専門委員会活動報告(2007年度)

■第13回「放射線遮蔽データ」研究専門委員会
2007年10月12日(金) 理研・和光研究所・「仁科ホール」(出席16名)
議 事
(1) RIBFの建設と現状(理研・福西氏)
 RIBFでは、大強度のウランビームによって90〜130の質量の核種を効率よく生成するために既存施設へ固定加速周波数型リングサイクロトロン(fRC)、超伝導リングサイクロトロン(SRC)、中間段リングサイクロトロン(IRC)を追加している。追加した設備の初実験までの問題点や現状の課題についての解説が行われた。
(2) RIBF見学
 施設内に入り以下の設備の説明を受けた。SRC、IRC、実験設備、超重元素生成装置(GARIS)
(3) その他連絡事項
 次回会合は12月中旬とし、「しゃへい計算実務マニュアル 2007」についてと各WG活動内容の紹介を予定することとした。

■第1回「分離変換・MAリサイクル」研究専門委員会
2007年11月6日(火) 電力中央研究所本部第一会議室(出席38名)
議 事
(1) 委員自己紹介(各委員)
(2) .委員会設立の趣旨説明(井上主査)
 国内外でアクチニドリサイクルが注目され、オメガ計画のチェックアンドレビューも近々想定されている。研究対象が広範囲に及ぶことから、広い分野の専門家が集まって国内外の最新動向の情報を共有し、学術的な議論を活発に行いたい、という趣旨説明があった。
(3) 委員会の進め方について(自由討論)
 委員による自由討論を行い、分離変換の意義と効用に関する意見交換、燃料サイクル全体との関わり、2000年のチェックアンドレビューからの進捗度評価、コストや導入時期の議論、国際的な発信、毒性低減効果の追及、等の着眼点が示された。また、欧米では大きなプロジェクトが始まると関連する基礎研究の裾野も広がるが、わが国はプロジェクトに特化しすぎるきらいがあるのでバランスよく学際的に展開したいという意見が出された。これらを参考に幹事団で今度の議題を検討することになった。
(4) 移行期の諸量評価(財団法人電力中央研究所・小林広昭氏)
 FBR移行期サイクル諸量評価について解析結果が紹介された。増殖性と燃焼度の関係、FBR立ち上がりカーブの意味、Puサーマル繰り返し回数、MAリサイクルは均質系か非均質系か、Cmは均質処理か非均質処理か、FBR時代のMAインベントリ、再処理工場の能力とPuインベントリの関係、Pufの定義、環境へのリークを評価できるプログラムになっているかどうか、等について活発な討議があった。
(5) Global2007国際会議報告(藤田幹事、小山幹事、森田委員、小澤委員、牧野委員)
 会議全体及び/乾式再処理について藤田幹事より、湿式再処理について森田、小澤両委員より、燃料について小山幹事より、処分について牧野委員より、それぞれ紹介があった。GNEPの展開、韓国の現状、α線による溶媒劣化、GANEXサイクルのねらい、UREXに関する基礎技術の進展、ターゲット燃料研究の現状、ガス炉の動向、Cs/Srの処理、ユッカマウンテンの現状、等について活発な討議があった。
(6) 前委員会の報告記事紹介(大井川幹事)
 記事の概要紹介がなされ、学会誌1月号掲載を目途とすることが説明された。
(7) ワークショップの提案について(自由討論)
 前委員会の報告あるいは今委員会の活動の一環としてワークショップ開催の提案があり、意見交換を行った。再処理リサイクル部会との連携や開催時期の検討も含め、幹事団でさらに検討することになった。

■第5回「放射線と社会・環境」研究専門委員会 報告
2007年11月9日(金) 中央電気倶楽部214号室(出席13名)
議 事
(1) 合同勉強会「放射線(被ばく)をどのように公衆に伝えるか?」の趣旨説明(小田主査(神戸大))
  今回は、日本保健物理学会の企画・協力の下、本研究専門委員会と関西支部オープンスクールワーキンググループの合同勉強会とした。
  まず、放射線被ばくを表す「線量」について、現在の概念に至る歴史を概観し、最新の定義について解説された。現在の線量体系には、物理量・防護量・実用量の3つがあり、後者2つはいずれも「シーベルト」単位であり、それらの関係が専門家以外には分かりづらくなっている。また、最新のICRP勧告(ドラフト)では、実効線量の使用に関して「放射線リスクの疫学研究には用いない」、「被ばくした特定の個人の発ガン・死亡確率の評価には用いない」等の注意点が記載されている。このように、作業者の放射線防護では現状のままで機能しており他の用途には用いないことは理解できるものの、公衆や医療被ばくに関する患者さんへ説明する上で何らかの指標が必要であり、この点について意見交換するという本勉強会の趣旨が説明された。
(2) 原子力オープンスクール活動の経験(古田幹事(阪府大))
 日本原子力学会関西支部では、複数の大学教職員から成るワーキンググループを組織し、オープンスクール活動を展開している。この「かんさいアトムサイエンス倶楽部」の活動の概要が説明された。放射線の存在を理解して貰うための実験・工作、出張講義等の紹介に続いて、子供たち及び保護者への説明内容とこれまでに経験された問題が紹介され、意見交換が行われた。
(3) 患者さんからの質問を通して見える、患者と医療従事者の放射線に対する認識(大野和子先生(京都医療科学大))
  医療被ばくに関する患者さんとのコミュニケーションに関する問題について紹介頂いた。まず、日本医学放射線学会のホームページを通して寄せられる質問の内容とそれに対する回答、およびその背景(何故質問することになったのか、何故そのような回答としたか)が詳細に説明された。また、被ばく線量については、診療放射線技師会のホームページで数値が異なる、患者さんには理解できない(単位も)、最終的には納得しない、等の問題があることが指摘された。結論として、被ばくのリスクに言及するのではなく、放射線診療はメリットがあって自分が被害者にはならないことがわかるような方法が有効であるとのことであった。

