平成17年度「ヒューマン・マシン・システム部会夏期セミナー」報告

平成17年7月22日(金)〜23日(土)東北大学工学研究科総合研究棟





毎年恒例のヒューマン・マシン・システム部会主催による夏期セミナーが、平成17年7月22日(金)〜23日(土)東北大学工学研究科総合研究棟において行われた。今年度は、「人間信頼性解析」、「リスクベース・メンテナンス」、「中央制御室の民間規格」、そして「リスクコミュニケーション活動」という、原子力において本質的にヒューマン・マシン・システムに関連する重要なトピックを取り上げ、各分野において第一線で活躍されている方に講演を頂き、パネルディスカッションを行った。以下、各セッションの内容について報告する。



セッション1では、「人間信頼性解析に如何に取り組むべきか、ニューシアの活用」というタイトルで、原子力安全基盤機構の牧野氏の御講演とそれに対する形で、東大の古田教授、 (株)テクノバの藤田氏からのコメントがあった。リスク情報を活用した規制(RIR)の導入を目指す動きがあるが、その前提の一つとなる人間信頼性解析(HRA)の技法については評価が定着しておらず今後の課題となっている。(独)原子力安全基盤機能の牧野氏からは、NUPEC時代からのモデル調査およびシミュレータ実験などによるデータ整備について説明があり、今後さらに運転訓練シミュレータを用いたデータ収集およびHRAモデルの評価、事業者参加の必要性が説明された。次いで、東大古田氏より最近の学会発表テーマの調査ではHF研究自体発表件数が下がっているなか、事業者・メーカへの期待が示された。最後に、テクノバ藤田氏から先に解析手法ありきではなく、何を評価するか目的を明確にすることの重要性が説明された。



セッション2では「リスクベース・メンテナンスの考え方と実践状況」というタイトルで、以下の三件の御講演があった。

(1)「原子力におけるリスクインフォームド規制の基本的な考え方と内外の動向」
吉田 智朗 氏 (電力中央研究所)

本講演では、外国の動向としてNRCの動向、そして日本での取り組みが紹介された。NRCでは、原子力一般にPRAを活用している。例えば運転保守では、事業者がPRAを実施するものとして、Tech. Spec.の変更でリスクが増加しないことを確認すること、監視重要機器の選別がある。また、NRCが実施するものとしては、NRCの監視対象の選別がある、等のポイントが紹介された。日本では、新設炉・ABWR設計、既設炉アクシデントマネジメント策、定期安全レビューでPRAを利用している。日本では、リスク情報活用の規制も導入されてきており、規格基準等策定の活動が行われている。日本での課題は、規制主導気味であることであり、事業者がメリットを感じとれないでいることである。また、発電所の通常業務としてリスク評価・管理を実施する体制がないこともある、という点が指摘された。

(2)「原子力プラントでの取組み状況」
西 宏八郎 氏((株)東京電力)

本講演では、リスク情報を活用した定例試験頻度の評価に関する検討に焦点を当てた取り組みの紹介がなされた。米国等では、リスク情報を参考とする規制(Risk-informed Regulation)の考え方が導入され、現行許可要件の変更、保安規定、等級別品質保証、試験・検査や保守計画等の分野で活用が進められている。このようなリスク情報を活用し試験・検査や保守計画等の運転管理を合理的に定めようとすることは、安全性及びリスクの影響因子をより精緻に把握することを要するので、事業者の安全確保能力を高めることにつながると考えられる。紹介された研究では、この課題の一つである定例試験について実施した結果が述べられた。定例試験の手順をFEMA (Failure Modes and Effects Analysis)に基づいて分析し、故障・失敗によるプラントへの影響を確認し、定量的に評価するべき定例試験項目を抽出した。炉心損傷頻度、格納容器破損頻度、アンアベイラビリティをリスク指標に選定し、定量評価のためのスクリーニング基準も設定した。本検討結果は、プラント安全性・信頼度を維持しつつ定例試験頻度を見直し、プラント運転管理業務の最適化を図る際の技術的なベースの一つとなると考える。

(3)「火力プラントでの取組み状況 −経年火力設備への適用−」
桜井 茂雄氏((株)日立製作所)

