日本原子力学会 原子力発電部会 第8回 夏期セミナー報告書
平成20年8月
日本原子力発電株式会社
日立GEニュークリア・エナジー株式会社
株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン
1.はじめに
日本原子力学会原子力発電部会主催による第8回「原子力発電技術」夏期セミナーを、平成20年8月25日(月)〜8月27日(水)の3日間、東海村の日本原子力研究開発機構の施設であるテクノ交流館リコッティ(講演会)とJ−PARC及び日本原子力発電東海発電所(見学会)にて57名の参加を得て実施した。その概要を以下に報告する。
2.セミナーの概要
今回の夏期セミナーでは、「原子力発電の未来に向けて」をテーマに、1日目・2日目に講演を、3日目に見学会を実施した。セミナーのプログラムを資料−1に示す。
豊住部会長の開会挨拶に引き続き、エネルギー総合工学研究所の黒沢氏より、世界における地球環境・エネルギー動向と原子力発電について、電力中央研究所の長野氏より我が国のエネルギー戦略と原子力発電についてなど、25日に2件、26日に6件の講演が行なわれた。26日の講演の最後に和智副部会長より閉会の挨拶が行なわれた。
また、25日には前回に引き続き学生による研究発表(3件)が行なわれた。講演等の概要を以下に示す。
(1)セミナー講演
@「世界の地球環境・エネルギー動向と原子力発電」
(エネルギー総合工学研究所 黒沢厚志氏)
地球温暖化などの地球環境の動向、石油、石炭、天然ガスなどのエネルギー資源の動向について紹介され、こうした動向下における原子力発電への期待が紹介された。
A「我が国のエネルギー戦略と原子力発電」
(電力中央研究所 長野浩司氏)
日本のエネルギー政策の変遷と現状、技術開発における国の役割、原子力の係わりなどが紹介された。
B「燃料の将来展望」
B-1 BWR燃料 (グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン 肥田和毅氏)
BWR燃料の変遷、燃料の高度化、超高燃焼度燃料の開発、高性能燃料の導入などについて紹介された。
B-2 PWR燃料 (三菱重工業 吉津達弘氏)
PWR燃料の改良と進歩、55GWd/t燃料の概要、超高燃焼度化の課題などについて紹介された。
C「沸騰水型軽水炉の将来展望」
(日立GEニュークリア・エナジー 守屋公三明氏)
原子力発電の将来展望、ABWRの戦略的展開、新型BWRの開発、日本型次世代BWRの開発などについて紹介された。
D「加圧水型軽水炉の将来展望」
(三菱重工業 内藤隆司氏)
PWRの開発の歴史と培われた技術及びそれらを基にした将来に向けたPWRの世界展開について紹介された。
E「高速増殖炉開発の将来展望」
(日本原子力研究開発機構 岩村公道氏)
高速増殖炉の原理、実用化を目指す高速増殖炉の概念、高速増殖炉開発の現状と国際協力、高速増殖炉開発の今後について紹介された。
F「核燃料サイクルの現状と計画」
(日本原燃 辻朝治氏)
日本原燃のサイクル事業(濃縮、埋設、再処理、廃棄物管理、MOX燃料製造)及び再処理設備高レベル廃液ガラス固化建屋ガラス溶融炉のトラブルについて紹介された。
G「東海発電所の廃止措置の現状と計画」
(日本原子力発電 田中健一氏)
廃止措置の定義、東海発電所の廃止措置工事、解体撤去物の処理・処分について紹介された。
(2)学生研究発表
@東京工業大学大学院理工学研究科 大谷 純一郎 氏より「レーザー推進用光原子炉の臨界解析」について紹介された。
A北道大学大学院工学研究科 平山 聖 氏より「サーメット燃料を用いた小型PWRの検討」について紹介された。
B東京大学大学院工学系研究科 三原 武 氏より「ハフニウムの組織、機械的性質に及ぼす冷間加工および焼鈍の効果」について紹介された。
(3)懇親会
8月25日(月)の学生研究発表終了後に、リコッティのホールにおいて懇親会を行い、約40名の方に参加いただき学生、社会人、また会社等の垣根なく和やかに懇談した。
(4)見学会