■第4回「未臨界実験データ評価」研究専門委員会
2007年11月29日(木) 東芝横浜事業所(出席8名)
議 事
(1)未臨界度測定への期待とその問題点―3次中性子相関法を例として―(山根(義)委員)
 臨界安全において未臨界度測定・監視法の確立は,安全裕度の適正化と可視化の意味で重要であるとの立場で,未臨界度測定・監視法の現状が紹介された。未臨界度の監視は,測定の容易な即発中性子減衰定数(α値)で行なうのが現実的である。この場合,未臨界度の絶対値が既知の体系で,予めα値を校正する必要がある。未臨界度の絶対値はパルス中性子法(面積比法),ミハルゾ法,3次中性子相関法で測定できる。3次中性子相関法に空間依存性を考慮してより厳密にすると,「検出器インポータンスで重み付けられた未臨界増倍率」の導入が避けられない。この新しい未臨界増倍率と従来の実効増倍率との関係を,今後検討する必要があると説明があった。なお,3次中性子相関法の測定上の弱点,検出器インポータンスと一般化摂動論との関係について議論が交わされた。
(2)核特性予測値の不確かさ評価の基本的考えと不確かさ評価技術(JAEA・久語研究副主幹)
 核特性計算値の不確かさ評価の基本的考えを概説した。断面積感度係数について概説すると共に,断面積共分散の例を紹介した。
 実験解析値の不確かさ評価の例として,FCA高富化度MOX稠密格子炉心模擬実験結果について,感度係数,不確かさ評価結果を紹介した。
 実験データを設計計算値に反映させ,不確かさの低減を図る不確かさ評価として,従来バイアス因子法を概説した。 FCA高富化度MOX稠密格子炉心模擬実験結果を水冷却増殖炉に適用した結果を紹介した。その他の不確かさ評価技術を紹介した。
(3)その他
 会合の途中で,BWR発電プラント等の模型が設けられている(株)東芝横浜事業所内の原子力PA用展示コーナを見学した。事業所の周辺住民の訪問を受け入れ,原子力利用への理解促進に役立てているとのことだが,学会員にとっても大変参考になる優れた展示であった。

■第6回 「シビアアクシデント時の格納容器内の現実的ソースターム評価」特別専門委員会
2007年11月29日(木) 原子力安全基盤機構 TOKYU REIT虎ノ門ビル9階 第9F会議室
議 事
(1) 第4回会合議事録(案)の確認(渡部幹事)
  本委員会の第5回議事録(案)の確認を行い、前回質問事項に対する回答については次の議題で報告することで了承された。
(2) 前回会合の質問事項に対する回答(松本幹事、堀委員)
  前回会合の質問事項に対する回答について説明が行われた。前者については、熱伝達(自然対流熱伝達、強制対流熱伝達)相関式に関する再調査結果、後者については、実炉体系でのグラスホフ数やEpsteinの熱泳動モデルと他の熱泳動モデル式との比較に関する調査結果の説明がなされた。
(3) SA時における格納容器貫通部の漏えい及びエアロゾル捕集試験(渡部幹事)
 実機の格納容器貫通部、貫通部の漏えい試験、貫通部でのエアロゾル捕集試験の概要並びに本試験成果の反映等について説明が行われ、漏えい部の等価漏えい面積や実炉での漏えい流量及び漏えい経路での捕集効果等について議論された。
(4) BWRプラントのソースターム評価(その2)(中川委員)
 MAAPコードによりABWRのTQUVシーケンスとAEシーケンスの熱水力挙動とFPエアロゾル挙動を計算した結果について説明がなされ、FP除去メカニズムの支配因子やスプレイ液滴の蒸発の有無、事故シーケンスによるFP挙動の違い等について議論された。
(5) 避難・退避判断に用いるソースタームの基礎的検討事例(吉田委員)
 PWR解析結果から見たMAAP4のFPモデル、防護措置が必要となるソースターム、原子力防災指針の改訂と研究課題、防護措置の迅速予測技術、従業員の放射線防護への適用等について説明がなされ、防護措置範囲(EPZ)の妥当性やTMI-2事故時のソースタームとの関係及び設計基準事故(仮想事故)と防護措置との関係等について議論された。

■第7回「最適モンテカルロ計算法」研究専門委員会
2007年12月3日(月)三井造船第二本館会議室(出席5名)
議 事
(1)標準教科書『原子力工学のためのモンテカルロ粒子輸送理論』の変更箇所(桜井主査)
 全体の調整の結果,若干の変更箇所(下記下線部)が生じたため,変更箇所の承認を得た。各章のまとめ方は,学会和文論文の書式を基に,図表を多用し,内容の可視化が可能なようにする。原稿提出期限厳守。標準教科書は,阪大大学院での関連講義や桜井主催モンテカルロ基礎理論セミナー等の教科書として採用し,積極的に販売に努める。
(2)三次元CADデータからMCNPデータへの変換プログラムの開発(佐藤聡委員)
 原子力機構で2年前から進められている三次元CADデータからMCNP形状入力データに変換するプログラムの開発内容とベンチマーク問題処理結果の相互比較の報告。三次元CADデータには,通常,物体領域データのみで,空間領域データが存在しない。いっぽう,MCNPの計算では,空間領域データを定義することが必要である。 そこで,ブーリアン演算により,物体領域データを差し引くことにより,空間領域データを作成するプログラムを開発。しかしながら,核融合炉のよう な複雑で大規模な形状の場合,そのようなブーリアン演算が困難である。そのような課題を解決するために,三次元CADデータ全体をキューブ状に分割した上で,各キューブにブーリアン演算することにより,空間領域データを作成するプログラムを開発。ベンチマーク問題処理結果の相互比較から,より詳細に検討しなければならない課題が見出された。
(4)放射性物質輸送に関する国際会議(PATRAM'07)参加報告(伊藤委員)
 放射性物質輸送に関する最大規模の国際会議PATRAM2007(第15回,10月末,マイアミ)で発表された主要論文とモンテカルロ法論文の内容紹介。

■第14回「放射線遮蔽データ」研究専門委員会
2007年12月11日(火) 上野[住友不動産上野ビル8号館7階JAEA会議室] (出席22名)
議 事
(1)解説「放射線施設のしゃへい計算実務マニュアル 2007」改訂要点(理研・上蓑委員、清水建設・大石委員)
 上蓑委員から「放射線施設のしゃへい計算実務マニュアル 2007」の改訂についての解説が行われた。2000年版は科技庁の委託事業で作られたが、2007年版は原子力安全技術センター独自の業務として刊行されたのが大きな違いである。また、ガンマ線が複数放出される場合の考え方の変更、電子線加速器のバルク遮へいに厚い鉄を挿入した場合の光中性子の評価導入、スカイシャイン計算例の誤記訂正、厚さ計のスキャンを考慮した線量計算法、法令でRIの分類である群がなくなったことに対する対応、遮へい計算のためのデータの追加、等についても説明があった。
 大石委員からは、電子線加速器のバルク遮へいに厚い鉄を挿入した場合の光中性子の影響についてこれまでの研究の成果を基に「放射線施設のしゃへい計算実務マニュアル 2007」で電子線加速器の遮へい評価がどのように改訂されたかの詳細な解説が行われた。
(2)講演「KEKの加速器開発と放射線科学センターでの研究」(KEK・伴委員)
 KEKの主要加速器計画(J-PARC、KEK Bファクトリー、エネルギー回収型リニアックERL、国際リニアコライダーILC等)の概要が紹介され、KEKの放射線科学センターの最近1年の活動(廃水、排気管理、放射化学、放射線遮へい、検出器の開発等)についての報告が行われた。
(3) その他連絡事項
 本委員会は今年度で終了し、来年度からは遮へい関係の専門委員会を新たに立ち上げることが提案され、来年2?3月に最終会合を開催して、本委員会のまとめを行うとともに、次期専門委員会をどのような方向でどのように進めるかの議論を行うこととした。