火力発電においては、規制緩和・自由化・グローバルな競争激化から、設備の信頼性を維持しながらコスト削減が求められている。これらの要求に対し、予防保全技術の改良だけでなく、保全マネージメント手法として、RBM(Risk Based Maintenance)や金融分野で培われた資産管理スキームの導入により、合理化の利得と故障の損失を適正化した予防保全計画を実現する動きがあり、PLM(Plant Life-cycle Management)の開発と適用を進めている。PLMでは、プラントのライフサイクルで考えて、LCV(Life Cycle Value)の最大化を目指す。RBMでは、リスクマトリクスを作成しリスクを評価している。また、PLMでは、保全投資のファイナンス計算に故障リスクを反映することで、故障回避による損失抑制効果も考慮した保全投資の利得を正味現在価値NPV(Net Preset Value)として定量的に評価している。さらにリアルオプション法によるシナリオ評価も行っており、投資の先延ばしに対する定量的な評価が可能となっている。リスク管理技術の適用を、ボイラ、蒸気タービンについて行っている。



セッション3では「中央制御室の民間規格作りにどう取り組むべきか」というテーマで、
二件の講演とパネルディスカッションが行われた。

(1)「中央制御室規格の世界的動向について」  
北村 雅司 氏(三菱電機)

TMI事故ではプラントの状態を誤解させるような表示など、人間と機械のコミュニケーションの問題が多く指摘された。これをきっかけとしてわが国でも中央制御盤の人間工学的な改良が数多く実施された。こうした中、ヒューマンマシンインタフェースについての推奨例がNUREG-0700等のガイドラインとしてまとめられるとともに、設計手法及び設計ガイドラインがIEC60964等の国際規格としてまとめられた。IEC60964の発行後10年以上が経過し、現在改訂作業が行われている。本講演では、IEC60964及びその補遺規格の内容及び改訂の動向についての報告があった。

(2)「日本電気協会・中央制御室のヒューマンインタフェース規格について」
国頭 晋 氏((株)東京電力)

本講演では、中央制御室の計算機化されたヒューマンマシンインタフェースの開発及び設計に関する指針(JEAG4617-2005)について述べられた。最新の原子力発電所の中央制御室の開発及び運転中の原子力発電所中央制御室の設備更新においては、運転操作卓のコンパクト化、警報の階層化、運転操作の自動化範囲拡大などを目的に計算機技術が大幅に導入されるとともに、計算機モニタを用いたタッチ操作などの新しいインタフェース技術が積極的に導入されつつあることから、これらに対応する機能及び設計において考慮すべき要件を明確にし、指針化することが必要となってきている。本講演では、このような背景のもとに定められたJEAG4617-2005の内容について述べられた。

総合討論では原子力計装制御に関わる民間規格への今後の取組みについて、原子力安全基盤機構の牧野氏の米国の動向に関する報告を中心に活発な討論が行われた。



セッション4では「原子力のリスクコミュニケーション活動とITの役割」というテーマで、三件の講演とパネル討論が行われた。

(1) 安全文化醸成のための現場実践研究(京都大学 杉万俊夫教授)
近年、原子力プラントの安全性確保のため「安全文化(安全風土)」の概念が導入されている。安全文化は規範の一種であり「最低限、部署あるいは発電所全体のレベルで成立している規範」であるが「それを形成しつつもそれに規定される、それに規定されつつもそれを形成する」という一種の運動として存立するものである。本研究では、これに対するアプローチとして活動理論(Activity Theory)を導入し、「主体、対象→結果」の関係に「集合体、道具、ルール、分業」の関係を追加した構造図で分析する手法を用いて、現場調査研究の結果を分析した。
 現場調査は過去の安全風土意識調査で良好な結果を示した現場で定着している活動を見いだす目的で、A原子力発電所のタービン保修課を対象とした。調査の方法は、2004年7月に実施された定期点検時に同タービン保修課の執務室内にテーブルを用意し、通算8日間の現場観察とインタビューを実施した。この調査により下記のことを見いだした。(a)インタビューした全員から、課内・課間にコミュニケーションの垣根がないという回答が得られた。(b)作業グループレベルの活動では、4名という少人数のグループ構成とその作業長の自由度が大きいことが、担当者間の仕事量のアンバランスを是正するとともに相互補助を促し、グループ全体の作業効率と作業品質の向上に寄与している。(c)課・係レベルの活動では、課全体の朝礼、職場懇談会、係内のミーティング、作業グループ内の打ち合わせ、上司と話しやすい雰囲気作り、PCを使ったデータベース活用やメールによる情報交換など、積極的な情報の共有活動を実施し「何でも報告・連絡・相談」という発電所の方針を実現している。(c)所全体レベルの活動では、所次長が自ら各職場に頻繁に足を運び、所員との談笑等を通じて職場の様子を把握するとともに、所次長自身が話しやすい雰囲気を積極的に作っている。さらに、所次長が職場巡回時には承認印を持ち歩き、いつでもどこでも承認行為を可能にしている。
 A原子力発電所では、上記の活動が各レベルでの円滑なコミュニケーションを実現し、よりよい安全文化を醸成していると考えられる。また、このような調査運動自身が安全文化醸成につなげられる可能性もある。

