the soft-rotator nuclear structure model
    Phys. Rev. C, Vol. 62, 044605 (2000).