■第2回「分離変換・MAサイクル」研究専門委員会
2008年1月16日(水)
議 事
1)原子力ルネサンスの期待と現実:実現に向けた課題 (鈴木達治郎 東大・電中研)
 エコノミスト(2007年9月)に原子力の復活について過剰な政府関与という過去の過ちを繰り返さなければ歓迎されるとの論説が載った。実際、原子力プラントは、リプレース(2025年までに262基)、途上国のエネルギー需要の伸張、温暖化対策の需要があり、リプレース需要だけで大きな市場となる。途上国の開発計画を考慮すると2030年には高成長で680GWeと予測されているが、原子力の電力に占めるシェアは現在程度に留まり、温暖化対策には2050年に1000GWeが必要となる。実現にむけた経済性については化石エネルギーの高騰、優遇策等により改善している。他方、安全性・廃棄物問題の社会的合意は課題として依然、存在している。また中小国の原子力導入には、安全等に関わるインフラと核不拡散への懸念が生じる。
3) 分離技術とエネルギーへの応用第15回シンポジウム (竹下健二 東工大)
サバナリバー研究所の近くで開催され、原子力関係を中心に口頭発表が実施された。燃料サイクルではMA関係が全体の36%、CsとSrの分離が16%を占めた。米国のUREX+は2003年から毎年新しい再処理分離システムが発表されているが、これらがどのような目標・基準で改められているのか明確でない。欧州のEURO-PERTはミクロからシステムに向かうアプローチで、100以上の新しい抽出剤について大学、研究機関での研究、その成果をもとに有望なものを選択し、プロセス化を試みている。
4) GLOBAL2007報告:(高木直行 東電、大井川宏之 JAEA)
今回の会議では先進燃料サイクルとシステムがテーマで、GNEP以後、日、米、仏ではMA閉じ込めサイクルと高速炉利用が基本方針となりつつある。システム関係で不拡散性を加えたSCNES、P&Tの地層処分への影響評価、CANDU炉、溶融塩炉によるアクチニド燃焼、CANDL炉、GENIVの導入シナリオ、トリウムサイクル、リサイクル核種の選定)の発表があった。核変換分野では均質炉タイプで金属燃料ABR、非均質装荷、MOX-JSFRがあった。またCR0.25の高いTRU変換率の炉心概念などの発表があった。
6) FBR燃料再処理のためのタンパク質機能付加SAMの創生(坂本文徳、JAEA)
本研究の内容はアクチニドを効率的に吸着するタンパク質を付加させた自己組織化単分子層(SAM)を創生し、先進湿式再処理に利用可能技術を開発することである。5000種以上の一遺伝子欠損酵母からウランに耐性があり、ウラン濃集特性の高い(88.9%)酵母を選定した。その酵母からウラン存在下で特異的に発現するタンパク質を特定・同定し、当該タンパク質を抽出精製した。このタンパク質を付加したSAMを創生し、その濃集特性を確認した。
7) FBR燃料再処理のための新規N,N-ジアルキルアミドの創製   (鈴木伸一JAEA)
本研究の内容は4種類のN,N-ジアルキルアミドについて抽出剤として開発することにある。分離係数として60が得られ、その利用可能性の見通しを得た。またプロセス化に向けた試みについて着手した。

■第2回「熱水力安全評価基盤技術高度化検討」特別専門委員会
2008年1月22日(火) 原子力安全基盤機構 4B会議室
議 事
(1) 次世代軽水炉の開発に係わる安全上の課題(藤井幹事、新井幹事、古川幹事)
 次世代軽水炉の開発に関するナショナルプロジェクト(国プロ)の概要及び産業界で設計を進めている種々の次世代軽水炉の特徴と熱水力に係わる課題等に関する説明が行われ、国プロのスケジュール、パッシブとアクティブ安全系の組み合わせの最適化等、安全系の設計に関する考え方、設計におけるシビアアクシデント対策の必要性等について議論された。
(2) 新たな熱水力課題への規制の対応(中村幹事)
 今後の軽水炉開発及び現行軽水炉の高度利用への対応、最近の国内外における規制の動向と熱水力に係わる課題、近年における規制課題への取り組みに係わる具体例等が説明され、本委員会において検討すべき規制課題の範囲や規制に係わる他の検討会等との関連等について議論された。
(3) 大学における熱水力研究の現状(班目主査及び委員)
 大学における熱水力関連研究の実施状況に係わるアンケートの結果を簡単に紹介するとともに、今後の熱水力研究における大学の役割、産業界等への要望、産官学が協力して開発や研究を効果的に行う仕組み等について意見交換が行われた。

■「軽水炉燃料の高度化に必要な技術検討」特別専門委員会
 第5回民間規格作業会
2008年1月22日(火) 東大工学部8号館 226会議室(出席29名)
議 事
前回作業会で確認された議題項目に従い、以下について議論を行った。
(1)安全審査指針類に関する調査等の活動について
 基準高度化(性能規定化、指針体系化等)に向けた原安委事務局の取り組みの概要紹介があり、学会をはじめとする関係者の自発・独立的な活動を踏まえつつ、今後指針類の検討を進めていきたい旨説明があった。
(2)学協会規格案について
 前回に引き続き産業界(PWR)より過歪損傷に関連した水素濃度制限についての規格案の説明があった。これに対しエッセンシャルなパラメータである水素濃度に着目する点に合理性があることが認識された。また、ミクロな視点からのアプローチに関する意見や、学会発表・投稿の活用方法等について意見が出された。
(3)トピカルレポートについて
 燃料に関するトピカルレポート制度についてのJNESによるこれまでの検討成果が紹介された。これに対し活用にあたっては、関係各機関のメリットを念頭におくことが必要であること、合理的な役割分担により国内審査体制(ダブルチェック)を運用することへの期待等の意見があった。
 以上にて本作業会での議論を終了し、成果・課題等を取りまとめていくこととした。

