ヒューマンファクターの観点からの福島第一原子力発電所事故の調査,検討 日本原子力学会ヒューマン・マシン・システム研究部会
【報告書】「ヒューマンファクターの観点からの福島第一原子力発電所事故の調査,検討」 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴った東京電力(株)福島第一原子力発電所事故では,安全性が最優先される原子力発電所においても,大規模な自然災害に対する脆弱性と備えの不十分さが露呈した.本部会が関連するヒューマンファクター(安全性を確保するための人間側の要因)に関しても,プラントの状況認識,発電所内外での情報共有,意思決定,緊急時の対応,また,日常の教育訓練,プラントの計装・制御設備や作業環境などにおいて,いわゆる政府事故調や国会事故調などの各種報告書において多くの問題点がされた.それらの報告書で述べられた教訓や提言には,ヒューマンファクターの観点からは疑問に感じるものも含まれており,また,全体的に非難的な記述が多いことに違和感を覚えていた. そのような時期に日本原子力学会に「東京電力福島第一原子力発電所事故に関する調査委員会」(学会事故調)が設置され,学会として事故の振り返りと原因調査や教訓の抽出が始まった.【中略】そこで本部会も学会事故調での事故調査に協力するために,「事故調査検討小委員会」(本委員会)を2012年9月19日に設置して約2年にわたって,有志の委員により各種報告書で指摘されている事項を含めた事故に関する問題点について,ヒューマンファクターの視点から検討を行った. まだまだ調査や検討が不足している部分もあると思われるが,本報告書がヒューマンファクターに関連する事故の教訓を少しでも明らかにし,大規模システムにおける事故の未然防止や事故時の被害軽減のための対策につながれば幸いと考えている. なお,本調査検討の概要については,すでに学会事故調の最終報告書(2)の6.11.1節で報告している. |