「材料部会」主催

6回「材料」夏期セミナー

2006711日(火)〜13日(木)

(熊本県阿蘇郡・グリーンピア南阿蘇)

 

 平成18年度の「材料」夏期セミナーは、「Generation-Wと材料」をテーマとして、阿蘇の外輪山中腹に位置するグリーンピア南阿蘇で開催した。参加者は学生11名を含む37名であった。今回は、核燃料部会の夏期セミナーも同一会場で直後に開かれ、最終日の713日には核燃料部会との合同セッションを開催した。セミナーでは、Generation-Wに選定されたナトリウム冷却高速炉、鉛合金冷却高速炉、ガス冷却高速炉、超高温ガス炉、超臨界圧水炉の材料開発の現状、最近の研究成果やトピックスが紹介され、活発な議論が交わされた。合同セッションでは、核燃料部会と材料部会が合同で設立した「先進的原子力システムにおける燃料・材料」研究専門委員会からの講演、海外からの招待講演、学会賞受賞記念講演が行われ、燃料、材料を包含する有意義な講演内容であった。また、講演の合間には、「阿蘇遺産と地域振興」と題し、地元の方のお話しもうかがった。

 

セミナーの概要

1日目のナトリウム冷却高速炉材料に関して3件の講演があった。皆藤威二氏(原子力機構)より、酸化物分散強化(ODS)フェライト鋼燃料被覆管の製造技術、接合技術、強度特性、照射試験の現状と今後の進め方、中島英治氏(九大)より、ODSフェライト鋼の高温強度発現について理論的及び実験的観点からの解説がなされた。井上賢紀氏(原子力機構)からは、金属水素化物の減速材利用に関する技術開発と水素バリアー付被覆管製作技術についての講演が行われた。

2日目は、青砥紀身氏(原子力機構)より、鉛ビスマス冷却高速炉材料の耐食性評価と防食技術開発への展開について、高橋実氏(東工大)より、鉛ビスマス冷却高速炉の開発におけるロシアを主体とした海外の材料腐食研究の現状と課題及び今後の研究計画について講演頂いた。ガス冷却高速炉材料に関しては、「ガス冷却高速炉の炉心・燃料概念に関する検討」(原子力機構・永沼正行氏)と「ガス冷却高速炉用先進セラミックス材料(SiC/SiC複合材料)の開発」(京大・檜木達也氏)の2つの講演があった。また、超高温ガス炉の主要材料(セラミックス被覆燃料粒子、黒鉛、耐熱耐食合金)及び原子力水素製造プロセス用材料の課題と研究の現状について、沢和弘氏(原子力機構)より講演があった。黒鉛製造メーカの東洋炭素小西隆志氏より、比較的なじみの薄い黒鉛材料について、製造法から黒鉛材料の幅広い用途、品質保証の観点からの原子力用黒鉛材料の開発の取り組みについて説明がなされた。超臨界圧水炉材料に関しては、東芝の斉藤宣久氏、鹿野文寿氏より、「研究動向と腐食・SCC特性について」と「超臨界圧水炉材料の開発」と題した講演を頂いた。いずれの講演でも、多くの質問やコメントが出された。特に、本セミナーの趣旨である若手研究員、学生の積極的な質疑への参加が見られた。また、2日目の夜には、核燃料部会との合同レセプションが開催され、両部会員の交流を深めることができた。

最終日の核燃料部会との合同セッションでは、原子力機構小川徹氏「先進的原子力システムにおける燃料・材料研究について」の講演をはじめ、インド政府主席科学顧問R. Chidambaram博士の「Status of Nuclear Science and Technology in India」、ハルデンプロジェクト・マネージャW.Wiesenack博士の「Recent Results from Fuels and Materials Investigations at the Halden Reactor Project」、原子力学会論文賞を受賞した原子力安全システム研究所福谷耕司氏の「照射後焼鈍法による照射誘起応力腐食割れへのミクロ組織とミクロ組成効果の分離」の講演があり、午後2時過ぎに小川徹 材料部会副部会長の挨拶をいただき、プログラムを無事終了した。写真は、阿蘇中央5岳をバックにした材料・核燃料夏期セミナー参加者の記念写真である。

最後に、ご多忙中にもかかわらず、講師、座長を快くお引き受け頂きました先生方、地元のお話しをご講演頂いた阿蘇地域振興デザインセンター事務局長坂元英俊様に厚く御礼を申し上げます。また、準備段階から本セミナーの企画、運営にご協力頂いた多くの方々に、この場を借りて謝意を表します。

(運営委員 原子力機構・井岡郁夫)