■第5回「計量保障措置分析品質保証」特別専門委員会
2008年2月5日(火) 日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル工学研究所(出席11名)
議 事
1.日本原子力研究開発機構 核燃料再処理施設の見学(原子力機構・駿河谷)
 再処理施設における分析技術に対してより一層の理解を深め、充実した技術基準の構築を目的に、核燃料サイクル工学研究所の再処理施設分析所の見学が行われた。使用済燃料溶解液中のウラン及びプルトニウムの高精度分析法である同位体希釈質量分析法に関する一連の分析操作、及びその標準物質であるスパイクの調製方法の詳細ついて、実際の現場を確認することにより把握がなされた。今後、本委員会における議論の活発化が期待される。
2.スパイク調製に関する国際ワークショップの紹介(久野幹事・委員)
 昨年11月12日、東海リコッティーにて、国際原子力機関と日本原燃株式会社の共催のもと開催された標準物質(スパイク)に関するワークショップに関して、その概要が報告された(参加機関:IAEA,米国NBLおよびSRNL, EU-IRMM, JNFL, NMCC, JAEA)。その成果として、各国の標準物質供給機関が日本の国内スパイク調製に関する取り組みの重要性について支持を表明した。今後必要に応じて標準物質の認証値決定などに関し国内外の関係機関の協力が得られることなどが確認された。
3.ISO8299との比較評価(鈴木委員)
 日本原子力研究開発機構におけるISO17025認証取得に向けた取り組みの一環で、分析マニュアル類を整備している。基本となる分析法はISO8299に規定されており、これとの内容を比較評価した結果が報告された。その結果、高精度分析を達成するためには機構における方法は十分な内容であるものの、詳細な部分での相違が存在することから、相違箇所の技術的な説明について今後継続して検討していく。

■「軽水炉燃料の高度化に必要な技術検討」特別専門委員会
第3回幹事会(拡大幹事会)
2008年2月13日(火) 東京大学工学部8号館502講義室(出席22名)
議 事
(1)燃料高度化技術戦略マップ2007のローリングに関する議論について
燃料高度化技術戦略マップ2007は第3回特別専門委員会に報告され、学会の場で産官学の了承を得られている。技術戦略マップ2007では、燃料高度化を産官学が協力して効率的に進めていくために、それぞれの役割を明確にし、それを共通認識とすることに努めた。技術戦略マップでは、その策定作業の中にローリングを行うこととしており、技術戦略マップ2007についてもローリングを行うべく、平成20年2月末に実施予定のRM作業会にて技術戦略マップ2007に対する産官学の活動の評価を行うこととした。この活動評価にあたっては事前に特別専門委員会委員に対し評価シートを送付し、意見を回収した。本幹事会(拡大幹事会)では、各委員(組織)から出された見解を確認しつつ、その取りまとめ方針につき協議した。

■第4回「軽水炉燃料の高度化に必要な技術検討」特別専門委員会
2008年3月6日(木)東京大学工学部8号館 502号室(出席35名)
議 事
(1)委員会活動実績について
H18年度およびH19年度の活動実績が確認された。併せて、民間規格作業会及びロードマップ作業会の各主査より活動概括が述べられ、本活動成果と併せて、この学会活動を基点として種々の検討が開始される等、非常に有効であった旨の説明があった。
(2)H19年度報告書について
民間規格作業会及びロードマップ作業会の活動および成果に関する具体的説明と共に、H19年度報告書(案)における主要な記載内容が確認され、議論された。今回の議論および個別のコメントを踏まえ、報告書を完成させ、学会へ提出することとした。
(3)今後の活動について
本特別専門委員会は予定通り今年度末終了となるが、民間規格関連およびロードマップ関連の次の検討体制について、それぞれに相応しい場が提案された。

■第6回「放射線と社会・環境」研究専門委員会
2008年3月8日(土) 中央電気倶楽部212号室(出席者21名)
議 題
1.ランタン・マントルの教育用α線源としての利用 中西良樹 君(近大総合理工)
トリウムを含むランタン・マントルを線源として用い、固体飛跡検出器のCR-39樹脂板をα線で照射、エッチングした結果、多数のエッチピットが確認された。ラップフィルム等で遮蔽するなどを行うことで、特別な器具を用いることなく放射線の基本的な性質を簡便に学ぶことのできる実験として有効であることが示された。
2.マイクロマウスコンテストに参加して 小林初美さん(阪大院工)
大阪大学FRCの“学生チャレンジプロジェクト”に応募し採択され、全日本マイクロマウス大会に参加した経緯とその結果が報告された。マイクロマウスとは自律型知能ロボットの一種であり、コンピュータや各種センサを搭載し自律的に迷路を探索して脱出するロボットで、本大会では迷路を脱出するまでの走行に要した最短時間を競っている。マイクロマウス製作及び大会への参加を通して、参加メンバーの技術習熟と自己啓発に繋がる経験となった。
3.PADC薄膜を用いた重イオントラック構造の解析 森 豊 君(神大院海事)
PADCは最も高感度な固体飛跡検出器として知られているが、その動作原理の基礎である潜在飛跡形成機構に関しては未だ不明な点が多い。本研究ではPADCの代表的な官能基であるカーボネートエステル結合を赤外分光法で評価した結果が紹介された。
PADC薄膜にCとNe、Ar、Feイオンを放射線医学総合研究所HIMACにて照射し、その後のPADCの赤外線吸収スペクトル変化から、カーボネートエステル結合の吸収ピークにおける吸光度とそのフルエンス依存性を調べ、トラック単位長さ当りの減少数を示す損傷密度とG値、実効的トラックコア半径が求められた。また、実効的トラックコア半径の局所線量を求めたところ、イオン種によらず約106 Gy程度の領域で形成されていることが示された。
4.InSb結晶の育成と評価 上川直紀 君(京大院工)
 InSb検出器はSiやGe検出器よりも高い検出効率・エネルギー分解能を持つ可能性があるしかし市販のInSbウェハは放射線検出器とするには抵抗値が低く,バイアス電圧を印加することができない。そこで、ゾーンメルト法によって原材料中の不純物を除去し、垂直ブリッジマン法で単結晶を育成することとしこの結果,市販の物よりも抵抗値の高い結晶を得られた。今後の育成方法や検出器の製作方法の改良により、InSb検出器の実現化が期待される。
5.CsI(Tl)シンチレータ電流モード検出器を用いたヨウ素厚さ評価 三上研太 君(京大院工)
ヨウ素で修飾した癌を観測する場合のX線透過撮影法およびCT測定の低被曝化の目的の下、これまでLaフィルターを用い余分なX線を除去し、また従来の電流測定法ではなくX線エネルギースペクトルの情報を利用することで、被曝量とヨウ素量を低減できることを示してきた。しかし、X線のエネルギー測定では長い測定時間が必要なため、新規に開発した電流モード検出器を用いて、大まかなX線のエネルギー分布を得ることを試みた。電流モード検出器で得られたエネルギー情報を用いて、ヨウ素厚さに比例するコントラストが得られた。
6.感温性モデルペプチドのガンマ線架橋によるナノ粒子化とその応用 藤本真理さん(大阪府大院理)
 大腸菌遺伝子工学技術により開発されたエスチンモデルペプチドpoly(GVGVP)251の一定以上の温度で凝集微粒子化するという特性に注目し、凝集させた状態を保ちながら架橋試薬の残留の恐れのないガンマ線照射を行い、薬剤担持可能な架橋ナノ粒子の調製を試みた。その実験結果と今後の展望/応用が紹介された。
7.ITERモデルを用いた核融合・核分裂ハイブリッド炉の研究 松中允亨 君(阪大院工)
 核融合炉ブランケットに核燃料を装荷するハイブリッド炉概念が提案されている。モンテカルロ輸送計算コードMCNP-4Cとポイント燃焼計算コードORIGEN2.1を結合し、トリチウム生成比、実効増倍率、エネルギー増倍率等の性能評価を行える燃焼計算システムを開発した。検討した四種類のケース(燃料についてはウランサイクルとトリウムサイクル,冷却システムについてはヘリウムと軽水の各二種)について計算結果が示された。ウランサイクル燃料とトリウムサイクル燃料で炉の性能に大きな違いはなく、水冷却のシステムはエネルギー生産に適しており、ガス冷却のシステムは長寿命放射性核種の核変換に適していることが示された。

