核融合炉夏期セミナー記録
1999年(第15回)
<参加者の記念写真>
原子力学会「核融合工学部会」主催
第15回「核融合炉」夏期セミナー案内
と き: 1999年7月26日(月)〜28日(水)
ところ: サンピア日立(0294-53-8000)
茨城県日立市みなと町6−1
1. 参加費
核融合工学部会員 3,500円 学生部会員 無 料
原子力学会正会員 5,000円 学生会員 1,500円
非会員 10,000円
2.宿泊費等
宿泊費 朝食代 夕食代 懇親会費
学生 2,500~3,900円 1,100円 2,300円 3,000円
一般 4,400~6,000円 1,100円 2,300円 5,000円
3.交通機関
電車:JR常磐線大みか駅下車タクシー7分、または
大みか駅より日立電鉄線久慈浜駅下車徒歩7分
車 :常磐自動車道 日立南太田I.C.から10分
(国道245号線沿い)
問い合わせ先
(〒311−0193)茨城県那珂郡那珂町向山801−1
日本原子力研究所 那珂研究所 NBI加熱研究室気付
「核融合炉」夏期セミナー事務局
FAX; 029-270-7558
E-mail; school@fusion.naka.jaeri.go.jp
ホームページ http://sun.naka.jaeri.go.jp/school/
第15回 「核融合炉」夏期セミナープログラム
テーマ「核融合研究最前線−学として、楽として−」
趣旨:核融合はプラズマ物理のみならず、多くの工学分野に先端的な研究課題を
提供している。今回は、核融合をいくつかの学問分野からの切り口で、
その先端的課題と研究の現状を眺め、我が国の核融合研究の最前線を取り
上げてみる。そしてもう一つの楽。研究の楽しさもあり、将来への夢もあろう。
楽はまた、ハーモニーでもある。講師の先生方それぞれの研究の楽しみかたを、
楽しく学んでみたい。
7月26日
12:00 現地受付開始
13:00−13:20 開会 関昌弘実行委員長
セッション1:学としての核融合
13:20−14:20 物理学としての核融合 (成蹊大)宮本健郎
14:20−15:00 材料学としての核融合 (東北大)松井秀樹
15:20−16:00 破壊力学としての核融合 (東工大)小林英男
16:00−16:40 流れ学としての核融合 (京大)功刀資彰
16:40−17:20 ITERトカマクと免震構造 (電機大)藤田 聡
17:20−18:00 エネルギー学としての核融合 (電中研)苫米地顕
19:00〜 懇親会
7月27日
セッション2:ハードウエア最前線/らくらくコース
9:00−12:00 日本原子力研究所核融合施設見学、または、
●公開セミナー(10:00−12:00、参加無料)
核融合とは何だろう (原研)狐崎晶雄
放射線よもやま話 (電中研)苫米地顕
●らくらくコース(泳ぐもよし、テニスもよし・・)
セッション3:核融合研究最前線
14:00−14:50 LHD:最近の実験成果 (核科研)大藪修義
14:50−15:40 レーザー核融合 (阪大)三間圀興
15:40−16:00 コヒーブレイク
16:00−16:50 JT−60 (原研)鎌田 裕
16:50−17:40 数値トカマク実験(NEXT) (原研)岸本泰明
19:00〜 若手ナイトセッション
7月28日
セッション4:ITER特集
9:00− 9:40 ITER magnet design and R&D (ITER) Dr. N. Mitchell
9:40−10:20 ITER plasma control (ITER) Dr. P. L. Mondino
10:20−11:00 Nuclear technology for ITER (ITER) Dr. R. Haange
11:00−11:30 Neutral beams for ITER (ITER) Dr. T. Inoue
11:30 閉会 田中知部会長(香山晃副部会長)
第15回「核融合炉」夏期セミナー報告書
と き: 1999年7月26日(月)〜28日(水)
ところ: サンピア日立(0294-53-8000)
茨城県日立市みなと町6−1
担 当: 日本原子力研究所