8月27日(水)に、日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構との共同施設であるJ−PARC(大強度陽子加速器施設)と日本原子力発電の東海発電所について見学会を実施した。
J−PARCでは、一部工事中ではあったが、物質・生命科学実験施設と構内を見学し、スケールの大きさに驚くとともに最先端科学への期待が高まった。
東海発電所では、中央制御室や廃棄物のクリアランス検認設備などを見学し、廃止措置が安全に行われている状況について理解した。また、東海第二発電所の使用済燃料乾式貯蔵施設を見学し使用済燃料が安全に管理、貯蔵されていることを実感していただいた。
3.参加者について
今回の夏期セミナーの参加者は57名であり、その内学生が13名で、残り44名は電力、メーカー等の関係者であった。
4.アンケート結果について
参加者数57名に対し40名からの回答を得た(回収率は約70%)。
概要は以下のとおり。
・講演内容については、「興味深かった」75%、「普通」25%という回答であり、講演の専門性については、「適切であった」に83%が回答しており、これらの結果から、今回の講演にほぼ満足していただいたと考える。ただ、社会人から「もっと専門的にすべき」に7%が回答しているが、講演内容の対象レベルは学生に合わしていることから、ある程度はやむを得ないことと考える。
・大学院生による研究発表については、「継続」が87%、「中止」が0%であり、これより、次回も引き続き実施し、状況が許せば十分な時間をとってより多くの学生に発表してもらうことが望ましい。
・開催時期については、87%が「今回と同様8月下旬でよい」との回答をしているが、今回は学会の秋の大会が例年より早く9月上旬であったことから本セミナー時期と近くなり、大会近くは避けて欲しいとの意見があった。
・開催期間については、97%が「適切」と回答しており、今後とも「講演会1日半+見学会半日〜1日」の現状で、引き続き問題ないものと思われる。
・開催場所については、概ね良好の感触を得たが、より交通の便がよい都内を希望する方がおられた。
・運営については、講演原稿(テキスト)は、大きめに印刷して欲しいとの要望があり、確かに見難い部分もあり、資料が厚くなるが次回の検討課題としたい。また、参加者リストの配布希望があるが、個人情報保護の観点から安易な配布は避ける必要がある。
・次回希望する講演内容は、「高燃焼度化、長期サイクル運転、出力向上の課題と対応」、「使用済燃料貯蔵と発電所廃棄物の処理処分の状況」、「諸外国のエネルギー事情」など多数上げられており、次回講演の参考にさせていただきたい。
5.所感(反省含む)
(1)開催時期について、これまでの実績を参考に放射線取扱主任者試験等国家試験日を避け、また学会秋の大会が例年より早く9月4日に開催されることから、これらの間において、会場の休館日を考慮して8月25日〜8月27日に実施した。また、開催設備については、新しく、駅に近いことからアンケート結果からも概ね好評であった。日程については、1講演あたりの時間を50分とし、講演の合間に5分もしくは15分の休憩を入れ、ゆとりのある運営に努めたが、講演の合間は、パソコンの準備等を考えると最低10分の休憩は必要と思われる。
(2)学生の参加について、開催場所が東海村であったことから、地元として茨城大学、また東京からは東京工業大学、東京大学の先生方のご協力をいただき、学生に参加していただいた。また、遠方から北海道大学の学生にも参加していただいた。参加していただいた学生の皆様はじめ学生を派遣して下さった先生方に深く感謝するしだいです。
(3)見学会について、今回は最先端科学技術であるJ-PARC施設の見学もあり、37名という多数の方が参加され、盛況であったが、半日で2施設をまわることから、十分な見学時間がとれず、あわただしい見学会となってしまった。次回は、時間にゆとりを持った見学会となるよう企画されることを望みます。
6.謝辞
今回のセミナーの準備、企画にご協力いただいた方々、セミナーに参加していただいた方々、講師を勤められた方々に深く感謝申し上げます。
添付資料
以 上