■第3回「原子力システムにおける低放射化技術」研究専門委員会
2008年3月11日(火)東北大学東京分室会議室 サピアタワー 10階(出席17名)
議 事
(1)活動期間の延長について    
2008年3月で当初の活動期間が終了する。これまでの活動について原子力学会誌への解説記事の投稿を予定すると共にロードマップに基づくアウトプットを示すことを加え、延長が認められるよう対応する。担当部会を放射線工学部会とする。委員を追加する。
(2)「ふげん」における放射化評価について(白鳥委員、川太氏)  
新型転換炉ふげんの廃止措置に関わる放射化評価について中性子束密度と元素組成分析の現状を紹介。運転中の中性子源を正しく把握することが重要。原子炉廻り以外の機器等(格納容器内)では構造が複雑である、中性子源が複数存在する、散乱中性子の影響があるなどの特徴がある。放射化への影響を評価できるか、大型金箔による中性子束密度計測やボナーボールによる測定を実施。格納容器内の金属およびコンクリートの放射化量測定を行い、計算結果と比較したところ、よく一致した。クリアランスレベル程度の低放射化物についても中性子束密度分布測定に基づく解析から求めた評価が可能であると考えられる。
「ふげん」を代表する値となるように機器、配管等の設備に偏りなく試料を採取し、構造材の元素組成分析を75元素について行った。炭素鋼、ステンレス鋼、コンクリートについてGDMS法、ICPMS法、赤外線吸収法、熱伝導度法などで分析。NUREG値、日本鉄鋼認証値、一般建築コンクリートとの比較を行った結果、一部にバラツキの大きい元素があったものの概ね良く一致した。コンクリート中に存在する水素(自由水、結合水、結晶水)の存在量は放射化解析の精度に影響することから、コンクリート中の水分分布測定を行った。日本建築学会の定める測定法(自由水)、カールフィッシャー法(結合水、結晶水)により測定。コンクリート中水分量に影響する主な要因として時間、壁厚、環境条件があると考えられる。
(3)低放射化と核データについて(馬場委員)
加速器施設における低放射化課題について説明。加速器施設では、加速器粒子による放射化物は高放射能であるが少量短寿命であり、二次中性子による放射化物は低放射能であるが大量であることが特徴である。放射化物は放射線発生装置の使用において、放射化させることを目的とせず有意の放射能を持つに至った機器で加速器・ビームライン構成機器や実験機器等が該当する。東北大学におけるサイクロトロン加速器の更新実施の際の測定例を紹介。放射化量の評価について、中性子放射化断面積は低エネルギー部では比較的精度はよいがエネルギーが高くなると断面積精度が悪い場合がある。放射化評価誤差は中性子フラックス、スペクトル、原子数の精度によると思われる。研究施設の廃棄物は核種、使用形態が多様なのでガイドライン設定は困難だが、放射性廃棄物の定義の合理化などによる廃棄物低減の検討が必要と考える。
(4)次年度以降の進め方
中間報告としてこれまでの活動について原子力学会誌への解説記事の投稿作業を進める。原子力学会春の年会の機会に次回の検討項目について調整する。

■第3回「熱水力安全評価基盤技術高度化検討」特別専門委員会
2008年3月11日(火) 原子力安全基盤機構 別館13A及び13B会議室 (出席35名)
議 事
(1) 熱水力ロードマップの概要(中村幹事)
 熱水力ロードマップ策定の方向性、策定後の活動、産官学の役割、平成20年度における本委員会のスケジュール等に関する説明が行われ、中心に据えるべき技術課題、重要度の客観的評価方法、学術会の関与のあり方等について議論された。
(2) 平成19年度報告書(新井幹事、笠原幹事、藤井幹事、古川幹事、中村幹事)
 各幹事より、19年度報告書(案)の構成及び記載内容について説明し、概ね了承された。最終版を作成し、委員に配布することとした。(3) その他
 次回(第4回)委員会を5月〜6月に開催し、具体的な日時については後日連絡することとした。

専門委員会活動報告(2008年度)

