日本原子力学会 原子力発電部会 第9回 夏期セミナー報告書

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平成219

 

関西電力株式会社

三菱重工業株式会社

原子燃料工業株式会社

 

1.はじめに

 日本原子力学会原子力発電部会主催による第9回「原子力発電技術」夏期セミナーを、平成2185日(水)〜87日(金)の3日間、福井市の福井市地域交流プラザ(講演会)と敦賀発電所34号機準備工事現場及び原子力発電訓練センター(見学会)にて79名の参加を得て実施した。その概要を以下に報告する。

 

2.セミナーの概要

 今回の夏期セミナーでは、「原子力ルネッサンスの行方 原子力発電を取り巻く情勢と今後の展望」をテーマに、1日目・2日目に講演を、3日目に見学会を実施した。セミナーのプログラムを資料−1に示す。

 講演会では、和智部会長の開会挨拶に引き続き、海外電力調査会の東海氏より世界の原子力開発動向について、関西電力の福谷氏より国内原子力事業の現状と今後について、福井大学の竹田先生より福井大学附属国際原子力工学研究所の取組みについてなど5日に3件、更に6日に7件の講演が行なわれた。6日の講演の最後には勝山副部会長より閉会の挨拶が行なわれた。また、5日には前回に引き続き学生による研究発表(5)が行われた。講演等の概要を以下に示す。

 

(1)セミナー講演

@「世界の原子力開発動向」

  東海 邦博 氏(海外電力調査会)

 エネルギー面での課題、エネルギー政策、欧州の原子力開発、その他地域の原子力開発、

 原子力ルネッサンスへの課題について紹介された。

A「国内原子力事業の現状と今後」

  福谷 稔 氏(関西電力)

 国内原子力事業に関して、設備利用率の世界との比較、高経年化対策、G8北海道洞爺湖

 サミット首脳宣言、温室効果ガス削減中期目標の選択肢、原子力発電推進強化策等について紹介された。

B「福井大学附属国際原子力工学研究所の取組みについて」

  竹田 敏一 氏(福井大学)

 本年41日に開所した福井大学附属国際原子力工学研究所に関して、研究所の特色及

 び地域社会との関わりについて紹介された。

C「沸騰水型軽水炉の技術展望ー既設炉の出力向上にかかわる動向ー」

  清水 建男 氏(東芝)

 沸騰水型軽水炉について、熱出力向上の国内動向及びタービン性能向上の国内事例、海

 外における熱出力向上の実績及びトラブル事例等について紹介された。

 

D「地球温暖化防止・エネルギー安定供給に貢献する三菱PWR技術」

  濱崎 学 氏(三菱重工業)

 加圧水型軽水炉について、三菱PWR技術の半世紀、APWRで標準採用される技術、

 保全施工技術、世界展開への道のり等について紹介された。

E「柏崎刈羽原発の現状について」

  中野 浩 氏(東京電力)

 柏崎刈羽原子力発電所について、平成197月の中越沖地震直後の発電所の状況、地震発生時の課題と対策、健全性の確認と耐震安全性の確保、7号機起動までの取組、その他号機の進捗状況について紹介された。

F「原子燃料サイクルの現状と今後」

  田中 治邦 氏(日本原燃)

 日本原燃の再処理事業及びその他の事業(ウラン濃縮、返還高レベル廃棄物管理、低レベ

 ル廃棄物埋設、MOX燃料加工)、原子燃料サイクルを巡る課題について紹介された。

G「高速増殖炉の現状と今後」

  此村 守 氏(日本原子力研究開発機構)

 もんじゅの現状、実用化を目指すFBR概念、FBR開発の現状〜FaCTプロジェクト〜、

 FBR開発に係る国際協力、FBR開発の今後について紹介された。

H「燃料の現状と今後ーある技術者がみた核燃料開発の歴史ー」

  山崎 正俊 氏、伊藤 卓也 氏(原子燃料工業)

 核燃料開発について、黎明期・導入期・拡大〜成熟期・再興期(原子力ルネッサンス)とい

 う分類のもとにBWR燃料及びPWR燃料の歴史について紹介された。

I「原子力と地域の自立連携を目指して〜エネルギー研究開発拠点化計画の展望〜」

  来馬 克美 氏(若狭湾エネルギー研究センター)

 福井県における原子力産業の概要、若狭湾エネルギー研究センターの概要、エネルギー

 研究開発拠点化計画の概要について紹介された。

 

(2)学生研究発表

@ 福井大学大学院 田中 智大 氏より「破壊靭性値の板厚効果:Tz-stressによる表現の試み」について紹介された。

A 福井大学大学院 辻 将隆 氏より「3次元ひずみ計測技術の局部減肉配管破壊現象への適用」について紹介された。

B 福井工業大学大学院 田中 健司 氏より「マイクロ波誘電吸収法を用いた高分子材料の劣化測定装置の開発」について紹介された。

C 名古屋大学大学院 大河内 豪蔵 氏より「KUCAにおけるレア・アースのサンプルワース測定」について紹介された。

D 大阪大学大学院 藤原 健太郎 氏より「高速炉体系における3次元MOCコードの開発」について紹介された。

 

