NDDニュースレター 2000年 第3号 (通巻第3号)

2000/7/18

Table of Contents

トピックス

日本のニュートリノ研究

(愛知淑徳大)親松 和浩

1987年に超新星爆発のニュートリノをカミオカンデで観測して以来、神岡で のニュートリノ観測/実験は世界のニュートリノ研究をリードしています。ス ーパカミオカンデでの大気ニュートリノ観測から得られたニュートリノが質量 をもつ(ニュートリノ振動の)証拠の発見(1998年6月)は、素粒子物理学、 宇宙論、及び天体物理学に対し多大な影響を与えています。

現在も日本のニュートリノ振動の研究は着実な成果をあげ続けています。昨 年6月には、KEKの加速器によって発生したニュートリノビームを250 km 離れ たスーパーカミオカンデで観測する(K2K実験)という、長基線ニュートリノ ビームの観測に世界で初めて成功しました。現時点では、ニュートリノ振動の 起きている確率は95%と報告されています。しかし、ニュートリノ振動が起き たと結論するには、統計をあげてこの確率を99%以上にする必要があり、今後 数年間の実験継続が予定されています。

原子力もニュートリノ研究と無縁ではありません。敦賀や柏崎の原子力発電 所からの微弱な反ニュートリノを検出して、ニュートリノの質量を測定すると いう意欲的な試みも進行しています。

とはいうものの現状はニュートリノ質量(振動)の存在の証拠を捕まえた段 階にあり、観測/実験及び理論の両面からの研究が精力的に進められています。

詳細は以下を御覧ください。

K2K つくば−神岡間 長基線ニュートリノ振動実験
(KEK-PS-E362)公式ホームページ
http://neutrino.kek.jp/index-j.html

原子炉ニュートリノ実験
http://www.awa.tohoku.ac.jp/KamLAND/index_j.html

特定領域(A)「ニュートリノ振動とその起源の解明」第一回研究会ニュース
レター
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/tokutei/kenkyukai1/newsletter.html

会合の報告等

原子力学会企画委員会

(武蔵工大) 吉田 正

7月11日(火)に日本原子力学会の企画委員会が開催されましたので議事内 容を簡単に要約し報告します。

1) 設立提案のあった「原子力発電部会」の趣意書、発起人名簿、部会規約を 検討し、提案を理事会に上げることになった。

2) 「モンテカルロ法による粒子シミュレーション」研究専門委員会の2年間 の延長が承認された。

3) 「群分離・消滅処理工学」研究専門委員会よりの用語変更の提案を検討し、 これを企画委員会名で出すこととした。内容は「消滅処理」に代えて「変換技 術」または「核変換技術」を、「群分離・消滅処理」、「核種分離・消滅処理」 に代えて「分離変換技術」または「分離核変換技術」を用いるとするもの。

4) 原子力青年ネットワーク(YGN)設立提案を検討し、さらに提案主体の明確 化や規約、予算関係の詰めをお願いし、再度検討することとなった。

5) その他、2000年秋の大会、ANS Joint Topical Meeting、第39回原子力総合 シンポジウム、学会HPにJNSTのアブストラクトを載せる件などについての議 論があった。

次回の企画委員会は 9月12日(火)に予定されています。

Varenna 2000

9th International Conference On Nuclear Reaction Mechanisms
June 5 - 9, 2000, Villa Monastero, Varenna, Italy

(九州大学)渡辺 幸信、河野 俊彦

原子核反応メカニズムの国際会議が、6月5日〜9日に、イタリアの Varenna で開催された。この国際会議は、ミラノ大学の Gadioli 教授らが主催し、3年 毎にイタリア北部のコモ湖畔の小さな町で開かれているもので、今回が 9回目 にあたる。今回の参加者は、約100名で、日本からは10名、核ータ部会員とし ては渡辺、河野(九大)が参加した。詳細は、渡辺氏(九大)が核データニュー ス67号(2000年10月)で報告する予定。

RIPL-2 第2回研究調整会合

IAEA 協力研究計画 (IAEA/CRP)

「核データ評価のための原子核模型パラメータのテスト (Reference Input Parameter Library, version 2、RIPL-2)」

(原研核データセンター)深堀 智生

平成12年6月12日〜16日、ヴァレンナ(イタリア)にて、標記 RIPL-2 の第2 回研究調整会合が開催された。本協力研究計画(CRP)は、核データの理論計 算に使われる各種パラメータを集め、検討し、標準的なパラメータセット (RIPL)を作成しようとするものである。

本CRP作業に関して1998〜2001年の3年間に以下のような協力を予定している。

     1) 標準入力パラメータライブラリー“Starter File”の光学模型パラ
        メータセグメントに関する断面積計算テスト
     2) 選択されたモデル計算コード(SINCROS, ALICE)に対するユーザイ
        ンターフェースの開発
     3) WWW 用検索ツールの開発
     4) 本 CRP の最終報告書として作成され、IAEA-TECDOC として公開さ
        れる改訂版標準入力パラメータライブラリーハンドブックの一部執
        筆