(2) HLWリスクコミュニケーションのためのウェブサイトのデザインと実験評価
(若林靖永、下田宏 京都大学)

日本では原子力プラントから排出される高レベル放射性廃棄物(HLW)は、貯蔵冷却後に深い地層中に処分されることが決められ、現在、その処分地の候補を公募している。しかし、実際にはHLW処分問題に対する社会の認知度は低く、社会的受容性が不十分である。本研究では、一般市民がHLW処分事業の重要性を理解し、原子力事業者と市民がその事業の進め方を共考することを促すために、感情を重要視するアフェクティブなコミュニケーション手法を導入し、お互いが自然に自発的に納得し合意にたどり着くことを目指したWebサイトの構築と実験的評価を目的としている。本研究プロジェクトは2003年から3年間で実施しており、ここでは2年目の研究成果の一つである環境倫理コンテンツが紹介された。環境倫理コンテンツは、HLWに関する知識を提供するだけの解説型コンテンツと異なり、誰もが共通の価値観として持つ環境倫理をベースとして、社会協力行動に至るべき心理的段階を仮定する規範活性化理論をもとにした思考・内省型コンテンツである。本研究では、構築した環境倫理コンテンツを評価するため、解説型コンテンツと比較する評価実験を実施した。評価実験は、被験者として参加した男女各25名を二つのグループに分け、片方のグループが解説型コンテンツを閲覧後BBS(電子掲示板)に参加するのに対して、もう片方のグループが環境倫理コンテンツを閲覧後BBSに参加するものとし、その前後にアンケート調査を実施した。実験の結果、(1)環境倫理コンテンツは、中立的な印象を与えること、興味・関心を誘起すること、社会協力行動を誘発するための当事者意識を誘起させることがわかった。今後は、これまでの研究成果をふまえたWebサイトを公開し、ひろく市民、原子力関係者に活用してもらうことを目指して、2005年10月26日から1ヶ月間構築したサイトを公開し、問題点とさらなる改良点を抽出する予定である。

(3) ITを応用したリスクコミュニケーションシステムの有効性 −HLW問題を事例に− (鈴木維一郎、臼田裕一郎 慶應義塾大学)
本研究は、リスクコミュニケーションを通じた「リスク対応型社会」構築へ向け、HLW処理処分問題を具体的事例として、情報通信技術を活用したリスクコミュニケーションの場(プラットフォーム)の構築・提供を目指すものである。本研究のコンセプトは、ステークホルダだけでなく、一般市民、マスコミ、第三者機関がインターネットを介してアクセスすることでコミュニケーションする場を提供する。本研究でのリスクコミュニケーションシステムは、どのようなプラットフォームが重要かという情報システムとどのような使い方が有効かという社会システムの二つの側面からなると考えているが、ここでは、主にプラットフォームについて紹介する。リスクコミュニケーション支援システムは、@意見交換サービス、A問い合わせサービス、B学習支援コンテンツ、C情報検索サービス、D多次元情報表示サービス、Eオントロジーサービスの6つのサービスを提供するものであり、これらの各サービスでは計算機による知的自然言語処理技術等を活用して利用者を支援している。特にEオントロジーサービスでは、語彙間の意味連関を用いてテーマに関する知識構造の全体像を把握し、関連する情報を効率的に閲覧可能にするものである。オントロジーは、この他にも様々な文章を解析してデータベース化することにより自然言語で記述された情報を整理できるため様々な可能性がある。