(3)懇親会

 85日(水)の学生研究発表終了後に、福井市地域交流プラザのビル内レストランにて懇親会を行い、約50名の方に参加頂き、先生方・学生・社会人の交流を図ることができた。

 

(4)見学会

 87日(金)に、日本原子力発電敦賀34号機準備工事現場と原子力発電訓練センターについて見学会を実施した。

 日本原子力発電の原子力館にて建設工程・工法等の説明を受けた後、敦賀3・4号機準備工事現場を見学した。敦賀34号機準備工事現場では、1・2号機の西側の若狭湾を大規模に埋め立て、地盤固めの作業中の現場を見学した。原子炉建屋等はまだ無く、埋め立てた敷地が見られるだけであったが、原子炉が建設される初期の工程を垣間見ることができ、貴重な体験であった。 

 原子力発電訓練センターでは、PWR運転訓練の概要説明を受けた後、最新型のタッチパネル方式新型中央制御盤を始めとする各中央制御盤シミュレータやデスクシミュレータ等を見学した。また、炉心内挙動を理解する為の学習設備等も見学でき、有意義な見学となった。

 

3.参加者について

85日〜6日に行われた講演会の参加者は79人であり、そのうち学生が39人であった。学生の参加者数は過去最多で、盛会であった。また、87日に行われた見学会の参加者は30名であった。

 

4.アンケート結果について

アンケートの集計結果を資料−2に示す。

参加者数79名に対し52名からの回答を得た。(回収率約66%、学生32名、社会人20名)

概要は以下のとおり。

 

・講演の内容については、84%が「興味深かった」、講演の専門性については、87%が「適切であった」とアンケートに回答している。「原子力の現状と将来を学生たちが総括的に理解できるセミナーであった」等の意見もあり、今回の講演は参加者にほぼ満足していただいたと考える。

・今回も、学生との交流という観点から、学生による研究発表を実施し、大学院生から5件の発表があった。学生から「学会以外で研究発表できる場があることはよい」「同世代が何をやっているのか知ることができたので、是非続けて欲しい」、社会人から「研究内容を聞く機会もないので、よい機会であった」等の意見があった。また、アンケート回答者の80%が「継続」を希望している。

・開催期間は、98%が「適切」と回答している。「講演会1日半+見学会半日〜1日」の現状で、引き続き問題ないと考える。

・開催場所については、「学生の参加が多くよかった」「駅やホテルから近く、駐車場も多いので、来やすかった」「広く、きれいな所でよかった」との意見が多数あり、大変好評であった。次回の開催場所については、「夏なので涼しい場所がよい」「地方都市がよい」「学生の集まりやすいところがよい」等の意見があった。

・運営については、「携帯のサイレントモードへの切替えの周知をしてほしい」「部屋が寒かった」等の意見があった。次回の反省事項としたい。

・次回希望する講演内容としては、「ウラン資源確保のための取組み」「原子力発電と地域共生」「新検査制度」「次世代の燃料再処理技術」等が挙げられており、次回講演の参考にさせていただきたい。

・夏期セミナーを何で知ったかという質問については、学生は「先生からの紹介」が94%、「知人からの紹介」が6%、社会人は「知人からの紹介」が38%、「発電部会からのメール」が24%、「発電部会ホームページ」が18%であった。

 

5.所感(反省含む)

(1)開催時期について、これまでの実績を参考に放射線取扱主任者試験等国家試験日を避け、さらに今年度は“敦賀「原子力」夏の大学”(824日〜828日)が計画されていたことから、85日〜87日に実施した。開催会場については、新しく、駅に近いことからアンケート結果からも概ね好評であった。また、今回開催場所を原子力と関係の深い福井県の県庁所在地福井市とし福井駅前の新しい公共施設としたことで、福井大学を始めとする地元のご協力が得られて過去最大の参加者数で盛況となり、また参加者の印象も良かったようである。更に、福井大学の先生方や若狭湾エネルギー研究センターのご協力により地域共生を意識したセミナーとなったことは有意義であった。

(2)学生の参加について、開催場所が福井市であったことから、地元として福井大学及び福井工業大学、また大阪大学、京都大学及び名古屋大学の学生に参加していただいた。また、遠方から北海道大学の学生にも参加していただいた。参加していただいた学生の皆様はじめ学生を派遣して下さった先生方に深く感謝するしだいです。

(3)講演については、例年より短く45分とし講師の方々には発表自体を約30分にて

依頼したため、パソコン準備・質疑応答等を含めスムーズに進行できた。 

(4)見学会について、30名という多数の方が参加され盛況であった。発電所や研究施設ではなく例年と趣きが異なって「工事現場と訓練施設」ということで心配したが、参加者には意外に好評で、幅広く候補を検討することで問題ないと感じられた。

 

6.謝辞

 今回のセミナーの準備、企画にご協力いただいた方々、セミナーに参加していただいた方々、講師を勤められた方々に深く感謝申し上げます。

 

 

添付資料

1. 第9回夏期セミナープログラム

2. 第9回夏期セミナーでのアンケート結果

3. 第9回夏期セミナー開催風景(写真)

 

以上