平成10年11月25日〜27日、国際原子力機関(IAEA)本部(ウィーン、オースト リア)にて開催された第1回研究調整会合では上記作業に関する参加各国の作 業分担及び詳細な作業計画が議論・決定された。第2回研究調整会合では、前 回会合で分担された作業の進捗状況報告及び今後の作業計画が議論された。

会議では、まず、参加機関毎に進捗状況報告が行われた後、前回のサマリー レポートを基に作業分担の進捗状況をチェックした。次に、作業分担の再検討 を行い、

     1) p-波共鳴パラメータ、変形パラメータ、殻補正エネルギー及び同
        位体存在比等を新規に追加する。
     2) パラメータ未格納の場合の補完策として、質量、準位密度及びγ
        線強度関数セグメントに系統式を導入する。
     3) Web ページを作成する。
等が合意された。また、RIPL-2フォーマットに関して、できるだけ統一する方 向で議論を行った。この他、TECDOCレイアウトに関する議論を行い、担当分担 を決定し、第3回研究調整会合の1ヶ月前までにドラフトを作成することで合意 した。

本CRPの成果はライブラリ(RIPL-2)として公開される予定であり、これにより 原子核模型計算のための多くのパラメータの精度が向上し、入手が容易になる。

なお、RIPLの全容は、

http://www-nds.iaea.or.at/ripl/
で知ることができる。また、原研核データセンターのHP
http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/RIPL/index.html
から、一部のパラメータの検索が可能である。

NEA WPEC 核データ評価国際協力ワーキング・パーティー第12回会合

(原研核データセンター)長谷川 明

本会合は、原子力開発に必要な精度の高い核データの提供を目指して、評価 済データについての、情報交換並びに、評価に際しての共通問題の解決を目標 としている。その第12回会合(旧WPEC及びWPMAが統合された新生WPEC第1回会 合)が、2000年6月20日〜21日にかけて、日本原子力研究所東海研で開催され た。

各極の評価ファイルの現状として、JENDL(日)、ENDF(米国)、JEFF(欧)、 CENDL(中国)、FENDL(IAEA)からの各プロジェクトの現状が報告された。ま た、オブザーバーとして参加した韓国からも核データ評価活動について紹介が あった。

各極の実験の現状として、米国、IRMM、中国、日本、CERNの活動について報 告があった。CERN での nTOF プロジェクトについては、Thermal から 200MeV まで一気に測定を可能とする施設であり、ビームが出るのが遅れがちではある が、期待は大きい。今後を見守っていきたい。

常置グループ A(Model Code Development)では、世界で現在開発されてい る核モデルコードの現状について、幅広いサーベイと開発者との意見交換を実 施、次にコードのValidationを実施し、長期的なコード作成に持っていく。B (Format & Processing)については、ENDF-6 フォーマットに対する意見反映 の場としての機能がうまくなされていないこと、また処理コードの保守の問題 として、コード作成者はどんどん引退して、技術の伝承がうまくいかなくなる 前に、若い人を今の内から養成していくことの重要性が強調された。C(High Priority Request List(HPRL:高優先度測定要求リスト))では、日本、欧州 は意義を認めているが米国はそれほど重要視していない。今後、日本とフラン スが主導で進めることとなる。

サブグループ活動では、SG7(標準断面積)、SG9(核分裂中性子スペクトル) 以外は、最終レポートの提出を待って終了の予定である。

新規サブグループの提案として、「核モデルと関連パラメータのvalidation のための閾値から 20MeV までの Activation 断面積の測定」及び日本からの、 「群定数調整に対する共分散データの評価、処理、利用」に関するサブグルー プの提案がなされ、後者については、目的を共分散の評価特に共鳴部分に絞っ て実施することが推奨され、次回、正式に再度提案することとなった。しかし そのための予備的作業は認められている。

次回は、2001年 4月 9日から13日、米国 Santa Fe で開催。Nuclear Model Code のワークショップを同時に開催する。

会合等のお知らせ

「核データ部会総合講演」と「核データ・炉物理特別会合」

今年の原子力学会秋の大会で、核データ部会総合講演と核データ・炉物理特 別会合が開かれます。多数の参加をお願いします。

■ 核データ部会総合講演

    9月15日(金)13:00〜15:00  D会場
    座  長:井頭政之(東工大)

      1.京大炉における加速器駆動未臨界炉研究計画
                                                (京大炉)代谷誠治
      2.加速器駆動型未臨界炉と原子核物理ワークショップの総括
                                                  (阪大)永井泰樹
      3.韓日における核物理・核データの今後の協力関係
                                                (釜山大)李  大遠

■ 核データ・炉物理特別会合

    9月15日(金)15:00〜17:00  D会場
    座  長:佐治悦郎(総理府原子力安全室)

      1.高エネルギー評価済核データファイルの現状
                            (九大)○ 渡辺幸信、(原研)深堀智生
      2.評価済核データライブラリー JENDL-3.3 の現状
                                                 (原研)柴田恵一
      3.反応度総和計算法と遅発中性子データへのフィードバック
                                           (愛知淑徳大)親松和浩

核データ部会からのお知らせ

核データ部会総会のお知らせ

原子力学会秋の大会で、核データ部会の総会を行いますので、ご出席くださ い。

            9月15日(金)12:00〜13:00  D会場

7月11日現在、核データ部会の会員数は117名です。