■第8回「最適モンテカルロ計算法」研究専門委員会
2008年4月24日(木) 三菱総研CR-2A会議室(出席者5名)
議 事
1  主査報告 桜井主査
 1)標準教科書『原子力工学のためのモンテカルロ粒子輸送理論』の進捗状況の報告。全体的に遅れており、これまでに原稿提出があったのは関根「重要用語解説」のみ。委員会を延長して出版に備える必要あり。
2  検討事項 桜井主査
1)委員会延長申請書(案)の検討。委員は、現委員5名辞退(現委員全員に意思確認済み)、新委員1名追加(主要大学と研究機関に新委員要請済み)、常時参加者1名追加、計14名。桜井主査より、委員会の世代交代を図りたいとの要望あり。延長理由の教科書出版と中性子断面積共分散考慮の輸送計算の必要性が説明され、それに対し、佐藤理委員から、それに対応できる委員の追加の提案あり。申請書案は承認された。
3  講演
3.1 Mesh based next event detectorとCADIS理論分散低減を用いた建屋外線量分布計
算の効率化  佐藤理委員
MCNP-4C2に機能追加したMesh Based Next Event Detector(MBNED)と随伴線束を用いたWeight Window Parameter最適化手法CADISを用いて、使用済み燃料中間貯蔵施設の中性子・光子スカイシャイン線等による建屋外線量率分布計算の高効率・高精度計算法(深層透過・ストリーミング・スカイシャイン)の報告あり。MCNP計算は1億ヒストリーで2-3時間。この方法により、敷地内の詳細な三次元分布(MBNED)や敷地境界上の最大線量の評価が容易にできるようになった。特に、随伴線束法の採用は不可欠。
3.2 モンテカルロ法利用法の現状 矢形朋由氏(東大大学院工学系研究科D2)
配布資料B-MCCM-8-2に基づき、東大工学部と同大学院におけるモンテカルロ法関係の教育内容の現状報告と講演者によるMCNP計算結果、さらに、モンテカルロ法の利用拡大が期待できる宇宙分野での現状と将来計画の報告あり。宇宙分野では、たとえば、電子機器の放射線によるソフトエラー評価のため、個々の原子の大きさ程度のナノ単位の長さのレベルの計算が必要になるため、主にGEANT4が採用されている。

■第11回「核燃料サイクルの物質利用」研究専門委員会
2008年5月9日(金) 東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(出席21名)
議 事
(1)マイクロカプセルによる放射性核種の分離・回収(東北大・三村幹事)
革新的な核種分離システム開発は多様なアイデアで進められているが(仏:DIAMEX、米:UREX+、日:ARTIST、ORIENT, ERIX等)、経済性、安全性、資源利用、環境負荷低減、核不拡散性をより向上したコンパクトな精密核種分離システムの構築が期待されている。核種選択性を有するコンパクトなマイクロカプセル(MC)カラムによる核種精密分離法の開発は、従来の群分離と異なり全核種精密分離を可能とする手法であり、革新的な核種分離が期待できる。高機能性ハイブリッドマイクロカプセルを用いた(1)MAの選択的分離・回収、(2)発熱元素(Cs,Sr)の精密分離・回収、(3)白金族元素(PGMs)・Tcの精密分離・回収、(4)加水分解性核種(Mo,Zr,Te)およびIの精密分離・回収に関する要素技術の基礎試験を行っている。ゾル・ゲル法により、バイオポリマーを担体とし、微小ナノ分離剤を内包する高機能性・高選択性ハイブリッドマイクロカプセルを設計・合成した。ハイブリッドマイクロカプセルによる核種の精密分離スキームでは、全てマイクロカプセルを充填したコンパクトカラムを直列に連結しており、有用核種の選択的吸着および逐次クロマトグラフィー分離を組み合わせて、シンプルで一貫した高度分離・回収プロセスの完成を目指している。
(2)複雑な核分裂生成元素(Ru, Tc, Zr, etc.)の化学分離挙動(東北大・倉岡幹事)
核燃料サイクルにおける資源の有効利用および環境負荷低減を図るために、有機物の使用量が少なく、多成分を相互分離できる固体吸着材を用いるカラム分離技術の研究を進めている。吸着速度が速く選択性および安定性が優れたシリカ担持型高性能イオン交換体・キレート吸着剤を開発し、また分離性能を大きく左右する核種の原子価制御手法として電解還元法を検討している。使用済核燃料からU・Pu、MA(Np ・Am・Cm)、Cs・Sr・白金族・Tc・Mo等の高度分離回収を目指している。複雑な核分裂生成元素(Ru, Tc, Zr, etc.)の原子価や分離挙動について検討した。Ruは、多種の原子価・錯形成により複雑な吸着・溶離挙動を示し、電解還元により吸着性Ru(III)等が非吸着性Ru(II)になり、Uと良好に分離できた。また、ニトロ錯体生成を利用して、Ru及びPd、Rhを他のFPから効果的に分離回収できた。Tcは、VII価 (TcO4-)の状態でアニオン交換体に強く吸着し、溶離が大変困難であった。電解により低原子価(II〜IV)に還元され、弱い吸着性になる。吸着されたTc(VII)をU(IV)により効果的に還元溶離され、回収できた。ZrとMoは、CMPO吸着剤により他のFPと良好に分離され、またTODGA吸着剤によりZrとMoを相互分離できた。
(3)レアメタルの乾式リサイクルプロセスの開発(東北大・佐藤委員)
 レアメタルとベースメタル(コモンメタル)の定義や分類、金属製錬におけるベースメタルの製造方法を紹介し、ベースメタル製錬法のレアメタル製造における適用範囲について、実際の製造方法とともに熱力学的に検討した。特に、炭素還元では金属製造が難しいレアメタルについて、活性金属還元や溶融塩電解法の適用を述べた。次に、高融点金属であるチタンおよびニオブを取り上げ、原料鉱石からの選鉱製錬と、素材製造、高純度化ならびに製品製造について述べた。さらに、チタンおよびニオブを合金として利用している超伝導線材について製造方法と製品およびNb-Ti線材スクラップの特徴を述べ、Nt-Ti線材スクラップのリサイクルに関して、同スクラップからチタンおよびニオブをリサイクルするプロセスの概要と実際に実施したパイロット試験について詳細に紹介した。レアメタルのリサイクルについて、都市鉱山に存在するスクラップの資源形態と特徴、それらに対する選鉱技術および乾式プロセスの適用性について検討し、今後の取り組みについて示唆した。
(4)試薬含浸樹脂を用いた希土類元素のクロマトグラフィー分離(産総研・和久井氏)
希土類元素間のわずかな性質の差を分離へと応用するには、錯生成反応を利用する必要がある。溶媒抽出法とイオン交換法の利点を組み合わせた含浸樹脂による分離を試みた。含浸樹脂は容易に調製でき、抽出試薬の分離能を簡便に固体材料に付与することが可能で、特に微量金属の精密分離には有効と考えられる。PC-88Aを含浸した多孔質樹脂による希土類の分配比を測定し、La(III)とLu (III)の分配比の差は対数で約5であり、高い分離性能が得られた。Scはスズ鉱石や鉄マンガン重石、ウラン鉱等からの副産物であり、希薄な溶液からの高い分配比と濃縮率及び多量の共存金属元素からの良好な分離が必須となる。PC-88A含浸樹脂を微量Scの濃縮分離実験に適用した。pH 0以上の溶液からSc(III)は良好に抽出され、分配比は106以上の高い値を示し、共存元素が抽出されない強酸性条件下でも含浸樹脂カラムへの連続捕捉が可能である。鉱石製錬残渣の酸浸出液(3MHCl)をカラムに通液した結果、溶出液中にScは全く検出されず、不純物を溶離した後、抽出されたScは有機溶剤PC-88Aを用いて錯体として溶離回収された。
(5)超臨界水による金属酸化物ナノ粒子の合成(産総研・林氏)
高温高圧の超臨界水を晶析反応場とし、連続的にナノ粒子の合成が可能な流通式超臨界水熱合成装置を用いた金属酸化物ナノ粒子の合成技術について紹介した。超臨界条件では、溶解度が著しく低下することから、古典的核生成理論の原料濃度と溶解度との比で定義される過飽和度が大きくなり、結晶核が多数生成する。逆に溶解度が低いことは、結晶成長が進行しにくいため、ナノ粒子を合成する好適な反応場となる。また、誘電率の低下は反応速度にも影響し、高温という温度効果以上に高速となり、反応速度は3〜4桁程度向上する。さらに、通常の水熱合成では、脱水反応が不完全であり、表面や結晶内に水酸基が存在し、結晶性の低い粒子となるが、超臨界領域で密度が低い条件では、脱水反応が促進され、高結晶性のナノ粒子が合成できる。流通式急速昇温水熱合成法では、原料溶液と超臨界水を混合して急速に昇温、反応後、急速に冷却するため、反応場を厳密に制御できる。本講演では、超臨界水による単一金属酸化物及び複合金属酸化物ナノ粒子の合成例の紹介及び水熱反応晶析を模擬高レベル廃液に適用した文献例についても言及した。
(6)海外におけるレアメタル資源の開発事例(秋田大・柴山氏)
 「産業のビタミン」と称されるレアメタルに関しては、資源としての偏在性、枯渇(耐用年数)、安定確保への課題などが頻繁に報じられるが、実際に生産している鉱山や開発現場の“生の情報”を入手するのは意外に難しい。今回の講演では、レアメタルを鉱物資源としてとらえ、海外の鉱山調査、技術視察によって得られたレアメタル等の鉱山開発動向、生産技術の例を概要として紹介した。特に、講師が専門とする資源処理の視点で見た鉱物学的処理や化学的抽出工程等について、レアアース鉱物の選鉱処理、中国におけるレアアース・イオン吸着型鉱山の概要と溶媒抽出による分離工程、中国ジルコニウム精製工場等の事例を写真と映像を交えて説明した。
(7)その他
本研究委員会の総括及び今後の予定についての討議がなされ、活動内容を報告書や単行本としてまとめる方針が合意され、次回から具体的に検討する予定である。次回(第12回)委員会は原子力学会秋の大会日程に合わせて開催予定。