本年の「核融合炉」夏期セミナー(主催:日本原子力学会核融合工学部会)は7月26日から28日まで、太平洋を間近に望む茨城県日立市みなと町(サンピア日立)で開催された。参加者は講師、幹事を含め、大学院生を中心に大学・研究機関、メーカー等から広く109名の参加があり、約100名収容の会場は3日間ほとんど満席状態で参加者の熱気であふれかえった。今回はテーマを「核融合研究最先端−学として、楽として−」とし、14名の講師の先生方から講演を頂いた。また、2日目には約60名の一般参加者を得て公開セミナーを実施した。さらに、今回のセミナーでは、初めての試みとしてインターネットを利用した参加登録やアンケート調査を実施したほか、セミナーに関する情報を流す手段として本学会の電子メールによる情報配信サービスを利用するなどインターネットの活用を図った。
1.テーマ「核融合研究最前線−学として、楽として−」
趣旨:核融合はプラズマ物理のみならず、多くの工学分野に先端的な研究課題を
提供している。今回は、核融合をいくつかの学問分野からの切り口で、
その先端的課題と研究の現状を眺め、我が国の核融合研究の最前線を取り
上げてみる。そしてもう一つの楽。研究の楽しさもあり、将来への夢もあろう。
楽はまた、ハーモニーでもある。講師の先生方それぞれの研究の楽しみかたを、
楽しく学んでみたい。
2.開催要領(第15回案内参照)
3.プラグラム(第15回プログラム参照)
4.参加者数 109名(学生51名)
5.収支決算書(省略)
6.参加者名簿(省略)
7.セミナーの概要(詳細はこちら。学会誌10月号に掲載。)
8.学生アンケート集計結果(詳細はこちら)
9.セミナー実行委員会ホームページへのアクセス状況(詳細はこちら)
10.テキスト(省略)
−以上−
7.セミナーの概要(学会誌10月号に掲載。)
本年の「核融合炉」夏期セミナー(主催:日本原子力学会核融合工学部会)は7月26日から28日まで、太平洋を間近に望む茨城県日立市みなと町(サンピア日立)で開催された。参加者は講師、幹事を含め、大学院生を中心に大学・研究機関、メーカー等から広く109名の参加があり、約100名収容の会場は3日間ほとんど満席状態で参加者の熱気であふれかえった。今回はテーマを「核融合研究最先端−学として、楽として−」とし、14名の講師の先生方から講演を頂いた。また、今回のセミナーでは、初めての試みとしてインターネットを利用した参加登録やアンケート調査を実施したほか、セミナーに関する情報を流す手段として本学会の電子メールによる情報配信サービスを大いに活用させて頂いた。
<セミナーの概要>
第1日 「学としての核融合」
(1) 物理学としての核融合 (成蹊大・宮本健郎氏)
広範で難解な点の多い核融合プラズマ物理学について、その全体像を平易に解説、講議頂いた。プラズマが扱う領域は、時間的には数psから数千s、空間的には数十μmから数十kmと広範囲に渡り、大変難しくはあるが面白い研究対象であるとの導入に続き、プラズマの解析法、波動加熱、閉じ込め、閉じ込め改善モードなどについて解説を頂いた。
(2) 材料学としての核融合 (東北大・松井秀樹氏)
核融合炉材料に求められる性質および3つの候補材料(フェライト鋼、バナジウム合金、SiC/SiC複合材)の比較についての紹介に続き、「材料楽」としてバナジウム合金にまつわるそのスウェリングの発生と抑制方法に関する興味深い研究を紹介頂いた。
(3) 破壊力学としての核融合 (東工大・小林英男氏)
核融合炉の構造健全性維持のためには、損傷許容性の確保や補修など破壊力学の応用技術が必要となる。ここでは、破壊制御設計の基本的な考え方に関しての講義が行われた。具体的な例を挙げて、製造プロセスにおける破壊制御や接合部の破壊制御、配管の(破断前漏洩)LBB設計等に関する平易な解説を頂いた。
(4) 流れ学としての核融合 (京大・功刀資彰氏)
プラズマをはじめとする高エネルギー粒子の流れと材料の相互作用現象に関する最先端の解析手法についてわかりやすく説明頂いた。特に、相変化現象に関する解析手法に関して、原子・分子モデルを用いるミクロ的手法と連続体モデルを用いるマクロ的解析手法が紹介され、両者の接点などが議論された。
(5) ITERトカマクと免震構造 (東京電機大・藤田 聡氏)
振動の観点から免震構造についてその性能、耐久性に関する話題が紹介された。地震エネルギーを身近なエネルギーと比較した導入部に続き、実例を豊富に取り入れた内容で、ITERのような巨大構造物における最新の研究成果について解説を頂いた。