(4) パネル討論「原子力リスクコミュニケーションにおけるWeb活用の可能性と課題」
総合司会: 若林靖永(京都大学)
パネリスト:杉万俊夫(京都大学)、鈴木維一郎、臼田裕一郎(慶応義塾大学)
      小林容子(テプコシステムズ)、菊池(NHK仙台放送局)



まず、若林靖永先生より、パネリストの紹介後、パネルに先立つ3つの講演での新しい提案の意義と今後課題を議論したいとパネルディスカッションの主旨が述べられた。以下に3つのテーマ別のパネル要旨を纏める。
(A)活動理論について
菊池:風通しのよいプラント保修課の安全風土は設計して作られたものなのか? 以前からあるものか?
杉万:少なくとも10年以上前からある。起源はよくわからない。
菊池:同じ会社でも風通しのいいところと悪いところがあるのか?
杉万:ある。
菊池:活動理論を使っていい安全風土が広がっていくのか?
杉万:もう少し詳細に描けるなら他の発電所にも活用できる。
永里:悪いところとの比較がないので、調査結果は当たり前に感じられる。
杉万:他の発電所を考えると当たり前ではない。第三者が介入して調査するときには、普通問題点を抽出するが、このアプローチではいいところを抽出して発信することでナチュラルに調査活動が導入できる。もちろん、問題点もあると思う。担当者と現場がだんだん遠くなっていることも問題だろう。
若林(京大):「当たり前」というのは非常に重要である。「当たり前」が実現するためには何らかの環境がある。
杉万:日産自動車のゴーンさんが実際にやったことでは、すべて「当たり前」である。「当たり前」のことをどのように実現することが問題である。
若林(京大):活動理論自体はニュートラルではないか?
杉万:もちろんその通りであるが、メタのレベルで捉えた場合、組織の大きな改革にはオプティミズムが必要だと思う。
若林(東北大):協力会社まで調査したのか?
杉万:していない。次のステップで調査したい。
臼田:活動理論を使って、いい安全風土を作るためのデータベースができるのではないか?
杉万:活動があれば道具があり、またその道具を作る活動がある。そのような関連するデータベースが作れる。活動理論を時系列のダイナミクスが表現できるように拡張すれば可能性は大きい。
若林(京大):違う道具を与えた場合、三角形に影響があるのではないか?
杉万:一点をおおきく変化させると「緊張」が生じる。その緊張は三角形に影響があり、さらに関連する三角形に伝播していく。
若林(京大):活動理論は主体に関連する視野を広げるフレームワークだと思う。

(B)Webの最先端技術の活用について
菊池:対象とする社会の規模と目的はどう考えているのか?
臼田:社会システムのグループでは、リスクコミュニケーション支援システムを活用すれば効果的なリスクコミュニケーションが実現できるのかを検討している。HLWを考えると、国民に対するリスクコミュニケーションと立地地域のリスクコミュニケーションに分けられ、それぞれについて活用シナリオを考えている。また、10週間の実証実験では、ファシリテータや専門家も参加しながら最終的に議論結果をまとめるようなシナリオを作成して運用した。
菊池:討論会等の現実のコミュニケーション(リアル)との関連はどうなのか? うまくリアルと組み合わせて議論の集積を作れるのではないか?
若林(京大):基本的にリアルとの組み合わせはいいと思う。しかし、実際にはHLWに興味のある人は勝手にBBSを作って議論する。専門家の中には個人の立場からそんなBBSに関わっている人もいると思う。関心のある人が集まれば無数のBBSができ、無数の議論が生まれる。慶応のグループはそのための便利なプラットフォームを提供している。たくさんの運用主体が生まれてたくさんの場ができるのがインターネットでのコミュニケーションのありかただろう。
臼田:我々はコミュニケーションを行うパッケージツールを提供し、いろいろな運営主体がそのパッケージツールを使ってコミュニケーションし、総体的に大きなコミュニティができることを目指している。
古田:いろんなBBSが発生した場合、科学的合理性をどうやって担保するのか? 今は文献引用しかできないが、文献検索や評価ツールが必要になると思う。日本では専門家が個人の資格でBBSで発言できないのではないか。これは社会システムの問題か?
若林(京大):関心さえ高まれば勝手に議論が発生するのが自由なインターネットの世界である。京大のプロジェクトはニュートラルではなく方向性がある。自由なインターネットの世界を前提としながらも専門家がどのように関与していくのかを考える必要がある。
菊池:議論の正当性を担保する必要はないのか?
若林(京大):それは別の議論である。自由な討論ができるということが前提である。匿名性があり責任が問われないようなBBSでの議論をもって正当性は担保できない。
五福:自然言語には同じ言葉でも違う意味を表す場合や、違う言葉でも同じ意味を表す言葉もある。オントロジーを使った解析では、これらことは問題とならないのか?
鈴木:オントロジーの分析結果がいつも正しいとは言えない。うまく人間が手を入れて修正して育てていけば使えるようになる。
若林(京大):XMLのタグで意味を与えて推論するようなものであり、オントロジーはその構造自体も推論して作成する。
鈴木:オントロジーは脳内のシナプス結合のようなものである。オントロジーを使ってやってみたいことは、サイレントマジョリティがの意見を引き出す環境を作ることだ。