■第7回「先進的原子力システムにおける燃料・材料」研究専門委員会
2008年5月15日(木) 電力中央研究所大手町本部第2会議室 (出席21名)
議 事
1.講演:3件
(1) 「計算科学による原子力材料研究の現状」:JAEA蕪木英雄研究主席
 原子力材料に対する計算科学アプローチとしては、照射損傷過程が重要である。特に、現在核融合炉、先進型炉材料ではヘリウム脆化の注目度が高い。ミクロレベルから研究する手法としては第一原理計算と分子動力学法がある。分子動力学法では、面心立方金属の解析では信頼度の高い原子間ポテンシャルがあるが、体心立方鉄では注目度が高まっているがはまだ精度は十分ではなく、特に不純物、固溶原子が存在する系のポテンシャル開発が望まれている。第一原理計算では、汎用コード(例えば、ウイーン大学製のVASP)を利用した研究が増加しており、コード開発から一貫する研究者はむしろ少数派になった。
 面心立方晶系のアルミニウムや銅に対しては、格子欠陥集合体の生成、不動転位から可動転位への変化等を解析できるようになった。
 応力腐食割れ現象に関連し、酸素は硫黄に必肩する強い粒界脆化作用があることを示す第一原理計算結果が得られ、実験との連携を模索している。
(2) 「マイナーアクチニド含有MOXの基礎特性」:JAEA加藤正人研究副主幹
 数%程度までのマイナーアクチニド(Np、Am)を含有するウラン・プルトニウム混合酸化物の物性研究を高速増殖炉サイクル実用化研究開発等の一環として進めている。物性としては、融点、熱伝導率、格子定数、酸素ポテンシャル、相分離挙動に着目している。
 融点については、封入キャプセル材料をタングステンからレニウムに変えたところ、酸化物燃料との接触の影響を回避することに成功した。特に、プルトニウム濃度が30〜40%における融点(固相線)は、従来報告よりも100℃以上高いことを明らかにした。また、熱伝導度についてもO/M比、AmやNpの影響を明らかにした。
 数%程度までのマイナーアクチニドは物性値に及ぼす影響は小さいことがわかった。今後は、物性データの拡充に加え、計算科学を用いた物性値の予測とデータベース化を進める予定である。
(3) 「原子力による水素製造の研究開発」:JAEA国富一彦研究主席
 原子力水素の研究開発は、地球温暖化対策の一環として位置づけられている。原子力水素は、数ある水素製造技術と比較して炭酸ガスの副生が無い点に特徴がある。原子力機構では高温ガス炉用にIS法、高速炉用にハイブリッド熱化学法の研究開発を進めている。
 IS法については工学基礎試験段階を終了した。現在は、HTTR(高温工学試験研究炉)を用いた水素製造試験を目標とし、技術確性・信頼性確認試験の段階にある。
 耐食性に優れた材料が不可欠であり、ヨウ化水素接触部のガラスライニング技術、硫酸分解器の大型セラミックスブロック製造技術等の開発を進めている。
2.その他
 山脇主査から2箇年の活動方針が提示された。方針の要旨は以下のとおり、燃料と材料の共通の興味に対し、計算科学と実験、物性と照射、システム(LWR、FBR、核融合)等と切り口とし、方向性を持った議論を展開していきたい。成功談だけでなく、失敗談や途中経過を含めた議論の場として期待したい。活動は、学会特別セッション、学会誌レビュー報告等を目標にまとめていきたい。