(6) エネルギー学としての核融合 (電中研・苫米地顕氏)
現在の世界のエネルギー消費量について、昨年の世界エネルギー会議の資料を元に紹介された。エネルギー資源について考える場合、量的な問題のみでなく、エネルギー消費が引き起こす様々な問題を我々の子孫の時代も踏まえて考慮する必要性があると指摘された。この観点から近代における化石燃料の消費は子孫への負の遺産であり、将来的には太陽エネルギー等再生可能なエネルギー源の利用、不足分に対しては新しいエネルギー源である核融合などの原子力エネルギーを利用する必要がある、との解説を頂いた。
第2日 「核融合研究最先端」
(7) LHD:最近の実験成果 (核科研・大藪修義氏)
昨年3月から運転を開始した大型ヘリカル装置LHDの最新の成果について講演頂いた。これまでの装置から得られたスケーリング則と実験値の比較を行った結果、絶対値が50%程系統的に良いことが報告された。また、周辺制御の一例として、周辺温度を上昇させることや、磁場を上げ密度勾配の高い領域を最外殻面へ移動させること等により、閉じ込めの改善がはかられたとの説明があった。
(8) レーザー核融合 (大阪大・三間圀興氏)
レーザー核融合の原理、爆縮の物理及び高速点火について講演頂いた。中でも、最近提案された高速点火方式については、レーザーにより直接爆縮コアプラズマを加熱しホットスパークを発生することにより、中心点火方式より高利得であるとの説明がなされた。また、米国で建設中のNIFにより核融合点火の実証が図られる見通しであるとの紹介があった。
(9) JT−60 (原研・鎌田 裕氏)
トカマク研究の最重要課題の一つである高性能プラズマの定常維持についてJT-60における取り組みと最近の実験成果について紹介頂いた。トカマクの基礎から最近の話題に至るまで大変平易に説明頂いた。
(10) 数値トカマク実験(NEXT) (原研・岸本泰明氏)
プラズマ中で起っている現象を計算機上に再現し、物理的解明を図る数値トカマク実験について紹介頂いた。計算機の急速な進歩とともに重要度がますます増大する計算機シミュレーションを駆使する手法について平易に解説頂いた。
第3日 「ITER特集」
(11) ITER magnet design and R&D (ITER/JCT・ Dr. N. Mitchell氏)
ITERにおける超伝導コイルの設計について、超伝導材料の選定から電磁力に対するコイルの機械的支持方法に至るまで、その設計概念についてわかりやすく講義頂いた。また、R&Dについては、この程原研に設置されたCSモデルコイルを始めとして現在の状況が写真等を用いて紹介された。今後はコイル系が炉のコストに占める割合が高いため、コイルのコスト低減が重要な課題であるとの解説があった。
(12) ITER plasma control (ITER/JCT・Dr. P. L. Mondino氏)
ITERにおけるプラズマの電流、位置、形状の制御手法について講演を頂いた。これまでに線型プラントモデルによるシミュレーションで要求通りの制御性能を達成できたこと、また、小型ITERにおける制御系では、安定性を増すために真空容器に対する銅被覆や炉内コイルに関する検討を進めているとの解説があった。
(13) Nuclear Technology for ITER (ITER/JCT・R. Haange氏)
ITER JCTの核技術(Nuclear Technology)部門の活動状況が示され、特に、現在、設計が進められている小型ITERの建物の配置、クライオスタット、遠隔保守、冷却系、トリチウムなど各種プラントの設計条件や現状を紹介頂いた。
(14) Neutral Beams for ITER (ITER/JCT・T. Inoue氏)
負イオンを用いた中性粒子入射加熱装置(NBI)について、トカマク装置における高性能プラズマ閉じ込めの観点からの必要性、NBI装置の構造について紹介された後、小型ITERにおける技術的課題やR&Dのこれまでの成果について平易な解説を頂いた。
<日本原子力研究所 施設見学会:27日午前中>
2日目の午前中には日本原子力研究所の核融合工学関連施設の見学会を実施した。約50名の参加があり、ITER真空容器や遠隔操作機器、超電導コイル試験装置、RF加熱装置、NBI加熱装置、ダイバータなどを見学した。核融合工学研究の現場を目の当たりにしてその規模と進捗状況に多くの参加者が感銘を受けた。