(C)情報技術を活用したリスクコミュニケーションについて
小林:まず産業界の視点から見てみるとリスクコミュニケーションのための実践的なツールがほしい。多様なステークホルダを様々な視点から捉えてギャップを埋めようなツールがほしい。また、リスクコミュニケーションでは、ファシリテータ、インタープリタが必要であり、情報通信技術を使って効率的な管理ができると思う。情報提供等を考えると少なくともブロードバンドのインターネットが必要であるが、近年インターネットは十分にコミュニケーションの手段として社会的認知を受けている。U-Japanにもあるとおり社会的問題の解決にWeb技術を活用するのはいいと思う。e-ラーニングについては、Webが適切なシステムだと思う。ただ、コンテンツの質とヒューマン(コーチングとメンタリング)が問題となろう。また、AIやヒューリスティック手法等を使ったナレッジソリューションにも有効だと思う。
菊池:まず、全国民が一定の知識を持っているわけではないことを認識すべきである。ただ、情報の提供のために情報技が使えることも事実である。情報技術をどのように活用するかを考える。
若林(京大):多くの人が意見を交換する場としてインターネットを使うのは有効である。少なくとも関心のある人々に対してコンテンツを提供していくのは社会的意義がある。ただし、多くの方々に関心を持ってもらうためにはインターネットだけでなく様々なメディアを利用すべきである。




本セミナーでは以上の四つのセッションに加えて、以下の二件の特別講演が行われた。

特別講演1「レスキューロボットプロジェクト」
田所 諭 教授 (東北大学)

田所先生の講演では、阪神大震災を契機として活発化してきたレスキューロボットの研究開発が紹介された。主として要救助者の情報収集を目的としたロボット等のシステムを対象とし、その背景となる地震災害、これまでの研究開発の概要、今後の課題等について述べられた。実践的なシナリオに基づいて、人に役立つ研究という観点からロボット技術の応用を図る戦略的に行われている研究である。

特別講演2「材料技術のフロンティアと原子力施設 保守保全技術の展望」
庄子哲雄 教授 (東北大学)

庄子先生の講演では、応力腐食割れ発生・進展メカニズム解明と進展性予測等に関する最近の研究動向が紹介された。特にPacific Northwest National Laboratoryを中心に行われている現象分析と重要度分類のプロジェクトでは、各々の専門家が、各々の部位(条件)について評価を行い、High、Medium、Low とknowledge confidence、及びsusceptibilityについての意見表明を行い、それに基づいてPhenomenon Identification and Ranking Tableの作成を行っている。特にヒューマン・マシン・システム研究に期待される役割として、Risk Based Regulation、Performance Based Regulation、評価・判断を支援するツール、事象感受性の評価、評価信頼度と知識のレベル等の相関を究明することの指摘があった。

以上のように、本年度の夏期セミナーは、多様な視点からヒューマン・マシン・システム研究の今後を考えるテーマを網羅した大変充実した内容であった。本セミナーは、シンビオ社会研究会、「原子力の社会的リスク情報コミュニケーションシステム」プロジェクトと計測自動制御学会東北支部の支援があった。この場を借りて御礼申し上げます。