■第6回「計量保障措置分析品質保証」特別専門委員会
2008年5月19日(月)  物産ビル別館日本原燃第1会議室 (出席13名)
議 事
1.国内ウラン共同分析の紹介(蔦木委員)
核物質管理センターで企画している国内における保障措置分析全体の質の向上を目的としたウラン試料の共同分析について紹介された。本共同分析の配付試料はNBL製ウランペレット(ブラインド試料)としており、年に4回の頻度で測定するものであり、本年4月から開始されたとのこと。また、保障措置分析の国際目標値(ITV)の設定値に関する背景についても説明された。今後、本共同分析による国内の分析レベルの向上が期待される。
2.LSDスパイク調製の進捗状況(鈴木委員・角事務局員)
JAEAにおけるLSDスパイクの調製作業はほぼ終了したとの報告がなされた。認証値を基準にしたウランの調製値(理論値)と確認のために実施した分析の結果は良く一致していた。プルトニウムに関してはクーロメトリによる分析結果をもって評価するが、同位体希釈質量分析法による確認分析の値は期待値とよく一致していた。今後この標準物質の認証に向けて、国内外の関係機関による共同分析が実施される予定である。
3.ISO8299との比較評価における差についての再検討結果(鈴木委員・角事務局員)
日本原子力研究開発機構におけるISO17025認証取得に向けた取り組みの一環で、分析マニュアル類を整備している。基本となる分析法はISO8299に規定されており、これとの内容を比較評価した結果が前回に続いて再度報告された。これまで両者に相違が認められた箇所については、現在マニュアルを修正中であり、ISO8299に準拠するかたちで纏められることとなった。また、国内における統一基準を作成するにあたり、他の関係機関においてもISO8299との整合性について今後調査することとなった。

■第5回「未臨界実験データ評価」研究専門委員会
2008年5月26日(月) 日本原子力研究開発機構東京事務所 第5会議室 ( 出席5名)
議 事
・「核燃料サイクル施設の未臨界度及び安全性評価法の現状分析」 桜井主査(資料SUBCRI-5-1)
 核燃料サイクルは、ウランの採鉱、加工、発電炉への装荷と取り出し、中間貯蔵、再処理、プルトニウム燃料加工、これらを結ぶ輸送などから成り立つが、それぞれの臨界安全管理において用いられている解析手法や核的制限値は様々である。また、核的制限値の設定根拠が必ずしも明確でない。一貫した手法・考え方を採用したほうが良いのではないか、と問題提起があった。これに対して、施設の種類によって核燃料物質の取り扱い形態が様々であることから、それぞれの施設にとって合理的に臨界安全管理を行うためには、自然と考え方に違いが生じるとの意見が出された。その上で、施設の特徴と採用されている臨界安全管理の考え方を関連づけて整理し比較できるようにすることは有用であるとの考えが示された。
・「臨界ベンチマークデータと解析システムの精度評価」 外池幹事(資料SUBCRI-5-2、-5-3)
 臨界安全管理に用いられる解析システムは計算精度が十分に評価されていなければならない。その評価の基準となるものが臨界ベンチマークデータであり、最近では国際臨界安全ベンチマーク評価プロジェクト(ICSBEP)において各国共同でデータベース化の作業が行われている。
 最初の講演で問題提起された核的制限値の設定根拠が必ずしも明確でない点についても、最近、国際的な取り組みが始まっている。OECD/NEA/NCS/WPNCSの活動として、解析システムの誤差評価の方法を参加各国から提示してもらい相互に比較する作業が行われている。この作業において、上述のICSBEPの中からごく典型的な臨界ベンチマークデータに対して解析システムを用いた中性子実効増倍率の計算を行うとともに、その解析システムのバイアス評価を行うことが求められている。
・その他
 本研究専門委員会は活動開始から1年を経たところであり、報告書の取り纏めを見据えて、2年目の活動方針について議論した。

■第1回「高温ガス炉黒鉛構造物規格化のための調査検討」特別専門委員会 
2008年6月17日(火) 日本原子力研究開発機構 システム計算科学センター (出席21名)
議事
(1) 特別専門委員会の設立について(報告)
世界的な高温ガス炉開発の状況を踏まえ、HTTRの黒鉛構造設計方針等を実用高温ガス炉の条件まで拡張するための要件を調査検討するため、本特別専門委員会を設立したとの趣旨説明があった。
また、丸山主査より、奥委員が副主査に推薦され、委員会にて承認された。
(2) 高温ガス炉の状況について(報告)
現在の世界的な高温ガス炉の開発状況について、日本原子力研究開発機構・沢氏から報告があった。
(3)規格化のための活動方針について
本特別専門委員会における調査検討活動の具体的な進め方について議論を行い、国内外の規格を調査し、照射データの内外挿の方法、破壊力学及び確率論的評価について重点的に検討することが承認された。なお、本特別専門委員会の開催回数を年度内に6回として計画することが承認された。 
(4)ASMEの高温ガス炉の黒鉛構造物の規格案について
規格の調査検討の一環として、現在米国機械学会(ASME)で検討されている黒鉛構造物の規格案について状況の説明があり、本特別専門委員会で検討していく規格案との関係について議論を行った。本規格案では、ASMEで議論されている設計規格のみではなく、検査基準や維持基準も含めた包括的なものとすることとした。また、本規格案の中でASMEに対応する部分については整合を図るとともに、本専門委員会における結果をASMEに反映させる方針とした。
(5)高温ガス炉黒鉛構造物規格の構成と論点について
本規格案の母体とするHTTRの規格との相違点について議論が行われた。構成については、HTTRの規格に沿うこととし、黒鉛の重要度分類、黒鉛銘柄の特定方法、異方性黒鉛の応力評価・き裂進展評価の方法、欠陥寸法の許容値の設定方法、照射データの内外挿の手法を今後の主要な論点として摘出した。