<若手ナイトセッション:27日夜>
2日目の夜には恒例の若手ナイトセッションが約45名の参加者を得て開催された。例年は各研究室の紹介等を行っていたが、今回は「どうする?どうなる?核融合」と題して、事前に電子メールを利用してアンケート調査を行い、その結果に基づいて討論を進めることを試みた。アンケートは学生全体の7割に相当する35名から回答があり、あらためて関心の高さとインターネットの普及を感じた。
<公開セミナー:27日午前中>
さらに、2日目の午前中には、夏期セミナー実行委員会主催で一般聴講者を対象とした公開セミナーを開催した。事前の予想を上回る約60名の参加者を得て、盛況の内に開催することができた。講演では原研の狐崎晶雄氏から核融合とITERについてわかりやすい講演を頂くと共に、電力中央研究所顧問苫米地顕氏からは「放射線よもやま話」として放射線についてユーモアを交えたわかりやすい御講義を頂いた。
<セミナーの印象>
百名を越える参加者を得て無事セミナーを開催できた。今回は核融合工学を「学」と「楽」の視点で捉えようと試みた。このため、講師の先生方にはひと味違った切り口の講演を御願いすることになってしまい、普段以上の負担をおかけしてしまったが参加者の真摯な受講態度は十分そのご苦労に報いるものであったと思う。セミナー後に回収したアンケートでも、もっと核融合の「学」について議論したかった、という意見が寄せられ、若手研究者が真剣に「学」に取り組もうとしている姿勢が印象的であった。
また、今回、初めての試みとしてインターネットや電子メールを利用した参加登録やアンケート調査を実施した。全参加者の8割以上がインターネットを介して参加登録をしており、インターネットの普及をあらためて感じた。ホームページには全体で約300回のアクセスがあったが、アクセス回数の分布を見ると、学会誌にセミナーの案内が掲載された時よりも、学会の電子メール情報配信サービスでセミナーを案内した後にアクセス回数が急増していることがわかった。このように学会の電子メール情報配信サービスは予想以上に効果的な通信連絡網であり、今後も学会のこのような活動を充実させると共に積極的に活用すべきである。
最後に、講師の先生方にはご多忙中にも係わらず、テキストを作成頂いた上、当日は遠方よりお越し頂き心から感謝申し上げます。また、企画段階から当日の運営まで御助言や御協力いただいた関係各位並びに学会事務局の皆様にあらためて御礼申し上げます。
8.学生アンケート集計結果
ナイトセッション用アンケート回収数 35枚(電子メールで調査)
感想調査用アンケート回収枚数 13枚(最終日に回収)
<夏期セミナー全体についての事務局への要望、意見>
・「将来のエネルギー源として核融合に期待すること」を核融合関係者だけでなく、
利用者側の人に講演してほしい。
・「君たちに○○○の研究を期待したい」と仰るような先生より、もっと夢のある
話をしてくれる講演者を呼んだ方がいい。
・産業界、官庁などからも講演者を呼んでほしい。例えば、今後のエネルギー政策
など、中央省庁で論じられている内容について講演してほしい。
・他分野の進歩に関する講演
・学際分野であることが感じられるような幅広いもの
・核エネルギー反対の学識経験者を呼んで、核エネルギー以外の選択肢についての講演
・学生向けに、講演はわかりやすくあるべき。
・講演時間の最後に質問の時間を設けてほしかった。
・講義のレベルを平均化してほしい。あまり専門的なことは理解しがたい。
・講義の時間が詰まりすぎている。エクスカーションの時間が欲しかった。
<ナイトセッションについて>
・司会 v.s. 参加者という形式で、会は進んだが、もう少し学生同士の
自由な議論があっても良かったのではないか。
・参加者の知識、意識がバラバラで議論がかみ合わなかった。
・研究に対する意見交換をもっと行いたかった。
9.セミナー実行委員会ホームページへのアクセス状況
学会の電子メールによる情報配信サービスはきわめて効果的な連絡通信媒体で有ることがわかった。今後も学会のこのような活動を充実させると共に、大いに活用すべきである。
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以上